第5章 1日キャストだっチュ

「そういえばさ」
 ゆみがおもむろにパキっていないプリチケを取り出した。
「え?何々?」
 身を乗り出すあみにゆみはプリチケを見せる。
「ランドのオープン前に出たプリチケなんだけど、フォロチケ部分にこんなの付いてたんだ」
 そこにはプリたまの絵が描かれている。
「なんか、コーデが貰えるみたいですね」
 れみが横から説明を見て答える。
「さっそくランドへ行ってみようよ」

 四人がランドに到着し、カウンターでプリたまのカードをスキャンする。
「どうぞ」
 渡されたコーデはピンクのプリ☆チャンランドのキャストの制服だった。
「みらいさんが着てたのと同じかな?」
「我はすでに持っているが…」
「あれ?まみのはRだけど、これはSRになってるよ」
「特別なものなんですかねぇ」
「あ、説明が書いてるよ」
 ゆみが説明書に気づく。

「なになに…これを着て、一日キャスト体験をしてもらいます…だって」
「面白そう!やるやる!」
 乗り気でハイテンションなあみの横でゆみが呟く。
「これって人件費浮かすためのものだったりして…」
「キラッCHUも手伝うっチュ」
 キラッCHUは人型のマスコットの姿になっている。ランド内ではこの姿らしい。

「で、何をすればいいのかな?」
「あみちゃんの性格からして、これはどうっチュ?」
 キラッCHUがお仕事一覧から選ぶ。
「みんなでライブコーナーのインストラクターかぁ」
「確かに、いちばん私たち向きですね」
「それじゃ、お客さん集めなきゃね」
 あみはいきなり駆け出した。
 れみ達はそんなあみを見送りながら、
「私達はこのポスターでも貼りに行きますか」
「これは見学に来てくださいってポスターだね。公開ライブにするんだね」

 あみはキョロキョロとあたりを見回しながら走る。
「あ、めばえさん!今日は姉弟揃って来てるんですね!」
「あら、こんにちは」
「あ、お久しぶりです」
 めばえさんの横でわくと君が会釈する。
「噴水広場で『みんなでライブ』イベントやるので来てくださいね!」
「面白そうですね。あみさんは…」
「わたしはランドの一日キャストだから、スタッフ参加ですよ。では、また後で!」
 あみはそう言って振り返ると、はぁるる♪さんとはるか♪さんを見つけて走っていった。

「ふーん、楽しそうですね」
 はるか♪さんはそう言ってはぁるる♪さんを見る。はぁるる♪さんはにっこり頷く。
「あれ?あみさん!また何か企画してるんですか?」
「あ、シュヤラさん!そうなんです。今日はイベントのスタッフなんですよ」
「へぇ。私も行こうかな」
「ぜひぜひ!」

 あみは時計を見た。イベントの時間も近い。
「そろそろ帰らなきゃ」
 あみはイベント会場に向かって走り出した。と、目の前にこのはさんがいる。
「こんにちは!今からイベントですよ!」
「えっ…ああ、あみさんでしたか」
「ごめんなさい。いきなり背後からだとびっくりしますよね」
「なぎさがジュース買いに行ってるので、てっきりなぎさだと」
「という事はりな★君も?」
 このはさんは三人組ユニット、ダイアモンドスターのメンバーなので、三人で来ていると思ったのだったが、
「りな★は今日は来てないんです。なぎさと二人」
「男の子一人だと気をつかうのかな?」
「あ、それを言ったら私も実は…あ、いえ、何でもない」
「?」
 このはさんが何か言いかけてはぐらかしたところへ誰かが近づいてくる。
「なぎ…あれ?あまねさん?」
 なぎささんとあまねさんが一緒に戻ってきた。
「そこで会ったら、このはさんが居るって聞いて一緒に。あみさんもいらしたんですね」
「うん。イベントの一日キャストなんですよ。みんなで行きましょう!」

 四人で会場に戻ると、めばえさん達はもう到着してまみと雑談している。

「えっと…イベント会場はココですか?」
 現れたのはメロディー☆さんだった。エルザさんチームのスペインのメンバーの一人だ。
「あっ、メルさんお久しぶりです!日本にいらしたんですね」
「あみさんがやってるイベントだったんですね。エルザに会う前に新しく出来たスポットを見学しようと思って」
 あみとメロディー☆さんが話していると、はぁるる♪さん達もやって来ていた。

「それじゃ、ルールを説明しますね」
 あみが一同にマイクで説明を始める。
「まず、四人ずつの班に分かれて、キャッスルの東西南北の噴水の前で同時にライブします」
 みんなが頷く。
「それを、カメラを切り替えることで16人ライブとして配信します」
 あみは全体を見回す。自分を入れて13人だ。
「あ、3人足りない…」
「じゃ、キラッCHU、大きくなるっチュ!すくすくすくー」
 キラッCHUがアイドル姿に成長した。
「あと二人」

 あみは様子を見に集まった観客を見渡して、すたすたと客席に向かった。
 そして、その中に見知ったコを見つけると、いきなり手を握った。
「はなこさん、お願い!参加してください!」
「私、見に来ただけなんだけど…」
 言いながら、やれやれ、という表情ではなこさんは出演者の方へ進む。

 そして、そこからあみが視線を移した先にいちかさんがいた。
 いちかさんはあみと目が合うと、
「え?あたしも?」
 という感じで自分を指さした。あみはそれを見て満面の笑みで頷いた。

 こうしてメンバーが揃った。

「班分けはどうなるんですか?」
 なぎささんが手を挙げて質問すると、あみは
「折角の企画だからチーム関係なくシャッフルしまーす」
 と言い、班分けを発表する。
「1班は、まみ、わくと君、あまねさん、このはさん」
 と言い、思い出したように、
「あ、まみとわくと君は昔大会でチーム組んだんだっけ…」
「いや、助っ人はノーカウントでしょ」
 ゆみが横からつっこむ。
「じゃ、いいか。次はゆみの班ね、2班。ゆみと、メロディー☆さん、めばえさん、はるか♪さん」
 名前を呼ばれた人が集まっていく。
「3班は、れみ、シュヤラさん、はなこさん、いちかさん。で、なぎささんとはぁるる♪さんはわたしの4班です」
「ということは、キラッCHUも4班っチュ?」
「うん。そうなるね。じゃ、みんな、親睦を深めながら、楽しくライブしましょう!」
「おー!」

 こんな感じで、あみたちの1日キャスト体験は無事終わったのだった。

 そして、その様子を黒猫がじっと見ていた。黒猫は、あみたちのライブを見届けると、満足そうにどこかへ歩み去っていった。


今回のライブシーン
               
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