第14章 サマードリーム大会

 その日、ドリームシアターで何かメンテナンスをしているようだった。
 なんでも、1年後にドリームパレードという一大イベントがあり、そのための四季のプリンセスのコーデが景品の大会があり、その準備らしい。
「まずは、夏のプリンセスのコーデに挑戦みたいね」
「まぁ、今、真夏だしね」
「どんなコーデなんだろう?」
「楽しみ〜」
 わたしはれみとその話題で盛り上がっていた。
「ゆうきは誘うとして、あと二人はどうしようか?」
「チラシによると、人数が足りない時はらぁらさん達が入ってくれるらしいよ」
「それなら何とかなるかな」

 ***

 その頃、ゆうきは二人に合流しようとプリパラに入り、タウンを早足で歩いていた。
「あ、すみません」
 ゆうきはすれ違ったコから声をかけられた。
「あみさんのチームのセンターの方ですよね?」
「うーん、誰がセンターなのかは判らないけど、同じチームですよ」
「私、あみさんとは何度かライブした事があるんです。この前も、サイリウムチャームの使い方教えてもらったり」
「そうなんですね。あ、これからあみに会うけど、一緒に行きますか」
「じゃ、せっかくなのでご一緒してもいいですか」

 ***

 わたしがれみと盛り上がっていると、そこへゆうきが来た。
 そして、その隣には、わたしが何度か会ったコ…だと思う…がいる。
「お久しぶり」
 そのコの声を聞いて確信した。このコは会う度に髪型も髪色も色々変えているので、一瞬本人かどうか判らなかったりする。
 よく、プリキュアとか女の子の変身物は顔で正体バレバレだってツッコミを耳にするけど、意外と髪型や髪色が変わると別人に見えたりするから、実際正体はバレないのかも。
「あ、お久しぶり!ちょうど良かった!」
 わたしは思いついた提案をもちかけることにした。
「え?何が?」
「今度のサマードリーム大会、一緒に出ない?相方さんもよければ。ほら、年末にいたコ」
 そう。このコとその相方のコと三人で年越しライブをしたので、5人チームが組める!
「もちろん、一緒に出るのはいいけど、友達は県内のコじゃないから、ちょっと来れないと思うよ」
「そっか、まぁ、残りひと枠はらぁらさんに頼もうかな」
「そんな、最強レベルのらぁらさんを補欠みたいに言うのはどうかな?」
「確かにね。募集要項に人数が足りないときはフォローしますとは書いてあるけど、すごい戦力増強だし」
「え?チラシにそんな事書いてあるんだ?」
「うん、ほら…って、あれ?」
 わたしが見せようとしたチラシが見当たらない。ふと、手にもふもふした感触が…
「ひっ…!えっ?」

「メェ〜〜」

 そこにはなぜかヤギがいた。
「ヤギ?なんでこんな所に…?」

「ヤギさん、人のチラシを食べたらダメよ。メメ、メメー!」
 パルプスの山奥の牧場にでも住んでいそうなコが走ってきた。
「ごめんなさい。ヤギがチラシを食べてしまいました」
「あ、いいですいいです。チラシはそこのカウンターにいっぱいあるからまた貰ってきますんで」
「じゃ、取ってきますね」
 そのコがチラシを取ってきてくれる。
「どうぞ」
「ありがとう」
「実は、私もそれに出るためにパルプスからここに来たんですよ」
 本当にパルプスの山奥にいた人だったんだ・・・いや、山奥かどうかは判らないけど。
「ひびきさんに薦められて、セレブリティー4の皆さんと一緒にエントリーしたんですよ」
「え、セレブリティー4って、あの外国の世界的アーティストが4人で組んだっていうあのセレブリティー4?」
 推薦したひびきさんというのが誰かは知らないけど、セレブリティー4は知っている。
「はい」
「ということは…あなたは…?」
 おそらく、世界5大アーティストの一人なんだろうけど、残念ながらわたしの知らない人だった。
「私はふわり。緑風ふわり」

 ふわりがヤギを連れて行ってしまったあとも、わたし達4人はしばらく我を忘れていた感じだったけど、ようやく正気に戻る。
「凄い人たちがエントリーするみたいね。サマードリーム大会」
「うん。そう考えると、らぁらさんがヘルプに入ってくれるのはありがたいね」
 そういうわたしにゆうきがツッこむ。
「ちょっと、隣県の相方さんが来れたら別にヘルプは呼ばないんだよ?」
「大丈夫!その場合は友情パワーで乗り切ればいいのよ」
「もう、調子いいんだから!」

 さて、サマードリーム大会が始まった。
 わたし達はドリームシアターに入った。結局、助っ人さんの相方は不参加で、らぁらに応援を頼んだのだった。
 ドリームシアター天井に巨大なベルが取り付けられていた。
「課題曲のライブをこなして、あのチャームベルを鳴らすことが出来れば、夏のプリンセスのコーデが貰えまーす」
 めが姉ぇさんが解説する。

 サイリウムエアリーを出して飛んで、4人でベルの固定ロープを引き、センターが中心のブランコに座って体重をかけて鳴らすしかない。
 更に、大会の課題曲は新曲だった。

「結構難しそうね」
「でも、サイリウムエアリーは前にも出せたし、きっと出来るよ」
「だね。がんばろう」

 ライブが始まった。ホログラメーションが起動し、5人は船の甲板に立っている。曲が始まる。
 メンバーアピールをすると、船が動き出し、クマさんみたいな形の島の洞窟に入っていく。
 洞窟の中にはゆうきのマネージャーによく似たトリの石像がある。

 ♪突然出会った あれはでかスイカ♪

 歌詞に合わせて、足元から巨大なスイカが現れ、私は玉乗りしながら歌うことになる。
 楽しいけど難しい!転倒したらリタイアなんだろうか…

 玉乗りをクリアすると、今度は水が流れてくる。そして、噴水のように噴き上がる!
 それに合わせて、5人が同時にジャンプする。
 なんとかタイミングは合った。着地すると、くじらの潮のステージになっている。くじらの潮の上でサイリウムチェンジする。

 出た!サイリウムエアリー!
 5人は潮の上から翔んだ。
「みんなの想い」
 ゆうきとれみがベルにかかった紐をほどく。
「鐘の音にのせて」
 らぁらたちが紐を引く。
「ひびけ!チャームベル!」
 わたしは中央のブランコに飛び乗って全体重をかける。

 ベルの音が鳴り響く!やった!成功だ。

「おめでとうございまーす!コーデをゲットしました」

 ひまわりデザインのドレスだ。
「すごいドレスだね」
「早くこれ着てライブしたいね」

 わたし達はプリントスタジオでドリチケの出力を待った。
「どんなプリチケができるかな?わくわく」
 5人の思い出のドリチケになる。楽しみ…って…あれ?

 出てきたドリチケは、なぜかわたしのアップで他の4人は写っていない。
 めが姉ぇさんに聞いてみる。
「ドリームシアターでは、時々センターのソロ写真も出ます。システムでーす」
 いや、でも空気読んでよ…

「まぁ、一番大変だったのはあみちゃんだし、これでもいいよ。オッケーのかしこま☆」
 らぁらはそう言ってくれたけど、やっぱり心残り。
「待って」
「どうしたの?ゆうき」
「まだ、明日のエントリー、間に合うよ。あたしのアカウントでリベンジできるけど、どうする?」
「やっぱり、5人でのドリチケにしたいし、やろうよ!」

 そして、翌日。今度はゆうきをセンターにしてリベンジ。
 今のところ、玉乗りもちゃんとクリアしている。
 去年のゆうきの足の怪我はもう完全に治ったみたい。本当に良かったな。
 そして、くじらの潮でジャンプ。2回目なのでタイミングは完璧。
 ゆうきがサイリウムチャームを掲げる。

 出た。サイリウムエアリー!

 わたし達は翔び上がり、ベルの紐をほどく。
 昨日はブランコだったので判らなかったけど、結構力要るんだなぁ。
 空中で思い切り紐を引く。勢いでつい脚を開いてしまった…
 げっ…客席からスカートの中、見えちゃったかも…

 まぁ、そんな事よりゆうきは?

 ゆうきはブランコに上手く乗った。そして、ベルが鳴った。やった。成功だ!

 こうして、2着目のコーデと5人で写ったドリチケを手に入れた。
「良かったね」
「うん」
「一緒にライブしてくれてありがとう」
 助っ人のコに礼を言うと、
「そういえば、このドリチケだから、やっぱりゆうきさんがセンターで間違いなかったね」
「そういえば、そんな話もしたなぁ」
「え、何それ?わたし、聞いてないよ!」

 そんな話をしていると、何かがわたしの横をすり抜けた。
「きゃっ!何?」
 わたしは手に持ったわたしのソロのドリチケが消えていることに気づく。
「あっ、わたしのドリチケが無い!」
「え?」

「このドリチケは預からせてもらおう!」
 ふと声のしたほうを見ると、怪しげなマスクで顔を隠した細身の人物がいた。

「あ、そこの怪人!わたしのドリチケを返して!」
「怪人ではない!怪盗!怪盗ジーニアスだっ!」
「どっちでもいいから早く返して!」
「このコーデは天才のみが纏うことができるものだ。出しゃばってチームメイトが写っていないドリチケを作ってしまうようでは天才とはいえない」
「え?それって、才能じゃなく、運が悪いだけだよ!」
「運も実力のうちだ。とにかくさらばだ!」

 怪盗ジーニアスは走り去ってしまった。

「チケットを盗まれちゃった…」
「そういう意味では、コーデが2着あって良かったかも」
「うーん、そういう問題でもないけど、まぁ、そうかな。とりあえず、今日は帰ろうか」

 でも、どうなるんだろ?わたしのドリチケ…


今回のプリチケ
 
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