第12章 ハロウィンの奇跡

「すごかったね、ユーフォリアレビュー!」
「ですね。私たちも協力出来てよかったですね」
 あみとれみはまつり達のヘブンズ化六人ライブの中継を見終わって感想を述べあっていた。
「あれ?ジェニファーの隣に誰かいるよ?」
「本当ですね。みゃむちゃんのような人の姿のマナマナのように見えますが」
 れみの言葉を近くで聞いていた眼鏡の男性が二人の方を見る。どこか、あうるに似た面影がある気がした。
「あれは、ジェニファーのマナマナ、リューメ。ジェニファーと引き離され、隔離されていたんだ」
「詳しいですね」
「オメガ社の人間なのでね…」
 なんとなく、今回の事件に負い目を感じているようだ。実際、彼はあうるの兄で、今回の騒動の原因を作った張本人なのだが、その事をあみ達は知らない。
「そういえば、ジェニファーのプリマジは無人ドローンが飛んでるだけで、マナマナが居なかったな」
「リューメのいない悲しみが、エレメンツと融合し暴走したのが今回の事件なんだ」
「じゃ、わたしがエレメンツコーデを着てあの剣舞をしても…」
「何も起きないよ。おっと、少し喋り過ぎただ。今の話は内密にしてくれないか」
「はぁ、わかりました…色々教えてくれてありがとうございました」
 あみが礼を言うと、その男性は手を少し挙げて応えながら無言で去って行った。

「あみ、見てください!」
 れみが声を上げた。
「どうしたの?」
「コーデが復活してます!」
 コーデブックを開くと、確かにコーデが復活している。
「せっかくだし、二人でプリマジする?」
「ですね。ちょうど先日ロイヤルチェックが揃いましたが」
「そうそう。ハロウィンまでにハロウィンコーデ出そうと頑張ったら、これが先に揃ったんだっけ」
「はい。これまでは雑誌付録の色違いだけでした」
「エルザさんが珍しいって驚いてたけどね」

 あみ達がプリマジしようとした時、みゃむが言った。
「なぁ、お前ら」
「どうしたんですか?深刻な顔ですね」
「一緒にプリマジするのはこれで一旦おしまいだ」
「えっ?」
「この前から魔法を使いすぎて、暫く魔法界に戻って休養することになったんだぞ」
「えっ?大丈夫なの?」
「あみやれみとも楽しくプリマジできたからな。あたしが最後に一緒にプリマジしたいんだ。大丈夫。このみゃむ様に不可能はないんだぞ!」

 曲が終わって、コーデメイツたちが頭上を舞い、コーデのカードがみゃむを経由して届く。
「あ、ハロウィンのコーデ、揃った!」
「みゃむちゃん!最後のプレゼント、ありがとう!」
「お前らも元気でな!」

 二人は帰り道、海沿いの道を歩いていた。
「あれ?みゃむちゃん?」
 波打ち際でみゃむがまつりの持ち歌を泣きながら歌っていた。聴衆はただ一人、まつりだ。あみ達は気づかれないようその場を後にした。
「みゃむちゃん、まつりちゃんの家に住んでたんだよね」
「一番淋しい思いをしてるのはあの二人なんでしょうね」

 プリマジできない日が暫く続き、街はハロウィン一色になった。
「ハロウィンですね」
「かぼちゃスイーツとか買ってうちでパーティーでもしようか」
 そんな話をしながらあみはれみと朝から一緒にスーパーに行った。
 お菓子売り場でれみが、
「じゃ、これ買って組み立てて飾りましょう」
 何やら食玩コーナーで見つけてきたらしい。
「仮面ライダーのフィギュア?主人公は狐のギーツだよね。なぜに牛?」
「このバッファ、ゾンビの鎧着てるんです」
「なるほど。確かにUFJにもハロウィンにはゾンビ出るもんね」
「それはUSJ…って、それ、何年か前のM1のかまいたちの漫才ネタじゃないですか」
「へへ。知ってたか…って、あれ?」
「何、話をそらそうとしてるんですか?」
「いや、さっきクレアさんっぽい人通らなかった?」
「そうですか?」
「うん。あ、ついでにギーツとタイクーン、赤い狐と緑の狸ってインスタント麺みたいだから、ついでにそれも買っておこうよ」
「実際、CMあるんですよね。いずれにしても、どうせ後で欲しくなりそうですからね。一つ500円だから結構出費かさみますが…」

 二人は買い物かごに三人のライダーフィギュアを入れると、クレアさんを探してみた。
 彼女はシチュー売り場にいた。
「おはようございます。今日はシチューですか?」
「あ、あみさん達。おはようございます。いえね、このシチュー売り場…」
「クレアおばさんのシチューが4種類並んでますね」
「名前が同じだからつい見ると気付いたんだけど、パッケージ見ると「おいしくなーれ」4連発になってるでしょ」
「はは、確かに」
「そこまでおいしくなるのかなって考えたら面白くなって」
「なるほど」
 そう言いながら、あみがその上の棚を見る。
「あれ?」
「どうしました?」
「ここ、世界のスープの棚、ブイヤベースはあるのに今日ボルシチがない!あの辺が戦場だからかな」
「まぁ、ルーの原材料の小麦粉の高騰とかもあるでしょうしね」
 クレアさんが尤もな返事を返す。
「わたし達はブイヤベースにしようかな。鮮魚コーナーに鱈があればおいしいのが作れるし」

 あみ達はクレアさんと別れて買い物を済ませてあみの家に行き、あみが冷蔵庫に鱈やミックスシーフード、カボチャケーキ等を入れている間に、れみが仮面ライダーを組み立て始めた。

「やっと3体とも出来たね!」
「シール貼るのに想像以上に時間がかかりましたね」
 ライダー達を並べ、カボチャの置物を出したりしたら、昼食がてら二人はまた出かけた。
「今回はそんなに出歩かないかな」
「韓国では将棋倒しで亡くなった人もかなりいたそうですからね」
「気を付けないとね」
「でも、せっかくハロウィンコーデが揃ったからプリマジしたいな…」
 二人は自然とフレンドパークに向かった。そして…

「おう!お前ら、元気してたか!」
「みゃむちゃん?」
「魔力はもういいんですか?」
「だいたい回復したんだぞ。それに、今日はハロウィンだから、魔力が至る所に満ち溢れてるんだぞ。今日1日はプリマジできるぞ!」
「本当?嬉しい!」

 あみのその声が大きかったのか、そこにいた6人組のプリマジスタが振り返った。
「あ、ごめんなさい。つい興奮して…」
「いえいえ、プリマジするって聞いたので。たまたまUR合わせできる人いないかなって思っていたので」
「あ、今、めちゃスコが確か、URコーデのエレメンツカラーでしたよね!わたし、今からショップ行くのでぜひやりましょう!」
「今はハートフェザーラブだから、私がお相手させてもらう事になりますね。私はラヴィット。よろしくお願いします」
「あみです。こちらこそよろしくお願いします」

 こうして、あみはたまたま知り合ったラヴィットさんとペアライブを楽しんだ。
「今日は楽しかったです。また、機会があればメンバーの皆さんともライブしたいですね」
「その時はよろしく!」

「あみ、ペアライブに夢中で忘れてませんか?」
 れみの問いかけに
「何だっけ?」
「思い出さないなら、次は私の番ですよ」
 れみは街角ランウェイでハロウィンのボードにハロウィンコーデで登場した。
「あ、そのコーデ使うの、忘れてた!」
 れみはライブはお気に入りのミックスコーデでライブした。
「じゃ、最後はあみがしめてくださいね」
 れみに言われるまでもなく、あみはハロウィンコーデでステージに立った。

「トリック、オア、トリート!」


今回のフォト
              
今回のゲストさん

クレアさん


今回のソロ・デュオ

あみ&れみ


ラヴィットさん&あみ


れみ


あみ


前へ表紙へ次へ