第27章 年末年始だもん
「いよいよ年末近いね」
あみたちは寮に集まって歌番組を見ていた。
「年末はこういう歌番組が多いね」
「あれ?」
あみが画面に目を留める。何人かのアイドルがコラボステージをやっている。
「今歌ってるのってピュアパレットと星宮いちごちゃん?」
「そうみたいね。何か変なことでも?」
ゆみが不思議そうに聞く。
「ピュアパレットはもともとこっちの世界で知ったけど、いちごちゃんは元の世界で見た人なんだよ」
「ボクみたいにどちらの世界にもいる人なのかな」
「いや、よく見ると、向こうの世界で天気予報してた人とかもいる!」
「あ、それなら」
れみが口をはさむ。
「今映ったコ、らきちゃんのお姉さんがエンジニアで、異世界のアイドルを呼んだとか言ってましたよ」
「その人なら、わたし達をもとの世界に戻せるかもしれないね」
「ま、とにかく、年末年始に向けて、コーデの調達もしないとね」
あみは何気にツイッターを見た。
「そういえば、この人、時々見かける人なんだけど」
「チーム「みなみくと」のリーダーさんと書いてあるね」
そのコは入院することになって、明日、ライブの相手を一名募集していた。
「明日、コーデ調達も兼ねて、行ってみようかな」
翌日。あみは大阪の配信スタジオへ来た。
さっそく、ツイートの主らしきコを見つけて、
「あの、「みなみくと」のさきさんですか?」
「はい」
「ツイート見て来ました。あみっていいます」
「ありがとうございます。入院中の暇つぶしにライブ動画見ようと思って」
なるほど。メンバーさんだと体調悪いの知ってるから心配かけるから、ジョイントってことにしたのかな。
「さきさん、無理はしないでくださいね」
「大丈夫ですよ。あ、それから、さきちゃんでいいよ」
「OK、じゃ、楽しいライブにしようね、さきちゃん」
さきちゃんはポップコーンコーデだった。
「この季節にこのコーデは寒そうかな…」
「まぁ、スタジオは空調効いてるし」
ライブが終わって。
「ありがとうございました」
「お見舞い代わりにライブの様子、わたしのチャンネルで配信しますね」
「楽しみにしてます」
「また、退院して機会があればよろしくね」
あみは、その後、ショップへ行った。
「あっ、このコーデ安いな。何とかコンプできそう」
そして、そのコーデはよく見るとこのはさんが売ったもののようだった。
「あ、同じ人から提供したコーデに助けられたみたいですね」
隣で買い物していた二人組の片方のコが話しかけてきた。そのコもこのはさんが売ったコーデを持っていた。
「これも何かの縁。せっかくだからジョイントライブしませんか?」
「面白いですね私たちはロリロリ」
「ようじょさま」
一度聞いたら覚える名前の二人だった。
「このライブ、このはさんに送って、今度は一緒にやっても面白いかもね」
あみは帰りにいつものスタジオの近くであまねさんにばったり会った。
「あ、あみさん!今日は私はこのコーデなんですけど」
なんとなく、ライブに誘われると想定してるんだろうな…普段が普段だけに。
「今、お揃いでいけますよ」
あみはたまたまあまねさんとお揃いのコーデが手持ちにあったのだった。
そして、ペアライブをしたのだった。
「なんか、年末だし、ゲストさんたちと色々配信するのもやりたいな」
「じゃ、その時は呼んでくださいね」>
あみのつぶやきにあまねさんが答えてくれた。
数日後。あみはそれを実行に移した。
久しぶりにあみはHAT神戸のスタジオを押さえた。
到着すると、どこかで見かけた気のするコいた。この髪型は特徴あるし…
「あ、思い出した!」
先日、いいねをくれたコだ!
「あの、こんにちは」
「こんにちは。あれ?配信で見たことあるような…」
「ええ。その節はいいねをありがとうございました。わたしはあみ」
「はぁるる♪です。それと、相方のはるか♪」
隣にいたコが会釈する。
「今日、いろんなゲストさんとライブしてみた、という配信をするんですけど、お二人、どうですか?」
「せっかくなので、ぜひ。だよね、はぁるる♪」
はるか♪さんが同意しつつはぁるる♪さんを促す。
「では、楽しいライブにしようね」
こうして1曲目。
「こんにちは。帰国したらいきなりの招待でビックリしましたよ」
このはさんとかずこさんが到着した。
「間に合ったかな?あみったら、急に呼び出すし」
ゆうきが入ってきた。
「この前ジョイントライブの話があったから、今回の企画に盛り込んだんだ。各チーム二人ずつでね」
「もう一組呼んでるわけね」
「こんにちは。まさか、コーデ買ったらここまでの話になるなんてビックリでしたよ」
ロリロリさんとようじょさまだった。
「たまたま、ショップでこのはさんのコーデを買った縁で実現したライブということで」
あみが経緯を説明し、初顔合わせの人もいるので自己紹介をしてからライブ開始。
「お気に入りのコーデって言うから、阪神ファンだからこれにしたけどいいのかな…?」
かずこさんが言う。
「それを言ったら、私はモーリーファンタジーでツインテールズの衣装の色違いだし」
「あ、そういえば、えもさんとあんなさんでユニット組んで歌ってましたね。色違いもかわいいですね」
「ようじょさまは…黒雪姫が似合ってるから文句なしでしょうしあたしも冬のドレス、気に入ってるからコレでいくし」
「見事にバラバラだけど、みんな違って、それがいいってライブになりそうだね」
引き続き、あまねさんとあんずさんが来た。
「もともと、一緒にライブする予定だったんで」
あまねさんとあんずさんはユニットのようにコーデを選んでいた。
「わたしはあとコレしかないか…」
あみはだいあが先日ライブしたのを見て、だいあがその時着ていたコーデをゲットしていた。
「似合ってるし、あみさんはそれでいいんじゃないですか」
こうして、3曲のライブを終えた。
「あの、約束通り差し入れ持ってきたんですけど…足りるかな?」
控室でかずこさんが包みを取り出した。中にはおいしそうな卵焼きがたくさん入っていた。
「わぁ、おいしそう!」
「いただきます」
みんなで卵焼きを食べ始めると、みぃが入ってきた。
「あれ?鼻いいね。みぃの分も足りると思うよ」
「いや、かずこさんの差し入れだし…」
ゆうきがつっこむ。
「そもそも、卵焼きはたまたまのタイミングで、別の用事で来たんだ」
言いながらも、みぃも卵焼きを口にする。
「あ、確かにおいしい」
「みぃも結局食べてるじゃん」
「どんどん食べてくださいね」
かずこさんも笑うしかないといった感じで言う。
「なんか、ご相伴にあずからせてもらってありがとうございます」
あまねさんがお礼を言う。
「でも、たくさん作るの大変だったでしょ?」
はぁるる♪さんがねぎらう。
「このはから、あみさん、すごく食べるらしいからって聞いていたので」
「うぐぅ…」
へこむあみに代わってゆうきがみぃに訊く。
「そういえば、用事って…」
「あ、そうそう。ジュエルパクトを使ったら、ジュエルコーデに色がつかなかったんだ」
「そうなんだ」
「もう一度試してみる?」
「じゃ、ゆうきとみぃでアンコールとして、脱色ジュエルコーデライブをしてみたら?」
あみが訳の分からない提案をする。
そして、本当に二人のジュエルコーデは真っ白なままだった。
「あ、でもセンターには羽はつくんだね」
みぃがゆうきのジュエルの翼をさわろうとするとすり抜けた。翼はバーチャルな立体映像のようだった。
「知らなかったね」
結局、色もなければ光ることもなくライブは終わったのだが…
最後の決めポーズで、翼とみぃが重なってしまった。翼がみぃを貫通したように見える。
「ウイングスラーッシュ!」
「ぐはあっ!やられた…」
最後はかくし芸大会のようになってしまったのだった。
さて、いよいよ年末。
休憩室でみんなが話している。
「新春ライブ、どうしようか」
「お花いっぱいお正月コーデが三色あるね」
「この前、同じ柄のコーデでまみとペアライブしたから、途中交代でも面白いかも」
ゆみが提案する。
「あみがセンターで、私とゆうきで色違い、ゆみとまみで形違いというわけですね」
れみが話を整理する。
「アタシ達はお正月チャンネルで和装のもゲットしたよ」
さまえがコーデを出す。
「じゃ、先輩たちと2着でお揃いライブかな」
まどかが言う。
「そうだね。あみが着るほうが三人、もう1着は二人かな」
くみが仕切ると、
「わたし、こっちでもセンターなんだね」
「リーダーでしょ」
そこで、あみ、みぃ、さなえとまどか、くみで衣装を揃えてライブした。
そして、
「新作いいなぁ、あたしも着たい」
というゆうきの一言で、アンコールライブをすることになった。
あみがまどか達のコーデ、ゆうきがあみ達のコーデだ。
「わたし、両方着ることになったね」
さて、新春ライブを正月早々に配信できるように準備して。
「来年も楽しい年にしようね!」
「それでは、よいお年を!」
今回のライブシーン
前へ・表紙へ・次へ