第7章 デザインパレットだっチュ(前編)

「4人で買い物なんて久しぶりだね」
 れみは幸い新型コロナには感染していなかったので、あみは寮に戻り、今日はメンバー4人揃ってのお出かけだった。
「あっ、ワゴンセールにデザインパレットがあるよ」
 あみが目ざとくデザインパレットを見つけた。
「だいあさんが去って、販促期間が終わりましたからね」
「今たまってるポイント全部使えば二千円以内で買えそう!ラッキー!」

 あみはデザインパレットを手に入れて、ウキウキだ。
「今度、全員のコーデ作るから、それでライブしようね」
 そんな話をしながらエスカレーターを降りる。と、目の前でプリパラのらぁらみたいな髪型のコがキョロキョロしている。
「どうかしましたか?」
「あ、すみません。この辺りのモーリーファンタジーって場所を探しているんですが」
「あ、それならあそこのゲーム機の並んでいる所ですよ」
「ありがとう。友達と待ち合わせしてるんですけど、日本には慣れてなくて…」
「え?どこの国から来られたんですか?」
「ロシアです」
「えっと、ピロシキとかボルシチの…」
「あみ…食べ物しか連想が出てこないんですか?」
 あみのリアクションにれみがつっこむ。
「そういえば、まどかのお師匠さんと試合したプロレスラーがロシアの人だったんじゃない?」 「確か、イワン・コロフ選手」
 あみの返答にロシアのコがおそるおそるつっ込む。
「それ、昔の、私の国がソビエトだった頃の選手だった気が…有名ということならザンギエフとかかな」
「あ、その人だわ」
「ところで…あみさんといいましたか?」
「え、あ、はい」
「もしかして、この前の衛星落下騒ぎの時にいいねを集めてた人ですか?」
「あれ?なんで知ってるんですか?」
「今から会う友達のリツイート見ていいねを送りましたから」
「そうなんだ。ありがとうございます」
 言いながら、一同はモーリーファンタジーに到着した。そして、そこにいたのは…
「あれ?このはさん?」
「なぜリフィナとあみさん達が一緒に?」
「たまたまそこで道案内を…」
「私はリフィナが来日してタピオカが気に入ったというので、タピオカコーデを貸してライブしようとしてたんです」
「あ、ここに配信スタジオありますもんね」
「よければ、一緒に…あ、れみさん、具合はもういいんですか?」
 そういえば、れみが隔離してた時にこのはさんと居る時に電話があったっけ。
「はい、幸い感染はなかったので」
「それは良かったです」
「それじゃ、タピオカに合わせるコーデじゃないけど、みんな好きなコーデでやりますか」
「そうですね。それじゃ、私も猫ちゃんコーデにしようかな」
「このはさん、あれ、似合ってますもんね」
 こうして、勢いでジョイントライブをすることになった。

 お出かけから戻って、配信を見ながら、
「最近、ジョイントとかゲストさん呼んでとか少ないから、今日のは楽しかったね」
「コロナのこともあって募集も難しいか」
 あみの意見にゆみが答える。そこにれみが提案する。
「わちゃわちゃ会の招待リストを見れば活動状況判るんじゃないですか」
「なるほどね。どれどれ…」
 あみが顔ぶれを見ていく。
「えっと…みなもとさん、は静岡から呼ぶの遠いね。くれあさん、こままこさん、ゆめみさん…誰も会ったことないか」
「ツイッターのほうは?」
「ひなさんが誕生日記念配信やるから参加者募ってるみたい。エントリーしようかな」
 あみはさっそくエントリーした。すると、返事が返ってきた。
「ワーイ!ありがとうございます。ゆめみるおとめコーデ合わせとかでどうですか?」
 
 そして、配信の日。
 あみはスタジオに入るとひなさんはもう到着していた。
「エントリーありがとうございます」
「どんな配信にするんですか?」
「ライブ画像を切り出して、プリクラ風のものを作ってみた、みたいなのを考えてるんですけどね」
「楽しそう!」
「コーデはゆめみるおとめコーデでいいですか?」
「うん。ちゃんと用意してきてますよ」
「じゃ、始めますか」

 ライブが終わって。
「ありがとうございました」
「完成したら画像送りますね」
「楽しみに待ってますね!」

 あみはそのままスタジオの近くのコンビニに入った。
「おなか空いたし、サンドイッチでもつまもうかな」
 あみはたまごサンドとパックのカフェオレをレジに持って行った。
「あそこのイートイン用のベンチで食べようっと」
「あ、だったら消費税上がりますけどいいですか?」
 あみの独り言に店員さんが反応する。そうだった!ここで食べると外食の税率になるんだった!
「あっ違います!やっぱりここでは食べません!」
 駅前のベンチにしよう…

 駅前のベンチでサンドイッチを食べ、ごみをまとめていると、通りかかったコがこちらに会釈してくれる。
「こんにちは」
「あ、こんにちは…」
 誰だっけ?
 あみの表情に気づいたのか、そのコは薔薇のアイパッチを取り出し、右目に当てた。
「あ、あまねさん!」
「あみさん、もしかして、私をローズアイパッチの人だと思ってませんか?」
「ちょっと…思ってるかも。あ、でも、さっきひなさんも付けてたし、流行ってるのかな?」
「確かにローズアイパッチ教徒って感じですけどね。今日はうお座のホロスコープコーデでライブしようと思って」
「そうなんだ。わたしは今はホロスコープは持ってきてないけど、青い自作コーデならあるかな」
「青コーデ合わせですか。いいですよ」
「あっでも、わたしとれみもうお座生まれだから、いつかはうお座合わせやりたいな」
「そうなんですね。器械゛あればやりましょう」
 あみはあまねさんとスタジオに戻った。と、まもるさんが配信を終えて出てくるところだった。
「あ、まもるさんだ」
「あら、こんにちは」
 まもるさんもたまたま青いコーデだった。
「わたし達、今から青コーデライブやるんですけど、一緒にどうです?」
「ははは。たまたま青を着てただけだけど、これも何かの縁ですかね」

「曲はどうします?」
「青いコーデだから…」>
 あまねさんが提案する。
「ヒロインズドラマだと、赤いカーペットだからコーデも背景と同化しないし、みんなドレス系だからいいかも」
「確かに!」
「じゃ、それでいきますか」

「なんか、あまねさんが始めようとしたライブなのにわたしがセンターで仕切っちゃったね」
「まぁ、いつものことですしね」
「ですね」
 まもるさんも相槌を打つ。
「でも、曲の提案はあまねさんでしたよね」
 まもるさんは続けてフォローしてくれる。

 そんなこんなで二つのライブをこなして帰る道すがら、あみは少しモヤモヤしていた。
「うーん、楽しかったんだけど、何か忘れているような…」


今回のライブシーン
             
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