第23章 ハロウィンだもん
「かんぱーい!」
つい先日のゆみのジュエルコーデゲット祝賀会に続いて、また休憩室に乾杯の声が響き渡った。
今度はくみの歓迎会だ。
「まさか、あみのお姉さんだとは。びっくりしました」
そう言うまどかに、
「本当。こんな形で再会するなんてね」
「なになに〜?お姉ちゃん、まどかと知り合いだったの?」
「スペインにいた時に一緒にライブした事があってね」
「そうなの?じゃ、言ってよね」
「夏合宿の時、その時の話はしてけど、まさかお姉さんだとは知らなかったし」
「ワタシも異世界から来て妹がいるとしか言わなかったしね」
「え?待って、そのへんの話、わたし知らない!」
あみが言う。そこでれみが思い出す。
「あ、そういえば、あの時、あみは隣の部屋でゆうきの氷枕を替えてましたね」
そういえばそんな事もあったな…
「話は変わるんだけど…」
ゆみが切り出す。
「折角、今9人いるんだから…」
「町内会のソフトボール大会に参加する?」
さなえがボケか本気か判らないリアクションをするのをスルーしつつ、ゆみは話を続ける。
「以前、あみ達と静岡県沼津市に行った時に足跡をたどった伝説のスクールアイドルユニットの…」
「Aquousだっけ」
「うん。そのライブビデオで9人がお揃いの衣装でライブするのがすごく良かったんだよね」
「あ、ゆみの言いたいこと、わかった!」
まみがコーデを示す。
「これ、みんなで着てライブしたら面白いと思ったのにスカートが全然出なくてショップで買った直後に自分で着たらスカート出たコーデである」
「確かにみんなで着ると楽しそうだね」
ゆうきが横からコメントする。
「じゃ、9人でこれ着て、入れ替わりながらライブだね」
「おお、楽しみ!」
「そういえば、マンホールに顔が載ってたルビィさんも姉妹でメンバーでしたよね」
れみの蘊蓄にくみが反応する。
「ワタシはお姉さんのほうのポジションなわけね」
「でも、あみはリーダーポジションじゃないか?」
みぃが訊く。
「リーダーの千歌さんって、ドキュメンタリー番組でみかんをいっぱい食べてた人だっけ?」
「いっぱい食べるリーダー…どこもそんな傾向なのかな」
ゆみのコメントに、あみが、
「わたし、そんなに食べるかなぁ…?」
「食べてます!」
残る8人全員が同時につっ込んだ。
さて、9人おそろいライブを終えて。
「まみちゃんの選んだコーデで良かったね」
「なんか不思議な気分なのである」
まみは古い会員証を出した。そこにはなぜか「くみ」と名前がある。
「これって…」
「デビューの時に会員証作ってたらシステムエラーが出て名前が違っていて」
「そうそう。そのエラーであみとれみがこっちに来たんだっけ」
「へぇ、不思議な縁だね」
そんな話をしていると、テレビをつけたまどかが、
「なんか、すごい事になってるよ」
ニュースで、キラ宿の町が真っ赤な炎のようなオブジェでデコられている。
「何なに〜?ハロウィンのイベントか何か?」
ゆうきが興味深々で画面を見る。
画面には火の鳥をモチーフにしたような赤いドレスをまとい、仮面を付けた女性が映し出される。
「私はフェニックス仮面!」
あみがそれを見て、
「あのアンジュさんみたいな人かっこいい!」
「いや、あれはアンジュさんが演じているだけでは…」
つっこむゆみにれみが、
「まぁ、あみはNHKの『グレーテルのかまど』を『仮面ライダーキバがお菓子焼く番組』って言ってるくらいですし…」
「確かに『仮面ライダーキバ』で主役だった俳優さんがお菓子作ってるよね」
「あ、でも、本当に変身した仮面ライダーがクッキー焼いてるの、ちょっと見たいかも」
どんどん脱線する一同に喝を入れるかのように、テレビのフェニックス仮面が宣言する。
「ここにフェニックス杯を開催いたします!」
「フェニックス杯?」
いぶかる一同にさなえが、
「たまたまだけど、郵便局でパンフレットもらったよ」
と言いながらパンフレットを取り出した。
しかし、その表紙にはフェニックスモチーフの兵庫県のゆるキャラ「はばタン」が描かれており、「フェニックス共済」と書いてある。
「これは違うと思う…」
「年間5千円の掛け金を払えば、自然災害で家を直す時にお金が出る兵庫県の住宅再建共済制度って書いてあるね」
「そっか。はばタンがかわいいから貰ったけどアタシは寮住まいだし、まみにパンフあげるね」
「うむ。うちは持ち家だから親に渡してみる」
「まぁ、よくわからないけど、テレビで観戦するかな」
「だね」
数日後。
「フェニックス杯でのアンジュさんのライブ、すごかったね」
「でもあのコーデ、入荷リストにあるのに出ないんだよね」
そこであみが思いつく。
「じゃ、アンジュさんをゲストに呼んで着てもらおうよ」
あみはアンジュさんをゲストに、参加者を募ってみんなでライブする企画をオファーすることにした。
あみのオファーを受けてアンジュさんから回答があった。
「素敵ガールズたちとのキラキラなライブ、楽しそう。でも、もっと面白くしてみない?」
アンジュさんの提案はあみがアンジュさんのライブをプロデュースし、その結果で4種類のフォロチケの中から1枚をあみに渡す。
そのコーデでステージに上がるというのだ。
あみはアンジュさんのコーデを検討する。プレシャスミューズの服なら似合うけど新鮮味ないし、ミックスもね…
ふと、自作コーデを見る。これは時の精霊が面白がって着てくれたけど、このへそ出しミニスカコーデはありえない…
「あら?」
アンジュさんがそれを見た。
「なるほどね。今までとは雰囲気の違うコーデでライブ。面白いわね」
え?そうなの?ホンマにそれでええんか?
しかし、さすがはアンジュさん。そのコーデも見事着こなしてライブは大成功だった。
「なかなか楽しかったわ。じゃ、2枚フォロチケを引いてね」
「2枚ですか?」
「楽しかった分のサービスね」
よし。確率は4分の1から半々だ。
1枚目。私服コーデ。そして2枚目。
「やった!フェニックスフレアコーデだ!こっちで参加おねがいします!」
あみはさっそくアンジュさんと一緒にライブしよう企画で参加者を募った。
シュヤラさん、まもるさん、クララさん、このはさん、れいか♪さん、ゆっきーさんが参加してくれた。
「えっと…うちからはわたしとゆみ、さなえが参加かな」
「それでいいんじゃない?あみとアンジュさんがツートップで残り8人は交代で参加ということで」
「あたしはジュエルパクト通信でエジプトクイーンコーデにしようかな。似合いそうってみんな言うし…」
ゆみがパクトにためたジュエルパワーでコーデを出す。
「秋のコーデ!通信成功…って、あれ?」
ゆみはなぜか見たことのない色のホーンテッドヴァンパイアコーデを着ていた。
「エラーなんだろうけど、このコーデ気に入ったからいいや」
「わたしはモーリーで手に入れたコーデにしようかな」
「アタシはレアリティは低いけどお気に入りのコーデにしようかな」
みんなでライブが終わった後、ゆみがエラーコーデをチケ化に行くのを送り出していると、入れ違いにまどかがあみ達のところに来た。
「あの、二人にお願いがあるんだけど…」
「何?」
「明日のハロウィン、一緒にライブしませんか?ハロウィンの新作コーデ、3色集めたんだ」
「そうなんだ。いいよ」
「嬉しい!先輩のさなえとそのまた先輩のあみ。3人でライブするの夢だったから」
「いやいや、そんな大層な先輩じゃないって。まぁ、楽しんでライブしようよ!」
「でも、よく3色集めたね」
「実は、この前、ラウラ☆さんが来日して会った時、一緒にいたにじのエルザさんに助けてもらったんだけど」
まどかは自分のフォロチケとエルザさんの手持ちで余っていたコーデを交換してもらっていたのだった。よほど、このライブをやりたかったのだろう。
ハロウィン当日。
「ねぇ。これ、去年のハロウィンコーデの新色なんだって」
ゆうきがコーデを持ってきた。
「去年私たちもこれの色違いでライブしましたよ」
「じゃ、色違いライブやろうよ」
「残念ながら、ボクは今日はこのあと用事があるんだ」
みぃが申し訳なさそうに言う。
「みぃはお化けが怖くてハロウィンは苦手…とか」
れみのつっこみに
「い、いや、違うよ!」
図星なのかどうか判らないリアクションをしつつ帰っていった。
「じゃ、あみ達は色違いあるんだよね」
「うん。でも、ちょうどまどか、さなえとライブ計画してたから、わたしは抜けて同時配信かな」
「お、どっちがいいねを稼ぐか勝負だね」
「負けたほうはトリックオアトリート。お菓子をおごるかイタズラされるか、ってところかな」
二組ともライブ配信し終わって戻ってくると、くみが入ってきた。
「あ、ゆうき、さなえ。二人ともここにいたんだね」
ディアクラウンの店長から、ハロウィンイベントのため、二人を呼びに来たのだった。
そして、くみ、まどか、ゆうきの種類の違うハロウィンコーデライブが一番いいねを獲得し、くみは全員からお菓子攻めに遭うことになったのだった。
今回のライブシーン
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