第31章 バレンタインだよん

「ねぇ」
 ゆみが話をふった。
「今、限定チャンネルで、プリズムショーの衣装のリファインみたいなの出てるじゃない?」
「うん。前にゆうきとまみと一緒に集めてライブしようねって話だったけど」
 あみが答える。なる店長がアイドル時代に出演したドラマ『レインボーライブ』の衣装で、もともと可愛い衣装がパワーアップしているのだった。
「第二弾のほうのやつ、れみとまどかが赤と黄色揃えたって聞いたから、あたしも緑を、と思ったんだけど、アクセと靴が出ないんだ…」
「あ、アクセと靴はアタシのと共通みたいだよ」
 ゆみにまどかが答える。ゆみはラインナップ表を見直す。
「あ、本当だ」
「じゃ、六人でライブできるね」
「ドラマだとあみたちはハッピーレイン、あたしたちはベルローズでライバルの衣装だけどね」
「まぁ、呉越同舟…というか、そもそも私たちはライバルでもないですが」
 れみがフォローする。
「ユニットでライバルやるには、あみに分身の術使ってもらわないと」
 ゆうきが無茶な話の振り方をする。
「でも、それやるなら、来週のバレンタインライブで3対3でやるのだ」
 まみが提案する。
「今回の組み合わせで?確かにバレンタイン曲は3人ライブだけど」
「どうせなら、れあみゅーずが揃ってるし、あたし達対れあみゅーずでどうかな」
 ゆみが提案する。

 こうして、バレンタイン対決が決まったのだった。

 さて、今年のバレンタインのコーデは、去年のコーデの色違いと新作のコーデだ。
「我とゆみはは去年のを使えば、まどかが新色でいけるのである」
 まみが提案する。
「去年と同じでいいの?」
「うむ。ハートモチーフの帽子とか、スプーンやフォークだけでなく地模様のドットのストッキングとか、かわいくてお気に入りなのだ」
「じゃ、れあみゅーずは新作だね」
「スカートにプレゼントがついてたりこれもかわいいね」
「雑誌の付録の色違いはあるけど、限定カラーも通常カラーも持ってませんよ」
 れみが言う。
「単色でおそろいでもかわいいし、太ももの絶対領域が映えるカラーだし、これでいきますか」
 れみの提案にあみは首を横に振る。
「一応、来週までにゲットできるかがんばるよ。限定カラーはあと一つだし」
「アタシも新色狙うから、限定カラー出たら提供するよ?」
 まどかが助け舟を出す。
「逆に、新色のアクセとスカートはあるからね」
 あみも答える。ギブ&テイクだ。

 さて、あみとれみはコーデゲットのために配信スタジオへ向かった。
「ゆうきも来られると良かったんですけどね」
「まぁ、バイトのシフトもあるしね」
 それ以前に、ゆうきのバイト先はあみたちの向いの店なのだが。

 しばらく歩いた四つ角であたりを見回しているコがいる。
「どうかしましたか?」
「仲間とライブしたあと、別の道通ったら道に迷ってしまって。スマホ忘れて連絡も取れなくて」
 そのコが困っていたようなので、
「ライブってことは共通の知り合いいるかも」
「多分、相方はしらないでしょうけど、同じグループのあまねちゃんなら…」
「あ、あまねさんなら連絡取れますよ。えっと…?」
「すふれっていいます」
「わたしはあみ。こっちはれみ。よろしくね」
 あみはあまねさんに連絡を取った。
「あまねさん?すふれさんが道に迷ってて」
「うーん、迎えに行きたいけど、今日体調がいまいちなんですよね…」
「そうなんですか」
「いつものスタジオまで連れて行けば大丈夫だと思いますよ」
「あ、そうですか」
「すみませんね。じゃ、すふれのことよろしくお願いしますね」

「すふれさん。一緒にスタジオまで行きましょうか。わたし達もライブに向かうところなんですよ」
「助かります」
「せっかくだし、一緒にライブしましょうか。どんなコーデを持ってます?」
「ノンシュガーののんちゃんの色違いなんですけど」
 それを聞いてれみが、
「私、ちりちゃんの色違い持ってます」
 そういえば、フェニックスと孔雀の鳥ライブとかしたな…
「じゃ、わたしはペッパーちゃんの色違いにして、ノンシュガー風ライブだね」

 人助けの善行のおかげか、あみたちは無事、バレンタインコーデを三色揃えることが出来たのだった。

 バレンタインの2日前。
 あみはバレンタインコーデの試着でもするかとスタジオを訪れた。すると…
「だよにちは〜」
 いつもより気だるそうな口調でだいあが降りてきた。が…
「あれ?」
 だいあが黒っぽくなっている。
「だいあだよん」
 なんか別人みたいになっている。そこへ、
「キラにちは〜」
 いつものだいあが降りてきた。
 あみは混乱した。
「はてはて?だいあが二人いるんだもん?」
 いや、こっちのほうが「はてはて?」なのだが。
 そういえぱ、以前、リングマリィのジュエルチャンスでだいあが分裂したことがあったっけ。バーチャルアイドルだから何でもアリなのだろう。
 とりあえず、なぜかこんな事態になってしまった。
「どうするつもりだよん?」
「ライブするんだもん?」
 二人のだいあに言われて、つい、あみは先日の当たりのだいあのコーデの色違いを出した。
「滅多にない機会だし、三色ライブしよう」
「だもん!」
「だよん!」
 人は冷静さを失うと、何をするかはわかったものではない。

 そして翌日。各々のチームでバレンタインライブを収録し、六人でチョコを大量に買い込んだ。
「じゃ、明日のバレンタインデーに一気に配信しようね」
「楽しみ〜」

 と、そこへ、
「みんなひどいよぉ!」
 さなえが休憩室に入ってきた。
「バレンタインライブ、我々もやりたかったな…」
 みぃとくみが続く。と、六人は立ち上がり、チョコ満載の紙袋を三人に渡した。

「ホワイトデーライブ、楽しみにしてるよ!」
 なるほど。そういう事ね。くみ達はチョコを見ながら頷いた。


今回のライブシーン
                        
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