第25章 それぞれの挑戦ラビ

「ついに来たラビ!」
 ラビリィがあみの前に何かの紙を持ってあみの前に飛んできた。
「何?」
 あみが紙を見る。
「マスコット認定試験のおしらせ」
 そういえば、キラッCHU達も受けてたなぁ。
「大丈夫。きっと認定されるから頑張ろうね」
 あみはラビリィの頭を撫でながら優しく言った。

 そして、認定試験の日。
 あみはゆうきと参観に臨んだ。キラッCHUとメルパンも見に来ている。
 まずは持ち歌のソロだ。ラビリィは着慣れたキャスト制服でこれをクリア。続いては、すずのエスコートでのステージだ。
「このコーデ、似合ってるラビ?」
 ラビリィが選んだのはジュエリーコスメブルーコーデだ。
 普段はポップ系のラビリィがドレスを着るのは確かに珍しい。でも。
「大丈夫。ちゃんと着こなしているよ」
「新鮮だけど、かわいいよ!」
「素敵っチュ!」
「かわいいパン!」
 ラビリィはみんなに褒められ、くすぐったそうに微笑んでから、
「ありがとうラビ。がんばるラビ!」
 そう言うと、ステージに向かっていった。

 そして、いよいよ最終試験。
 ご主人、つまりあみとのライブだ。
 課題曲は5人ステージだ。マスコット3人はそれぞれのアイドルマスコットの基本コーデだが、あみはさっきのラビリィに合わせてジュエリーコスメブルーコーデ、ゆうきはブルーつながりでガールズマーチブルーコーデを選んだ。
「みんなで頑張ろう!」

 結果、ラビリィも認定証をゲットできた。
「良かったね」
「おめでとうっチュ!」

 認定試験の帰り道。あみとゆうきの雑談。
「そういえば、今頃にミルキーウェイコーデが出たね」
「七夕向きっぽいけどね」
「コロナ禍で入荷が遅れたのかな」
「あのコーデ、かわいいからライブしてみたいけど、青が揃ってないんだよね」
 そんな話をしていると、キラッCHUが、
「キラッCHU、この前のライブで青いミルキーウェイをゲットしたっチュ!一緒にライブするっチュ?」
「念願のライブができるなんて、孝行マスコットだね!」
 あみがキラッCHUをなでなでしながら言う。
「じゃ、季節遅れの七夕ライブ、やっちゃおう!」

「そういえば」
 七夕ライブを終えて、あみが思い出したように言う。
「マーメイドプリンセスカップ、もうすぐだよね」
「うん。今度はリングマリィも参戦だって話題になってるね」
「とりあえず、うちもエントリーは済ませたけどね」

 プリンセスカップ当日。
 あみはれみと一緒に寮を出た。
「なんだかんだで三回目の大会ですね」
「うん。今回もがんばろうね」
 会場へ向かう途中。公園のある角にゆみが待っている。
「おはよう」
「おはよう。まみは?」
「もう来ると思うけど…あ、来た」
「ふぅ。ギリギリである…」
「まみにしてはギリギリだね?」
「大会なのに、寝ぐせついちゃって…」
「ポニテにまとめてるのに?」
「変に跳ねちゃうのである」
「それでも遅刻しないのはえらい!これをあげる!」
 あみが鞄からお菓子を出す。
「カルビーとうもりこ味のロッテのトッポ」
「何なんですか、その呉越同舟なお菓子は?」
 言いつつれみも興味津々だ。
「昨日スーパーで見かけてね。お菓子メーカー同士のコラボだから絶対おいしいだろうし」
「ていうか、大会の日でもお菓子持ち歩いてるんだ…」
 ゆみが別の角度でツッコむ。
「まぁ、我というよりみんなで食べるのである…」

 そして、会場入り口。ゆうきが待っている。
「よーし。全員揃ったね」
「じゃ、会場に入ろう」

「…って、ちょっと待ってよ!」
 あいが走ってくる。
「あ、忘れてた!」
 あみが笑いながら言う。
 あいは手に持った袋からペットボトルを一本取り出し、飲み口のほうを手前に持って剣士のように構える。
 そして、口の横から息をゆっくり吐いて、
「…水の呼吸…壱の型!」
 ぽこん!
「…いたっ!」
 剣道の面のように、あみの頭を軽く叩く。
「あいー、冗談だってば。さっきゆうきからあいが飲み物買い出しに行ってくれてるってラインきてたし」
「そうなんだ」
「あいはイジられるのにまだ慣れていませんねー」
 れみが聖母のように微笑みながらあいの顔をのぞき込む。
「…マジだったら、鬼滅の刃の物真似とかで怒らないもん!」
 あいはふくれっ面で言い返す。
「今のリアクション、なんかカワイイっ!」
 ゆみに変なウケ方をしたせいで、あいの怒りはうやむやのうちに消えてしまった。

 さて、そうこうするうちに、大会が始まった。
 一回戦はラビリィとソロ対決だ。
「よし、ラビリィとお揃いのコーデでやってみるかな」
 あみはラビリィのコーデでステージに向かう。
「さぁ、ラビリィ…って、あら?」
 ラビリィはいつものコーデではなく、ガールズマーチブルーコーデを着ていた。そういえば、前にラビリィの前でゆうきが使っていたっけ。
「お揃いでと思ったけどまあいいわ。認定試験をクリアしたラビリィの挑戦、受けて立つよ!」

「負けちゃったけど楽しかったラビ」
「でも、一人前のアイドルに成長したね、ラビリィ」
 二人は勝負の後、がっちりと握手を交わした。

 次はメルティックスター戦だ。
「メンバーはあたしたち、れあみゅーずで行く?」
 ゆうきが手を挙げる。
「れみもいい?」
「いいですよ。コーデはどうしますか?」
「さっきのラビリィのコーデ、三人だと映えるんじゃないかな」
「いいかも」
「じゃ、それでいきましょうか」

 あみたちがメルティックスターと対戦している間に、ゆみたちが作戦を練っていた。
「次のミラクルキラッツ戦はどうしようかな」
「この前、テレビのデータ壁紙でもらったセーラーガールコーデとか、ポップかつ可愛いコーデだしどうかな」
 あいが提案する。
「いいかも。確か、あみはガッチャモールのクーポンで色違いのクーポン当ててたはずである」
「ピンクだっけ。あみはシャア専用とか言い出すに決まってるから、あみがピンクであたし達が普通の色かな」
「コーデはあいの提案だけど、メンバーはどうしよう」
「コーデ選んでおいて何だけど、アタシは決勝にも案があるから、ゆみとまみでお願い。二人のほうがコンビ長いからフォーメーションもバッチリでしょ」
「あい、策士だね」
「へへへ、諸葛孔明みたい?」
 そして、三回戦。ミラクルキラッツも金魚浴衣やキョンシー等、夏のアジア風コーデと変化を付けてきていたのだが、あいの作戦通りで勝ち進み、いよい決勝だ。
「決勝の相手はブロードウェイでパワーアップしたリングマリィ。課題曲は結婚式がテーマだから、わたしはあいにエスコートしてもらわないとだね」
「そう。だから、これでいこうと思うんだ」
 あいがコーデを出す。
「あい、正気か?」
「これなら勝てるでしょ」
「ふふふ」
 二人は顔を見合わせて笑い、ステージに向かった。

 ステージにあみが登場した。
「去年のハッピーレア?」
「でも、かわいい!」
 客席から声がかかり、いいねが集まり始める。

 あみは赤ずきんコーデを着ていた。
 そして、エスコートするのは…
「おおかみ!」

 おとぎ話のとおりじゃない方が自分らしい。

 確かにその歌詞のとおりかもしれない。そして、自分らしくおおかみにエスコートされた赤ずきんは優勝をつかむことができたのだった。


今回のライブシーン
                                     
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