第24章 和装に挑戦だもん
「あれ?」
ゆみはふと足を止めた。
「どうしたんですか?」
れみが訊く。
「これって、ジュエルだよね」
ゆみは店先にあるカプセル自販機を指さした。
「ジュエル型のマスコットのようですね。あ、これでこの写真のコーデを出せるみたいですよ」
「これって、この前、リングマリィの二人がライブで着ていたやつの色違いだね」
「お揃いのはあみとまみが持っていたんじゃなかったですかね」
「よし。これ買って色違いライブしよう」
「…黄色がダブったけど、一通り出たね」
ゆみ達はあみとまみを呼び出して配信スタジオへ向かった。
すると、ゆみ達とは別の色違いコーデでライブしてるコたちがいた。
「あ、時々ランキングとかツイッターのタイムラインで見たことあるコだ!」
あみはその二人に声をかけた。
「こんにちは。失礼ですが、ランキングによく出てる方ですか?」
「ははは、見つかっちゃいましたか」
髪の色の淡いほうのコが笑いながら答える。
「私はショウラ。こっちはチョウラ」
「はじめまして。わたしはあみ。あと、れみとゆみとまみです」
「はじめまして」
「わたし達、このコーデの色違いライブをしに来たんですけど、もし良かったらご一緒しませんか?」
「いいですよ。ちょうどゴールド系とブラック系が三人ずつになりますしね」
ライブ後。あみはゆみと雑談していた。
「コーデを揃えるのも楽しいよね」
「さっき、ショウラさんたちは余ったコーデをショップに売りに行くって言ってたよ」
「そうなんだ。確かに、ウチも中古リサイクルでコーデを揃えること多いけどね」
「確かにね」
「わたし、このあと時間あるからショップに見に行こうかな」
「あたしは時間ないかな。残念だけど。いいコーデあればお願いするね」
結局、あみは一人で大阪難波まで出て、コーデをいくつか買った。
さっそく試着しつつライブしたくて、あみは最寄りの配信スタジオへ向かった。
「誰かゲストに呼べる人いないかな…」
ふと見ると、どこかで見たエンブレムを付けたコがいる。
「あの、その羽根みたいなマークって…」
「あ、コレですか?うちのチームはみんなこの形のサインを考えようってことで作ったんですよ」
「そうなんですね。この前、よく似たのを付けてた人たちとライブしたので…」
「あ、もしかして、あなたが朱華たちが言ってた人なんですかね」
「ええ。あみっていいます」
「私は緋鳴です。うちのメンバーがお世話になったようで」
「せっかくですし、ライブしませんか?」
「いいですよ。3人曲なら、あと一人いればいいんですけどね…」
あみとひなりさんが話していると、以前ライブしたはなこさんが通りかかった。
「お久しぶりです」
あみが声をかけると、はなこさんは
「私、他の人とはライブしないんですけど!」
あれ?前は声かけてくれたはず…
「そうなんですか?」
「…」
はなこさんは、がっかりしているあみの顔を見ながら、
「…今日、このコーデだけど、それでもいいなら」
「もちろん。大歓迎ですよ」
こうして、3チームのコラボライブ配信となった。
解散後、あみは難波からの帰るのだが。乗り換えるため、梅田で地下鉄を降りた。
阪急の駅に向かう途中、タピオカ茶の店の行列が目に入った。
「おいしそう…でも、高いし、並ぶの面倒だし、またコンビニでタピオカ茶とチキンでも買おうかな」
あみがそう考え、通りの方へ歩き出したところで声をかけられた。
「あれ?あみさん?」
「せと☆君とにじのエルザさん?」
「大阪に用事があってね。せっかくだから今からライブしに行くところだったんですよ」
「そうなんだ」
「今、かぐや姫とお殿様の和装コーデがあるでしょ?」
「うん。実はさっきショップでわたしも買ったんですけどね。」
「来日した僕とラウラ☆で和装を楽しもうかと」
せと☆君は嬉しそうに言う。ラウラ☆さんも近くにいるのだろう」
「私は関西記念で阪神タイガースっぽいこのコーデで」
「えもさんのコーデの色違いのやつですね。普通の赤い方、さっきショップで買って揃ったんですよ!」
「結構買い物したんですね」
「へへへ、今月の残り、ピンチかも」
エルザさんの指摘にあみは苦笑いしつつも、
「じゃ、わたしが赤着てジョイントライブしませんか?」
「和装と野球?どういうコラボですか?」
驚くエルザさんたちにあみは昨日のニュース番組を思い出しつつ答える。
「昨日、世界野球で日本チームが勝ったんですよ」
「なるほど。野球のがんばれニッポンライブですか。面白い!」
「でも、せと☆君たちはいいのかな?」
「いいよ。別に次はスペイン戦じゃないし」
横から答えが返ってくる。
「あれ?ラウラ☆さん?いつの間に」
「さっきからいたよ」
あみは気づかなかったが、話をしているうちに、ラウラ☆さんとえもがそこにいた。
「えもさんも?」
「野球コーデ合わせやるってエルザさんから誘われたんだ。超えもえもだねぃ!」
「あ…本家のえもさんがいるならわたしの出る幕ないね…」
「そんなことないよ。あみのおかげでえもいライブになるよ」
「どういう事?」
「実は、私はモーリーファンタジーで色違いをゲットしたから試すつもりだったんだよねぃ。だから、あみが赤着てくれたら、三色でライブできるんだよ」
えもは忖度するようなタイプのコじゃないし、本当に赤を着るコが必要だったようだ。
「うわ、せと☆君、似合ってる!ラウラ☆さんのかぐや姫もいい!」
せと☆君の場合は男装って言い方するのだろうか?
「野球組もカラフルになったね」
たまたま、次の試合も日本チームが勝ったこともあり、後に話のタネになるライブはこうして配信されたのだった。
数日後。ゆみとあみの世間話。
「この前実際に大阪行って、ライブしてきたんだね」
「うん。楽しかったよ」
「で、あの和装見て思いだしたんだけど」
「うん?」
「ゆうきがレインボーでかぐや姫揃えたあと、あたしはパックで青の着物だけ当ったからレインボーとのミックスでライブしてみたんだ」
「でも、レインボーだとジグソーパズルもらえないよね」
「うん」
「じゃ、青の着物貸してみて。殿コーデのシューズとのミックスでピースをゲットしてみる」
あみはミックスコーデを試着してみた。
「あ、これ結構いいかも」
かぐやひめワンピの着物は思いのほかミニ丈なので、レギンスのほうが動きやすい。更に、レギンスには紋が入っているものの、元の衣装だとわかりにくいので、デザインが活きている。
そこへまみがれみとゆうきを連れて入ってくる。
「あたりキャンペーンでおとのさまコーデの着物と烏帽子当ったのである!」
「私はかぐやひめの緑の着物が出ました。ゆうきにレインボーの靴と髪飾り借りて和装ライブしようかなと」
「じゃ、あたしは青の着物で、ゆうきはレインボー着物だね」
ゆみが話に乗る。あみも、
「わたしは赤の着物ショップで買ったから、全員レインボーかぐやひめで着物だけ四色で、センターはまみがお殿様でセンターだね」
「五人なら、USAとか?」
まみが曲を提案する。
「なんで和装でUSA?」
「でも、そのおかげでライブのテーマが決まりましたね」
れみが言う。
「どんなの?」
「バカ殿と四人のおひめさま」
「ひっどーい!」
まみ以外の全員が爆笑した。
膨れっ面だったまみも、結局つられて笑ったのだった。
今回のライブシーン
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