第36章 月は出ているか

 あみは待ち合わせ場所のプリマジスタジオ横の噴水広場に早く着きすぎて、スマホでXのタイムラインを見ていた。
「この人、おいしそうな稲荷寿司をよく上げてるなぁ。小道具からみてモデラーさんなのかな…」
 と思い、投稿者の画面を出すと…
「えっ?同じエリアでプリマジしてるプリマジスタさんだったんだ…」
 あみはさっそく、フレンドカードをボードに入れておきますとメッセージを打ち、ボードにカードを入れに行って戻ってきた。
 でも、集合時間までまだ5分ほどある。

「おーい、こっちこっち!」
 とみとれみが来たのを見て、あみが両手を振る。とみがあみの服装を見て、
「あれ?ララちゃんのTシャツ?かわいい!」
「うん。モーリーファンタジーで限定のを買ったんだ」
「モモカさん達とのジョイントセッション、いよいよですね」
「うん。うちはプリンセスハッピーで、モモカさん達はダイヤモンドで色違いだっけ?」
「ブラックにするかもって言ってましたし、どちらでしょうかね」
「3人ってことはモカ★さんとライムさんかな?」

「久しぶりですね」
 声がかかった。
「誰?あっ…モカ★さんですか?」
 モカ★さんは髪型が変わっていた。そういえばモモカさんも髪型変わってたな…
 モカ★さんと一緒にモモカさんも来ている。
「妹が無理なお願いをしたりしませんでしたか?」
「いえいえ、こちらからお誘いしたようなもので…って、モカ★さんとモモカさんって姉妹だったんですか?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
 そこへもう一人。どうやらライムさんではなさそうだ。
 風格のあるプリマジスタがあみ達の前に歩み出た。
「お初です。モモカから話はよく聞いています。モカ★とモモカがお世話になっております」
 えっと、その言い方…まさか二人のお母さん?いや、若すぎる…
 あみが考えていると、
「私はReo。二人の姉です」
「お姉ちゃん、そんなラスボスみたいな登場しなくても…」
 ツッコミを入れるモモカさんに合わせて、とみが
「じゃ、モカ★さんは中ボスですね!」
 よくわからない空気になったところで、
「そういえば、私達はプリンセスハッピーですが」
「今回はブラックのほうでいきましょうか」
「「そのほうがバランスいいかもね」

 モモカさん姉妹とのジョイントセッションを終えた三人。解散後、ランチを求めて移動を始める。
「どこ行こうか」
「駅の近くで簡単に済まそうよ。この後電車だし」
「そうですね。目的地は天王寺で良かったんですよね」
「うん。大阪までは新快速。そこで環状線に乗り換えだよ」
 三人は午後はあべのハルカスに行く計画だった。
「そういえば、なんで急に?」
「れみがチラシ貰ってきたんだけど」
 あみがキン肉マン展のチラシを出した。
「れみの気合入れる時の「ぐおごごご」の元ネタはキン肉マンだからね」
「戦車デザインのかっこいいキャラがいるんですよ」
「そうなんだ」

 そして、三人はあべのハルカスに着いた。
「おお、この前の鉄人より大きなビル!」
「いや、そもそも鉄人は隣の西友の上のマンションより小さいですよ」
 そんな漫才をしながらビルに入る。
「あれ?エレベータが途中までだよ。会場はもっと上みたい」
「これは百貨店部分のエレベータなんでしょうね。あ、その後エスカレーターで上がれるみたいですよ」
 何とか会場に到着したのだが、受付で
「肉のスタンプを額に押しますね。暗いところで光って見えるインクです」
 あみは迷わず額を出した。れみととみが顔を見合わせていると、
「手の甲とかでもいいですよ」
 それでも、れみは
「設定通り額にお願いします!」
 展示エリアに入る。暗い廊下では三人の額には「肉」の文字が浮かぶ。
「タッグトーナメントのトロフィーと一緒に写真撮れるみたいですね」
「じゃ、あみとれみのタッグで撮ってあげる!」
「他にも技をかけてる写真も撮れるみたいですけど、スカートでこれは…」
 れみが言い終わる前にあみが
「うおー!」
 いきなりキン肉マンにウォーズマンの技、パロスペシャルをかけた。
 確かに写真だと相手の後ろで見えないが、スカートはとんでもない事になっているに違いない。
 とみがその後ろの展示物を見て、
「あそこにある新幹線の書割は何?」
「横に立ってるテリーマンが、オリンピックで新幹線を投げ飛ばす競技で、線路に入った子犬を助けて失格になった名シーンだよ」
 あみの説明を聞くと、
「じゃ、犬助けに行ってくるね!」
 そういうフォトスポットではあるものの、れみが冷静に、
「しかし、投げ飛ばした新幹線に走って追いつくテリーマンより早く走るとみって一体…?」
「確かに!テリーマンもびっくりだね!」
 他にもロビンマスクの兜など色々な展示があり、キン消しが大量に並んでいる展示もある。この前、グミで盛り上がっただけに、ここは三人とも興味津々だ。
「これだけあれば、ぐおごごごの人のキン消しもあるでしょうね」
「わたしが持ってるやつだね…あったよ」
「えっ、戦車さん、象に鼻で突きをくらってない?」
 つっこむとみに、
「でも、他の場面はないと思います。試合開始と同時にこうなって、一撃でKOでしたからね」
 そんな話をしながら、展示を見終えて物販のコーナーに行く。
「あ、この前グミで見た紅茶の超人の顔のティーカップがあるよ!面白い」
 あみが手に取りかけたが、
「う…予算オーバー」
 そこであみはカプセルトイコーナーへ行く。
「可動キン消しにダイキャストキン消し…そもそも消しゴムじゃないって気がするから、ツッコミ優先でダイキャストを一回だけやろうかな」
 出たのは金色の金属製キン肉マンだった。
「まさしく「金」肉マンだね」
 記念品も買ったし、三人は帰路についた。

 神戸に戻ったがまだ夕食には時間がある。解散後、あみはお茶しながらクレアさんと合流し、二人のサマーメイドデュオの映像を見ていたのだが…
「あれ?」
 プリマジではおなかの出たコーデでも、へそは見えないようになっているはずなのだが…
「クレアさん、今おへそ見えなかった?」
「光の加減でしょうかね?検証しますか?ちょうど、新色のサマメ出ましたし」
 あみはれみに事情を説明し、配信でのチェックを依頼してから、二人はプリマジに向かい、デュオしてみる。同じ振り付けのところであみのへそが見えるかどうかだ。

 曲が終わって楽屋に戻ると、れみから電話が入った。
「確かに見えますね。スクショ取ってとみやあみのフォロワーさんにも画像を送っておきました」
「余計なことするなーっ!」
「あっ、本当にわたしの所にもあみさんのおへそ、まわってきましたよ」

 あみは確認すべく自分のページを見た。そこで別のメッセージを見つけた。
「稲荷寿司の人、フレカ探しに来てくれたみたいなのに、もうなかったみたいだ…」
 あみはクレアさんと別れた後、フレカ交換ボードのところへ行った。
「えっと、わたしが挿したのはこの辺り…あっ!」
 そこにあったのはあみのフレンドカードで作ったデュオフレカだった。
「ちゃんと使ったメッセージを!すばらしい人だ!」
 あみは感動しつつそのフレンドカードと自分のものを交換し、それでデュオフレカを作ってボードに返した。
「この人に届きますように」
 そして、もう1枚フレンドカードを取り出し、ボードではない場所に置いた。
「稲荷寿司の人にここにも隠したったメッセージ送ろう」

 翌日。あみはボードに挿したフレンドカードが気になって様子を見に来たところでえいなさんに会った。
「すごく久しぶりですね」
「コロナ流行の時に自粛してたらそのまま暫く休業状態で。久しぶりに来たんですよ」
 そんな話をしていたら、初めて会うのに知っているプリマジスタがボードの前に来た。デュオフレカを作ってくれた人だ。確か、おいらんさんと名前にあったはず。
 あみはえいなさんにちょっと待っててくださいと言っておいらんさんに声をかけた。
「あの…おいらんさんですか?」
「あ、はい。そうですが?」
「この前はデュオフレカ作っていただいてありがとうございました!」
「ああ、あのフレカの…」
「せっかくだから、わたし達と3人でプリマジしませんか?」
 おいらんさんを誘うあみにえいなさんが、
「あ、私もメンバーに入ってたんですね」
「もちろん!誘おうと思ったところでこうなったからね。まぁ、コーデもバラバラだけど、楽しいライブにしよう!」
 こうして、急遽集めたメンバーで賑やかライブをして、あみは再びボードの前に戻ってきた。そして、ボードを見て
「あった!」
と言いながらあみのフレンドカードに手を伸ばすプリマジスタを見つけた。
「あの…こんにちは」
「あっ、私、いなりです。フレカのメッセージありがとうございます!お迎えに来てたんですよ」
 いなりさんはそう言って頭を下げる。
「せっかく会えたんだし、一緒にプリマジします?」
「いいですよ。今、セブンスコーデなら持ってます」
 あみもセブンスコーデは一つ持っていた。初音さんが別のセブンスコーデを持っていたはず。
「プリリズ合わせ!いいですね。その人も来れるといいですね」

 幸い、初音さんは八重さんと今スタジオに居るとのことで、すぐに合流できた。そして、セブンスコーデ3種揃い踏みのプリマジをした。

「お疲れ様でした」
 いなりさんは帰っていった。八重さんが、
「そうそう。ハッピーデニムマリン揃ったんです。初音がピンク持ってるので、合わせ、やりませんか?」
とお誘いがある。
「新色のパープルは揃ってないけどホワイトでよければ」
「パープルとピンクは似てるし、逆にホワイトのほうがいいかもしれませんよ」
 こうして、ボードを見に来ただけのはずが3連続ライブをやるあみなのだった。

 あみは帰りに食料の調達にスーパーに寄り、月見団子を見つけた。
「そっか。今日は中秋の名月だった」

 幸い、晴れていたので月は見れそうだ。あみは団子を買って帰り、れみやとみに
「月は出ているか」
とメッセージを送った。
「それ、何かのパロディー?」
「ガンダムXだよ。とにかく、今日の中秋の名月、綺麗だから見ようよ」
「急に言われてもわかりませんでした」
 何だかんだで、メンバーはそれぞれで月見を楽しんだのだった。

 翌日。とらいあんぐる☆ARTの3人は集まって
「昨日のお月様、綺麗だったね」
などと話をしながらプリマジスタジオへ向かう途中、マクドナルドに月見バーガーの旗が出ているのを見た。
「今日のランチはマクドに決まりだね」
「今、サイドメニューにエビのがあるんだよね」
「すき焼きの月見バーガーもあるみたいですね。おいしそうです」
「今日はプリマジで海賊ショーやるって集まったはずだけど…」
「まずは腹ごしらえですね!」
 3人はそのままマクドナルドに入っていったのだった。


今回のフォト
                              
今回のソロ・デュオ・チームユニット

あみ&Reoさん/とみ&モカ★さん/れみ&モモカさん


あみ&クレアさん


えいなさん&あみ&おいらんさん


初音さん&あみ&いなりさん


初音さん&あみ&八重さん


あみ&とみ&れみ




参考:キン肉マン展ネタ画像
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