第19章 ニコチケをゲットだもん

 あみは時計を見た。
「うーん、れみとの待ち合わせまで結構時間あるなぁ…」
 あみは何か食べに行こうかと、ふらふら歩きだしたところで、見覚えのあるコとすれ違った。
「あ…」
「えっと、少し前にデパートで…」
「はい」
 このはさんだった。
「これから配信ですか?」
 あみが尋ねる。
「ええ。なんでも、ディアクラウン系列だと、配信料金は倍だけど、フルコーデのニコチケというのが出るらしいので」
 このはさんが雑誌を見せてくれる。同じ色で型紙の違うコーデや、色違いコーデが載っている。これらのコーデがセットになるようだ。4アイテムのコーデだと、半額で確実に揃う。
 内容的にはプリパラのドリームシアターみたいなものかな?
「面白そう。一緒にペアライブしてもいいですか?」
「ええ、それは構いませんが」

 しかし、ドリームシアターのような特殊なライブはなかった。
「あ、でも、このコーデ、今このはさんが着てるものの色違いだ」
「色合いが変わると、雰囲気変わりますね」
「あ、そうそう。今度、うちのチームとジョイントしませんか?れんげとなぎさが都合悪くて」
「前に一緒にライブしたお二人ですよね」
「あ、そうですね。他のメンバーは大丈夫なんですけど」
 あ、けっこう大所帯なのかな?あみたちも結構大所帯だが。
「もちろん。ぜひよろしくお願いしますね」

 このはさんと別れると、ちょうどれみとの待ち合わせに良い時間になった。
「あれ?あみ、早いですね」
「まぁね。ところで、れみ」
「まさか、ニコチケの事ですか?」
「あ、知ってたんだ」
「昨日、ゆうきと試したんです。私はワイズガールコーデのちょっと色っぽいのが出ましたよ」
 あみが持っているものと色あいが同じだった。
「あみのもへそ出しで色っぽいですね」
 このペアライブはけっこうウケるかも。

 ペアライブで出たコーデはドット柄のコーデだった。
「今度はゆうきと模様がお揃いみたいですよ」
 れみが言う。
「じゃ、次のペアライブは決まりかな」
 あみが言うと、
「あの…」
 声がかかる。初めてみるコだ。
「あみさんですよね」
「あ、はい」
「うちのつぼちゃん達がお世話になってます。私はとうふ。一応、グループの代表みたいな者…なのかな」
 つぼみさん達のグループとは時々ライブしたけど、意外なことに、リーダーさんに会ったことがなかった。
「たまたま私が手に入れたコーデの色違いを着た人がいるな、と思ったら、つぼちゃんとライブしてた人だったから、つい声をかけちゃいました」
「色違いコーデも何かの縁ですね。ペアライブしませんか」
 そんなわけで、あみは3連続でペアライブをしたのだった。
「会えてよかったです。とうふさん」
「これからも仲良くしてくださいね」

 さて、数日後。あみは予告通り、ゆうきとペアライブを終えた。
「おつかれー」
「そういえば、ゆうき。今日、このはさん達とライブするんだけど」
「あ、デパートの時の人だっけ」
「ちょうど、わたし達のゲットしたニコチケ、プリパラのサイリウムの色違いでお揃いだし、一緒に行こうよ」
「うん。いいけど、みれぃさんとシオンさんの色違いって、コーデ自体に統一感ない気がするなぁ…」

 このはさんとの合流場所に着いた。他の3人は初めて見るコ達。
「こんにちは。あみとゆうきです」
「僕はりな★。実は前にデパートには一緒に行ってたんだけど先に帰ったから、今日はリベンジなんだ」
 サイドで髪を束ねたコが自己紹介する。あれ?男のコ?
「私はノアン。よろしくね」
 派手な髪型のコが続く。このはさんが最後の一人を紹介する。
「このコはかずこ。最近誘ったメンバーです」
「あ、よろしくお願いします」
「かずこの玉子料理がおいしくてスカウトしたんだよね」
 りな★君が横やりを入れる。
「わぁ、是非一度食べてみたいなぁ」
 あみが話題に飛びつく。
「あみはウチらの中でも食い道楽だからね。でも、あたしも玉子大好きですけどね」
「もし良かったら、今度お弁当に作りましょうか?」
 かずこさんが勢いに乗せられて言う。
「わぁ、うれしい!ありがとう。かずこさん!」
 そこでこのはさんが口をはさむ。
「かずこの玉子焼き、私のおばあちゃんの玉子焼きに似てるんだ。それに、私のおばあちゃんもかずこって名前だったりするんだよ」
「えっ…?」
 このはさんの言葉にゆうきが驚いた顔をする。
「このはさん…あたしのおばあちゃんもかずこって名前だよ」
「そうなんだ」
「昔、野球を見に行った時、おばあちゃんが作ってきてくれたお弁当にも玉子焼きが入ってたっけ。おいしかったなぁ」
 ゆうきが回想し、キラキラした目でかずこさんを見る。
「なんだか、その話聞くと、優しくて美味しい味なんだろうね。ますます楽しみ!」
 あみまで期待のまなざしでかずこさんを見る。
「…あの、皆さん。あんまりハードル上げないで欲しいんですケド…」
 かずこさんが困った声で言う。
「それはそうと、ジョイントライブやるんだよね」
 ノアンさんの一言で全員我に返る。
「そうだった!完全にぶっ飛んでたね」

 一同は、いそいそとライブの準備に取り掛かるのだった。


今回のライブシーン
                        
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