第1章 邂逅〜決心

 あみの目の前に、青い髪の猫っぽい女の子が立っている。
「あなた…誰?」
「天才魔法使いのみゃむ様だぞ」
 見た目はかわいいが、喋り方は男の子っぽい。
「一緒にプリマジしないか?」
「えっ?わたしが?」
「お前、チュッピにしてはいいマジを持ってそうだし、まつりって奴には逃げられるし…」
「えっと…話がよくのみ込めないんだけど」
「チュッピってのはお前みたいなマジ、えっと、魔法のことだ、を使えない奴のことを言うんだ」
「ふむふむ」
「だから、マナマナ、つまり魔法使いと組んで魔法のステージをやるのがプリマジだ。ちなみに、プリマジする人はプリマジスタというんだぞ」
「それは判ったけど、なんでわたし?」
「お前とならてっぺん目指せるかも知れないんじゃねえかって思ったんだ」
「…」
「だから、異世界のお前が配信したライブ動画を見せてやっただろ」
 あ、あれはこのコのおかげなのか…でも。
「わたしの記憶が変に混ざった気がするのはそのせいなのかな…」
 今のあみには無関係でも、もう一つのあみの記憶なら、やりそうではある。
「ごめん。今は判らない。でも、動画のお礼に考えておくね」

 とりあえず、みゃむには悪いが、一旦保留。明日は健康診断の再検査だから早寝しないと。

 翌日、あみは医院で検査を受けた。医者からはお菓子を減らせと言われた。
「はぁ、お菓子減らせもきついけど、血液検査で朝食抜きは更にきついな…」
 あみはマクドナルドに入った。お菓子じゃないと言い訳しつつ。
 と、ハッピーセットの付録に目が行った。
「プリマジ無料体験チケットと限定コーデ…」

 うーむ、これも何かの縁なのかな。お菓子代の予算で一度、プリマジ、やってみようかな…
 あみがそう思った瞬間に目の前にみゃむが現れた。
「そうか、やる気になったか!実は、昨日言ったまつりも今決心したんだよな…」
「じゃ、やっぱりやめようかな」
「いやいや、この天才みゃむ様にかかれば、チュッピ二人くらい同時にサポートできるぞ」

 みゃむに促されるまま、あみはプリマジの受付に向かった。
「これがプロフカードだぞ」
 黄色い透明のカードにトルソの図が描かれている。
 せっかくなら無料体験ではなく、自分で登録してみよう。

 ふと、画面を見ると、みゃむの言っていたまつりさんが歌っている。
「すごい…わたしにあそこまでできるかな?」

 いよいよあみの番だ。
「髪型はどうしようか…」
 以前はお団子ツインだったが、サンプルにない。以前やったことのあるツインテにしようかな。
 突然、周りに青い頭巾の妖精がたくさん現れて髪を結ってくれた。この妖精たちはタントちゃんというようだ。
「コーデショップがあるのか。いきなりコーデが買えるのはありがたいね」
 まつりさんとおそろいの服とチェックの私服コーデがある。あみは私服コーデに着替えた。
 着替えもタントちゃんが用意してくれる。

 ステージが始まった。
 意外と歌って踊れる。異世界でライブ三昧してたことを体が覚えているようだ。

 あみはフロートに乗った。まわりに宝石のような髪の妖精、コーデメイツが三つのコーデを持って飛んでいる。
「え、これ買えるの?」
 あみがコーデを買うと、コーデメイツたちは満足げに飛んでいった。

 そこで、みゃむと一緒に呪文を唱える。
「マナマナ マジパ チュッピ!」
 イリュージョンが発生する。あみは演出を無意識にこなしていた。

 そして、フィナーレ。後ろの大階段にコーデメイツたちが並んでいる。

 ステージが終わると、みゃむの所からコーデメイツがカードを持ってきてくれた。
「一度のステージでコーデ増えたな…」

 ステージ後も服はそのままだった。
「あれ?わたしが着てきた服は?」
「あの服はカードがないから、もうプリマジで着ることはないぞ」
「そうなの?」
「あ、それから、コーデ着た写真がスマホに送られてくるぞ」
「そうなんだ!」
 あみは写真を見て気づく。
「あれ?帽子ちっちゃくない?」

「髪型によってサイズ変わるみたいですよ」
 通りかかったプリマジスタの人が教えてくれる。
「そうなんですね」
「色々試すと面白いかもしれませんね」
「ですね。ありがとうございました。えっと…」
「クレアよ。また会ったらよろしくね」
「こちらこそ」

「じゃ、髪を下してみようかな」
「ついでにメッシュも入れたらどうだ?」
「やってみようかな」
「じゃ、マクドの限定コーデでもう一曲やろうかな」
 みゃむは本屋の袋をあみに渡した。
「サービスだぞ。その雑誌にコーデ付いてるから。今選べるのは3曲だから全部やっちゃえ」
「そのくらいじゃなきゃ、てっぺん取れないものね」
「判ってきたじゃないか!」

 こうして、あみはプリマジスタとしての一歩を踏み出したのだった。


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