第30章 ユニット対決だもん

「やっぱり息ぴったりだなぁ」
 あみはまりあとすずのユニット、リングマリィのライブの配信を見ていた。
「次は…ツインテールズ」
 普段はライバルユニットのメンバーのえもとあんなのユニットだ。特に、この二人はよく喧嘩をしているのを見かけるのだが…
「すごいなぁ…」
 リングマリィに勝るとも劣らない完璧なコンビネーションだ。

 あみが感心していると、けたたましい声が聞こえてきた。
「ふぁわわーー、これ、これぇ!止めてー!なんとかしてぇー!ぎゃっふん」
 見ると、誰かが倒れている。
「あの、大丈夫ですか…?」
「あ、大丈夫…」
 起き上がったのは…
「七星あいらさん!」
 著名なデザイナーにして、アンジュさんとユニットを組んだ伝説級のプリ☆チャンアイドルとしても知られる人物だ。
「あいらさん、大丈夫ですか…」
 そして、あいらさんを追ってきたのはディアクラウンの幸瀬なる店長だった。

 あみは、ふとこの二人を見て思い出した。
 元の世界では、この二人とみあさんの三人で神アイドルユニット、セインツだったんだよね。はるか雲の上の存在だ。
「あれ?どうかした?」
 なる店長があみの視線に気づいた。
「実は、わたしのいた世界ではお二人が三人組のアイドルユニットとして活躍されてたんですよ」
「あ、そういえば異世界から来たって言ってましたね」
「じゃ、あなたとなるちゃんの三人でライブしちゃう?」
 あいらさんがとんでもない提案をする。
「それって、とーってもハピなるだね!やってみよう」
 なる店長も乗り気だ。

 伝説のユニット、セインツのセンターをみあさんの名代として自分がやるなんて!
 あみはドキドキしながらもスタジオに入った。なる店長はアイドル時代の衣装のリメイクで、先日復活ライブをした時のコーデだ。小柄な店長が着ると、年上なのに可愛いとしか感想が出ない。
 あいらさんもコーデを着るとオーラが違う。
「わたし、今日はレアリティの低いコーデなんだよね…刺繍が綺麗で気に入ってるけど」
「大丈夫だよ、あみちゃん。服の声に耳をすませてごらん」
 あいらさんがアドバイスする。不思議と、コーデが応援してくれているような気がしてきた。
「じゃ、ライブ、始めよう」

 あみが夢のようなライブを配信している時、スタジオの待合室で。
「あ、このははもう時間だね」
「あみさんとは入れ違いになりそうだね。まぁ、アポ取ったわけではないし」
 れんげさんとこのはさんが話をしていて、このはさんが去っていった。
 そこへあみが出てきた。
「あ、れんげさん。こんにちは」
「こんにちは」
「せっかく会ったのに、用事があるから行かなきゃなんですよ」
「おかまいなく」

 れんげさんがあみを見送り、配信しようとしたところにさなえが現れた。
「あ、すみません。ここにおだんごツインの…」
「あみさんでしたらさっき出ていかれましたけど」
「あみの知り合いの方でしたか」
「れんげです。よろしく」
「アタシはさなえです。そういえば、アタシ達、髪型似てますね」
「そうですね」
「これも何かの縁ですし、一緒にライブしませんか?」
「あ、このコーデならお互い色違いですね」
「コレだと格闘ゲームの色違い同キャラ対決みたいで面白いかも」
「そういえば、あみさんに用事は大丈夫ですか?」
「後でメールしておきます。今はライブを楽しみます」
「さなえさん、さすがはあみさんのお仲間ですね」
 二人は顔を見合わせて笑い、ライブ会場へ入った。

 一方、あみは用事を済ませて歩いていくと、なぎささんとりな★君が配信を見ているのを見かけた。
「あ、誰かライブやってるんですか?」
「ええ、同じグループのれんげが面白いライブやってるんですよ」
 あみは画面を見て驚いた。れんげさんとライブしているのはさなえだった。
「あ、うちのグループとのコラボになってる」
「じゃ、こっちでも対抗しましょうか」
 なぎささんが笑いながら言う。
「うちもユニットでライブする予定だったんですけど、このはが用事で」
「で、わたしが代わりにジョイントですか」
 今日はよくユニットの代役やる日だな…
「あ、でもれんげさんもいないですよね?」
「れんげはキラキラチャイナって別のユニットだから。ボク達はダイヤモンドスターってユニットなんだ」
 りな★君が教えてくれる。そうか。グループ内にユニットがあるのか。
「ただ、コーデが、今日はこのはがデザインしたコーデなんですよね」
 そういうなぎささんにあみは3DSを見せながら答える。
「じゃ、すぐに合わせて作りますね」
 二人は自分のイメージカラーの色違いコーデだったので、あみは同じ型紙で自分用の色のものを作った。
「これでいいかな?」
「いいですね。それでは始めましょうか」

 あみがライブを終えると、さなえからメールが来ていた。
「久しぶりにグループで何かしませんか。明日は9人揃うんですよね」
 とのことだった。

 あみはなぎささんたちと別れて何をするか考えていた、というより思いついたネタを検討していた。
 うちのグループでユニットってどうなんだろうか?
 考え事をしながら歩いているとまもるさんとばったり会った。
「こんにちは」
「今からライブですか?」
「ええ、まぁ…」
 まもるさんは少し歯切れ悪く答えた。
「どうかしたんですか?」
「ミックスコーデでやろうとしてるんですけど…」
「へぇ、可愛い組み合わせですね」
「他の人のを参考にしたから、マネしたって思われたら、って思うと、ね」
「じゃ、わたしはそのまもるさんのを参考に…っと」
 あみはまもるさんのミックスコーデをすべて色違いで組み合わせた。
「ほら、これで最初の人はファッションリーダーで、わたしはまもるさんのまねっこ!」
 まもるさんはクスッと笑って全くこの人は…って表情で頷いた。

 そして、勢いで色違いライブをした後、あみはまもるさんに尋ねた。
「まもるさんのグループにはユニットってあるんですか?」
「ユニットってほどじゃないかもしれないけど…プリパラの四季ライブの話、知ってます?」
「ええ」
「ひびきの天才チームとみれぃの努力チームってあったでしょ」
「あったあった」
「私とめばえとちゃむが努力チーム、ロコとリアーネとわっ君が天才チームかなって話をしたことはあったかな」
「なるほど。なんか、今日はいろいろありがとうございました!」
 あみにいきなり礼を言われ、まもるさんはきょとんとしていた。

 翌日。いつもの休憩室に9人全員が集まった。
「で、今回はどんな企画やろうか」
 さなえが切り出したが、あみがすかさず、
「ユニット対抗戦をしよう」
「え?」
 一同、ポカンとなる。
「今から4チーム作ってライブして、どのユニットを応援するか投票してもらうの」
「チーム分けはどうするの?あたしとあみとれみはプリパラでユニット組んでたけど」
「れあみゅーずですね。懐かしいなぁ」
 れみが言う。
「じゃ、アタシ達ダンスの練習してるメンバーでユニット組むかな」
 さなえが声をかける。
「アタシとあみとみぃとまどかの4人で。ユニット名はどうしようか」
「ダンス大好きチーム」
 あみがセンスの欠片もない提案をする。
「頭文字でD.D.Tは?」
 みぃが提案する。
「いいね。かっこいい!どっかで聞いた事ある言葉だし」
 …実際は殺虫剤やプロレス技なのだけれど。
「我は大会で連合ユニットを…」
 まみが言いかけるが、
「まみ以外助っ人だし却下。まみはあたしとあみとれみの4人でやってきたでしょ」
 ゆみが突っ込みを入れ、まどかが横やりを入れる。
「みんな「み」がつくし、ユニット名は4−Miとかかな」
「まどか…あたしたちが悩んで付けられなかったユニット名をいとも簡単に…」
「あ、でもその名前気に入った」
 まみがあっさり承認する。
「お姉ちゃんはユニットに入ってないよ?」
 くみはあみに指摘され、
「前にあんたと姉妹ユニットやったけどね」
「じゃ、まどか。わたし達の姉妹ユニットの名前は?」
「え?いつから命名担当に…じゃ、あみくみ姉妹でArc-Sistersとか」
「いいね。あみに任せるとあみくみ姉妹がユニット名になりかねないからね」
 くみのコメントにあみ以外が爆笑する。

「…ちょっと待って」
 あみが我に返る。
「わたし、全部に入ってる!」
「じゃ、4曲がんばってね」

 最初は4−Mi。結成当時の雰囲気で、旧のプリ☆チャンユニフォームの4色ライブ。
 Arc-Sistersはリングマリィのライブをレインボーコーデでカバー。
 D.D.Tはヒップホップコーデで踊る。
 れあみゅーずは私服ミックスコーデでライブ。

 配信から2日後。結果発表だ。
「どれどれ」
 4−Miとれあみゅーずが同点トップだった。配信のいいねの数は4−Miのほうが少し多かった。
「優勝は4−Miだね」

 結果でわいわい盛り上がっている一同から少し離れたところで、れみが一言。
「私のいるユニット2つがトップ。うふふふふ」


今回のライブシーン
                                 
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