第21章 なりきり対決ラビ

「メルパンは?」  ゆうきがすくすくダイアリーを覗きながら聞く。メルパンはそこにいなかった。
「新コーデ入荷と同時にソロアイドル活動を始めたよ」
 あみが答える。キラッCHUの時もそうだった。育ちきったマスコットは独立するルールになっている。
「空っぽの部屋は寂しい…って、あれ?」
 そこには新しい卵があった。
「ということは、次はこの子を育てるのかな」
「ならば、ライブするのである」
 まみが提案する。ライブのいいねでマスコットは育つのだ。
「じゃ、どうしようか」
 ゆうきが切り出す。今日はこの三人だけだ。
「全然関係ないけど、ニュースで「GoToイートキャンペーン」とか言ってたね」
 あみが唐突に話を振る。
「コロナ禍で経営の苦しくなった産業を応援する、政府主導のやつだよね」
「最初のGoToトラベルの時も、感染広まるんじゃないかって言う人も多かったけど、食事はマスク外すし、やっぱり怖いのである」
「まみの言うこともわかるけど、お店潰れたらわたし達のランチもできなくなるから、応援したいんだ」
 あみはそう言いながら、三つのコーデを取り出した。
「カレー屋さん、ピザ屋さん、アイスクリーム屋さんの服?」
「うん。「GoToイート!飲食店応援ライブ」をやりたいんだ」
「なるほどね」
「そして、いいねを集めるために、プリパラのひびきさんの像のパシャッとアイテムも用意したから、これも使おうと思う」

 そして、コーデチェンジ。まみはピザ屋さん、ゆうきはアイスクリーム屋さん。センターのあみがカレー屋さんだ。
「じゃ、ひびき像を呼び出してみよう」
 あみがプリチケをスキャンした。
「わわっ!えっ?」
 なんと等身大だ。これには驚いてしまった。

 次の日。あみは本屋で買った雑誌を見ながらジュースを飲んでいた。
「へぇ、リングマリィのすずちゃんのお兄さんが結婚…そのお祝いのウエディングライブか…」
 すずの上の兄はダンサーで、下の兄は料理教室の先生だ。料理教室のほうのお兄さんらしい。
「この新曲いいな」
 自分のライブをあみは想像した。男子制服コーデのれみに女子制服を着てエスコートされる自分…
「うーん、我ながら、なんでエスコートのイメージがれみなんだろう…」

「あら?」
 そこにあんなが通りかかった。
「あみさん、どうされたんですの?」
「あ、あんなさん!雑誌見て、この新曲、誰とペアライブしようかなって考えてたんですよ」
「ほほう。リングマリィの新曲。そういえば、先日緊急帰国してましたわね」
 あんなは少し考えてから、
「よろしいですわ。ワタクシがエスコートして差し上げますわ」
 どう見てもあんなはエスコートされる側にしか見えないのだが…でも。
「ありがとうございます!あんなさんにエスコートしてもらえれば、すごく勉強になります」
 ちょうど、雑誌の付録にあんなのコーデの色違いがついている。
「じゃ、わたし、このコーデでいきます」
 あんなは元の色でお揃いかと思っていたが、
「あみさん、先日USAのライブをされてましたわね」
 はぁるる♪さん、れんげさんやこままこさんとライブした時のことかな?
「ワタクシは、あの時のあみさんのコーデ。あれの限定カラーでどう?」
 お互いのコーデの色違い。面白そうだ。
 そして、あんなのエスコートでライブをした。
「なかなかよろしくてよ。あなたなら、ワタクシ達の曲でもライブできそうですわね」
「そう言ってもらえると自信わいてくる!ありがとうございました!」
 そして、集まったいいねで卵からウサギのマスコットが生まれた。
「ラビリィラビ。よろしくラビ」

 そんな事もあり、あみはウキウキした気分で歩いていると、背後から声がかかった。すずだった。
「こんにちは。あんな先輩から聞きましたよ」
 あみが自分たちの新曲、コトバブーケのエスコート相手を探しているというような話を聞いたらしい。
「すずがお相手しましょうか?」
 いや、本物を経験してしまうと、今後つい比べてしまいそうだ。
「ありがとう。でも、別のライブでもいいかな?ダンスライブも勉強したいんだ」
「もちろん。すずとかっこいいライブ、やりましょう」
 あみはガッチャモールのスケーターズツインズコーデのクーポンを二枚持っていた。ダンサブルなステージにぴったりだ。
「じゃ、すずもクーポンお借りしますね」

 そして、週末。休憩室に六人全員が集まった。
「新シリーズの全員ライブ、何しようか」
 ゆみが議題をふった。
 そして、あみが手を挙げた。
「お、もうプラン考えてたんだ!じゃ、あみ」
「今日はみんなでPRコーデを着よう」
 あみは6つのコーデを出した。
「これは…」
「そう。ミラクル☆キラッツとメルティックスターが大会で着ていた課題曲用の衣装だよ」
「なるほど、なりきりライブ対決か」
 そう。あみは先日のあんなの言葉を聞いた時点で、このネタを思いついていたのだった。

「わたしはメルティックスターやりたいんだけど」
 あみが言うと、あいが、
「じゃ、スイートベーカリーの3人でキラッツやる?」
 ゆうきとれみに訊く。
「いいよ」
「あ、あいのチームに私スカウトされたんでしたっけ。いいですよ」
 一応、内部ユニットとしてチームを組むことにしたのだった。
「我とゆみはあみとメルスタであるな。うむ、楽しみだー!」
 まみが場をしめた。

 そして、二組のなりきりライブが終わった。
「ふぅ。楽しかった!」
「実際の衣装だと気持ちが高ぶるよね」
 さんざん盛り上がったタイミングで、れみが一言。
「でも、対決するの、忘れてましたね…」
「あ…!」
 5人はそのまま凍り付いたのだった。


今回のライブシーン
                               
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