第33章 ホワイトデーライブだよん
「で、ゆうきのおススメのバルはどうだった?」
「おいしかったです〜。オリーブオイルつけたパンとか」
「どっちかというと生ハムがメインの店だと思うけど…」
あみとれみは梅田に足を伸ばして二人でランチをしたのだった。
「二人でデートなんて久しぶりですね」
れみがあみにぴったりとくっつきながらおっとりした声で言う。
「れみがそれやるとシャレにならない人にしか見えないってば」
「あははは」
「じゃ、ここ、梅三小路にある配信スタジオへ行くよ」
そう。目的の一つは先日のバースデーライブに来れなかった人を探すことだった。
「あ!」
あみが待合で仲間と雑談しているコに目を留める。
「あの人がどうかしましたか?参加表明の人とは違うみたいですけど」
「でも、ほら!」
バースデーライブにいいねをくれた人だった。
あみが声をかけようとすると、ちょうどそのコがどこかへ行ってしまう。
「あ…」
すると、そのコと話していたコが、
「お姉ちゃんの知り合い?」
さっきのコの妹さんのようだ。
「うーん、知り合いというか…」
「みにゃ、どうした?」
さっきのコが戻ってきた。
「あれ?どこかで見たことあるような…」
あみは自分のスマホでツイートを見せる。
「あ、この前タイムラインで見かけた人!」
「あみです。こっちはれみ」
「よろしく」
「あおにゃん☆です。で、妹の…」
「みにゃです。よろしく」
「この前はいいねをありがとうございました」
「いいねしたら、まさか会えるなんてね」
「せっかく会えたし、ジョイントライブしませんか?」
そこへ、また一人近づいてくる。
ぐるぐるほっぺが印象的な活発そうな見た目のコだ。
「あの、ウチのコたちが何か?」
「わたし達の配信にいいねを下さっていたので、お礼を」
「そうでしたか」
「で、ジョイントライブしようって話になったんだよ」
あおにゃん☆さんが加える。誘ったところだったけど、OKということらしい。
「あ、私はあさぴーです。このコたちの…」
言いかけたところにみにゃさんが、
「お母さんみたいなものかな」
「せめてリーダーと言って!」
確かにあさぴーさん、見た目以上にしっかりしてそうな人ではある。
「では、楽しみましょう」
ジョイントライブを終えて。
「私たちは神戸に帰ります」
れみが言うと、あさぴーさんは、
「遠征でしたか。コロナウイルス騒ぎがなかったら、またご一緒できるかもしれませんのにね」
「確かに。感染が流行りだすといから、なかなか遠出しにくくなりますもんね」
「それでは、お気をつけて」
あさぴーさん達と別れて、あみはれみに言った。
「さっきの話だけど、遠征できなくなるかもしれないから、わたし、なんば経由で帰るね」
「私は用事があるからこのままJRで帰りますね」
あみは地下鉄に向かい、なんば方面の電車を待ちながらツイッターを見た。
エルザさんが大阪に来ているけれど、ライブの約束している人との待ち合わせ場所がわからないようだった。
あみは電車の中の暇つぶしを兼ねて、待ち合わせ場所のアドバイスを送信した。
なんばについたあみはショップで中古コーデを買い込んだ。
「なかなか来れなくなるかもしれないし、ね」
これまで3色中緑しかなかったスターダストセーラーコーデの赤など、色々見つかった。
そして、ショップを出て、ここのスタジオにも向かってみた。
残念ながら、人はいなかった。
「じゃ、帰ろうかな…」
そこへ、二人組が入ってきた。そして、お互い、
「あ!」
「さっきの!」
エルザさんと待ち合わせをしていた人たちだった。
「さっきはどうも。おかげでライブできました」
そうか、コーデを見ていて一時間以上経っていたんだ…
「えっと、確かみるきぃさんでしたっけ」
「はい。それから、相方のちゃんでぃです」
「せっかくだから、わたしともライブしませんか」
「そうですか?ありがとうございます!」
こうして、最後の遠征は、気が付くと、バースデーライブに参加表明してくれた人を探そうとした結果、他で多くの出会いがあるという結果になった。
「なんか、楽しいライブが出来たし、ニコチケコーデもいいのが手に入ったし、最高だったな」
そう。スターダストセーラーがついに3色揃ったのだった。そして、原始人コーデも手に入った。
そして、次の日。あみ、れみ、まみの3人でさっそくスターダストセーラーライブを配信した。
「なんかキラキラで以前とはコーデの雰囲気変わりましたね」
「うむ。気に入った!」
「あと、原始人コーデもあるよ」
あみが言うと、
「へぇ、面白そうですね」
れみは乗り気だが、まみは…
「なんとなく、我よりはゆみに似合いそう…」
ちょっと恥ずかしいのかな。確かに、あみ同様のこむぎ色の肌に長髪。ゆみが一番似合いそうではある。
「よし。ゆみを呼び出そう!」
あみ達は詳細を告げずにゆみを呼び出した。
と、そこへ、このはさんのグループが入ってきた。
「こんにちは」
「こんにちは。ダイヤモンドスター総出でライブですか」
「ええ。暖かくなる前に雪だるまコーデでネタライブでもしようかと」
「ちょうど、わたしたちも原始人でネタライブするんです」
「ジョイントでコラボしたらカオスだね」
りな★君が言う。と、なぜか全員口を揃えて、
「それって、実行ってことですね」
半時間後、何も知らずにゆみが到着した。
「おまたせ」
「ゆみ!このはさんたちとジョイントライブするよ!」
「そうなんだ。で、どんなコンセプトなのかな」
「それはね…」
「なんでぇーーーー」
ゆみの絶叫がこだました。とはいえ、ライブ自体はとても楽しかった。
「冬の雪だるまと、暑い原始時代が入り混じるってコンセプトからして無茶苦茶だし、新鮮かもね」
「パシャリングであみさんが骨付き肉を齧ってるのが妙にツボりました」
なぎささんがライブ外のネタにもつっこむ。
「でも、雪だるまコーデ、かわいいなぁ。わたし持ってないから初めて見た」
羨ましがるあみにこのはさんが、
「余ってるから着てみます?」
ありがたい申し出をしてくれる。
あみはウキウキでこのはさんと雪だるまペアライブをすることになった。
3人がわちゃわちゃと盛り上がりながら寮に戻ると、くみ、みぃ、さなえがいた。そして、まどか、まみ、ゆうきも横の椅子に座っている。
あみはテーブルの上を見た。お菓子が盛りだくさんだ。
「遅かったね、3人とも。じゃ、配信動画をアップするよ」
さなえが操作する。
そう。今日は3月14日。約束のホワイトデーライブ配信の日だった。
「コーデ揃えるの大変だったんだよ」
「1色しかないのになかなかトップスが出なくてね」
「じゃ、ライブ動画見ながらお菓子食べようね」
「うん。はは、ははは…」
あみは実は今日のことを忘れていたとは言えず、作り笑いを浮かべながらお菓子を口にしたのだった。
今回のライブシーン
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