第10章 あみのお正月

 あみはオーブントースターの窓をのぞき込んだ。
 アルミホイルの上で餅がぷうーっと膨らんだ。と、隣の電子レンジがチンと鳴る。
「よし」
 あみはお椀にインスタントの味噌汁の素を入れ、電子レンジから取り出した耐熱ガラスポットのお湯を注ぐ。軽く混ぜた後、そこに焼きあがった餅を入れる。
 テーブルには黒豆、昆布巻き、田作り、なますの真空パック四種盛りのおせちを開封して盛り付け、板かまぼこを添えた皿が載っている。
「一応、お正月だし、おせちとお雑煮は食べないとね」

 あみは極めて簡易な正月料理を食べると今しか着ることのないニューイヤーTシャツを着て出かけた。
「さて、プレマジ初めにでも行こうかな」

 プリマジに着くと、今年も3つのポチ袋から一つ選ぶとワッチャが貰えるお年玉があった。そして、買い物は紅白のコーデ投票の結果のコーデを買うことにした。
「赤が勝ったみたいね」
あみはそれに着替えて、雑誌についていたチケットを出した。ちゃお、ぷっちぐみ特設ステージでプリマジができる。今回のバックダンサーはテクノマジカルの二人だ。
「あみちゃん!あけましておめでとう!」
「あみ、今年もよろしく」
 まつりとあうるが出てきた。お揃いのコーデを着ている。
「あけましておめでとう!まつりちゃん、あうるちゃん!今年も楽しいステージ、いっぱいやろうね!」

 その言葉とは裏腹に、あみは数日の間、ひたすられみに貰った食玩ガンプラに加えて、別に買ったガンプラを作って過ごしていた。
「通販で見つけて、やっと届いたんだよね」
 あみが作っているのはデミトレーナー。実習用の機体を改造したもので、以前にキャラパッケージのマシュマロを買った、マシュマロみたいなおだんごヘアのキャラ、チュチュが載っている機体だ。

 そして、プラモデル三昧の日々を終えて、ふと気づく。
「あ、れみ達いないから、今年初詣してないや」
 あみは神社にお参りに行くことにした。初詣を終えると、ついプリマジに足が向かう。

「あけましておめでとう、あみ」
 あみに声をかけたのはジェニファーだった。
「ジェニファー!あけましておめでとうございます!」
「エレメンツコーデのニューイヤーバージョンが出たわ。一緒に着てプリマジしない?」
「え、もちろんやります!喜んで!」

 あみは晴れ着のようなカラーリングのラブエレメンツ、ジェニファーは初日の出のようなサンシャインエレメンツだ。
「うわー、なんか実にめでたい感じ!」

 こうして、他メンバーが不在な中での新春ライブが実施されることとなり、あみの正月は終わった。

 そして、そろそろ帰ってくる二人と何かしたいなと考えながらはにたんを抱えてプリマジスタジオ内を歩いているとMCのみゃむ、チムムに会った。
「おう、あみ!キャラクター総選挙をするぞ」
 みゃむが示したボードには、かつてグランドフェスでユーフォリアレビューをした六人に加えて、ジェニファー、みゃむ、チムムが入って9人がエントリーされている。
「この中で、得票数上位3人が新曲のボーカルをやるチム」
「もう投票は始まっているんだぞ」
「あみも投票するチム」

 みゃむもチムムもじっとあみの顔を見ている。
 当事者が二人も目の前にいると、入れにくい…
「うう…どうしようかな」
 と、下からの視線も感じた。はにたんが見上げている。

 よし、ここは。

「じゃ、はにたんを貸してくれてるみるきちゃんに一票かな」
 少しがっかりした表情のみゃむとチムムにあみはこう言った。
「二人とは一緒に3人曲やりたいし、ね」
「そっか」
「じゃ、今から3人でプリマジするチム。行くチム!」
「え、いまから?勿論いいけど」

 半ば呆気にとられたままステージに向かうあみなのであった。


今回のフォト
                
今回のデュオ・チームユニット

あうる&あみ&まつり


ジェニファー&あみ


チムム&みゃむ&あみ


前へ表紙へ次へ