第9章 制服〜大会
その日、あみは財布を開けて、
「あ、ヤバい!」
別にお金が入っていないだけではなかった。五千円札と小銭のみが入っている。
いつもランチを食べる食堂の食券自販機は五千円札が使えないのだ。
そこであみはコンビニでお菓子でも買おうかと思ったがダイエット中。そこでコンビニの向かいの商業ビルにあるゲームセンターに向かった。
ゲームセンターにはゲームのプリ☆チャンがあり、あみはお団子ヘア時代の自分をゲームのマイキャラとして持っていた。両替だけだと申し訳ないので、ゲームをやろうとしたが、会員証を持って来ていなかった。しかし、幸い鞄のポケットにたまたま自分のフォロチケが入っていた。
あみはフォロチケ交換ボードを見た。以前、クレアさんやにぱさん、こちらの世界では会っていないみっちさんのマイキャラのフォロチケを見かけたので、あれば交換だけしようかな、と考えたら、クレアさんのマイキャラのくれあちゃんのフォロチケを見つけたので交換した。また今度プレイしよう。
あみは一応、プライズコーナーを歩き、欲しいものが無いということで店を出た。
ゲームを見てプリ☆チャンの事を考えていたせいか、ランチ後にプリマジに来ても、何かポスターが貼ってあったのをスルーして他のプリマジスタのプリマジ中継に目がいった。
「ぼたんさんだ!」
件のライブ配信で、あみとれみにプリ☆チャンの別の記憶がよみがえった時のライブを主催したプリマジスタだ。
ぼたんさんは制服コーデにリボンを着けてライブしていた。
「ディズニーランドみたいかなって試したんだけど…」
「かわいい!」
「そういえば、制服コーデ配信のハッシュタグがあるみたいだけど」
「そうなんだ。そう言えば、ぼたんさんは自分があもちゃんになった夢を見たりとかする事あります?」
「え?」
「変な事聞いてごめんなさい」
「でも、動画編集してるから、ゲームのライブは自分のことみたいに覚えているけどね」
あみはぼたんさんと別れた後、ハッシュタグを調べてみた。確かに「みんなのスクールコーデ展覧会」というタグがあった。
あみは早速制服コーデでライブをした。そして、それを見ながら、ふと動画の記憶の事を思い出した。れみが覚えているなら、ゆうきも覚えているだろうか?
あの時は3人で動画のライブに参加したのだから。
あみはゆうきに連絡してみた。
「え?プリチャンライブの記憶?」
そう聞き返しながらも、ゆうきはあまり驚いた様子はない。
「それどころか、蕎麦屋に行ったらあみとれみが行方不明になった記憶もあるんだよね」
あみとれみはゆうきが蕎麦屋にいる間にプリチャン世界に行き、一年過ごしたのに元の時間に戻った事がある。
「あの時は、絶対二人が消えたって言わなかったな」
「そうなんだ」
「ほら、覚えてる?でんでんの事を」
ゆうきは子供の頃、拾ったカタツムリを卵産むまで大事に育てた事がある。そのカタツムリが死んだ時、生きてると嬉しいという事なのか、天寿全うだったのか、ゆうきは
「嬉しい!」と言いながら号泣していた。
そして、お墓を作ってお別れして初めて
「悲しい…」
と言ったのだった。その時と同じ気持ちだったのだろう。
「そういえば」
ゆうきが思い出したように言う。
「プリマジやってるんだよね」
「うん」
「今度なんか大会あるんだよね。ポスター見かけた」
「そうなんだ」
あみはさっき何かのポスターがあるなと思ったけど、見ていなかった。あみは慌ててプリマジに戻り、ポスターを確認し、大会にエントリーした。
そして、大会初日。
「あみどの!これからフレアエレメンツコーデフェスですな!?応援しにきたでござるよ!」
会場近くでれもんが応援に来てくれていたのだが…
「ひいぃぃぃ。し、しかし、街には人がたくさんいて…ううぅ…拙者はここまででござる」
れもんの口からエクトプラズムが出かかり、きゃろんが慌ててれもんの中に戻す。どうやらこれが限界のようだ。
「応援してくれてありがとう!れもんちゃん!プリマジがんばってくるね!」
「健闘を祈るでござる!」
あみはれもんが前のフェスで優勝した時のコーデの色違いで初戦に挑み、第2ステージに進んだ。
第2ステージにはまつりが来てくれた。
「あみちゃん!第1ステージ、最高のプリマジだったよ!次は第2ステージだね!」
「うん!とってもワチャワチャしたプリマジだった!見てて!もっと盛り上げてみせるよ!」
「あみちゃんのプリマジ、楽しみにしてるよ!」
まつりは前のフェスでひな先輩に負けたものの、ひな先輩がフレアエレメンツコーデを手にした事でキャリーオーバーとなったハートフェザーコーデを次の大会で手にした。あみはれもんの時同様、まつりが大会で使ったパステルマカロンコーデの色違いを使った。そして!何とか第3ステージにコマを進めたのだった。
そして、第3ステージ。ひな先輩が応援に来てくれた。これで勝てれば先輩と同じエレメンツコーデを着ることができる。
「いいプリマジだったじゃん!あたしもテンション上がっちゃった」
「ひなさん!ありがとうございます!最後の第3ステージ、わたしのプリマジ見ててください!」
「いい感じじゃん!あみのプリマジ応援するよ!がんばってな!」
先輩に送り出されて、あみは期待に応えるべく先輩のスパークスターコーデの色違いで挑んだ。クライマックスの大階段にはフレアエレメンツを象徴するフェニックスの紋章が映し出される。
曲が終わると、会場の天井近くにフェニックスが現れた。
「あっ、あれはフレアエレメンツ!」
「さぁ、受け取りなさい」
フェニックスが放ったカードをみゃむがキャッチしてあみに投げる。
「このコーデをあなたに。フレアエレメンツコーデ、おめでとう!」
こうして、あみはフェスで賞品のコーデを手に入れた。
あみはコーデのカードを眺めて、そう言えば、プリチャン世界にいた時、アンジュさんがフェニックス仮面やってて、兵庫県の「フェニックス共済」のパンフレット見て、それは災害時の住宅再建のパンフだってツッコミ入れたりしたっけ、などと思い出しながら歩いているとみゃむに会った。そこでみゃむは意外な事を言う。
「あみ!まだまだフレアエレメンツフェスは終わらないぞ!」
「あ、みゃむちゃん!見てみて!フレアエレメンツコーデが揃ったよ!」
あみは嬉しそうにみゃむにコーデカードを見せた。
「おう!そのコーデを着てアンコールステージをすると特別なキャッチコピーがゲットできるぞ!」
「アンコールステージは他のプリマジスタで遊んだり曲も選べて何度でも遊べるからな!」
「フレアエレメンツコーデフェスはまだまだこれからだー!」
「うん!わかった!みゃむちゃん!ありがとう」
そんなわけで、あみはコーデの御披露目でライブを始めたのだが…
「えっ!コーデが燃えてる?」
曲が始まると、いきなりコーデから炎が噴き出した。
「あれ?熱くない」
どうやら魔法の炎による演出のようだった。
あみはびっくりしながらも、御披露目ライブをしてフェスを終えたのだった。
今回のフォト
今回のゲストさん
ぼたんさん
れもん
まつり
ひな
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