第39章 プリチャンファンタジー完結

「今日は午前中れみがいないから三人ライブだね」
「でも、持ってきてるムーンライトコーデもあわあわバブルコーデも二色しかないのである」
「じゃ、コーデ担当のまみがダブルヘッダーでペアライブ二曲にしようか」

 4−Miの面々がいつものように行き当たりばったりにライブしていた頃…
 ディアクラウンでの休憩室。
「最近あたし、あんまりセンターでライブしていない気がするなぁ…」
「じゃ、募集してみる?」
 ぼやくゆうきにあいが提案する。
「だね。募集してみようか」

「あ、さっそく応答があったよ。あつさんとアクアさん…大阪方面だね」
「行くか、大阪」

 ゆうき達はバイトを終え大阪のスタジオに来た。
「えっと…二人、来てくれるかな」
 二人が待っていると、あつさん、アクアさん、あかり★さんが入ってきた。
「こんにちは。あかり★さんも参加してくれるんですか?」
「はい。そこであみさんに声かけられて」
「えっ?」
 なんであみが?
 二人が不思議そうに顔を見合わせていると、当の本人がひょっこり入ってきた。
「ゆうきの久々の主催ライブ。せっかくだからわたしも協力するよ」
「身内が来るとは…」
「一応、ゆうきとあいの主催なら、わたしは4−Mi、別ユニットだよ」
「それもそうか…」

 ライブを終えて、三人が地元に向かう途中、あみにれみから連絡が入る。
「えっ?早く寮に帰っておいで、だって」
 あみは寮に戻った。勢いでゆうき達もついて来た。
「あらあら、四人になりましたね」
「おじゃまします」
「で、早く帰れって…」
「実は、近所のパン屋さんでマリトッツォ見つけたから買ってきたんですよ」
「何それ?」
「最近はやりのスイーツって雑誌に載ってたやつです」
「あ、あたしも見たことある!」
 ゆうきは知っていたようだ。
「まぁ、あみのことだから二つは食べると思って二個ずつ買ったつもりですが丁度良かったですね」
 箱には4個入っている。
「じゃ、お湯沸かしてコーヒー淹れるね」
 あみが立ち上がろうとすると、
「さっき沸かして魔法瓶に取ってますよ」
「さすがれみ!」
「ふーん、ぶどうパンに生クリームたっぷり挟んだ菓子パンなんだね。おいしそう」
「レーズン入りのパンにシチリアレモン果汁入りのクリームが入ってるってポップに書いてましたよ」
「こういうシンプルな菓子パンって確かに飽きなくていいね」
「さて、コーヒーも入ったし」
「いただきます」

「で、何で三人一緒だったんですか?」
「ゆうきが主催ライブすると言うから参加してた」
「じゃ、この食レポと四人の私服ライブで配信しましょうか。ゆうきセンターで」
「うん、いいねいいね。やろう!」
 この手の話にあみが乗らなかった試しはない。

 そんなわけで、お茶をすませた四人はそのままライブをした。
 ライブを終えた帰り道、今度はゆうきにまみから連絡が入る。
「今日はこんなの多いね」
 内容は一緒にプリチャンファンタジーをしようというお誘いだった。

「今回は最終章。魔王対忍者なのである」
 合流するなりまみは興奮気味に言う。確かに魔王の衣装なんて、まみの趣味にストライクだ。
「で、なんであたし指名?」
「あれ?あみからゆうきは忍者になりたいって聞いたのであるが…」
「あーみー!」
「えっ、言ってたじゃん」
「いつの話だと思ってるのよ」
 ゆうきが小さい頃、オープニング曲の「勇気100%」と自分の名前「ゆうき」が同じだからと『忍たま乱太郎』を見ていた時、オープニングで大きなおにぎりを食べるシーンを見て、
「あたし、大きくなったら忍者になる!」
 と言ったことがあったのだった。
「まぁ、忍者、今でも好きではあるけどね」

 まみとゆうきはゴーグルを付けてファンタジーのアトラクションに入った。
 忍者姿のアリスが現れる。
「ニンジャというサーカス団のコーデだよ」
 一緒にいるソルルがツッコむ。
「なんでサーカス団なのさ?確かに運動能力は高いけど…」
「アタシの使命は魔王城に潜入して魔王を封印することです」
 アリスはそう言うと、いきなり、
「忍法で魔王を探して、バーンと魔王のところに行くよ」
「えっ、いきなり?」
 アリスは驚くゆうきをいきなり凧に結びつけて、自らも凧にのって空に昇る。
「はわわわわーーー!」

 一方、まみは魔王コーデのあんなに会っていた。
「今までのファンタジーは全てワタクシの仕業ですわ」
 そこへ現れた忍者二人とソルル。
「シルクちゃんの笑顔を奪ったのも、えもちゃんを絶叫系で泣かしたのもめるちゃんたちに楽しい宝探しをさせたのもあんなちゃんだったのね!」
「どんどん悪行から遠ざかっているように感じますが、いかにも!!すべてはプリチャンアイドルに試練を与え強くなってもらうためですわ」
 封印しようにも、あんなのコーデの力は強力だった。
「おーほっほっほっほ!ワタクシに勝とうなど百億光年早いですわ!!」
「光年は時間じゃなく距離の単位だ!」
 ソルルが律儀につっこむ。
 アリスは魔王に言う。
「あんなちゃん…あなたは悪い事をした魔王じゃないね」
「えっ?」
「アタシはさっき魔王の悪行を言ったけど、一つだけ嘘があったんだ。えもちゃんを泣かしたのはキラッCHU。だから魔王は泣かせてないの」
 そう言うと、魔王コーデを着た人物が現れた。
「あ、マスコットの偉い人!」
 本物の魔王はルルナだった。
「コーデの力を最大限に引き出せるプリチャンアイドルを鍛えるためよ」
「ワタクシは一体…」
「隠れ蓑といったところね」

 本物の魔王を封印するべく、ゆうき、アリスの忍者、まみ、あんなの魔王が力を合わせる必要がある。
「ワタクシ達のコーデの力を合わせれば…」
 あんなの台詞を聞いた途端、ゆうきとまみは隣の部屋を見た。忍者コーデでアトラクションに挑んでいるコがいた。
「あの、そこのあなた」
「えっ?私ですか」
「コーデの力を貸してください!」
「え、あ、はい。構いませんが…」
 そして、五人でライブをしてコーデの力を重ねた。

 忍者の巻物がルルナに巻き付き動きを封じる。ルルナのコーデから魔王っぽいものが出てくる。
 まみたちの魔王コーデが作り出した音符がそれを封印する。

「…私は一体?」
 ルルナは元に戻り、一件落着。

「あ、ありがとうございました。えっと…」
「メロディです」
「あたしはゆうき、こっちはまみ」
「よろしく」
「ウチには他にもメンバーがいるから、また一緒にライブしましょう」
「私にも相方がいるので、今度連れてきますね」

 ファンタジーのストーリーは完結したけど、別の絆が始まったのだった。


今回のライブシーン
                         
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