第28章 プラチナクラス認定会だもん
「で、この近くでいいの?」
あみはゆうきに確認する。
「うん。正月休みで食材が少ない中、去年は結構色々食べたんだよね」
あみとゆうきは梅田で生ハムのおいしいバルにランチをしに来ていた。
まず、お初天神を詣でてから、阪急方面に歩いている。
「初詣もしたし」
「でも、わたし、元旦にれみ達と神戸の長田神社で初詣したけど、初詣でいいのかな」
「まぁ、大阪では初だしいいんじゃないの?」
二人は生ハムとパンを食べながらも、話題は配信のことになる。
「梅三小路に配信スタジオあるみたいだよ」
「あ、でも、なんばのスタジオがいいんだけど」
ゆうきの提案をあみが否定する。
「ほら、ゆうきがこの前ゲットしたあかずきんコーデ」
「あれ、かわいいよね。あたしのお気に入りだよ」
「あれのレインボーカラー、あとシューズだけなんだよね」
「そうなんだ」
「だから、ショップで探そうかなと思ってね」
食後、二人は地下鉄に乗ってなんばに来た。そして、ショップに行くと、お目当てのシューズを見つけた。
「レインボーもかわいいね」
「じゃ、さっそくペアライブしに行こうよ」
これが、あみとゆうきの今年の初ライブとなった。
正月休みが終わって、あみはれみから呼び出しをくらった。
お揃いカラーのニコチケを3種類ゲットしたので、まみとライブするのに合流してほしいとのことだった。
「なかなかカッコいいカラーリングだね」
「このカラーリングでも形はかわいいから面白いね」
あみはマドモアゼルマジシャンコーデを選んだ。
まみもコーデを選ぶ。まみはバニーマジシャンコーデだ。
「今回はれみがセンターだね」
れみがスマイルマジシャンコーデだ。
そして、ライブをしてプリチケを見ると、
「あれ?」
あみのフォロチケ部分には「あたり」がついていた。
あみがゲットしたのはだいあのコーデの色違いのものだった。
「やった!大会、抽選外れたからうれしい!」
飛び上がって喜ぶあみを見て、通りかかったコが声をかけてきた。
「そんなに喜んでもらえて、うれしいです…」
長い髪で目が隠れている。
「あっ、ミラクル☆キラッツの配信手伝ってた人…でしたっけ」
「虹ノ咲だいあっていいます。そのコーデのデザイナーです」
…という事は、かの高名なデザイナーズ10の一人!
あみが驚いていると、上空からバーチャルアイドルのだいあが降りてきた。
「あみちゃん!だいあと色違いライブ、一緒にやるんだもん!」
問答無用でペアライブをすることになった。
ペアライブが終わると、れみだけが残っていた。
「あれ?まみは?」
「虹の咲さんとコーデの話に盛り上がって、二人で行っちゃいましたよ。よろしくって言ってました」
「へぇ」
「実際、まみが一方的にしゃべって、無理やり連れて行った感じでしたけどね」
「何々?」
そこへゆうきが来る。
「あ、ゆうき」
「さっき、そこであまねさん見かけたけど」
「そうなんだ」
あみが見ると、あまねさんは他のコと喋っていたようだった。ちょうど話が終わり、あまねさんと喋っていた二人組があみ達の方へ歩いてきた。
「あれ?あのコ…」
あみはそのうちの片方のコに見覚えがあった。
「こんにちは。あまねさんの知り合いの方ですよね」
「確かに。さっきまで一緒にいたし」
「この前、ツイッターであまねさんとのライブにいいねくれてありがとうございました」
「えっ?」
そのコはスマホを見て、
「本当。あの時の人ですね。あみさん?」
「はい。すてらさん。それと…」
「えくしーがです」
「はじめまして。あと、ウチのれみとゆうきです」
あみは一緒にいた二人を紹介する。
「折角だし、ジョイントライブしましょう」
それぞれのチームがおそろいのコーデでライブをすることになった。
「楽しかったですね」
「他のメンバーも居ればよかったんですが」
「ウチも他のメンバーいるし、またやりましょう」
「そうですね!」
あみの提案にすてらさんが頷く。と、えくしーがさんが、
「すてら、そうやってホイホイ約束するから、半年くらい先になるかもしれません。すみません」
「じゃ、その時が楽しみですね」
あみが答えると、
「私たちは大阪でやることが多いから、向こうで会ったらよろしく」
すてらさんが笑って答えた。
「それにしても」
すてらさん達と別れると、ゆうきが言った。
「あみもホイホイ約束するよね」
「それを連続とか無理やりジョイントで消化するのがタフといいますか…」
「だって楽しいもん」
なんとなく、あみだけは何とも思っていない雰囲気だ。
「そもそも、あたしがこに来たのも、あみを迎えに来たんだしね」
ゆうきのセリフに、あみは事も無げに、
「うん。みぃにはさっきプラン送ったよ」
「みぃとも約束入れてたんですか」
れみがあきれたように言う。身内にもホイホイとライブの予定を入れている。
「で、どんなプランなの?」
「ねこねこライブ」
「何でまた?」
「このはさんが、ユニバースクイーン、特に猫占い師コーデのライブ希望ってリクエストくれたから」
「なるほどね」
「確か『Super Cutie Super Girl』だと招き猫っぽい振付けあったよね」
提案するあみに、れみが
「それより『シアワ星かわいい賛歌』に招き猫そのものの振付けありますよ」
「あ」
そんなこんなで、あみの連続ライブはまだまだ終わらないのだった。
数日後あみはこのはさんとペアライブした。
「この前の猫ちゃんコーデのライブ、良かったですよ」
「リクエストありがとうございます」
「あと、赤ずきんライブもやってましたけど、オオカミコーデもありますよね」
「レインボーがあと少しで揃うんですけどね」
「ライブのお礼に今度、提供しましょうか?」
「いいんですか?ありがとうございます!あ、明日、プラチナ認定会ありますけど」
「行けるかどうか未定なんですよね」
翌日。あみ、ゆみ、くみの三人は認定会会場の近くにいた。認定に向かうのはあみだけで、あとの二人は買い出しのついでに一緒に来ているだけだった。
「で、認定会には知り合い結構来るのかな?」
「うん」
あみはツイッターを見る。
「えっと、このはさんは…あっ今日無理だって。でも、ひなさんが来るみたい」
ひなさんはライブ相手を募集しているようなので、あみはとりあえずエントリーする。
「はぁるる♪さん、向かってるらしいけど間に合うかなって書いてるな」
あみはあたりを見回した。人数的にはまだ行けそうなので、あみははぁるる♪さんに情報を流す。
見回すと、遠くにまもるさんらしき人がいるけど、ちょっと遠い。近くを探すと、つぼみさんととうふさんが初めて見るコと話していた。
「こんにちは」
「あ、こんにちは。あっ!あみちゃんのお姉さん?」
「はじめまして。くみです。妹がお世話になってます」
あみはつぼみさんと話していたコに、
「初めまして…ですよね」
「はじめまして。なでこっていいます」
「はじめまして。あみです」
「ゆみです」
あみとゆみがなでこさんに挨拶のフォロチケを渡す。
「ゆみさんのコーデ、初めて見るかも」
「あ、これ、ジュエルパクトがエラーで出たんです」
「それはレアですね」
「なでこさんのコーデって…」
なでこさんのフォロチケはくらげコーデだった。
「毎週月曜日にこのコーデで配信してるんです」
「なるほど。インパクトありますもんね」
「普段は大阪のほうで配信してるんですけど」
「この辺じゃお名前も見かけないと思ったら…」
「同じ名前の有名人もいることはいるんですよ。小説のキャラですけど」
「あ、『化物語』の蛇のエピソードの人でしたっけ。アニメ版で見ました」
「そうです」
そうこうしているうちに認定会の呼び出しがかかった。
あみ達は会場に向かった。あみは会員証をスキャンする。
「プラチナ認定おめでとう!」
やった。認定された。あみは賞品のコーデを受け取ると、買い出し組と別れてひなさんを探した。
しばらく探すと、ひなさんとシュヤラさんがいた。シュヤラさんは用事があるのか、ちょうど去っていくところだった。
「こんにちは。このあとのライブ、どうします?」
「あ、あみさん。認定されたんですね!」
ちょうど、ひなさんの後ろになでこさん達がいたが、こちらも解散するところだった。
「またお会いしましたね」
なでこさんがあみに声をかける。
「せっかくなので、一緒にライブしませんか?」
そこで、ひなさんが、
「さっきそこにつぼみさん、いました?」
「いたけど帰っちゃいましたね」
「そうですか。この前、ツイッターで喋ったから挨拶しておけば良かったな…」
「そういえば、つぼちゃん、あみさんの知り合いの人があそこにもって言ってましたね
」
「わたしが取り次げは良かったのかな…」
あみが反省したように言うと、
「ライブでコーデ着てないと、本人さんかなって迷いますもんね」
ひなさんも同調する。
「ま、とりあえず、ライブを楽しみましょうか」
あみはそっさく賞品のプラチナコーデを着た。
ひなさんもアイランジュの水色のコーデだった。そして、なでこさんはくらげコーデ。
なでこさんが感動したように言った。
「色のおかげで、私、普段ほど浮いてない…ですよね」
「確かに」
三人は顔を見合わせて笑った。
今回のライブシーン
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