第28章 年越しライブ
「ところで」
ゆうきがいきなり話を切り出した。
「年末、カウントダウンライブとかってしないよね?」
「うん。予定ないけど、やりたいの?」
「やりたいけど、うちは家族で揃って年越しそば食べるしきたりなんだよね」
「まぁ、わたしもお煎餅食べながら紅白見ようと思ってたけど」
そう。それこそわたしの年末の楽しみだ。
「れみは?」
「私は28日から帰省するから無理かな」
「じゃ、誰もできないね」
「いっそのこと、クリスマスライブの次に、『大晦日じゃないけど勝手にカウントダウンライブ』でもやろうか」
「私達の今年の歌いおさめだね。それでいいんじゃない」
「れみはお正月はいつまで?」
「元旦に別の親戚への移動のため、一旦午後に帰ってきて、夜また出発」
「忙しいね」
「でも、一緒に初詣に行って、ついでにライブ1回くらいはできるよ」
「いいね。初詣」
「じゃ、今日、ライブの後、細かい計画練ろうか」
「うん。でも、今日のコーデはどうしようか」
「わたし、メガドレインで新作作ったよ」
「それ、楽しみ。じゃ、それで」
わたしは紫色の異国っぽい雰囲気のコーデ。ゆうきとれみはおそろいで色違いのトップスにあわせて作ったコーデ。
ゆうきは青のトップスにあわせて、白のミニスカに縞々の靴下でアイドルっぽさ全開に、れみは赤のトップスにあわせて、そふぃさんのようなクールな感じに。
二人のコーデは初めは逆のイメージで作っていたけど、なんとなくこのほうが面白いかなと思って変えてみたけど、思いのほかいい感じにまとまった気がする。
ライブのあと。
「まずはクリスマスライブだね。この前の予行演習通りでいいのかな」
「わたしは最新コーデゲットしたから、コーデ変えようかなと思ってる」
「それ以外はそのままでいいかな」
「で、クリスマスライブはいつやる?イヴ?当日?」
「当日のほうが時間合わせられそうだね。当日にする?」
「うん。いいと思う」
「それで、カウントダウンライブは…」
「その翌日26日なら出来るけど」
「わたしも大丈夫」
わたしもその日なら今のところ問題ない。ところが、ゆうきがいきなりわたしに、
「じゃ、26日にしようか。あとはあみ次第だね」
「え?さっきも言ったけど、わたし26日大丈夫だよ?」
「それまでにメガドレインで衣装作れる?ちょっとカッコイイ系のチームコーデが欲しいなって思うんだけど」
「ええーっ!そういう意味?」
「どうかな?」
「…とりあえずがんばってみるね」
そういえば、異世界ではわたしは、なるさんのお店でデザイナーしてたりしたはず。それなら、わたしだって!
とは言ったものの、さて、どうしたものか。何日か悩んでいたけど、とりあえず作ってみよう。
とりあえず、カッコイイ系ということなので、アシメロック型紙でロックなものにしようかな。うーん、カッコイイというよりエロ可愛い感じになってしまった…これは没かな。
それなら、紺色の男装っぽいものを作って、ブーツとかの部分部分にピンクや白を入れて、女の子っぽさも残しつつ…
「できた!」
うん。これならカッコイイ系コーデだな。
わたしはクリスマスライブのあとで、二人に出来上がったコーデを見せた。
「へぇ。たまにはこういうのもいいね」
ゆうきは素直に喜んでくれた。でも、れみの次の一言でわたしは再び悩むことになる。
「でも、チームコーデって、コンセプトそのままで、みんな少しずつ個性を出したりしない?」
「げげっ、明日までにあと二つかぁ…」
わたしが軽く絶望していると、ゆうきが、
「でも、この没案のボトムス、色的にこのコーデに合わせてもいいかも」
そういって試す。なんとなくだけど、ゆうきにはこっちのほうが似合う。
「あ、けっこういいかも…」
今度はれみが、
「この前作ってくれた、ゆうきのコーデの白いミニスカを合わせたらマーチングっぽいかも」
れみも試す。確かにマーチングっぽい。
「れみさん、萌え死んでもいいっすか?」
ゆうきがふざけて言う。たしかにれみが着ると色っぽい。
「うん、さすが初代お色気担当!」
「…この組み合わせ、なんならあみに譲るよ?」
「いえいえ、わたしはコーデを作った責任でこのままで」
あっという間に、チームコーデのバリエーションも決まり、わたし達は翌日、歌いおさめのライブをすることができた。
来年も楽しい年になるといいな…
今回のプリチケ
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