第13章 プリズムのきらめき
その日はわたしはバイトが早く終わったものの、何もすることが無かった。
ゆうきもれみもいない。
わたしは久しぶりにアイスクリーム屋さんに入ってみた。
ダブルを注文しつつ、選ぶのはチョコミント2段。他のもおいしいけど、味が混ざるのが勿体無い気がするから。
わたしは椅子に座ってアイスを口にした。冷たいチョコミントが気持ちいい。
ふと、店の外に目をやると、もう、夏の気配が街中に漂っている。
そういえば、プリパラを知ってだいたい一年。あの頃はステージに立つことすら考えていなかった。
そして、ゆうきの怪我の快気祝いにバックダンサーとして一緒にステージに上がるつもりで始めたものの、いつの間にか、そこで知り合ったれみを含めてのチームリーダーのようになり、神アイドルにまで上り詰めた。
人生って、わからないものだわ…
しかし、プリパラはテーマパークなので、気軽にアイドルになれるから、色々な客同士で一緒にライブできる場所のはずなのに、意外なほど有名人とのライブも経験している気がする。
他のコたちもそうなんだろうか?でも、さすがにファルル復活に関与するとかはあまり無さそうなんだけど、わたし達って運がいいのかな?
それとも、誰でもディズニーランドに行けば高確率でミッキーマウスに会えるようなものなのかな?
「それは、この世界のプリズムのきらめきの中心にあなたがいるから…」
突然、背後から、わたしの随想を見透かしたように声がかかる。
そこには、清楚な白い服を着た、青いショートカットのコがいた。少なくとも知り合いではない。
「私はりんね。プリズムの使者」
普通、街中でいきなりこんな事を言うコがいたら、大丈夫か?と思うけど、わたしの心を見たとしか思えないので、話を聞くことにした。
まぁ、プリパラでキャラの濃いコを色々見て、免疫ができていたのかもしれない。
「世界はいくつもあるの。この世界はその中の一つ。それらの世界の中にはこの世界と似た世界もあれば、全然違う世界もあるの」
どういうわけか、目の前にビジョンが広がる。いくつもの世界が虹のような橋でつながっている。
その中の一つでは、ファルル復活の6人ユニットはそらみスマイルとドレッシングパフェの6人で、わたし達は存在していなかった。
また、別の世界では、わたしはとあるショップでデザイナーとしてコーデのデザインをしていた。
「店長、いいのが出来ましたよ」
「わぁ、かわいいデザイン!これなら、おしゃれ番長に勝てるね!」
そう言う店長の顔を見てびっくり。セインツのなるさん?うーむ、なりきりライブで結果的になるさんをやったのって、もしかして、異世界の縁?
そうこうしていると、店に誰か入ってきた。
「おしゃれ番長!」
「どうかしら、次の勝負は楽しませてよね」
どうやら、この人がこの世界のわたしのライバル…って、コスモさん?ちょっと若い。少し前の時代の世界なのかな?
「ええ、新作のコーデで次のプリズムショーではプリズムライブで連続ジャンプを決めてみせるから!」
うーむ、この世界ではプリズムショーが今も全盛期なのか。そもそも、この世界のわたしはプリズムジャンプできるのかな?
中には、パラジュクが瓦礫の廃墟となり、別の街で知らないアイドルグループが活躍している世界もあった。
「ヒュー!今日のライブ、マジやっべー!」
「いいぜ」
「いいぜ!」
男アイドルによるプリパラの世界のようだった。時間軸が色々あるのか、この世界は少し未来だった。
また、別の世界。ここはわたしの世界に似ている気がする。
でも、わたしはゆうきやれみに出会わず、ソロアイドルとして活動していた。お天気キャスターの仕事を終えて、次の現場に向かうところだった。
ステージだけじゃなく、プロのアイドルとして活動しているみたい。
次の現場はグルメレポートだった。豆大福やケーキを次々と食べる。皿の上に何か大きな茶色いものが載っている。かじってみると硬い。
木彫りのクマ…
誰よ、こんなものお皿に載せたのは!
次の世界では、わたしはみあさん達と話をしていた。みあさんのチームは4人だ。
「でね、私がいっちばーん!になるために、デビューしてすぐの頃、あいらのところへ挑戦しに行ったらね」
「うんうん」
「あいらったらいきなり躓いて転んで「ぎゃふん」って言ったのよ」
「そうなんですか。メモメモです」
「当時のトップのプリズムスターにいきなり喧嘩売るなんてギャラクティカありえないっしょ」
みあさんのチームメイトの人たちが相槌やツッコミを入れる。
このツッコミを入れたかりんさんって人、コスモさんに近い喋り方だなぁ…
あと一人のチームメイトのコはあきれた様子だった。おそらく、この4人でいちばん話が通じそうなのはこのれいなさんだろう。
そこへ5人組がやってきた。韓国の人かな?ライバルチームのようだ。そして、両チームの間に現れたのは…
りんね…?
ふと、我に返った。
目の前にりんねがいた。夢でも見ていた?
「どう?世界は色々あるでしょ。この世界のプリズムのきらめきを守ってがんばってね」
やはり、夢とかではないようだ。
「え、あ、はぁ…自分なりにがんばります」
「良かった。それじゃ」
りんねは去っていきかけた。そして、振り向いてひとこと。
「あ、早く食べないと、アイス、溶けかけてるよ」
そういうことは先に言ってよぉぉ〜!
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