第29章 続・コトバブーケの約束ラビ

「うーん、わたしのハッピーセットはチーズバーガー、れみはフィレオフィッシュだっけ?」
「はい」
 あみ、れみ、ゆうき、あいは四人でマクドナルドに来ていた。実際はあみとれみがあいとゆうきを見かけて、追いかけてきたのだが。
「あたしはテリヤキにしようかな。ポテトはLにする!」
 ゆうきも注文内容を決める。
 あいは三人の様子を見て、
「じゃ、アタシはこのトリチにするね」

 四人はバーガーを受け取り、席に着く。あいはあみの正面に座りかけたが、ふと横に動き対角線の席に座る。そして、あみの前にはゆうきが座った。
「四人で四等分すれば、四つの味が楽しめますね」
 れみがフィレオフィッシュを四つに割りながら言う。
「でも、割りにくい…食べにくい」
 ゆうきはテリヤキバーガーを割ろうとして、手がソースでベタベタになっている。
「えっと…あら!そういうこと…」
 あいはトリチを開けてそう言った。
「どうかしましたか?」
 れみが聞くと、
「肉と魚があるから、鶏肉のチーズバーガーだと思ったら、肉3枚のトリプルだったの…」
「こんなこともあろうと、私はサイドメニューをチキンナゲットにしておきましたよ。ソースは私の一存でバーベキュー味ですけど」
 れみがにっこりとナゲットの箱の蓋を開ける。
「メニューを略して書くのも問題だね」
 あみがそう言いながら、ハッピーセットのおまけを開ける。
「あ、かわいい!」
 ピンクのドレスのシンデレラ風のリカちゃん人形が入っていた。
「よく見ると、リカちゃんの中の服、継ぎがあたってるね」
「変なところリアルだなぁ」
「ん?プリチャンの無料体験チケットがついてるね」
 ゆうき、れみ、あみが盛り上がっていたのだが、あいは話題に入ってこない。
「あい?リカちゃんとか興味ないか…」
 あみが声をかけると、あいは、
「え、あ、そ、そうじゃないよ。ラインナップに人魚姫とかもあるんだなって見てただけだから」

 マクドナルドでの軽食を終えると、四人はプリチャンランドでチケットを使い、ミラクル☆キラッツのライブを見た。
「えもちゃん、リカちゃんと同じ衣装だね」
「みらいちゃんのマスコット柄の服もかわいいですね」
「りんかちゃんの衣装、このチケットについてるコーデと同じじゃない?」

「あ、あみちゃん、マクドナルドでそれ貰ったんだね!」
 みらいが声をかけてきた。
「私、今度はシンデレラの方着るから、あみちゃん、そのチケットのコーデでライブしない?」
「うん。喜んで!」
 あみはそう答えると後ろを振り返り、
「誰か一緒にやる?」
 と聞いた。あいが横を向きながら、
「…アタシ、用事あるから」
 と言いながら、ゆうきの手を引いて去っていった。
 あみはれみに、
「ちょっと、あいの様子、変だよ?」
「じゃ、ライブはあみ一人で行ってください。私は様子を見に行きます」
「うん、お願い」

「あれ?あみちゃん一人?」
「ちょっと、他のみんなは用事あるみたい」
「そうなんだ」
 みらいがそう言うと、そこにあまねさんとみるきぃさんが来た。
「マクドナルドで無料体験チケット貰って来てみれば…」
 皆同じように集まったようだった。
「じゃ、このメンバーでライブしますか」

 その頃、他の三人は…
「あい、どうかしたんですか?」
 れみたちに声をかけられると、あいは我慢の糸が切れたように、目に涙をためて話し出した。
「あのね…アタシ、嬉しかったんだ。大会の決勝であみと狼と赤ずきんライブで優勝したこと」
「うん」
「でも、あみは、くれあさんと同じ組み合わせをしたり、れみと決勝をやり直したり…」
 あいがそう行った途端、
「それは違うと思うラビ!」
 ラビリィがプリたまGoから飛び出して言った。
「あみちゃんはあいちゃんとの決勝ライブの思い出を大切にしてると思うラビ」
「でも、今もあみはこうして他のコとライブをしてるんだよ」
「今のメンバーの人たちって、実は、みるきぃさんはエルザさんとの合流が難航しているのを見かけて案内したって人だし」
「あまねさんに至っては、あみがあんずさんにいいねのお礼を言った時にあんずさんの隣にいた人なんですよ」
「それが今、完璧にセッションできているラビ。ささいなきっかけで出会ってライブした人との絆を大切にしているからラビ!」
「…」
「絆って大切なものラビ。決勝のリベンジはラビリィがきっかけみたいなものラビ」
「え?どういう事?」
 ラビリィは最初に生まれた時はご主人様のいないはぐれマスコットとして生まれてしまい、きのこやタワシと生活していた。
 そして、マスコットの偉い人から、リセットされると聞かされた時、一時帰国していたまりあがラビリィを引き取ったことで、ラビリィはマスコットとして活動できているのだった。
 リングマリィと縁のあるラビリィが今、あみ達といることで、リングマリィの二人も本気であみ達と再戦したいと思ったのだった。

「それと、あい」
 れみが続ける。
「あみはくれあさんとのライブでは、色も立ち位置もあいの時とは逆にしていましたし、私と決勝再戦の時にも、あえて別のコーデでやると言ったんですよ」
「あみはあみで、あの決勝は大切だったんだよ」
 ゆうきの締めのセリフを聞くと、あいは走り出した。

 その頃、あみはあい達が向かった方へ歩いていた。
「うー、どこに行ったか見当もつかないや」
 と、すごい勢いであいが走ってきて、泣きじゃくりながらあみに飛びついた。
「あみ、ごめん、ごめんねー」
「え…ええ?」
 あみからすれば、あいの行動の理由が判らず、戸惑うしかない。
「えっと、あい?何かあったっけ?さっきナゲットを一つ多く食べた事?別に怒ってないよ?」
「…そんなの数えてたんだ」
 あいは思わず笑ってしまった。

「あら、なんか喧嘩してるのかと思ったら」
「あいらさん?」
 デザイナーにしてアンジュさんの相方でもあるあいらさんがいた。
「じゃ、私も付き合うから、ライブでハピラキな気持ちにおなりなさい」
 あいらさんにそう言われて、三人で私服のままライブをした。
「なんか、清々しい気分です」
「あいらさん、ありがとうございました」

「心配になって来てみたら…」
「なんて羨ましいライブを…」
 あいを追ってれみたちが来ていた。そして、途中でたまたま出会ったゆみ、まみも連れてきていた。
「うーむ、全員揃ってしまった」
「そういえば、マスコットパーティーコーデ、可愛いっていってたラビ?」
「あ、さっきみらいちゃんが着てたやつ?」
「全員揃ったし、みんなであれ着てパーティーライブでもする?」
「賛成っチュ」
「そうと決まれば早くするパン」
 キラッCHUとメルパンも出てきた。よし。みんなでパーティーライブだ。
 マスコットを含めて9人コーデも色違いを3人ずつ着て交代でライブをした。
 
 今日はいつも以上に全員の呼吸がぴったり合っていたような気がしたのだった。

 そんなことがあり、数日後。
 あみ、れみ、ゆうきであんなの私服の色違いでライブをして、その時にあみが手に入れたコーデ。
 決勝でまりあが来ていたものだ。
「よし、間に合った!ギリギリだったけどね」
「本当に良かったですね」
「じゃ、行ってらっしゃい」

 あみはコーデを手に駅に向かった。そして、改札を出てきた人物に元気よく声をかけた。
「エルザさん、花嫁コーデ手に入りました!約束通り、コトバブーケ、本番やりましょう!」

 かなり前の約束をやっと果たせたあみの配信を見て、あいは満足そうに少し冷めたココアを口に運んだのだった。


今回のライブシーン
                                
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