第16章 ひなまつり、ホワイトデー

「♪今日は楽しいひなまつり〜♪」
 あみは楽し気に歌いながら甘酒をお盆に三つ載せた。缶型の紙パックのもので、容器も捨てやすく重宝している。
「そういえば、小学校の頃、男子がその歌の替え歌で、「あかりを点けましょ爆弾に」とか歌ってなかった?」
 とみが話題をふる。あみがすかさず、
「そうそう。うちの学校、フルコーラスの替え歌だったし」
「えー、マジで?どんなの?」
「んーと、断片的にうろ覚えだけど「お内裏様とお雛様、二人並んでスケベな目」とか「お嫁にいけない姉さま」とか「少し毒でも盛られたか、青いお顔の右大臣」とか「お金を抱えて首絞めて、今日は私の強盗デビュー」とか…」
「ひどすぎる替え歌ですね」
 れみが飽きれたに言う。
「そういえば、お内裏様は上の段の畳に座ってる偉い人、お雛様は象った人形のことだから、実は二人ともお内裏様でお雛様だってテレビで言ってました」
「そうなんだ」
 あみはそう言いながら、ひなあられをお皿にザラザラと出す。醤油味や海苔塩味のおかきのあられの中に、チョコレートコーティングや黄色いポン菓子のあられが混じっている。
「子供の頃って、この黄色くて甘いレアあられの争奪戦だったなぁ」
 あみが振り返るように言うと、れみが、
「小学生の時、浦和から来た転校生の子から聞いたんですけど、おかきメインは関西風で、関東ではこのポン菓子あられが何色か入っているだけのが主流だそうですよ」
「えっ!関東にはそんな夢のようなひなあられが!」
 驚くあみに、とみが
「でも、全部だとレアじゃないね」
「それもそうか…」
「確かに、その転校生の子、おかきのほうを珍しそうに食べてましたね」

「せっかくひな祭りの歌が出たから、節違いゲームしない?」
 とみが提案する。
「何それ?」
 とみは4枚の紙に「ひなまつり」「どんぐりころころ」「おもちゃのマーチ」「水戸黄門」
と書いた。そして裏返してシャッフルしてから、一番上をめくった。
「水戸黄門?」
「じゃ、あたしからやってみるね」
 とみがお手本として2枚目をめくる。「おもちゃのマーチ」だった。
「♪人生楽ありゃ苦もあるさー♪」
 とみはおもちゃのマーチの節で水戸黄門のテーマを歌った。
「とりあえず、1番をつられずに歌えばOKってルールだよ」
「じゃ、次はわたしね」
 あみがめくると「どんぐりころころ」が出た。
「♪やっとこやーっとこくりだした〜♪」
 どんぐりころころの節でおもちゃのマーチ、意外と違和感がない。
 次にれみが「ひなまつり」を引き、
「♪どんぐりころころどんぶりこ〜♪」
 ひなまつりの節でのどんぐりころころは違和感バリバリだけど、3人ともつられて元の歌にならずに歌い切った。とみが、
「2週目、あたしが歌ったらシャッフルだね」
「♪あーかりーを、つーけーまーしょ、ぼーんぼーりーに〜♪」
 水戸黄門のテーマの節でひなまつりを歌う。
「♪今日はたのしい、ひーな、まーつーりーー♪」
「あんまり楽しそうじゃない歌になっちゃったね」

 このようなカオスなひなまつりパーティーが終わって。
「わたしは今、ひなまつりTシャツ着てるけど、プリマジでひな祭りライブやろうにも、お内裏様のコーデはあるけど、お雛様はまだ投票中なんだよね」
「白とピンクの着物、可愛いから着てみたいけど、イメージは赤い着物だし悩むね」
「いずれにしても、今日はまだ手に入らないし、一旦解散だね」

 ただ、あみはなんとなく未練があったので、一応、お内裏様のコーデを持って散歩に出た。と、声がかかる。
「あみ!ひなまつりのTシャツ、似合ってるじゃん!」
「あ、ひな先輩!」
「この弥生ひな、名前からして今日はプリマジするしかないじゃん」
 ひな先輩は赤いお雛様コーデを持っている。運営だし、モデルもしてるし、持ってても不思議はない。
「あ、わたし、お内裏様コーデあるので、一緒にどうですか?」
「お、いいじゃん、いいじゃん!」
 あみは思いがけず、ひな祭りライブをすることになった。

 さて、お雛様コーデを待つ間、あみはどうしたものかと考えていたら、ジョイントライブのお誘いが届いた。
「あっ、モモカさんからだ!」
 幸い、その日はとらいあんぐる☆ARTもフルメンバー参加できる日だった。

 当日。あみたち3人は集合場所に向かった。モモカさんとモカ★さんの他にもう一人いる。
「ライムです。初めまして」
「初めまして!じゃ、3人ずつのユニットですね!」
「そういえば、コーデのテーマ、決めてなかったような…」
「じゃ、あえてテーマを決めず、賑やかライブでいきましょう!」
 あみはフラワーブロッサムブルー、れみはデニムスーツピンク、とみはショートケーキ、モモカさんはステンドグラスホワイト、モカ★さんはにゃんこみけ、ライムさんはハーネスルックレッド。見事に統一感なく賑やかなライブになった。
「こういうのも面白いですね」
「でしょ。わたし達はよくこういうのをやるんですよ」

 モモカさん達とのライブが楽しかったので、あみはジョイントライブやりたい!と思っていたら、そのオーラを感じたのか、声がかかった。
「あみさん、お久しぶりです」
「えーっと?」
 あみにしては珍しく、一発で誰だか判らなかった。
「ふふ、イメチェン成功ですかね。MAGI☆Pですよ」
「あ、ラヴィットさん達のチームのプロデューサーの!随分イメージ変わりましたね」
「今は新人のアルメガと「Synchro Nizical」ってデュオユニットで活動してるんです。これからライブなんですけど、あみさん、ゲスト参加しませんか?」
「えっ、もちろん!喜んで!」
 あみは楽屋でアルメガさんと顔合わせした。
「はじめまして」
「アルメガさんもこの前話してたラヴィットさん達のPVに出てるんですか?」
「ええ、でも新人なので、先輩たちみたいにメインじゃなく、話の中に出てくる「悲しみの存在」の役で、最後にちょろっと出るだけなんですけどね」
「うーん、観てみたいな、そのPV」
「へへへ、撮影は少しずつ進んでいるから楽しみにしていてくださいね」
 ちなみに、今回は3人とも綺麗なドレスで揃えたライブとなった。

 そうこうしているうちに、お雛様コーデが解禁された。ひな先輩の着ていたものとは色違いだ。
「じゃ、さっそく、今からでもライブしよ!」
 あみはれみにお内裏様コーデを渡しながら言う。
「今日はとみは居ないですが…」
「まぁ、それは仕方ないよ」

 あみはさっそくお雛様にコーデチェンジした。ポーズを決めると、タントちゃん達が拍手してくれる。
 と、れみがつっこむ。
「あみ、意外と前の丈短いから、見えちゃってるよ!」
「えっ、マジで?タントちゃん、わーい、って拍手してないでちゃんと教えてよ!もう!」

 ちょっとしたハプニングはあったものの、ひな祭りライブも終わり、あみとれみはショッピングモールをブラブラと歩いていた。
「あっ、もうホワイトデーコーナーができてますね」
「去年、一口カヌレの真ん中にジャム載ったの、こんな所で見つけたけど、おいしかったよ」
「自分で食べたわけですね」
「バレンタインもここ最近、友チョコとか自分へのご褒美チョコがメインになってるし」
「あ、あれなんて面白そうじゃないですか?」
 色々なフレーバーの個包装チョコを星の形のパッケージに詰めて量り売りするというものだった。
「いいね!買って帰って、とみのいる時に3人で食べよう」
「それはいいですが、今年はホワイトデーライブやるにも新作コーデ、存在を忘れるくらい持ってないですね」
「そういえば、アクセしか持ってなかった気がする」
「バレンタインも間に合わずにまつりさんにゲスト参加してもらいましたしね」
「そうだよね…てか、当日予定は大丈夫?」
「えっと…あ、暇なのあみだけですね。私もとみもダメみたいです」

 そして、とうとうホワイトデー当日。
「フレンドポイントのチョコミント2着目、やっと手に入ったし、これでやろうかな…」
 そう考えながらプリマジに来ると、イベント告知が貼ってあった。
「運営専属プリマジスタのホワイトデー!」
 専属プリマジスタとホワイトデーデュオができるというものだった。
「これだ!」
 あみはさっそく申し込んだ。
「ご利用ありがとうございます」
 ホワイトデークラシックコーデのたまきさんが来てくれた。
「おひさしぶりです。ミルキーレモンのイベント以来です!」
「あ、あの時に参加してくれてたんですね!それじゃ、よろしくお願いしますね」

 3月イベントはひな祭りといい、ホワイトデーといい、他力本願デュオで当日を乗り切るあみなのだった。


今回のフォト
                        
今回のソロ・デュオ・チームユニット

ひな&あみ


あみ&とみ/れみ&モカ★さん/モモカさん&ライムさん


MAGI☆Pさん&あみ&アルメガさん


れみ&あみ


たまきさん&あみ


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