第9章 年越し

「ううー、おのれコロナ!今年だけでなく来年まで!」
 あみの目の前のテレビではニュース番組が流れている。コロナ第8波で感染者増と言っている。そのせいで新年会が中止になり、れみもとみも帰省し、あみは年末年始独りになってしまったのだ。
 あみは怒りながらスナック菓子の袋に手を突っ込んだ。今日のおやつはヤマザキ・エアリアルのフレッシュトマト味だ。以前食べたしお味、チェダーチーズ味同様、ガンダムのキャラクターの描かれたパッケージだ。劇中でトマトを栽培していたシーンが描かれており、ある意味説得力がある。
「へぇ、意外とこれもおいしいな」
 あみの目の前のテレビではニュース番組が続いている。
「ウクライナの戦争もコロナも続いてるけど、最近ニュースの扱い、小さくなってるなぁ」
 確かに、大きなニュースではあるものの、なんとなく日常化してしまっている感じはある。それよりは昨今の物価高のほうが庶民には重大なニュースなのも事実という気もする。
 そんな中、スポーツやエンタメ情報はしっかり放送されているのだが、今日はその中の一つのニュースがあみをくぎ付けにした。
「リアルプリマジスタジオがオープン?」
 全国にあるプリマジ会場の一部で、プリマジスタジオの収録のあるところではスマホでQRコードを読むと、限定コーデを着れるとのことだ。
「おお!さっそく行ってみよう!」

 あみはスタジオでQRコードを読み込んだが、水色の画面が表示されたまま何も起こらず、周りに人もいない。
「ここはまだ未対応なのかな?」
 あみは諦めたが、せっかくなので普通にプリマジをすることにした。
「あまね様がこの前着てた服、かっこいいから着てみたかったけど、やっと揃ったし、今日はこれでやってみよう」

 翌日、あみは再びリベンジしようと出かけたが、万一のためめちゃマジ注目コーデのハートバルーン新色も持ってプリマジスタジオに向かった。
 向かう途中でクレアさんに会った。
「あ、こんにちは!」
「こんにちは。今からプリマジですか」
「ええ。でも、昨日リアルプリマジスタジオのQR試したけど上手くいかなくて」
 あみの話を聞くとクレアさんは、
「スマホの位置情報、オンになってます?」
 と訊いた。あみが見てみるとオフになっていた。
「位置情報オフだとダメみたいですよ」
「そうなんだ…ありがとう、クレアさん!」

 あみはさっそくスタジオのQRコードをスキャンした。
「遊びにきてくれてありがとう!特別なプレゼントコードをあげちゃうんだお!」
 コスメティックフラワーコーデの新色を着たみるきが出てきてプレゼントコードをくれた。そういえば、みるきは運営の仕事で忙しいと言ってたな…
「ありがとう、みるきちゃん!」
 あみはコードを使い、みるきとお揃いになる新作コーデでスタジオランウェイを歩き、そのままハートバルーン新色でライブをした。
 あみは隣のブースが空いているので油断して、
「じゃ、次はさっきのコーデで…」
 あみがエントリーしようと100円入れたところで背後から声がかかった。
「あの…USB使いたいので待ってたんですが」
「えっ?あ、ごめんなさい…どうしよう」
 あみが慌てふためいていると、背後にいたプリマジスタの子があみに100円玉を渡し、自分の100円玉を入れてエントリーした。
「これでいいでしょ?」
「あ、なるほど!」
 あみは慌てついでに手元にあったフレンドカードを差し出し、
「あの、お詫びといってはナニですが、このフレカ、フレンドポイントの足しにでもしてください!」
 すると、そのプリマジスタはあみに自分のフレンドカードを出して」
「それなら、一緒にデュオしますか?私はゆき。よろしくね」
「あみです。お詫びになってない気もするけど、よろしくお願いします。曲はどうします?」
「私はドレス系ミックスだから、『奇跡の降る』とかはどうですか」
 あみはそれなら…と、揃ったばかりのジュエリーサテンシルバーコーデを選んだ。細身のロングスカートだけど肩に透け感もあり、ゆきさんのドレスと合わさってなかなかゴージャスなデュオライブになった。
「なんか…ありがとうございました。年の瀬の音楽番組みたいになりましたね」
「そうですね」

 このデュオの影響なのか、モモカさんから
「新しいフレカ作ったから一緒にどうですか?」
 とお誘いが来た。あみはそれなら今度はゴールドにしようかな、と考えたが靴がない。
「そっか、靴だけ出なかったんだっけ」
 以前、グミでホワイトが出ていたのを思い出して、それを探そうと思った時、ドアチャイムが鳴った。
「お届け物です」

 届いたのはれみからの小包だった。中を開けるとガンダムアーティファクトと書かれた食玩とコーデブックが入っている。あみは同封されている手紙を開いた。

「あみ、ちょっと残念なお知らせです。
 家族が職場でコロナの濃厚接触者になったので、大事を取って私もこっちに暫く居ることになりました。
 ちょうど、スーパーでガンプラの食玩を見つけたので、私のいない間の暇つぶしにどうぞ。ちっちゃいけど本格的なプラモデルみたいですよ。あと、私の手持ちのコーデも入れておくのでよかったら使ってくださいね」

 れみはジュエリーサテンゴールドの靴を持っていたはず!これでモモカさんとのデュオのコーデは決まった。  あみはプリマジに行くまでに一つ作ろうと食玩を開けた。手のひらサイズのランナーに部品がぎっしり入ったものが4枚ある。
「うわ…部品小さい!これ、本当に人が組み立てること想定してるのかな?」
 結局、手のひらサイズのガンダムが完成したのは出かける直前だった。単色だからキンケシみたいだが、このサイズに塗装は事実上無理な気がする。そして、これがまだ4つある。れみは売っていた5種類全てを贈ってくれたのだった。
「年末年始、これ作るだけで過ぎていきそうだわ…」

 さて、あみはプリマジに到着した。モモカさんはエレガントゴシックピンクなので、色違いにしようかと思ったが、色違いの通常分はヘアアクセしか持っていないし、紫のものはモーリーファンタジー限定だったので全く持っていなかった。結局、用意していたジュエリーサテンゴールドコーデで、前回とのシリーズもののようなデュオライブにすることにした。

 そして、いよいよ年の瀬。去年は赤と白の色違いコーデで連続ソロをする「ひとり紅白年越しプリマジ」をしたが、今年はどうしようか迷っていた。と、Tシャツショップで紅白Tシャツを見つけた。
「よし。今年はこれで年越しライブをしよう」
 ちょうどプリマジ納めはスタジオ収録だ。楽屋で支度をしていると、よつは☆★♪さんがいた。
「お久しぶり!」
「あ、あみちゃんだ」
「今日のフレンドで呼んでいいですか?」
「いいよ。来年は卯年だから、ウサギのコーデということだし、コーデはイースターバニーでいい?」
「もちろん」
「あれ?声でもしかと思ったけど、あみさん?」
 あえんちゃさんも楽屋にいて、あみたちの話の輪に加わった。
「じゃ、フレンド二人目はあえんちゃさんにお願いしようかな」
「リトルバロンの黒を予定してたけど、アクセだけイースターバニーブラックにして黒ウサギにしましょうか?」
「それ面白そう!」それで3人ライブにしよう!」

 こうして、あみのプリマジ納めの内容は確定した。

 みなさん、よいお年を!


今回のフォト
                  
今回のゲストさん

クレアさん


今回のソロ・デュオ・チームユニット

あみ


あみ


ゆきさん&あみ


モモカさん&あみ


よつは☆★♪さん&あみ&あえんちゃさん


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