第27章 クリスマス前の奇跡
「メガドレイン?」
れみの口から耳慣れない単語が出た。体力を吸い取る攻撃にしか聞こえないけど…
「正しくは『女神のドレスデザイン』の略なんだって。3DSで新しいソフトが出るみたいよ」
「前のとどう違うのかな?」
「トップスとかの単位で名前をつけてコーデが作れるみたいよ」
「ということは、作るコーデの幅も広がるね」
「とりあえず、じゃあ、わたしはバイト増やさないと」
「でも、今年はクリスマスライブやるって意気込んでなかった?」
「それはやるけど、それまでに資金調達も必要だし」
「それでデザインしたら、それ着て応募してみる?さっき、こんなチラシ貰ったんだけど」
ゆうきがチラシを取り出した。
「へぇ、映画のエキストラ募集。ドリトモチケを送ると抽選で100人がエンドロールのランウェイを歩く…」
「すごい競争率みたいだけど、応募だけはしてみようか」
「だね。コーデ出来るの、楽しみにしておくね」
「なら、絶対ソフト買わなくちゃ。さっそく予約して、バイトも増やそうっと」
そんなわけで、今日はわたしはバイトのため、変な時間にプリパラに来た。一応、クリスマスライブに向けて、練習はしないとね。
「うーん、他に人いないなぁ…」
わたしはトモチケ交換所を見る。同じ人が4枚入れていただけだった。そのうち1枚を交換する。
「これじゃ、交換のバリエーション増えないから、余ったトモチケ入れておこうかな」
わたしはその1枚の代わりに3枚のトモチケを入れて3枚ずつになるようにした。
「でも、一人足りないか…」
わたしはトモチケ手帳を出した。ふと見ると、今交換したコと同じ名前のトモチケがあった。
「あれ?前にも使わせてもらった人かなぁ?でも、ちょっと違うような…」
試しに両方スキャンすると、二人ともホログラメーションで登場した。よく見ると別人だった。
「よし、ライブはできそう。さて、コーデは…」
気がつくと、写真集モードのままで、持って来ていたコーデは水着だった…
もう10月なのに。
次の日。バイトで資金調達はなんとかなった。家電量販店で溜めに溜めたポイントをつぎこめば、なんとかメガドレインを購入できそうだ。
だけど、そうなれば、今のソフトはあまり使わなくなるかも。だとすれば、すれちがい通信で貰ったトモチケは今のうちに使わないと…
そう思って、3DSでトモチケを表示させると…
「あら?」
たまたま隣にいたコがその画面を見た。
「あたしのトモチケ!呼び出してくれてありがとう!」
たまたま本人がそこにいた。
「でも、せっかくだから一緒にライブしようよ!」
そのコはトモチケを交換してくれた。ふと、エントリーしようとすると、見知らぬコからいいねがプレゼントされていた。
「あれ?」
怪訝そうなわたしにめが姉ぇさんが教えてくれる。
「交換所であなたのトモチケを使った方からのプレゼントでーす」
わたしは交換所を見た。わたしのものが減って、プレゼントをくれたコのトモチケが入っていた。
「せっかくだから、このコのトモチケでメンバー補充していいかな?」
「もちろん!じゃ、ライブしよう」
「あ、そうそう」
ライブを終えると、そのコが言った。
「あくまで噂なんだけど、3DSのトモチケって、異世界から繋がってるらしいよ」
「異世界?」
「だから、今交換したトモチケとさっきの3DSのトモチケをスキャンすると、二人のあたしとライブできるらしいの」
「ふぅん。今度試してみようかな」
そして、その日が来た。とうとうメガドレインを手に入れた。
クリスマスライブのリハーサルの日はまだだけど、つい、家電量販店からの帰りにプリパラに寄った。記念に髪型を変えてみたりしながらタウンを歩く。移動中の電車でメガドレインの初期設定は完了して、さっそくコーデも作ってみた。準備は万端だ。
いざ、メガドレインを試そうとした時、先日のコの話をふと思い出した。わたしはすれちがい通信用のトモチケをスキャンしてみた。
目の前にわたしがいる。
「え?わたし?」
もう一人のわたしは目をまるくして驚く。まだランクが低く、髪型はサイドポニーだが、まぎれもなくわたしだ。
「もしかして、異世界のわたし?」
「そういうことになるね。噂で聞いたんだ。3DSを使えば異世界の自分に会えるって」
「そうなんだ」
そこで、わたしは3DSのソフトを入れ替えた。もう一人のわたしも意図を察して頷く。さすが自分。話が早い。
わたし達は前のソフトのすれつがい通信用トモチケをスキャンしてみた。
目の前にわたしがいる。
「え?わたし?」
もう一人のわたしは目をまるくして驚く。普段の髪型の、まぎれもなくわたしだ。
「もしかして、異世界のわたし達?」
リアクションも一緒だ。ちょうどわたしも髪型を変えているので、髪形の違う3人のわたしが向き合っている。
「ははは。本当に異世界のわたし達に会えたね」
「せっかくだから、3人でソロライブ?やろうよ」
「もちろん!」
わたし達は3人のソロライブという訳のわからないことをした。
ライブが終わると、トモチケの効果が切れて、わたし達はそれぞれの世界に戻る。
「楽しかった〜」
「またいつか、やろうね」
そう言い残し、わたし達は帰っていった。わたしはクリスマスライブに備えて髪形を戻した。
そして、久しぶりにわたしはゆうきやれみと待ち合わせた。すでにクリスマス用のステージもできている。
わたし達は予行演習にクリスマスライブと同じライブをしてみた。実は、本番で着たいコーデはあるれれど、まだ入荷していない箇所があるので、今日は手持ちのサンタコーデだ。まぁ、これも気に入っているコーデだから、本番もこれでもいいんだけどね。
「そういえば、昔、あみってソロの頃はクリスマスにいっぱいトモチケ交換したって言ってたよね」
「うん。この前からバイトの合間に色々ライブしたよ」
「じゃ、あみが本番までに3人以上のコとトモチケ交換するかどうか、クレープでも賭けようか」
「それ、あみのいる所で言ったら意味なくない?」
「まぁ、どっちに賭けるかは判らないけどね」
そんな話をしたせいか、わたしは無性にトモチケ交換したくなった。
次にプリパラに来た時、ちょうど、交換所で入手したトモチケがあるから、これでライブしていいねを送ってみようかな。
わたしは、ライブをエントリーしようとしたら、ちょうど、ライブを終えたコたちが出てきたところだった。
「あ、次どうぞ」
「どうも」
わたしとすれ違った時、彼女たちの会話が耳に入った。
「そういえば、交換所に入れたトモチケがはけてたのに、誰もいいねを送ってくれないんだ」
「さみしいよね」
よく見ると、わたしがトモチケを持っているコたちだった。
「あの・・・」
わたしは声をかけた。
「この前、ライブで使う時間なくて、今日使おうと思って来たんだけど」
わたしは二人のトモチケを見せた。すると、
「あっ・・・よく見れば!」
二人の片方がわたしのトモチケを持っていた。
「さっきトモチケ使った人!」
どうやら間接的にこの二人とパキっていたようだ。
わたしがライブしようとしたら、さっき会った二人と、先日トモチケ3枚入れた時に使わせてもらったコの三人からいいねが送られていた。
わたしは二人のトモチケを使ってライブし、二人にいいねを送ったあと、交換所に来た。この前3枚あったコのトモチケが4枚あった。常連さんなのかな。
わたしがさっきのライブのトモチケを入れようとした時だった。
「ちょっと待った!」
いきなり声がかかる。
「そこに入れるくらいなら、せっかくだから私と交換して一緒にライブしない?」
たまたまライブしに来たコが声をかけてくれたのだった。
「うん。もちろんいいよ。ぜひやろう!」
わたし達は常連さん?のトモチケを交換所で調達し、一緒にライブした。
よくよく考えたら、3人とトモチケ交換、クリアしてしまった。
「あ、目標クリアだわ」
その時、のんが通りかかった。
「あ、あみちゃんだ。おひさしぶりです」
「前に会ったときはトライアングルだったよね」
「そうだったかな。ところで、目標クリアとか何とか…」
「うん、クリスマスまでにあと3人とトモチケ交換できるかどうかって話してて」
「なるほど。じゃ、もう一つチャレンジしてみない?」
「どんな?」
「二人だけでドリームシアターをやるのはどう?」
のんの手にはトライアングルのトモチケが。つまり、わたし以外全員のんというライブということか。
「いいよ。でも、どっちかというと、のんちゃんのチャレンジだよね」
「確かにそうかもね」
なんだか、クリスマス前には多彩なライブを経験することになったなぁ…
今回のプリチケ
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