第9章 シルバークラス認定だもん

「おつかれさまでした!」
 あみとゆうきは買い物帰りになみりーん☆さんとばったり会ってライブ配信をしたのだった。
「今度はちゃんとコーデを決めないとね」
 あみとゆうきはそのままの私服でのライブだった。

 ゆうきは別の用事があるので、あみは一人で帰路についたのだが。
「あ、あみ!」
 今度はえもに出会った。
「えもさん、こんにちは。どうしたんです?その恰好」
 えもは郵便屋さんの恰好をしていた。
「へへ、みらいからりんかに手紙を届けに行くんだ。一緒に行く?」
「いいですよ」

 二人はりんかの所へ行った。えもが手紙を渡す。
「ありがとう。どれどれ?私の新曲が聞きたいから配信してって?」
「じゃ、せっかくだからこの3人でえもいライブ、やっちゃおう」
 えもが提案する。

 ライブが終わって。

「次はさら達に手紙があるんだよね」
 えもとあみはメルティックスターが練習している所へ向かった。向かう途中にプリズムストーンがある。
「あ、ちょっと待って」
 あみがストップをかける。
「どしたの?」
「今日はなんとなく勢いでライブしてるから、一応コーデセット持っておこうかなと」
「なるほどね」

 そして、予感は当たった。

「やぁ、残念ながら、あんなは出払っているんだ」
「あみあみがあんあんの代わりでライブしたらいいね!」
 話の流れでりんかの時同様ライブすることになった。

 あみはコーデセットを見た。今日の二人の私服と合わせていたあんなの私服と同じ服がある。
「よし、これであんなさんの代わりが出来る!」
 そして、いざ、ステージに来ると…
「げっ!聞いてないよー」
 さらとめるはサーカスコーデに着替えていた。
「さぁ、はじめようか」
 ちょっと待って…センターだけ私服で浮く上、この曲の振付け、よほど上品にやらないと、意外とスカート丈短いし。
 うぅ。あんなさんみたいなお嬢様じゃないから難しいな…

 一同、ライブが終わると外に出る。そこにりんかが合流し、どこかへ向かう。
 えもとあみはどこへ行くのか見当もつかないままついていく。
 途中でりんかがあみに耳打ちする。実は、手紙の中身はあんなへのサプライズパーティーの連絡だったらしい。
 世界ツアーを終えたおつかれさま会のようなものとの事だった。

 あみは自分だけパーティーに飛び入り参加するのも気が引けるので、とりあえず帰ろうとしたが、逆にさらの勧めで他の面々も呼ぶことにななった。
 とりあえず、れみ、ゆみ、まどかは参加できるようだった。

 パーティー会場には他にも何組かのグループが参加していて、ちょうどわちゃわちゃ会のようだった。
「そういえば、最近、わちゃわちゃ会、あんまり盛り上がらないね」
「確かに。プリスタグラムから招待できなくなったから、人が集まらないんだよね」
「あ、あそこにフォロチケ交換所がありますよ」
 れみが指差した先にフォロチケ置き場があった。
「たまには新たな出会いを求めて知らない人にいいねを送ってみようかな」
 あみは何枚かフォロチケを置き、すでに置かれているフォロチケを見る。
「あ、おふぇりあさんとロコさんのがある!会場のどこかにいるのかな?」
 他のフォロチケを見る。なんとなく仲良くなれそうな予感のするコのフォロチケを数人分交換してみる。
 あみはふと、そのうちの1枚の裏を見た。マスキングテープに似顔絵を描いたものが貼ってあった。
「この絵かわいい!見てねってコレ、ツイッターのアカウントかな?」

 会場中心では、あんなとえもがいつものように口げんかをして、それなりに盛り上がっているようだ。
 あみがそちらへ向かおうとすると、ロコさんがいた。
「あ、こんばんは」
「こんばんは。今回、なかなかコーデが揃わなくて…」
「わたしも。サーカスコーデのグリーンのボトムスとか出なくて」
「あ、私ダブってます。代わりにトップス無いんですけどね」
「確かトップスダブってたかも。今度会った時にトレードしましょうか?」
「いいですか?では、よろしくお願いしますね」
「あ、あのテーブル、おいしそうなマカロンが並んでる!」
「私、さっきいただいたけど、おいしかったですよ」
「そうなんだ。じゃ、行ってきます!」
「それでは」

 あみはロコさんと別れてマカロンのあるテーブルに向かった。色とりどりのマカロンが綺麗に並んでいる。
 あみはピスタチオ味とおぼしき黄緑色のマカロンに手をのばした。
「やっぱり、さいとーさんのマカロンにいったね」
 背後から声がかかる。ゆうきだ。
「あれ?ゆうき?」
「ちょっと前に用事が片付いたから来たんだけど、あみがどこか行ったって言うんで見に来たんだよ」
「で、れみたちは?」
「先に帰ったよ。あたしは保護者としてあみがテーブルの上のお菓子を殲滅しないよう見張る義務があるから」
「保護者て…まぁ、それにしても、古いネタ覚えてるなぁ」
「さいとーさんのマカロンの事?」
「うん」

 昔、あみの姉がクタクタのカエルのぬいぐるみを同じ色のマカロンの前に座らせた写真を撮ったことがあって。
「お姉ちゃん、このカエル…」
「名前で呼んであげて」
「名前あるんだ…」
 ちょうどその時、テレビの報道番組の特集で、
『では、生保会社の斉藤さんにお話をうかがいます』
 という音声が流れてきて、
「そう。このコはさいとーさんって名前!」
「お姉ちゃん、今思いついただけやろ?」
「違うもん!このコはひらがなで「さいとーさん」だから!」

 単なる日常の姉妹漫才を遊びに来ていたゆうきが覚えていたという話だ。

 パーティーも終盤に近づき、あみとゆうきは出入口近くのフォロチケ置き場の前に来た。
 ちょうどフォロチケを置きに来たコがいた。
 あみがふとそのコを見る。
「あの…ひなさん?」
「はい…えっと…?」
「この前のだいあフェスで、ペンデュラムさんの隣で…」
 あみが言いかけると、ひなさんも気付いたようだった。
「じゃ、せっかくだから、このあとライブしませんか?」
「いいですけど、今、Nコーデしか無いですよ?」
「大丈夫です!最近のNコーデは可愛いのが多いし、問題ありません」

 パーティー終了後、3人でライブ配信後、あみは壁の張り紙に気付いた。
「シルバークラス認定会…」
 以前、参加できなかったイベントだ。どうやら今年は参加できそうだ。

 そして、認定会の日。あみはピュアプリンセスコーデで直前ライブを行い、認定会場へ向かった。

 …誰もいない?

 気合を入れすぎて早く着きすぎたらしく、一番乗りだった。少しずつ参加者が集まり始めたが、知り合いはいない。
「去年、けっこうみんな認定受けたもんなぁ…」
 参加者たちは皆、黙って並んでいる。確かに、初めての認定会。認定されるかドキドキだもんね。

「それでは、認定会を開始します」

 いよいよだ。あみは会員証をスキャンした。
「認定おめでとう!」
 無事、認定された。認定証と商品のワンピを受け取る。
 以前、ショップでゆみが見つけたものと同じ筈だけど、やはり、自分で認定されて手に入れたものは輝きが違う気がする。

 嬉しいけど、知り合いが見当たらず、記念お披露目ライブがソロライブだったのが少々残念なのだった。


今回のライブシーン
                        
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