最終章 ファイナルライブ
神ティアラを手に入れたし、あとはいよいよファイナルライブの準備だ。絶対悔いの残らない最高のライブにしよう。
ファイナルライブまであと3日。そういえば、前にエキストラに応募した映画が公開中のはず。まぁ、エキストラの抽選には外れたんだけど、一応関わった映画だし、観に行こうかな、ということで、わたし達は3人で映画を観に行くことにした。
映画を見終わった後、近くのショッピングモールのレストラン街でランチをした。
「このあとどうする?」
わたしは二人に訊く。
「あ、あたしは予備校の講習あるんだ」
と、ゆうき。
「私はバイト。今月きついから」
と、れみ。そう。本当は皆忙しかったんだけど、最後かもって時間を作って映画に来たから無理もない。かく言うわたしも夕方からバイトだったりする。
解散後、わたしはバイトまで時間があったので、この町のプリパラに行ってみた。
「あら、あなたも神アイドル?」
たまたま、近くにいたコが声をかけてきた。神ドレスを着たコだった。神ティアラも装着している。この町のトップクラスのコなんだろう。
「せっかくだからパキりませんか?」
「え、もちろんいいですよ」
引退間近に絆を更に増やしてどうするんだという気がしないでもないが、せっかくの申し出だ。わたしはトモチケを渡した。すると、そのコはドリトモチケを返してくれた。
「えっ?それじゃ悪いから、一緒にドリシアしましょう。ドリトモチケでお返しします」
わたしはそのコと手持ちのトモチケ3枚でドリームシアターライブをした。そして、ドリチケと入荷コーデを待った。
「・・・!」
わたしは息を飲んだ。なんと、パラダイスプリンセスコーデだ!
「やっと…出た!」
わたしは無意識にそう言った。
「おめでとう。そのコーデ、当時なかなか出なかったよね」
「うん、ありがとう。最後の最後で出たよ。おかしなものね」
「最後?」
「うん。3日後にファイナルライブして、区切りにしようと思ってたから」
「そうなんだ。じゃ、私が最後のパキりかもしれないんだね」
「多分ね。でも、最後にいい思い出をありがとう」
わたしが言うと、そのコは笑いかけてくれた。でも、悪戯っぽく笑うコだなぁ…小悪魔系ってやつかな?
そして、いよいよファイナルライブ当日。
会場にはどこかでパキった人とか、知っている顔がいくつも。結構な人が集まってくれていた。
「すごい…!」
「みんな、結構知ってくれてたんだね」
わたし達が驚いていると、
「恐縮です」
アイシングクッキーコーデの眼鏡のコが声をかけてきた。
「恐縮です。らぁらさんの友達の徳田ねねと申します」
「あ、はじめまして」
「以前、あみさんが私のワンピの色違いをアレンジしたコーデでライブされたのを見かけて、気になっていたんです」
聞けば、彼女は学校で新聞部に所属していて、らぁらから今日わたしがファイナルライブをするから、チラシを作るよう提案を受けたとのこと。
たまたま、わたしのことを見かけたことはあるからと協力してくれたらしい。
「ありがとうございます!おかげでこんなにたくさんの人が来てくれて嬉しいです」
そんなわけで、わたし達は満員の会場のステージに立つことができた。
ゆうきは女神様とおそろいの神コーデ、れみは女神様が地上に降りてライブした時に纏ったといわれるエメラルドエデンコーデ。
そして、わたしは神ドレスに神ティアラという、全員が神レアコーデだ。曲ももちろん「Girl's Fantasy」だ。これは女神様が歌ったとされる曲。
ほんの話の種の下見で訪れたことから、いつの間にか生まれた『神アイドルになりたい』という夢が、
無数のトモチケが紡いでいく絆の中で大きくなり、ついに叶った。
わたしは、その感謝の気持ちをこめてライブした。
「サイリウムチェーンジ!」
三人の神のコーデが光り輝く。いよいよフィナーレだ。
「みんな、ありがとう!」
ライブが終わり、しばらく鳴り止まなかった拍手がまばらになった頃…
「プリパラパンポーン」
めが姉ぇさんのアナウンスが入る。
「何?」
「あみさんのファイナルライブ第2幕についてのお知らせでーす」
第2幕?聞いてないけど…?
「みなさーん!こんにちは」
3日前にパキった神ドレスのコがステージに登場した。
「あみちゃんは、ドリームパレードが出来なかったのが心残りなんだよね?」
「あ、うん。そうですね…」
そういえば、そんな話したなぁ」
「実は、あみちゃん、3日前、あたしとのライブで、ドリームパレードプリンセスコーデをゲットしました!」
会場に歓声があがる。
「今から、パレードは無理でも、ランウェイライブならできます。あと6人、ランウェイライブ参加者を募集します!」
…もしかして、あの悪戯っぽい笑いは、このサプライズ思いついたから?でも、集まるのかな?
いきなり、れみが、
「私とゆうきは客席で応援するね。他のコが参加したいだろうし」
え?本当に集まるかな?足りなくても後でメンバー呼ぶってできないよ?
「サマードリーム以来、こういう時は私だよね」
何度も助っ人頼んだコが一人目。
「こむぎ肌同盟のチームリーダー同士。って、一番乗りは逃しちゃったか」
結成式の日に会ったコが二人目。
「いつもいいねを送ってくれてありがとう」
相方が積極的な常連さんが三人目。なんか、今日は自分から来てくれたみたいなのでちょっと意外。
「じゃ、あたしも。この前トモチケもらったし」
この前いいねのお礼にトモチケ渡したコが四人目。
立て続けに名乗り出てくれるコがいて、すごく嬉しい。
「さぁ、あと二人!」
ここで、立候補が止まった。でも、ゆうきたちを呼び戻すわけにも…などと思っていると、
「五人目はここにいるよ」
「シュララ!」
「なんとか間に合ってよかった!」
放送を聞いて走ってきてくれたらしい。いい子に育ったなぁ。
しかし、残り1枠となれば、逆に「遠慮の塊」のようになって、なかなか誰もこない。
時間切れで中止ってのも悲しいなぁ…
時間いっぱいになる寸前、突然空から光がステージに差す。
そして、その光の中に紺色の女神が降り立った。
「私はジャニス…プリパラの秩序を守る者」
「え?」
なんで女神様がこんなところに…?
「プリチケの配達者として多忙な姉に代わり、私が祝福を与えましょう。共にランウェイを歩みましょう」
えええーーーーっ?
確かに、女神様が最後の席だったら、みんな納得するかもしれないけど、話が大きくなりすぎだよ…
はぁ、めちゃくちゃ緊張してきた…
でも!
「みんなありがとう!また一つ夢が叶いました!」
わたしはドリームパレードプリンセスコーデに着替えて、豪華なランウェイを歩いた。
一生忘れられない瞬間だなぁ。すばらしいサプライズに感謝感謝。
ランウェイを終えて、控え室に戻ってきた。しかし、聞こえてくるのはアンコールの声。
「アンコールだよ」
と、ゆうき。
「ネタ、考えておいてよかったね。じゃ、行こうか」
と、れみ。
その時だった。控え室にらぁらが入ってきた。
「あみちゃんは、初めてのコーデでアンコールやるんだよね」
「うん」
「じゃあ、ドリームシアターライブが必要だね」
「えっ?」
登場したのは、はじめてパキった一般客のコ。オーディションネタで話したコだ。
「あみが初めてパキった一般客のあたしと」
「あみちゃんが初めて一緒にライブしたあたしが参戦だよ。かしこま☆」
そう。チーム+2人なので、ドリームシアターライブができる。
「昔なら、あと1回ライブが必要だけど、今ならすぐドリシアライブできるし」
そういえば、初めてドリシアライブする時は、3回普通のライブする必要があったなぁ…
「じゃ、本当のラストステージだね。ライブ、いっくよー!」
「オッケー」
「いくよ!」
「ライブ、がんばろうね!」
「かしこま☆」
わたし達はステージに飛び出した。
わたしは力いっぱい、会場のみんなに叫ぶ。
「会場のみんなの夢、受け取ったよ!」
(完)
今回のプリチケ
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