最終章 世界が戻る

「この前の玉座はすごかったね」
 あみが座っているのは玉座ではなく、休憩室のいつもの椅子だ。
「でも、ここでお菓子食べてるほうが落ち着くよ」

「あみ、ニュースで変な事言ってますよ」
 れみに言われてニュースを見る。
「プリパラから来たというプリチャンアイドルが数人消滅?」

「それは」
 突然目の前にバーチャルだいあが現れた。
「この前、バグホールが消えて、この世界のバグが治ったんだもん」
「ふーん。それであのニュースのコ達は消え…えええええーーーーっ?」
 全員が絶叫した。それは、あみ達も元の世界に戻り、この世界から消滅するという事だ。
「わたし達も消えるのかな…」
「この世界との絆の強さによって、消えるまでの時間に差があるんだもん」
 だいあはメモを取り出した。
「めるちゃんが計算してくれたんだもん」
 そして、メモを見ながら、
「あみちゃん達はあと二日なんだもん」

「どうしよう」
「まぁ本来は元の世界に戻るのが目的だったんだけど…今は…」
 あみはそこまで言いかけて、涙目になりかけたが、ぐっと堪えて言った。
「でも、まだ二日残ってる!そう考えて、最後の配信までがんばろう!」

「さて、まずは、ゆみ」
「何?」
「わたしに初めて会った時、わたしが目立つとチャンネルの主役になれないって言ったよね」
「そうだっけ?言ったかも…」
「でも、今からはゆみ、あなたがウチのリーダーだよ」
「あたしに…出来るかな」
「もちろん。一緒にやってきたから判るよ。というわけで」
 そして、そこへ入ってきたのは…
「話は聞かせてもらいました。たまたま兵庫に来ててよかった」
 にじのエルザさんだった。
「エルザさんは全国でライブし、全国ランキングでも入賞した実力者。ペアライブしてもらえば学べることも多いと思うよ」
 ちなみにあみ達は全国ランキングは自作コーデで好きなようにライブして、箸にも棒にも掛からぬ結果だったのだが…

「エルザさん。お願いします」
「一緒のライブ自体は初めてじゃないから、楽しくいきましょう」
 二人はにじのマーチコーデでペアライブをした。

「次は21人ライブの主催にチャレンジしてみよう」
 あみの無茶振りは続く。
「ゆみ」
 まみがゆみの肩に手を置く。
「二人ではじめた事。力になろう」
「そうそう。ゆみならここで「あたしの出番でしょ」と強気に言うイメージしかないよ」
 あいもそう言ってゆみの反対の肩に手を置いた。
「あみというレジェンドを超えた21人ライブの新たなレジェンドを作ろう!」

「エルザさんの知名度もお借りしますね」
 ゆみはなんと、エルザさんとのライブの配信の冒頭に緊急メッセージを挿入した。
「みなさん!ウチのメンバー、イルミナージュクイーンあみ達が、バグホール消滅の影響で明日、元の世界に帰ってしまいます!最後に21人ライブをしたいと思います。バーチャル参加もOKです。ホロスコープコーデを持ってる人、三時間以内にエントリーお願いします!」

「テーマライブで21人ライブをする気?」
「すみません。わたしはホロスコープ持ってきてないので見学です」
 いきなり、目の前のエルザさんは誘えなくなった。
「まぁ、ウチのメンバーは全員自分の星座持ってるじゃない?」
「まみがおひつじ座、あい、あみ、れみがうお座、ゆうきとあたしがかに座で三種類だけなんだよね」
「身内の星座はまだまだあるよ。妹からのプレゼントだしね」
「えっ?」
 ゆみが振り向くと、
「くみさん?」
「あ、お姉ちゃん来たんだ」
 あみもうれしそうに言う。
「そう。ワタシがさそり座。そして」
「みぃはおうし座、まどかはふたご座、アタシはおとめ座だよ」
「さなえ!みぃにまどかも!」
 海外遠征組の四人が勢ぞろいだ。

 さなえはあいの方へ行き、
「あなたがあいちゃんね。ゆうきから聞いてるよ」
「さなえさんってたしかアタシの前にゆうきと組んでた…」
「ええ。会いたかったよ」
 さなえはにっこり微笑んだ。

「さなえって、いつの間にか先輩キャラになったね」
「確かに。まどかがいるから余計にね」
「さなえ先輩はあみ大先輩の前では後輩キャラだったし」
「まどか!茶化さないでよ!」

「あら、懐かしい方もいるようですね」
 このはさんとキラキラチャイナの二人が来た。
 そういえば、さなえはれんげさんとペアライブしたこともあったはず。
「私はいて座、なぎさはしし座、れんげはてんびん座です」

 そこへあまねさんとあんずさんが来た。
「うお座といて座…あ、もういるか…」
「いえいえ、同じ星座でも大歓迎ですよ」

「バーチャルだけどいいですか」
 あかり★さん、アクアさん、ゆめみさんがバーチャル参加だ。
「アクアさんはてんびん座、ゆめみさんがしし座ですね」
 あかり★さんは、
「私もダブりだと面白くないから、レインボーカラーにしておきましょうか?」
「その手があったか。大歓迎です」

「そうこうするうちにあと三枠。星座でまだなのはみずがめ座とやぎ座かな」
 そう言ったところに、メロディさんが入って来たのだが…
「えっ、うお座なんですけど…ごめんなさい。うお座、多いですね」
 そこであいが、
「アタシ、みずがめ座持ってるから、みずがめ座着るよ。同じ青でも淡い色だから、こっちのほうが好きなんだ」
 とコーデを変更した。すると、ゆみが、
「あたし、ジュエルコーデは緑だったし、緑のやぎ座着るよ。かに座はゆうきがいるし」

「じゃ、あと二人で決定だね」
「んー、正直、あと一人で、あみと2パート一緒にやりたい気もするけど…」

「それなら、私がラストになりますかね。おとめ座です」
 くれあさんが入ってきた。

「おお!3時間で本当にホロスコープコーデのメンバーが集まった!」
「それも、一部自分の星座じゃないけと13色揃ったね」
「最初はいつもの6人で、間にゲストさん、最後は帰国組プラスあみの構成でどうかな」
「そうだね。いつもの6人が揃うパートはいいよね。最後の記念だし」

 こうして、ゆみが主催する豪華なライブは大成功だった。

 ライブが終わった後、くみが口火を切った。
「ギリギリ間に合ったね」
「アタシ達はあみほどこの世界との絆がないから、今日戻るんだ」
「先輩方、お先に失礼します」
「あい、最後に会えて嬉しかったよ」

 くみ、さなえ、まどかは元の世界に戻った。

「さてと。ライブの間にある程度準備はできました」
 突然、エルザさんが言った。
「私からの選別です。このメンバーであみさんの一番お気に入りのコーデでのライブのバックをつとめさせてもらいますよ」
 エルザさんがいつの間にか募集をかけてくれていたのだ。
 つぼみさん、くれあさん、ばったさん、ひなさん、ほにまるさん、メロディさん、このはさん、そして、みらい。

 ライブに向かおうとしたところで気づく。あみを入れて全部で10人だと一人半端になる。と、その時、あみのフォロチケを持っているコが目に入った。
「ちょうど良かった!あなたも一緒に!」
 あみはそのコを問答無用で誘い、コーデチェンジに入った。

「一番思い入れがあるのは、会員証のコーデかな」

 あみは、フェアウェルライブをしながら、これまでに築いてきた多くの絆に思いを馳せたのだった。

「ありがとう。みんな。たくさんの思い出をくれて。最高に楽しい時間だったよ」


今回のライブシーン
                              
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