第20章 ゲストさんを開拓するパン

「そういえば、来月からのコーデが発表されたね」
「別に普段通りのペースだけど、前のが長かったからね」
「で、かわいいコーデあるの?」
「サンリオコラボもあるみたい。楽しみだね」
「え?シナモンは?」
 あみが身を乗り出す。
「まずはマイメロディとキティちゃんみたいですね。でも、今後シナモロールやキキララも出るそうですよ」
「やった!」
「あみ、シナモン好きだよね」
「でも、はじめて見た時、うさぎだと思ってたんですよね」
「あと、ローソンでシナモンの顔の形のあんまん買ってきた時!」
「あ、あれよく出来ててかわいかったですね」
「あみってば、かわいすぎて食べられないーって言って、結局冷めてしまったんだよね」
「でも、しわしわにならなかったよね」
「確かに、昔は肉まん買って帰ったら湯気でしわしわになってたね」

 にぎやかに雑談しているが、今日は休憩室にはディアクラウン組は来ていない。いつもの四人だ。
「なんか面白いライブネタないかな…」
 ゆみが話を振る。
「確かに、コロナ禍もあってゲストさんとのジョイントも少ないですからね」
 れみが言うと、
「じゃ、逆に四人それぞれがジョイントライブをするのはどう?」
「面白そうだけど、人脈が限られてるのである…」
 まみが言う。もっともだ。殆どのライブはあみがゲストさんを巻き込んでいる。
「じゃ、各回、あみが顔つなぎで参加すればいいんですよ」
「なるほど」
 れみの提案にゆみが相槌を打つ。
「あみ、それでいい?」
「いいよ。いろんなコとライブするの、楽しみだし」

 第1弾は、まみ主催ジョイントライブとなった。
「我はかつて、うちよそユニットで大会に出たのでその線でいってみよう」
 まみは連絡をとろうとしたが…
 なんとか連絡がついたのはつぼみさんだけだった。
「エルザさんは東京、まいまいさんは最近全然会ってない、わくと君はリーダーのまもるさんを含めて連絡が…」
「でも、つぼみさんに会うのも久しぶりだね」

 そして、つぼみさんと合流した。
「お久しぶり!」
「あ、そうそう。エルザさん、大阪に来てますよ」
 つぼみさんの情報により、3人は大阪に向かった。
 つぼみさんがアポを取ってくれたので、まみ達はエルザさんとの待ち合わせが出来た。

「えっと、エルザさんはまだかな?」
「もうすぐ来られると思いますが…」
 そんな話をしながらキョロキョロしていると…
「あ、りりあさんだ」
「え?確か1年くらい前にライブに誘ってもらった…確か、あみさんでしたっけ?」
「ええ。お久しぶりですね。今日はウチのまみの主催の賑やかライブなんですよ」
「良かったら…」
 まみが誘うが、緊張のためかキャラ作りを忘れている。
 そうこうしているうちにエルザさんも到着した。
「つぼみさんとは前に会ったんですが、あみさん達とは久しぶりですね」
「じゃ、集まったところで…」
 と、あみが言いかけたところで、誰かがあみの肩を後ろからトントンとたたく。
「あ、今日はわたしが主催じゃなかった…って、あれ?」
 よく見ると、4人ともあみの前にいる。主催はまみだってツッコミではないのか。
 振り返ると…
「ようじょさま?」
「こんにちは。うちのロリロリ見ませんでしたか?」
 ようじょさまだった。
「ロリロリさんは見かけてないなぁ」
「そうですか」
「じゃ、今からみんなでライブするから一緒にどうですか?」
 横からまみが誘う。
「お友達も見に来られるかもしれませんね」
 りりあさんも口添えしてくれる。

 そして、6人でライブをしたのだが、実際、ロリロリさんもそれに気づいて、二人は無事再会できたようだった。
「賑やかライブin大阪、大成功ですね」
 つぼみさんが言いかけたところで、
「あ、私もあみさん達も兵庫…エルザさんは東京」
 と言うと、ようじょさまも、
「私たちは滋賀出身…」
「地元は私だけですか」
「いっそ、りりあさん主催って事に…」
「いえいえ、私はあくまでゲストですってば」
 一同、そこで笑った。

 あみは大阪で解散した直後に電話を受けた。
「もしもし、あ、れみ」
「今から会えますか?」
「どうしたの?」
「いや、サンリオコーデ待ちきれず、手持ちのマイメロTシャツ着て大阪に出てきてるんです」
「おお、わたしも大阪にいるよ」
「落ち合いましょうか」
「OK。まぁとにかく合流しよう」

 れみと合流してたあみは二人でデート配信をしたところ…
「あ、さっそく反応あるよ。このはさんがれみの服かわいいってメッセージくれてる」
「他にもいいねが来てますね」
 いろいろとタイムラインを見ていく。
「あれ?この人どこかのわちゃわちゃ会で見かけたことあるかも」
 あみは検索してみた。
「アクア騎士団長さん…この人みたいね」
 どうやら、今、すぐ近くにいるようなので、あみはメッセージを送ってみた。

 数分後…
「あ、返事きたみたい」
「わざわざ検索からありがとうございます」
「近くにいるのでライブでご一緒しませんか」
「わかりました」

 二人は集合場所へ向かった。
「団長さんってことは…」
「団員さんがずらーっと…」
 二人はそんな想像しながら合流したが、アクアさんは一人だった。
「はじめまして」
 アクアさんは限定コーデだった。
「わたし達、合わせるコーデないです…」
 そういうあみ達に、アクアさんがフォローしてくれる。
「私のこの服、色的に私服スーツっぽいし、そのままでいいんじゃないですか?」
「そうですか?それなら…」
「配信ライブ「アクアさんの騎士団に体験入団してみた」スタート!」
 宣言するあみに、
「え?そういう企画だったんですか?」
「いえ、思いつきです」
「…ま、いいでしょう…」
 アクアさんも他に言いようがなかったのだろう。

 ライブも終わり、あみとれみは寮への家路についた。
「なんか、雲行き怪しいね」
「台風10号が近づいてるって朝のニュースで言ってましたよ」
「じゃ、急いで帰らないと電車やばいかも」
「まぁ、台風はまだ遠いから、電車は止まらないでしょうけど、寮の窓を固定しなきゃいけませんからね」
 れみの方が多少冷静なようだった。

 台風一過の晴れた日。あみは一人で配信スタジオにいた。今日はゆみと合流だが、まだ時間がある。
「わたしもゲストさん呼ばないと…」
 そう思って辺りを見回すと、眼鏡をかけた二人組がいる。
「あれ?前にわちゃわちゃ会で見かけた…気がするけど、どっちのコだったかな?」
 あみはとりあえず声をかけてみた。
「あの、こんにちは。前にわちゃわちゃ会でお会いしましたっけ?」
「え、そういえば、お会いしたかも…」
「見覚えがあるような…」
 あれ?二人ともだったのかな?
「わたしはあみ」
「ユイティアです」
「びびっとです」
「せっかくだから一緒にライブしませんか?」
「いいですよ」
「とは言うものの…二人はコーデ合わせてますよね」
「それは、そうですね」
 言いながらユイティアさんが考える。
「あみさんがドレス系なら、「寝ても覚めても」とかならいいんじゃないですか」
「そうですね!それでいきましょう!」

 配信を終えてユイティアさんたちと別れると、ゆみが来ていた。
「あみ、遅刻…ってか、到着はしてるのか…」
「ごめんごめん。わたしもゲストさん呼んでのライブしとかなきゃだし」
「うーむ、待ち時間で課題クリア…じゃ、あたしもしないとね。まみもれみもクリアしたんだよね」
「でも、誰かいるかなぁ…」
 あみがツイッターのタイムラインを見る。と、面識のないコからフォローが入っていた。
「いずみさん…お、これは…うーん、バスケットボールの人なのかな…バスケの試合の事書いてる…」
 あみはフォロワーになってくれたコのプロフィールから投稿を見る。
「あ、最新でプリ☆チャンについて書いてる!仲間がプリチャン配信に行くって…」

 ちょうど、その時配信スタジオに誰か入って来た。
「外国のコかな?ってか、いずみさんがここに書いてるコだ!」
 そのコがあみ達の視線に気づいたのか、あみ達の方へ来る。
「配信スタジオは、ここですよね?」
 あれ?男の子?
「…」
 そのコはあみを見て、
「もしかして、君、いずみ達が配信で見てた人かも」
「あ、そうかもね。さっき、いずみさんからフォロー入ったから」
「へぇ。僕の方が先に会ったんだね。僕はニザーム」
「わたしはあみ。で、こっちはゆみ」
「よろしく。あみ、ゆみ」
 と、話をしていると、もう一人やってきた。大人の人だ。
「あ、ニザーム、ここにいたの?探したよ」
 そして、あみの方を向き、
「私はシャムロックと申します。私の生徒がご厄介になったようですが」
 シャムロックさんはニザーム君の先生らしい。
「いえいえ、ちょっとお話していただけですよ。むしろ、ニザーム君にゲストでライブしないか誘おうかなって思ってたくらいですよ」
「そうでしたか。それでは我々師弟とあなた方とのジョイントライブ、謹んでお受けいたします」
 あ、シャムロックさんもライブできるんだ…
「いずみ達より先にあみさんとライブしたら自慢できるかな?」
 ニザーム君がシャムロックさんに聞く。
「だろうね。おそらく、ゆめみはハンバーガーでも差し入れに用意して臨むべきだとか言うかな」
 他に名前が出てくるあたり、大きなチームなんだろうか。
「ただ、私はあまりコーデを用意してなくて、ニザームとすら合っていないのですが」
 心配するシャムロックさんにあみが答える。
「大丈夫です。わたし達もテーマ無しで闇鍋みたいに好きなコーデで賑やかライブでいきましょう」
「闇鍋賑やかライブ…面白いね!」
 ニザーム君は乗り気だ。
 あみは台風の雨を見ながら用意したのでマジックレインつゆつゆコーデだ。カエルの飾りが可愛く気に入っていたが、なかなか着る機会がなかったのだった。
 ゆみはバルーンデニムコーデを選んでいた。
 ニザーム君は先日まみが着ていたドレスの色違いだ。男の子なのに似合っていてかわいい。
 シャムロックさんはストライプスターパープルコーデを着こなしている。

 ライブが終わって。
「次は他のメンバーともライブできるといいですね」
「そうですね。ありがとうございました」
 ニザーム君たちと別れて、ゆみが切り出した。
「なんか、結局あみがゲストさんを呼んでるよね」
「ははは。そうかもね。でも、今のコーデもう終わりなんだよね」
「そっか、でもある程度は揃ったんじゃない?」
「揃わなかったら実際はミックスコーデにしてもいいけどね」
「おしゃれなあの子マネするより、自分らしさが一番でしょ、ってやつ」
「うん…って、今配信してるコ、見て!」
「ミックスコーデだね」

「あれ?」
 ミックスコーデのコが配信を終えて出てくるなりあみを見た。
「前にわちゃわちゃ会に呼んでくれましたっけ?」
「え?そうでしたっけ?そういえばミックスコーデのコがいたなーって思った覚えが…」
 そこで、ゆみが、
「良かったら、三人でミックスコーデライブしませんか?」
 と誘った。
「え?いいんですか…えっと」
「ゆみです。こっちはあみ」
「私はいろはです。よろしくお願いします」

 三人はミックスを色々考える。
「グミで手に入れたトップス、シクレボトムス無いからこの際使おうかな…」
 などと色々考え、コーデが決まった。そして、ライブした。
「ミックスも楽しいね」
「次の弾のコーデでも面白い組み合わせが出来るのあるといいですね」
「俄然、次のコーデ入荷だ楽しみになってきた!いろはさん、ありがとうございます」
「え?私何か…」
「ミックスで楽しみ増やしてくれたじゃないですか」
「ふふ、そう思って貰えると嬉しいですね」
 いろはさんは楽しそうにウィンクした。

 こうして、第2弾のシーズンを楽しく締めることができたのだった。


今回のライブシーン
                        
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