第4章 おそろいライブ
先日以来、わたし達は時には二人で、時には一人でちょくちょくプリパラに行くようになった。
ある時、わたしは一人でプリズムストーンショップへ行った時に面白い売り物を見つけた。
【ミルコレ】と書かれた福袋のようなものだった。正式には「ミルフィーコレクション」というアイテムで、トップス、ボトムス、シューズと、らぁら達のようなアイドルとチームが組めるトモチケが入っているとのことだった。
わたしは一つ買ってみて、さっそくそのコーデでライブしてみた。でも、なんとなくチグハグなデザインだなぁ…
わたしはあとでめが姉ぇさんに聞いてみた。
「なんか、このミルコレの服、ちょっとチグハグなデザインだけど、こんなのが流行ってるんですか?」
「ミルコレは各部位のコーデが適当に入っているので、いくつか買ってブランドを統一すればいい感じになります。システムでーす」
…ちょっと待ってよ…
私は愕然とした。そして、4セット買い足した。ああ、今月のバイト代が…
とりあえず、今日は帰りにアイス食べに行くの無理だわ。ああ、わたしのチョコミントがぁぁ!
それはさておき、ここはテーマパークだけあって、時々色々と趣向をこらしたイベントがある。
この前は、集めた「いいね」の多い常連さん上位7人がいつものバックダンサーの代わりにステージのバックに立つというサプライズ企画もあった。
「なんか、すごい人たちがバックで盛り上げてくれてるんだけど…」
「普通、そういう人たちと同じステージって場合、わたし達が「その他大勢」で一緒のステージ脇にいたりだよね」
「確かにね。「血のにじむような努力の末、背景のモブキャラの座を勝ち取りました」なんて冗談みたいだし」
とはいえ、この日の入荷は、常連さんたちが選んだ、普段なかなか目にすることのないレアなコーデだったりしたので感謝感謝。いい思い出になったし。
そして、今日のイベントは「たいけつライブ」だった。らぁら達のユニット「そらみスマイル」の楽曲でメンバーそれぞれ率いるチームと勝負すると、各メンバーとおそろいのコーデがもらえるというものだった。
「これって、2回戦まで行けば、色違いのパイレーツコーデが手に入るんだよね」
ゆうきが言う。
「手に入れたら、おそろいライブができるね」
確かになかなかお揃いのコーデが手に入らないんだよね。これはいいチャンスかも。
「でも、ヘアアクセとシューズは無いよ」
「ヘアアクセはガチャでこの前当てたんだ。レベルはあまり高くないし、1種類だけど共用できるよ」
「あみ…いつの間に?まさかシューズも持ってるとか?」
「残念ながら、靴は無いよ。写真で見切れることを祈って適当な靴を合わせよう」
ここだけはシステムを逆手に取って野望を達成しよう。
優勝を狙うとかより志は若干と低いけど、とりあえずがんばろう。
とはいえ、参加しなければ捕らぬ狸の何とやら。1回戦の相手はらぁらが他の二人の参加者だ。
「わたし達もはやくエントリーしないと」
「でも、あと一人はどうするの?」
その時、
「二人は誰と参加するぷり?」
声がかかった。みれぃだった。
「みれぃさん!ちょうど良かった!一緒に参加してください」
「別にいいぷりよ」
「ありがとうございます!」
らぁらのチームは強敵だけど、こっちにはみれぃが加わった。これならいけるかも。
「そうぷりね。私はマジカルピエロコーデで、センターのゆうきちゃんはリズミカルコーラルドレス。となれば、あみちゃんは手持ちのミルコレでコーデすればいいぷり。計算では100パーセント勝てるぷり」
手持ちのコーデが少ないわたし達は、いっそ色々なコーデで個性的に行くことにした。
おしゃれなあの子マネするより、自分らしさが一番でしょ。
そして、みれぃの言葉通り、わたし達は僅差とはいえ、らぁらチームに勝つことができた。
「やったー!コーデをゲットできた」
濃いピンクのパイレーツコーデを手に入れた。
「明日もこの調子でがんばろうね」
わたしがこう言った時だった。
「だめぷり。残念ながらそれはできないぷり」
「えっ?」
「えっ?」
わたしとゆうきはハモりながら聞き返す。
「明日は私はみんなの挑戦を受ける役ぷり。今日のらぁらみたいな役割ぷり」
「えええーーーっ!」
「明日は手加減しないぷりよ。がんばるぷり」
「みれぃさーーん、オンドゥルルラギッタンディスカー!」
ショックのあまり、「本当に裏切ったんですか」という部分で思いっきり噛んでしまった。
子供の頃見ていた『仮面ライダー剣』で先輩ライダーがいきなり敵側になった時の主人公の台詞「橘さん!本当に裏切ったんですかー!」をパロディーするつもりだったんだけど。
そして、次の日。
「結局、あと一人はどうするの?」
ゆうきに訊かれる。
その時ふと、思い出した。
「ミルコレについていたトモチケがあったわ。これで仲間になってもらおうよ」
「知らない人と組んで大丈夫かな…?」
「ここのキャッチフレーズは『みーんなトモダチ、みーんなアイドル』だし、なんとかなるって」
「うーん、本当に大丈夫かな?」
とりあえず、トモチケをスキャンしてみる。
「こんにちは。呼んでくれてありがとう。キュピコン☆」
ピンクの髪をわたしと同じようにサイドポニーにしたコが控室に入ってきた。
そして、わたしは愕然とした。この人、テレビで見たことある!
「あなたは、もしかして…?」
「ななみです。よろしくね。キュピコン☆」
なんと、来てくれたのは、人気アイドルユニット「ピンクアクトレス」のリーダーの白井ななみさんだった。
独特の「キュピコン☆」というしゃべり方で有名なアイドルだ。
「わぁ、テレビで見たことあります!」
「ありがとう。キュピコン☆」
握手してもらっちゃった♪
さて、浮かれている場合ではない。相手はあのみれぃ率いる強豪チームだ。
果たして、有名人と同じ髪型でセンターをやるなんて、ちょっとプレッシャーかかるけど大丈夫かな?
うん、やるしかない。自分に言い聞かせてライブ会場へ向かった。
「なかなか凄い助っ人を呼んだぷりね。あみちゃんこそ手加減なしだったぷり」
みれぃもこれには驚いたようだった。
わたし達は辛うじて勝利し、青いパイレーツコーデを手に入れた。
「やった。これでおそろいライブできるね」
「ななみさん、ありがとう」
「私も楽しかったよ。また一緒にライブしようね。キュピコン☆」
こうして、わたし達は色違いのパイレーツコーデを手に入れた。どうせなら、紫のパイレーツコーデを含めて3人でライブしたいな。
「紫のパイレーツコーデを持っているのは…」
「そふぃさんだね」
わたし達はそふぃのところへ言った。
ぷしゅー
そふぃはくらげのように横たわっていた。親衛隊の人がそふぃにレッドフラッシュを渡すと、そふぃは復活した。
「そうね。明日は私は挑戦を受ける担当だから。私に勝てれば一緒にライブしてあげるわ」
げげ。また明日も対決かぁ…
最終的には、数日後、わたし達の3色のおそろいライブが実現したんだけど、カードの写真はわたし達がセットのシューズについている白いストッキングではなく生足なのが見切れず写っていたのでした…
今回のプリチケ
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