第11章 ガールズ戦士ショーだパン

「あれ?」
 あみはキラッCHUのいるすくすくダイアリーの窓を見た。すると別のたまごがある。
 モニターにいたみらいが、
「今日からこの子のお世話をお願いするね」
 といい、あんなと交代した。
「ワタクシにふさわしいセレブリティーに育てますわ」

 とりあえず、今日からは別のマスコットを育てることになった。
「まずは、ライブでいいねを集めればいいんだね」
 あみはさっそくれみを呼んだ。
「で、どのようにライブしますか?」
「ラブリーステッチコーデはどうかな。だいあさんがみらいさんに送ったコーデだって言ってたし」
「かわいいコーデですよね」
 さっそく二人はペアライブをした。すると、たまごが光った。
「もう一回ライブすれば産まれるかも!」
 と、そこへなぎささんが現れた。
「そのラブリーステッチコーデ、うちのこのはも気に入っているみたいですよ」
「そうなんですね」
「わたしたち、もう一曲ライブするけどどうですか?」
「私、私服のままですけどいいですか?」
「じゃ、わたしも私服にしようかな」
 そんな話をしていると、ふと、大きなツインテの髪型が目に入る。
「あの髪型は…おーい、こんにちは!」
 あみが声をかける。
 と、その近くにいた別のツインテのコが振り返る。
「あら?お久しぶりですね」
「かりーな♪さん!」
 こちらも前にライブしたことがある相手だった。そして、もう一人も。
「あ、あみさんだ!」
「やっぱり、ちゃんでぃさんでしたね」
「混合ライブですか?だったら、相方連れてきますね」
 ちゃんでぃさんは一旦走り去り、みるきぃさんと戻ってきた。
 そして、みんなでライブをすると、たまごからパンダのマスコットが出てきた。
「パンパカパーン!メルパンだパン」
 こうして、あみは新たなマスコットを育てることになったのだった。

 別の日、あみはメルパンを育てるライブのネタを求めて、プリチャンランドに来た。
 到着すると、ランドの入り口のゲート横の人だかりが目に入った。
「そういえば、入る時にも人がいたな」
 そこでは、二枚組のマスクを配布していた。黒とピンクの二色の洗えるマスクだった。

 あみはマスクをしまいつつ、あたりを見回してポップコーンの移動販売車を見つけた。確か、アリスさんがやっている店だったはず。
「ポップコーンください」
「はい。あ、前にも来てくれたよね」
「あの時はどうも」
 あの時は大盛サービスしてくれたのだった。忘れずお礼は言わないと。
「今日はショーがあるみたいですよ」
「そうなんですね」
「私も、昔サーカスにいたから、ショーって興味あるんだけどね」
「アリス、仕事仕事!」
 横から白猫のマスコット、ソルルが注意する。

 あみはショーのある広場に向かった。
 意外と席は空いている。出し物を見ると…
「へぇ、歴代ガールズ戦士ショー」
 普通なら満員になりそうなものだが…
 よく見ると、座席か飛び飛びになるよう封鎖されている。入り口で配布されたからか、マスクをしている客も見かける。
「そうか、コロナ対策なんだね」
 使える席は9割ほど埋まっていた。見ながら食べるはずのポップコーンはすでに食べてしまっていた。
 とりあえず、ごみ箱に明いた容器を捨て、あみは座ってもいい席を探して座った。  ステージの上には、ミラクルちゅーんずカノンさん、マジマジョピュアーズのモモカさん、ファントミラージュのココミさん、そして、初めて見る戦士がいる。
「ラブパトリーナのラブパトピンク・ツバサです」
 四人の戦士がライブをしている。まぁ、カノンさんはアイドルだし本業か。
 あみが夢中になってライブを見ていると、怪しげな二人組が現れた。 「ラブ、見ーっけ!」
「ライブに夢中になるプリチャンアイドルのラーブを」
「パック」
「リンチョ!」
 黄色い謎の生命体のようなものがカメレオンのように舌を伸ばして人々のラブを食べながら飛来し、あみの頭にかぶりついて帽子のようになった。
「本日のラブゼーロはこちら!」
 あみはライブなどどうでも良くなってしまった。
「愛を失うってコワーイ」
 そう言いながら怪しげな二人組はどこかへ消えた。

「ライブなんてしない!」
 あみが叫ぶと、ステージ上のラブパトピンクが「ラブ違反」と書かれたカードをあみに投げた。それは帽子のようになった黄色い生物に貼りついた。

「たとえラブがかげろうと!愛の翼でラッラララブ!ラブパトピンク・ツバサ!」
 そして、ポーズを決める。
「ポリス×戦士ラブパトリーナ!ラブでパパッとタイホします! みんなの愛、守るため!」
 ラブパトピンクが口上を決め、アイテムを取り出すと、その辺りにいた人々の手にメガホンが現れた。人々がメガホンで声援を送る中、ラブパトピンクが舞を舞う。
 ラブパトピンクのアイテムから光が上空にいつの間にか現れたウサギ型のUFOに届く。
「セットイン!愛を奪う!ラブなき者よ!ラブでパパッとタイホします!」
 あみの頭の上の生物は一瞬目を見開くと、ハートを吐き出しながらUFOのほうへ舞い上がり、檻に閉じ込められた。檻のそばにいたウサギのようなマスコットが、
「ラブタイホ、完了ピョコ!」
「これにて一件落着!」

「ありがとうございました」
「それにしても、よく狙われるね」
 お礼をいうあみにモモカさんが言う。確かに。
「あれ?先輩たち、この人の知り合い…?」
「プリチャンアイドルやってて、よく巻き込まれる人ってとこかな」
「プリチャンアイドルの人?一緒にステージ上がりませんか?」
 ツバサさんが誘う。
「いいんですか?」
「もちろん。ラッララー、ラッラララ〜ブ♪」
 結局、本物とコスプレの物真似に本家登場風ライブを配信することになったのだった。

 あみはそのままバイトに向かい、仕事の合間に休憩室に来た。
「おつかれ」
 ゆみたちが来ていて四人全員が揃った。
「そういえば、マスク配布してたね」
「啓発用配信で、私服のままマスク付けてライブでもやる?」
「いいかも」
「ついでに、前のアマビエ様看板写真のマスク付きバージョンもやろうかな」
「そういえば、あの絵、修正したんだっけ」
「うん。耳というかエラみたいなのが無かったから描き足したんだ」
「じゃ、明日の配信はマスク持参で!」

 翌日、四人はライブをしてみたものの…
「ちょっと息が苦しかったね」
「なんか、ニュースで熱中症対策で、外でソーシャルディスタンスが保てる時はマスクを外すって言ってたしね」
「じゃ、外でその啓発ライブもしようか!」

「やっぱり、マスクじゃ顔も判りにくいし、ライブ中は外そう…」

 結局、四人はマスク付きライブは諦めて、マスク使用は移動中だけにすることにしたのだった。


今回のライブシーン
                           
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