第15章 それぞれのライブだもん

 まみはふらりと配信スタジオに入ってきた。
「さすがに少し飽きてきたぞ…」
 今回のハッピーレアのシンデレラのドレスを入手し、まみは着たいと名乗り出た。
 さすがに、お城の舞踏会のドレスは美しく、着るだけでハッピーになる。似合ってると仲間たちも褒めてくれた。

 しかし。

 ジグソーパズルを貰うためには、これを着て6回ライブする必要があるのだ。
 レインボーとの色違いライブとか、王子様コーデでペアライブとか、色々やってもネタは尽きる。
「折角の素敵なドレスが、呪いのアイテムみたいなのである…」
 そして、やっと解放される6回目のライブに向かったのだった。

「あれ、あのコ…」
 まみがふと目を留めたのは、先日あみが昔の自分みたいなコにフォローされたって言ってたコじゃないかな?

 まみは一歩踏み出した。あみの性格が感染したのか、ライブ相手が欲しかったのか自分でもわからないが。
「あの、すみません…」
「…はい?」
「えっと、クララさん…ですか?」
「はい…そうですけど」
「ウチのメンバーが、あなたのフォロー喜んでたんです」
 まみはあみのフォロチケを見せた。
「ああ、この前の」
「良かったら、一緒にライブしませんか?」
「ええ。いいですよ。やりましょう」

 こうして、まみはシンデレラの呪縛から解放されたのだった。
「ありがとうございました」
「こちらこそ。あみさんによろしく」
「あみ、ツイッターやってますよ」
「そうなんですね。私、アカウント持ってないけど、今度ブラウザでみてみますね」

 そのころ、噂の主、あみはゆうきとショッピングに来ていた。
「そういえば、このデパートだったよね」
「何が?」
「あたしがケガして車椅子だった時、一緒に買い物に来て…」
「そうそう。ここのエレベータ前のモニターでプリパラを知ったんだよね」
「この世界でも、ここに配信スタジオあるみたいだけどね」
「そうなんだ」
 あみは何気にツイッターを見た。フォロワーさんのリツイートで知らない人のツイートが載っていたのだが…
「ゆうき、この人の投稿…」
「これって、このデパートだよね」

 このはさんという人のツイートに、このデパートに来たら、ここの配信スタジオがもうすぐ閉鎖と書いてある。

「書かれた時間…3分前?」
「行ってみよう!」
 あみとゆうきはデパートのエレベータに乗った。8階を押す。
「あ、つい押したけど、スタジオはモニターと同じ所なのかな?」

 幸い、そこにスタジオがあり、3人のコがいた。
「あの、このはさん…ですか?」
 その中の一人が答える。
「はい。そうですが…」
「ここ、なくなっちゃうんですか?」
「そうみたいですね」
「ここ、わたしたちの思い出の場所なんですよ」
「それなら、私たちと合同でライブしますか?」
「ええ。わたしはあみ、こっちがゆうきです。よろしく」
「れんげと、」
「なぎさです。こちらこそよろしくお願いします」

 ライブを終えて。
「思い出の場所で、最後にいい思い出が作れました。ありがとうございました」
「こちらこそ。楽しかったですよ」

 このはさん達と別れた後、ゆうきは別に用事があるとのことで、結局解散した。

 その頃、まみはゆみと合流していた。
「やっと、シンデレラを卒業できたのである」
「じゃ、どんなコーデがいい?」
「この前、グミでたんていボーイコーデが出たけど、あれを着てみたい」 「あ、それなんだけど、前に、あみたちがプリパラでセーラーの男女コーデをミックスで、とか言ってたの覚えてる?」
「覚えてないけど面白そうなのである」
「ミックスでたんていガールを思いついたんだけど、それでライブとかどうかな」
「うむ。面白そう。力になろう」
 そして、そのライブが終わると、まどかから電話が入った。

 時を同じくして、歩いていたあみにも電話が入った。
「もしもし。さなえ?」
「目の前のマクドにいるよ」
 たまたま、窓からあみが歩いているのを見かけたらしい。

 あみが店に入ると、テーブルにはさなえの他にみらいとまりあがいた。
「たまたま会ってね」
 あみも食べ物を注文に行く。ハッピーセットとフィレオフィッシュを注文し、番号札をもらって席に戻る。
「さなえもマクドと略す派だね。まぁ、関西はマック派は少数派だけど」
「ワタシの近所じゃ、ビッグマクドとかマクドフライポテトとかって注文するよ」
「そうなんだ」
 さなえのジョークをみらいが真に受ける。
「いや、冗談冗談」
「そうなんだ…面白いと思ったんだけどな。ちょっとガクメキ…」
 ここでまりあが話題を変える。
「さなえちゃんから、かわいいライブ配信の動画を見せてもらってたんですぅ」
 まりあが目をハートにして見ているのは、先週ビーチでやったすみっコぐらしコーデでのライブだった。
「前に四人でやったんだけど、新作コーデが出たから、六人でやったんだ」
「へぇ。そうなんだ」
 みらいが相槌を打つ。
 そうこうしているうちに、あみの食事も準備が出来たようだ。
「ハッピーセットのオマケは…リカちゃん人形だね。へぇ、よく出来てるなぁ」
「とおーっても、かわいいですぅ!」
「あと、休日限定カード…あ、リカちゃんとお揃いのコーデだ!」
「とおーっても、かわいいですぅ!」
 まりあの様子を見て、あみが提案する。
「まりあさん、このコーデ貸しますから、このあと四人でライブしませんか?」
「わぁ、いいんですかぁ」

 ジョイントライブを配信し、あみたちは配信サイトをチェックしようとした。
「あれ?うちらのチャンネル、すごく配信増えてるよ?」
「みぃ、ジュエルコーデお披露目ソロライブだって」
「いつの間にゲットしたんだろ?」
「ゆみは、まみを呼び出して、まどかに借りたパプリカ学園制服でライブやってみた」
「ゆみとまみのプリパラ世界の制服姿は新鮮かも」
「実際、制服組の三人だけどね」

「あれ?まみがその前にも配信してる…?」
 あみはその動画を見て、
「あれ?まみ、クララさんに会ったんだ。どんなコだったか訊かないとね」
「直接本人にきけば?あそこにそのコ歩いてるよ」

 さなえが指さしたところをクララさんが歩いていた。

 あみはダッシュで声をかけた。
「こんにちは!」
「あ、えっと、あみさん?でしたっけ」
「ええ。フォローをありがとうございました」
「さっき、まみさんからも聞きましたよ」
 クララさんは笑って答える。
「ちょうど、デザインパレットで作ったコーデの試着ライブしようと思ってたんですが、ご一緒にどうですか?」
「ええ。喜んで!わたしも自作コーデにしますね」

 こうして、あみの合宿前の目標が一つ達成されたのだった。


今回のライブシーン
                                  
前へ表紙へ次へ