第11章 色々な出会いだもん

 あみはその日、アルバイトが午後からのシフトだったので、ベンチに座って缶ジュースを飲みながらスマホで動画サイトを見ていた。
「あ、ファントミのチャンネル、新作来てる」
 最近活躍している三人組の正義の怪盗だ。あみもこの世界へ来てすぐにそのうちの一人と会ったので注目している。

 そこへおふぇりあさんが通りかかった。
「こんにちは」
「こんにちは。あ、あみさんファントミ好きなんですか?」
「うん。まぁ」
「じゃ、ファントミのコスプレライブしませんか?」
「いいけど、今わたしコーデ持ってないです」
「じゃ、これをどうぞ」
「いいんですか?あれ?赤い?」
「別動隊なのか知りませんが、この前、単独で目撃されたファントミダイヤのコスなんですよ」
 おふぇりあさんはファントミハートのコスだ。
「どうかな。似合ってる?」
「ええ、ファントミ的にアリ!ですよ」
 おふぇりあさんが太鼓判を押す。さぁ、ライブ開始だ。

 ライブが終わると、おふぇりあさんの姿が見当たらない。
「あれ?コーデ借りたままなのに、どこ行ったのかな?」
 と、あみの額に何かが飛んできて貼りついた。
「何?みれぃさんの違反チケット?」
 予告状というタイトルの「予告」が二重線で消されて訂正された感謝状だった。
「何々、ご協力ありがとう。コーデはプレゼントします」
 署名の代わりにファントミダイヤのディフォルメイラストが描かれている。

「見つけた!」
 突然、腕をつかまれる。
「えっ?」
 振り返ると本物のファントミハートだ。
「あれ?えっと、あみさんでしたっけ?」
「はい」
「ごめんなさい。私、ファントミダイヤを仲間にしようと追いかけてたんで…」
「あ、紛らわしい恰好でごめんなさいね」
 そこにおふぇりあさんが通りかかった…けど、髪がショートになっていた。
「あれ?散髪してきたんですか?」
「あ、ファントミさん見かけて野次馬で来てみればあみさんでしたか。髪切ったのは先週ですけど…」
「え?さっきのライブの時…」
「さっきって、私、今通りかかったんですけど」
「それ、ファントミダイヤの変装かも。変装の名人だし」
 ファントミハートが言う。確かに謎の手紙の内容とも合致する。あみをダミーにして逃げたのだろう。
「じゃ、またあみちゃんと一緒にライブしたら様子を見に来るかもね」
 ファントミハートの提案に、
「そういうことなら協力します。なんか、もう巻き込まれてるみたいだし」
 おふぇりあさんが乗る。
「それじゃ、わたしは目立つコーデにしなきゃね」
 あみはもこもこモンスターコーデを用意した。

 ライブが終わると、観衆の中にファントミラージュがいた。しかし、青い。ファントミスペードだった。
「楽しいライブだったね。完っ全に始まってる!」
 ノリノリで見てくれたようだった。
「ちょっと待って」
 こんどは紫のファントミラージュが現れた。ファントミクローバーだ。
「ここでライブしてるって配信したら、ここを避けて逃げるだけでしょ!」
「あ、そっか」
 クローバーの指摘にハートが納得する。
「じゃ、私たちはファントミダイヤを追います!」
 三人は去っていった。おふぇりあさんも去っていった。

「で、今回のコーデはポップコーンショップコーデのピンクか。かわいいコーデで良かった」
 そこであみは思い出す。
「そういえば、前にフォロチケの裏にツイッターのアカウント書いてた人、このコーデの青が似合ってたなぁ…」
 あみは閲覧したツイートを探しながらプリズムストーンに向かった。

 そして、最初のおやつタイム。
「で、あみが持ってきた袋は何ですか?」
 れみが訊く。
「うん。イカの姿フライ煎餅。スーパーでお買い得コーナーにあったんだ。これ、イカの形してるんだよ」
「イカというか、ネクタイが福神漬けのナタ豆みたいですが」
「それよりあみ、この前明石の魚屋でスルメの大袋買ってなかったか?」
 れみとまみがつっこむ。
「あれ、随分減って、そろそろ無くなるよ」
 あみは言いながらスルメも出す。
 と、その時、
「あの…こんにちは。えっと、あみさんは?」
「あ、わたしです。ありもも!さんですね」
「はい。誘ってくれてありがとうございました。本当に友達も連れてきたけど…」
「やみです」
「まーりあです」

「…えっと、話が読めないんですけど」
 れみが切り出す。
「この前のパーティーで手に入れたフォロチケにツイッターのこの方のアカウントが書いてあったので、ライブ誘ったんだ」
 あみがざっくりした説明をする。
「じゃ、せっかくだから、まずは一緒にお茶をしよう」
 まみが誘うが、ありもも!さんはちょっと困った表情になった。
「あ、イカフライ煎餅、マヨネーズ味もありますよ」
 あみが袋から別のイカフライ煎餅を出す。
「あの…ごめんなさい。イカはちょっと…」
 ありもも!さんはイカが苦手らしい。
「あ、それならスヌーピーのクッキーもありますよ」
 れみがクッキーを出す。
「あ、じゃ、そちらをいただきます」

 お茶が終わって。
「ポップコーン青、持ってきたけど、私だけでいいのかな」
 あみからのオファーは、ポップコーン合わせをしたいけど、大勢のライブも楽しそうなのでお任せしますという極めていい加減なオファーだった。
「大丈夫です。私たちもいきなりなので適当に合わせましょう」
 心配するありもも!さんにれみが答える。

 そんな感じで、ポップコーンジョイントライブをしたのだった。
「じゃ、打ち上げはポップコーンでやる?」
 提案するあみに、
「さっきお茶したところでしょ!」
 全員がつっこんだ。

 そして、解散したら、見計らったのようにゆうきから電話が入る。
「週末、コールドクラス認定会があるんだって!」
 先日シルバー認定は受けた。今度はゴールドに挑戦だ。

 認定会前日。あみは、この前にショップで購入したコーデを見ながら、
「シルバーの時はピュアプリンセスコーデの白だったから、赤で行こうかな…」

 あみは認定会に備えて、コーデを着てライブした。認定前のライブ納め…と思ったら!

 いきなりだいあが現れた。
「アンコール発生だもん!」
 あみはそのまま問答無用でだいあにステージに連行され、ペアライブを踊った。

「ふぅ。面白かったけど、何だったんだろう」
 あみが戻ろうとすると、れみとゆみが来た。
「あみ、お客さんだよ」
「え?誰だろう」

 そこには三人のコがいた。
「お誘いありがとうございます。愛姫です。あと蝶春と唯織」
「…あ、この前フォロチケに書いてあったアカウントで!」
「なんかさっきライブ納めって言ってませんでした?」
 蝶春さんが訊く。
「問題ないです、ひらはさん。わたし、さっきのコーデが自作コーデか迷ってたんですが、この機会だから自作コーデでライブするので」
 あみが答える。
「それに、せっかく誘ったあいきさん達とのジョイントライブ。絶対やりたいし」

 ジョイントライブを終えて。
「いいライブになりましたね」
「また機会があれば、他の仲間もいるんですよ」
 あみが言うと、
「うちの事務所も、けっこう大所帯なんですよ」
 愛姫も答える。
「また、ジョイントライブできたらいいですね」
「その時はよろしく」
  
 なんだか、色々な人とライブした。さぁ、明日はいよいよゴールドクラス認定会だ。


今回のライブシーン
                          
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