最終章 駆込〜終演

 あみは引っ越しが決まって、あわてて引退を決意したものの、実際は引っ越しまでに一月ほどあることを知った。
「ははは…そこまで焦ることもなかったか」
 あみは寮から外に出た。近くのセブンイレブンに入る。最近CMで一口サイズのカヌレ風のお菓子があるようなのでそれを試しに買おうとしたのだった。
「うーん、ここには置いてないか…」
「あれ?あみさん…でしたっけ」
「確か…えいなさん」
 そういえば、来る途中にモニターでプリマジしてたような。 「こんにちは。さっきのプリマジ、見かけましたよ」 「あれ、お気に入りのミックスコーデなんですよ。あみさんはお買い物ですか?」
「うん、今日、まつりさんたちのエキシビションプリマジの中継見る時のお茶菓子買おうと思って」
「あ、私も姉と見ようと思ってます」
「お姉さんがいるんですね」
「ええ、双子なんですけど、全然プリマジに興味ないっていうか、最初は私がやるのも反対みたいだったんだけど、なんとか誘おうかなと思って」
「そうなんですね」
「どんなお菓子を買う予定ですか?こんなのとか」
 カップに入ったツイスト状のカリカリコーンが棚にある。チーズ味もコンソメ味も安い割にはけっこうおいしい。
「ははは。普段はよくそれとかチョコ棒とか買うんですけどね。今日は流行りのカヌレもいいかなと思ったので、一口サイズのやつ探しにきたんですけど…確か、カヌレットとかって名前だったと思うけど…置いてないみたい」
「せっかくなら、ケーキ屋さんとかで本物買ってもいいんじゃないですか」
「そうですね。エキシビション観戦だから気合入れて本格的なの食べようかな」

 あみはえいなさんと別れた後、近くのパティスリーでカヌレを買って帰ったのだった。
 そして、それを食べながらエキシビションを観るべくテレビをつけた。色とりどりのマーチングコーデを着たトッププリマジスタ5人の共演だ。
「あっ、センターにいるの、みるきさんだ」
 あみはまつり、ひな先輩、れもん、あまね様とは会ったこともあり、プリマジを何度も見たのに、このみるきってプリマジスタだけは会ったことがなかった。雑誌で見かけてかわいい子だなと思ったものの、どうも縁がないようだ。

 そうこうしているうちに引っ越しの日が近づいて来た。
 あみがプリマジ中継をしていると、あうるという新人プリマジスタがいきなりすごいワッチャを発生させているのを見かけた。
「すごい新人さんが出てきたなぁ。まぁ、去り行くわたしには関係ないかもね」
 自分が去っても、次々と新しいプリマジスタがデビューしていく…
 そう思いつつ、あみは流れていく告知に目を留めた。
「あっ、今回のエレメンツコーデフェス、1日でがんばればギリギリ参加できそう!」
 あみはさっそくエントリーしたが、今回は前回のようにURコーデの色違いで挑もうにも、プリマジ回数が減ってるので揃っていない。
「そういえば、前のミックスコーデコンテストで青系でアクセ決まらず没にしたのがそのまま幾つか残ってたはず。よし。今回は青コーデで1日で突っ走ろう」

 そして当日。私服コーデも青系でまとめて出発したら会場前であまね様に会った。
「あ、あまね様!また会えましたね!」
「ごきげんよう!あみさんがフラッシュエレメンツコーデフェスに出ると聞きましてね」
「え!来てくれたんですか!でも、ちょっと緊張しちゃいます…」
「ふふ…あみさんなら大丈夫ですよ。今回のフェスも素敵なパフォーマンスを期待していますよ」
「ありがとうございます!わたしのプリマジ見ててください!」

 あまね様の応援を受けて、つい浮かれたあみはそのままのコーデで1回戦に出場したが、無時次に進めた。そして、2回戦に向かう途中で、初めてみるきを見かけた。実際実物を近くで見ると、かなりかわいい!
「はっ、はじめましてっ!みるきさん!わたしっ、あみっていいます!!!」
「やほ〜、あみちゃん。はじめまとてだお〜☆「さん」はいらないお!最近がんばってるみたいだね。あみちゃんはこれからフラッシュエレメンツコーデフェスお?」
「はい!そうです!みるきちゃん、わたしのプリマジ、見ててください!」
「がんばるんだおー」
 そう言ってあみを笑顔で見送るみるきの心の声は…
(新人プリマジスタには負けないっ…!)
 あみはなんとなく背後の視線に冷たいものを感じた。一部のSNSで「みるきは実は腹黒くて、あのかわいさもあざとい計算によるもの」という書き込みを見て、まさか、単なるやっかみ半分の噂だと思っていたけど、実際は…?
 考えても仕方ない。合宿の配信で見かけた限りでは、料理も出来て面倒見も良さそうだった。プリチャン世界で知り合ったあんなのように、知れば知るほどいい人なのかもしれないし。今はプリマジに集中だ。今回は青いミックスコーデだが、アクセが決まらず没にしたものだった。とりあえず、アクセは今付けているものをそのままで行くことにした。
 兎にも角にも3回戦に進むと、先日見かけた新人のあうるに会った。まさかもう知り合えるとは!
「あうるちゃん、こんにちは!はじめまして!!」
 すると、あうるは意外にもあみのことを知っている様子だった。
「…ウン。知ってる。今までずっとあなたのプリマジ見てたから。あみはこれからフラッシュエレメンツコーデフェスだね。…見に行く」
「知っててくれてありがとう!わたしのプリマジ見てほしいな!」
「あみのプリマジデータを集めるために必要。…それだけ」
 そういえば、あうるの連れているマナマナのタテジマはフクロウ型ロボットみたいだ。魔法の世界では珍しく、本当にデータ分析をしているのだろうか?
 3回戦も青いミックスコーデなので、げんを担いでアクセはそのままでクリアし、無時フラッシュエレメンツコーデを手に入れた。
 会場を出たところでまつりに会った。
「あみちゃんのフラッシュエレメンツコーデフェスとっても良かったー!たくさんワッチャワッチャしちゃった!エレメンツコーデフェスといえばアンコールステージ!」
「うん!フラッシュエレメンツコーデを着て特別なキャッチコピーをゲットだね!」
「その通り!あみちゃんのアンコールステージ、楽しみにしてるね!」
 1日で4曲走るのは少々ハードだが、エレメンツコーデは着てみたい。

 フラッシュエレメンツコーデは電光のエフェクトがかかる。
「プリパラのサイリウムコーデやプリチャンのイルミナージュコーデみたいだな…」
 イリュージョンでは脚の横にロケットブースターのようなものも出る。
 なかなか楽しい!最後にこのフェスに参加できて良かった!

 暫くしたある日、あみはプリマジをしていると、コーデメイツがコーデではなくてあみの写真を持ってきた。
「何これ?」
 とりあえず購入する。フレンドカードという、これまでに無かったプリマジカードだ。
「うーん、なんで引退って時に新しいものが出るかな…」
 そんな事を考えながら、プリマジから帰る途中の広場でみゃむに会った。
「よぉ!あみ!フレンドパークに来るのは初めてか?」
 あみは頷く。
「よしっ!このみゃむ様が教えてやろう!ここ、フレンドパークはあみのフレンドが集まる広場なんだぞ!プリマジフレンドカードをお友達と交換するんだ!」
「うん!ありがとうみゃむちゃん!」
「おうよっ!いーっぱいフレンドを作るんだぞ!」
 フレンドパークには、みるきやあまね様の他に初めて会うプリマジスタの子もいる。
「はじめまして。あみです」
 あみは近くにいた子に声をかけた。
「あ、はじめまして。フレンドカード交換ですか?どうぞ」
 さっそくフレンドカードを交換した。
「きりです。よろしくね」
「こちらこそよろしくね」

 きりさんと一旦別れて歩き出すと今度は別の子が声をかけてきた。
「こんにちは」
「こんにちは。わたし、あみです。よろしくね」
 あみはフレンドカードを差し出す。
「あ、私のフレンドカードです」
 そう言って受け取ったフレンドカードを見て、名前を見ると…
「まみ☆さん?」
「どうかしましたか?」
「いえ、古くからの友達にもまみってコがいるんです」
 あみはプリチャン時代の写真を見せた。
「このおだんごヘアが当時のわたしで、となりのポニーテールのコがまみです」
「へえ。これも何かの縁ですね」
 そんな話をしていると、放送が入った。みんな、広場の中央に集合とのことだ。
 まつり、あまね様、みるき、ひな先輩、きりさん、まみ☆さん、そして、あみが集合した。
 一瞬、虹色の光が何処からともなくさしてきて、壁に7人の影が焼き付いた。
「あわわわ…?」
 あみたちは不思議な力で宙に浮いた。これもマナマナの魔法なのかな?
 あみたちは空中を泳いで自分の影に向かった。
 ぴったりはまると何だか嬉しい。誰が言い出すともなく、みんなでポーズを取ろうという流れになり、何故か道頓堀のグリコのようなポーズを取った。
「せーの、ワッチャ!」
 なんだかとても楽しい一時だった。一同は手を振って解散した。
 去ろうとするあみをまつりが呼び止めた。
「あみちゃん、引っ越すんだって?」
「うん。もうすぐ」
「じゃ、これはお餞別」
「このコーデって、ハートフェザーみたいだけど、金色?」
「シークレットのヘブンズコーデだよ。シューズだけだけど、良かったら使ってみて」
「ありがとう。大切に使うね!」
 あみは早速それを組み込んでミックスコーデコンテストに参加した。もちろん1位を取れた。
「良かった。最後にいい思い出ができた」

 それから何日かして、あみは新生活に向け、準備を始めた。
「でも、心残りはいくつかあるなぁ…」
 あみはプリマジカードを整理し始めた。
「とりあえず、まだ何度かはできるから、ヘブンズシューズと、揃ってるコーデとプロフカードはこの箱にしまって、残りは中古屋さんに売るか」
 あみは不揃いやハートかを増えて不要になったカードをまとめて売りに行った。
 大した金額にはならなかったけど、誰かが使ってくれるといいな。
 とりあえず、目の前からカードが消えた。明日はいよいよ引っ越しだ。
 引っ越し先の近くにスーパーがあるので、下見に行くと、グミが売っていたので反射的に買ってしまった。
「ははは、何やってるんだろ、わたし」
 開封すると、エナメルジャンパーのシューズ、さっちゃんとの交換をキャンセルして諦めていたアイテムだ。
「今頃出るなんてね…」
 あみはこれでラストライブをしようとして、はっとした。
「しまった!不揃いコーデ、全部売っちゃったんだった!」
 あみは中古ショップに走った。買い戻せるかな?誰かが買ってなかったらいいけど…
 多分売値がぶっ飛ぶだろうけど、まあ、いいか、と思いつつショップに入った。
「あれ?陳列されてない?」
 あみは店員に訊いてみた。
「ああ、まだ整理してないからね。Rコーデを一山で買い取ったから、買い取りキャンセルって事でいいですよ」
「ありがとうございます!」

 あみはこうしてフルコーデ揃えてプリマジに向かった。みゃむが待っている。
「本当に休止するんだな」
「引っ越すとなかなかプリマジできないから」
 みゃむは一瞬悲しげな目をしたが、すぐにいつもの表情に戻って、
「よし、悔いのないよう行ってこい!」
「うん。今までありがとう。みゃむちゃん!」
 無事揃ったコーデでのプリマジ、さっちゃんは観てくれるかな?それだけじゃない。知り合ったみんな、それに、みゃむに感謝を届けたい。
「行くよ!みんな見てて!わたしのマジ!」

(完)


今回のフォト
                        

今回のゲストさん

えいなさん


きりさん


まみ☆さん


まつり


ひな


れもん


あまね


みるき


あうる


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