第17章 ウインタードリーム大会

「そういえば、ウインタードリーム大会のエントリー始まったみたいよ」
「夏はあたし、秋はあみがセンターやったし、今度はれみがセンターやってみる?」
 ゆうきの提案に、れみはきょとんとしながら、
「え、いいの?」
「というか、やってみようよ。わたしも賛成だよ」
 わたしも背中を押す。
「じゃ、私、やってみるね」
「うん。大会、楽しみだね」
「大会といえば、怪盗ジーニアスってどうなったのかな?」
「そういえば最近見ないね」

 わたし達はそんな話をしながらプリパラTVを見ていた。プリパラポリスの制服のコがライブしていた。
「あ、あの人たちもあじみ係長にプリチケ貰ったのかな?」
「結構あちこちで配ったんじゃない?昨日もドリームシアターでポリス5人ライブしてたみたいだし」
「それだけポリスが増えれば、治安が良くなって怪盗も出ないかもね」
「じゃ、わたし達もやろうか。せっかくあじみ係長にコーデ貰ったんだし」
「うん。やろう、やろう」

 わたし達はポリスライブをやった後、フードコートに来た。
「お徳用の肉まんだって」
「最近寒くなってきたから、こういうの嬉しいね。買おうか」

 買ってみると、肉まんが一人あたり9個入っていた。
「お徳用…って、ちょっと豪快じゃない?」
「これだったら一人分で良かったよね」
 そういえば、叔父さんが旅先で満腹まで食べてくださいってコンセプトで、食べきれない量の小籠包を出す店に行ったことがあるって言ってたな。そこの系列なのかな?

 とりあえず、肉まんを幾つか食べようと、ベンチで食べていたら、隣のベンチにいた他のコたちの話が聞こえてきた。
「ねぇねぇ、知ってる?セレパラの噂」
「何それ?知らない」
「知りたい?セレパラの噂」
「知りたーい!」
 ついでにわたし達も手をあげた。
「あ、つい、聞こえたので。わたし達も聞いていいかな」
「だーめ、これは絶対今世紀最大のトップシークレット…」
「えっ?」
「というのは冗談。ていうか、この前、みれぃさんが『ぎゃっぷりぷりっぷー』のライブでやってたかけあいだよ」
「あ、聞いたことあると思ったら、それかぁ。「知りたい?本当の私」ってやつだよね」
「そういえば、プリパラチェンジ前のみれぃさんってどんな人なんだろ?」
「意外と、堅物の風紀委員長とかやってたりして」
「ははは。そうだったりして。ところで、そのセレパラって何?」
「セレブなプリパラ。なんでも、ライブするのはトップアイドル以上のコだけ。メジャー以下だとライブできなくなるって噂なの」
「えーっ、ここのコンセプトって『みんな友達、みんなアイドル』だよね?」
「上質なライブを見て楽しむというコンセプトになるみたい」
「えーっ、それじゃ普通のコンサートと変わらないよね」
「とりあえず、そうなる前にいっぱいライブしないと」
「あ、貴重な情報ありがとうね」
「そりゃ、『みんな友達』だもん。共有しないとね」
 わたし達はみんなで笑った。でも、セレパラになったら、こんな雰囲気じゃなくなるのかな…
「あ、肉まん食べます?ちょっと余っちゃって…情報だけじゃなく、肉まんも共有…」
 わたしは情報のお礼というわけでもないけど、余った肉まんを渡そうとした。
「へへ、気持ちはうれしいけど…実はアタシも」
 そのコが手に持ったエコバックの中身を見せてくれた。

 肉まんが7個…

 わたし達は隣のベンチのコたちと別れて、各自2個目の肉まんを食べ歩きしながら話を続けた。
「最大の問題は…」
「トップ以上なのはあみだけなんだよね」
「れみをセンターでエントリーするには…」
「今のうちにエントリーしてしまうしかないね」
 わたし達はすぐに準備を始めることにした。
 まずは、あと二人の助っ人確保だ。

 わたし達はらぁら達がいないか探し始めた。すると、そふぃ、ファルル、シオン、みかんの4人がこちらへ歩いているのが見えた。
「こんにちは。珍しい顔ぶれですね」
「ファルルたち、まほちゃんに呼ばれてたの」
 ファルルが答える。でも…
「まほちゃん?」
「紫京院ひびき殿のことだ」
 シオンが解説する。ひびきって、前にふわりが「ひびきさん」言ってたな…「紫京院ひびき」だったら有名な人だ。
「たしか、王子様系の俳優さんだよね。プリパラに来る男の人って、あ、レオナさんもいるか」
「くるくるちゃんは女ダ・ヴィンチ!」
 一瞬、あじみ係長が現れた気がした。
「あれ?今?」
「あじみ先生が来て、ひびきさんが女の人だって言ってたなの」
 みかんが教えてくれる。あれを見切れるのはすごいなぁ。ていうか、本当にあじみ係長が現れたんだ…
 あまり詳しく知らなかったけど、ひびきって俳優さん、女の人だったんだ。宝塚歌劇団の男役の人みたいなものか。

「あ、そうそう。実は、ウインタードリーム大会にエントリーするためにあと二人助っ人を探してたんだけど」
「じゃ、ファルル、がんばるる!あみちゃん達には前にお世話になったし」
 ファルルが応じてくれる。
「ありがとう。あ、それから。わたし達、さっきそこで肉まん買ったんだけど、みんなも一緒に食べる?」
 するとみかんが、
「肉まんありがとうなの!お礼にチームに協力するなの!天使にお任せなの!」
 結局、わたし達3人、シオン、そふぃが各1個、残り全部をみかんが食べて、肉まんはきれいさっぱり無くなった。
 ファルルは人間とは味覚が違うらしく、自分の分をみかんにあげていた。

 こうして、5人で無事エントリーでき、ドリームシアターに向かった。
「今回の課題曲は歌劇みたいね。コーデはどうしよう」
 まさか、さっき宝塚歌劇団の事を連想したけど、自分達がやることになるとは…
「そういえば、この前のドリシアスタンプでもらったコーデが舞踏会のドレスだったし、あれはどうかな」
「私たちもそのコーデでいくね」
 ファルルとみかんもこのコーデを持っていた。全員お揃いのドレスでステージに上がった。

 ライブが始まった。5人でお揃いのドレスでしばらく踊ると舞台転換がある。
 れみとみかんが前に出て、わたし達は後ろへ下がる。

 舞台は花畑になり、れみとみかんが楽しげにダンスする。
 次はわたしの番。

 舞台は夜の街の人気の無い路地。わたしとれみはスパイアクションを取り入れた激しいダンスをする。
 れみが大きく脚を上げて回し蹴りのモーションをする。いくらスカートが長くても、見ちゃったよ…
 もしファンの男の子が見たら確実に萌え死ぬようなものを。

 更に舞台は宇宙船になり、れみとゆうきが光る剣で剣舞を舞う。このパート、面白そうだからわたしもやりたかったな…

 そして、また舞台が変わり、豪華客船の甲板でれみとファルルがダンスを踊る。さすがはファルル。わたし達も思わず見とれそうになるくらい美しい。
「すごい…」
 らぁらの妹が「ファルル様」って「様」呼ばわりだったの納得だわ…

 いよいよフィナーレだ。
 サイリウムエアリーを出し、わたし達は無事ベルを鳴らすことができた。なんとか冬のプリンセスのコーデもゲットできた。
 ドリチケもちゃんと5人写ってたし、めでたしめでたし。

 そして、プリズムストーンショップでカタログを見ると、舞踏会ドレスと対になったエスコートの男装コーデがあった。
「あ、こういうカッコイイのもあったんだね」
 れみがそれを見て、
「私はこっちにすればぴったりだったのかな」
「これも似合いそうだけど、ドレス姿も可愛かったし、あれで良かったんじゃない?」
 わたしのフォローに、
「でも、あみとのパートのハイキックするところがちょっとキツかったかな」
 えっ、ハイキックって…!
「あれ?あみ、どうしたの?顔、赤い…まさか!」
 れみが気づいたみたいだった。
「見た?」
「いや、わざとじゃないってば!」
「やっぱり見たんだぁ〜!このスケベ!」
 しまった、これじゃ、やぶへびだ。
 れみがわたしにヘッドロックをかける。笑いながらだから、怒ってるわけじゃないだろうけど…
「れみ、痛い、痛い!」
「ごめんなさいは?」
「ふえーん…れみ様、ごめんなさいぃ〜」

 ゆうきは、そんなわたし達を見て肩をすくめた。
 そして、昭和の頃に流行ったというコントのオチを真似して、
「ダメだこりゃ」


今回のプリチケ
 
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