第6章 クレープ
「おはミー、テルミー、ウェルカミー!」
画面からみつきの声が飛び出した。あみは最近、みつきの配信「ミーちゃんねる」を見るのが日課になっていた。
「みんなは、部活とかで疲れた時ってどうする?」
今日の話題はディッパーダンのクレープだった。
「そうそう。近くにあるからつい行っちゃうんだよね。おいしいから」
「今度、キャンペーンのアンバサダーになったから、アイプリバース店に来てくださいね」
おお、アイプリバース内にもあるのか…キャンペーン始まったら行ってみよう。
あみは予定表にクレープと書き込んだ。
その頃…
「これがアイプリブレス…」
れみが手に入れてきたブレスを眺めていた。
「この前、和歌山で話してたけど、あみも興味あるでしょうね」
一緒にプリマジスタとしてライブをしてきたのだ。そのくらいは想像がつく。
「誘う前に試しに行きますかね」
そもそも、あみが先に始めてる可能性も高い気がしますけど。
れみはそう思いつつバースインした。
れみはあみがその辺りにいないか見回してみた。そこで見覚えのある顔に出会った。
「まつりさん!」
「もしかして…れみちゃん?」
「はい」
「あみちゃんと同じくらい雰囲気変わったね」
「まつりさんが全然変わっていないものびっくりです。私は気が付いたらこの姿でした。それより…」
まつりは無意識にれみの知りたい事のヒントを言っている。
「やっぱり、あみもここに来たんですね」
「この前会ったよ。れみちゃんはバースインは初めて?」
「はい」
「じゃ、一緒にやってみる?」
「お願いします」
こうして、れみもアイプリデビューした。
一方、あみはディッパーダンのアイプリバース店に来ていた。お客さんが多くて、あみもみつきと同じアイスブラウニークレープコーデを着て店番をしていると…
「あれ?もしかして…?」
話しかけてきたお客さんに見覚えがある。
「Koh☆さん?」
「やっぱりあみさんだ」
Koh☆さんも元プリマジスタで一緒にライブしたことがある。
「初音ミクちゃんのコーデに似てますね」
「期間限定の色違いなんですよ」
クレープを食べながらコーデ談義をしていると…」
「あの、はじめまして。りさと申します。プリマジスタのあみさんとお聞きしたのですが」
「はい」
プリマジを見ていた人だろうか?
「身内で推しになりきってプリマジやってる子がいて、配信で見かけた気がしたので」
ぜんいつさんのことかな?
「これも何かの縁ですし、一緒にクレープ食べましょう」
クレープを食べ終わってあみは持ち場に戻った。
「あら、かわいい衣装ですね」
美人だけど優しい雰囲気のある女性が声をかけてきた。
「あっ、タマキさん!来てくださったんですね!」
みつきの知ってる人か…えっ?タマキさん?
「あの…もしかして」
「ルビーラズリのサクラさんのパートナーのタマキさんよ」
みつきが教えてくれる。サクラさんとは違うが、やはりラスボスの風格というものか。
「サクラが楽しみな新人を見つけたっていってたのはあなたのことかしらね」
「確かにサクラさんとご一緒させていただいたことあります。わたし、あみです!よろしくお願いします」
「タマキです。よろしくね」
タマキさんの後にもお客はどんどん来る。
「わぁ、オイシそうなクレープ!」
元気な声が聞こえる。
「ナナミンです!ヨロシクねっ」
「はじめまして。あみです」
「あみちゃん!イッショにクレープたべよっ!」
クレープを食べた後、特設パシャリングスペースで寝ころびながら、
「キャンペーンならではのタイケンだね」
おいしいからつい付き合うけど、太りそうだな…
すると、更に大きな声で呼びかけられた。
「もしかして、あみちゃん?」
「らぁらちゃん?」
プリパラの神アイドル、らぁらだった。
「久しぶり!でも、よくわたしだって判ったね」
プリパラにいた頃はあみはおだんごツインに髪を束ねていた。今は髪を下ろして色も淡く、更にアバター化しているのだが。
「みーんな友達、みーんなアイドルだもん。会うたびにイメチェンする子もいっばいいるし」
さすがは神アイドルだ。
「久しぶりに一緒にライブしよ!」
クレープ食べ過ぎのダイエットも兼ねてちょうどいいと思い、あみはらぁらとライブした。
「そうだ!らぁらちゃん、もし、わたしも知ってる子に会ったら、わたしがここに来てることを伝えてくれると嬉しいな」
「かしこま!たくさんいるかもね」
実に30分もしないうちにらぁらが戻ってきた。
「一緒にライブしたられみちゃんだった!」
なんと、らぁらと一緒に来たのはれみだった。
「やはりあみも来てたんですね。驚かそうと先にこっそり来たつもりでしたが」
「わたしも、近々れみを誘おうかなって思ってたからびっくり!」
二人の会話を聞いてみつきが、
「思い出すなぁ…わたしも、ひまりちゃんと一緒にデビューしようねって言ってたのに、それぞれがデビューしちゃって、お互い言い出せなかったんだ」
「そうなんだ…」
「せっかくだから、二人のアイプリ、見てみたいな」
あみとれみはリクエストに、
「かしこま!」
らぁらのモノマネで応えたのだった。
ライブが終わって、れみが、
「そうそう。私まだクレープ食べていません。みんなで食べませんか」
「かしこま!」
即答でこたえるらぁら。
勘弁してよ…わたし、絶対明日太ってるよ…
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