第34章 コロナ

「あっ!街灯が鉄人の顔ですよ」
 れみが指さし、あみ達もおおっ!と声を上げる。とらいあんぐる☆ARTの三人はJR新長田駅から大正筋商店街に向かって歩いている。そして、駅近くの公園にそびえ立つ実物大の鉄人28号の前に来た。
「おおー大きい!」
 とみが歓声を上げた。
「東京で見たユニコーンガンダムも大きかったけど、近場でもこんなに大きなものが見れるのはラッキーだね」
「そういえば、鉄人の27号以前のもあるんですかね」
「設定ではいることになってるのかな?確か、米軍のB29戦闘機よりも一つ上の兵器だから28にしたんだって誰かが言ってたな…」
 そんなことを言いながら3人は商店街の方へ進む。
「今日の目当てに到着!」
 3人が来たのは焼肉丼の店だった。
「前に来たときは折角だからと名物のぼっかけを食べたんだけど、その後ここのメニュー写真見たんだ」
「なるほど。豚バラ肉はお肉も大盛とか出来るんだね」
「うん。この山盛り、感動的だし、次はここって決めてたんだ」
「あみらしいですね。確かに前はぼっかけ焼きそばとぼっかけ中華饅頭を食べた気がします」
「れみ、ぼっかけって何?」
「とみは食べたことないですか?長田の郷土料理で牛筋と蒟蒻を煮たやつです」
「あ、近所のお好み焼き屋さんでモダン焼きの具材に入ってるやつだね!」
 牛筋の話をしながら豚焼肉を食べるといういささか豚に失礼なランチを終えた3人。
「これからプリズムストーンに行く?」
「そうだね。ここからだと地下鉄海岸線で近くまで行けるし」
「普段は西神山手線の大倉山から結構歩きますからね」
「れみはモモカさんとデュオの約束入ってるんだっけ」
「はい。あみがモモカさんの募集に手を挙げたのがきっかけで」
 3人はプリズムストーンに来た。歩く距離は短いが、電車の本数が少ないので、西神山手線の時とそれほど到着時間に違いはなかった。
「モモカさんとの約束にはちょっと時間がありますね」
「えっ、見てみて!せんぱいプリマジスタと色違いライブイベントやってるよ!」
「じゃ、わたしととみはこれに参加しようか」
「ハッピーデニムはゆうりさんとまつりちゃんみたい。あたしはそっちがいいかな」
「わたしは新作のエンジェルバブルでえりささんの方にしよう」
 二人はさっそくエントリーした。
「こんにちは。イベントに参加してくれてありがとう」
 せんぱいプリマジスタに声をかけてもらい、二人はウキウキでステージへと向かった。

 二人がイベントステージを終えたのと入れ違いに、れみはモモカさんとのデュオのセッティングに入っていた。
「ステージ配信まで、隣のプラモデル売り場で待とうよ」
 とみがあみを誘う。
 とみはガンプラの箱を3つ並べた。
「この前あたしが作った子の系統だと、このあたりになるのかな?」
「そうだね。エールストライクは前にも見たけど同じ機体、フリーダムとストライクフリーダムはその後同じ人が乗った機体だよ」
「どれも大きなのを背負ってるね」
「だね」
「よし!名前が全部入ってるし、この子に挑戦してみる!」
 とみはストライクフリーダムガンダムのプラモデルとニッパとスミ入れペンを持ってレジに向かった。

 その頃、れみはモモカさんとステージに向かっていた。
「れみさん、かわいい!」
「ありがとうございます。ちょうど色違いをフレンドポイントで手に入れたのでちょうど良かったです」
「二人とも髪はツインテだね」
「そうですね。昔、プリチャンで『ツヨキ!ツインテールズ』って歌がありましたけど、それでやりたいくらいですね」
「あ、そうそう。れみさんもタメ語でいいよ?」
「私はもともとこういう話し方なので、タメ語みたいなものです」
「そうか…あみちゃんとはタメ語で話してるから」
「あみやとみはタメ語でしょうね」
「3人チームなんだよね。じゃ、今度お姉ちゃん達連れてくるから、次は6人でやろうか」
「そうですね。あみ達に言っておきますね」

 そして、その日の夜、事件は起こった。
 あみの電話が鳴った。とみからだった。
「どうしよう…鼻が気持ち悪くて、熱出てる!」
「今、コロナが第9波とか、インフルで学級閉鎖とかニュースで言ってるし、発熱外来のあるお医者さんに朝イチで行ったほうがいいよ」
「うん。そうする」

 そして、翌朝。あみはとみからの電話を取った。
「おはよう…コロナだったよ」
「じゃ、あとで差し入れ持っていくから、家で寝てなよ」
「うん。まぁ、熱もそこかまで上がらず、夕べカロナール飲んで寝たら今は平熱たんだけど、5日間は大人しくしてなきゃなんだよね」
「ちょうど、暇つぶしに買ったガンプラ作れるんじゃない?」
「療養中は食器とかも別で、プラスチックのものなどはアルコールティッシュでこまめに拭くといいって書いてあるけど、ガンプラ拭いたら、スミ入れとか溶けちゃうんじゃない?」
「そうだね。箱だけ眺めて悶々とするのもつらいね。ごめんごめん。ガンプラは忘れて」
「あみ達は感染してない?」
「わたしは大丈夫。それに、プリマジ内は魔法で各自に結界みたいなのがあるから感染対策は大丈夫らしいから、せんぱいプリマジスタさん達も大丈夫だと思うよ」

 あみはスーパーでペットボトル飲料やプリン等の熱でも食べやすそうなものを中心に買い込んだ。
「ほう。特上カップヌードル?ちょっと奮発するか。お見舞いだし」
 これだけはしっかり自分の分も確保しつつ、差し入れ一式を買って、自分用のカップヌードルだけ鞄に避けて、とみに届けた。
「ありがとう」
「また来るから要るものあったらラインでいいから言ってね」
「助かるよ。あ、一応後で手とかアルコール消毒してね」
「うん。またね」

 あみはそのまま商業施設に向かい、入り口でアルコール消毒をしてから、プリマジスタジオに急いだ。
 今日はプリマジスタジオ出演で私服系ミックスで出る予定だった。あみはパートナーのはにたんのTシャツをベースにしたコーデで、リハーサルを一曲こなした。
 フレンド紹介でチームメイトを呼ぶはずで、れみが私服風ミックスで到着した。
「とみがコロナで来れないから、曲はデュオに変更するとして、フレンドはどうしましょうか?」
「ミックスコーデだし、フィーアさんが来れるといいんだけど…」
 あみがフィーアさんに連絡を取ると、幸い別の収録でスタジオに来ているから、フレンド紹介くらいならOKとのことだった。
「ありがとう。急に頼んでごめんなさいね」
「いえいえ。二人ともかわいいミックスですね」
「フィーアさんのミックスも素敵です。今度、一緒にステージに立ちたいです」
「その時はよろしくお願いしますね」
「じゃ、今回の発端のメンバーにセンターやってもらうといいよ」
 あみが提案する。
「わたしはフィーアさんとは何度か一緒にライブしてるから、今回は見学するね」
 あみとれみはデュオを終えて、その日は早めに解散した。

 そして、その夜。あみの電話が鳴った。
「もしもし、れみ?どうしたの?」
「あの後、体調がおかしいので医者に行ったら、私もコロナでした」
「…揃いも揃ってか。じゃ、れみも療養だね」

 あみは次の日は二人分の食料買い出しをし、日用品を買いがてら、ダイソーに寄った。つい、おもちゃコーナーを覗くと、ガンプラの整備ドックのようなケースを見つけた。
「これは使えそう!」
 他に、ブロックのセットでロボットのものが3種類あった。番号が飛んでいるから、たまたま3種類のようだ。
「暇つぶし用に一人一つ買うか」
 必需品の買い出しとは思えない買い物が続く。

「いつもありがとうね」
 とみは買い物を受け取ると一万円札を出した。
「昨日の分と当面の分、足りるかな?」
「余れば返すし、足りなかったらお見舞いってことで。あ、これはお見舞い。好きなの一つ取って」
「プチブロック?」
「これならアルコールで拭いても大丈夫だし、ひま潰しにと思ってね」
「これ、飛行機とロボット書いてあるから二通りに組めるのかな」
「そうかもね。暇つぶしならそれにする?」
「うん。ありがとう」

 そして、次はれみ宅でも同様に。
「れみまで災難だね」
「阪神タイガースの「アレ」の熱気ではなく、コロナの熱でした」
「優勝に単語置き換える前に決まっちゃったからね。盛り上がったけど」
「買い物、ありがとうございます。でも、せっかくの特上なのに、普通のカップヌードルを長い間食べてないから、どれだけすごいか感想はコメントできないと思いますよ」
「うん。わたしもそう。ただ、謎肉が大きいのは確かだよ」
「で、このブロックですか。私が剣持った子、あみが銃持った子でいいですか」
「いいよ」
 こうして、110円のブロックロボットの担当も決まった。

 あみは配達を終えると、プリマジに向かった。ランウェイではおやすみベアの新色を試したが、ステージはバンキッシュハートレッドで上がった。
 プリマジで集めたワッチャがクリスタルの結晶に飛んでいく。
「あれ?また何か封印されてるのかな?」
 それは大会の看板だった。
「じゃ、もうちょっとがんばらなきゃ」
あみはフレンドポイントでハッピーセーラーミルクティーコーデを買って、もう一曲追加した。

 次の日、あみは初音さんとライブの約束をしていたので、プリマジに向かった。
「あ、あみさん、こんにちは」
「あれ?髪色少し変えました?」
「はい。今週のコーデにも結構合うと思うんですよ」
 今週のコーデはにゃんこコーデのみゃむカラーだ。前の三毛カラーも結構人気だった。
「せっかくだから、みゃむちゃんにも合わせライブに入ってもらいたいね。頼んでみるよ」
 そんな話をしていると、頼むまでもなくみゃむが、
「おう!いいところで会った!みゃむ様のにゃんこみゃむライブをやるんだぞ!行くぞーっ!」
 みゃむに引っ張られながら話は続く。
「そういえば、ここのところソロが多いですよね」
「うん。メンバーがコロナで療養中なんだ」
「それなら、この次、お見舞いにライブ配信しませんか?ちょうどリーメルが最近イメチェンしたからライブしたいって言ってたので呼び出してみますね」
「ありがとうございます!」
 そこへ、
「あの、私でよければ協力しましょうか?」
 通りかかったうるさんが声をかけてくれた。
「ありがとうございます!」
「じゃ、楽屋で待ってますね!」
 うるさんはそう言って楽屋に向かった。
 あみはリーメルさんが来るまでの間、初音さん、みゃむと一緒ににゃんこライブをした。時間がありそうなので、あみはそのままアンコールステージもこなした。

 その頃、楽屋のモニターの前にうるさんが座っていると、
「あれ?この前あみさんの賑やかライブに参加してた人?」
 リーメルさんが声をかけた。
「はい。あなたは?」
「今、そこに出てる初音のチームメイトですよ。あみさんのチームメイトへのお見舞いライブやるからって呼び出しがあってね」
「それ、私も参加するんです」
「そうなんですね」
 二人の会話に、楽屋に入ってきたプリマジスタが反応する。
「私は、さっき話のあったあみさんのチームメイトとライブの約束していた者なんですが」
 モモカさんだった。
「そういう事なら、私も参加したいです」
「いいんじゃないですか?あみさんも喜ぶと思いますよ」

 あみと初音さんが楽屋に戻ると、いつの間にかお見舞いライブチームが出来ていたのだった。
「みんな、ありがとう!モモカさんも!」
「早く元気になって、約束のライブしなきゃだもんね」
 あみはれみ達にライブ配信すると連絡を入れた。
「もう、さっきのにゃんこから見てるよ」
「療養中は暇ですからね。私も見てました。皆さんによろしくお伝えください」

 あみ達5人はお見舞いということで、全員ドレスを着ての華やかライブをした。
「お疲れ様!ありがとう」
 参加者にあみが挨拶を述べていると、とみとれみからメンバーへのお礼のメッセージが届いた。みんなはあみのスマホを見る。とみの感謝の言葉が表示されている。
「喜んでもらえて良かったです」
「あれ?追伸がありますね?」
 初音さんに言われてあみが画面をスクロールすると…
「げっ!ナニコレ?」
「初音さん、あとであみをきつく叱っておきますね」のメッセージに添えられていたのは、イリュージョン中に柱に乗って上昇する場面のスクリーンショットだが、遠近法を無視した角度的に見れば、あみが初音さんのスカートの中を覗いているように見える。
「うん。覗いてますね」
 リーメルさんが笑いながら言う。もちろん、たまたまそう見える珍百景だとわかった上でいじっているのだが。
「責任取ってもらおうかな〜」
「もう…初音さんまで!」
 爆笑が起こった後、今度はれみのメッセージを表示する。
「あ、こっちにも追伸があるみたい」
 モモカさんが指摘してスクロールさせると、
「後ろのモニターでも判るくらいのハイキックしちゃだめですよ」のコメントと共に、あみのあられもないスクリーンショットが添えられていた。

「あいつら…おとなしく寝てろーっ!」
 あみの絶叫と参加者の笑い声を楽屋にこだました。


今回のフォト
                                                    
今回のゲストさん

フィーアさん


今回のソロ・デュオ・チームユニット

まつり&とみ&ゆうりさん


あみ&えりささん


れみ&モモカさん


あみ


あみ&れみ


あみ


あみ


初音さん&あみ&みゃむ


あみ/初音さん&うるさん/リーメルさん&モモカさん




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