インターミッション ゆうき、デビューしてみた

 少し時間を戻して、4月中旬。あみたちがシステムエラーに遭遇した日のこと。

 ゆうきは大学での講義を終え、街を歩いていた。
 ショッピングモールの時計台からドヴォルザークの『遠き山に陽は落ちて』が流れる。からくり時計の人形が動いている。4体の人形のうち、2体は動く。
「あ、もうこんな時間かぁ。今日はバイト代も入ったし、晩ごはんはあそこの蕎麦屋さんにしようかな」
 最近、ゆうきはあみに教わった蕎麦屋が気に入っていた。蕎麦がおいしいのは当然だけど、定食のジャンボおにぎりが絶品だったりする。

 あみはこういうお店よく見つけるなぁ…といつも感心する。そういえば、麺類にご飯がつく定食って、関東とかではあまり無いらしい。

 そんなことを考えながら歩いていると、ちょうどプリズムストーンの配信スタジオの前を通りかかった。
 あみは、プリパラが無くなって、代わりにここには来ないのかな?と疑問に思った。そして、店を見るとポスターがあった。
「デビュー応援キャンペーン。今ならコーデ一式がもらえる」

 ふと、ゆうきは思った。
 試しにやってみて、楽しかったら、今度はあたしがあみたちを誘ってみようかな…

 ゆうきは店内に入った。そして、プロモーションのコーデセットを受け取り、会員証を作成する。

 配信端末のほうへ行くと、端末が2台ある。一台は画面の真ん中の赤い四角に「システムエラー」と表示され、「故障中」の張り紙があった。
「あら、片方は故障かぁ…」
 当然、ゆうきはこのエラーの顛末を知るはずもなく、もう一台の端末に会員証を通した。

「あ、でも、トモチケ持ってないけど大丈夫かな…」
 心配にはなったけど、よく見るとソロライブの曲もあるみたいだ。

 とりあえず、ソロライブをやってみることにした。

 ターン、スタタン、タルトタタン♪
 結構気持ちいい。やっぱり、ライブすることに体が慣れていたのかな?

 曲が終わると、上からボタンが降りてくる。
「あれは…?」
 ゆうきはとりあえずボタンを押してみる。

 あたりが一瞬暗転し、キラキラのミラーボールが降りてくる。
「わぁ、綺麗!」
 ゆうきは相変わらずキラキラが好きだ。
 そして、ゆうきのコーデが変化した。
「えっ?サイリウムチェンジ…とも違う?」
 コーデの一部がスパンコールのようになっていて、光を弾けさせる。
「あたしもキラキラだぁ…」

 夢のような時間が過ぎていく…

「はぁ、楽しかったな」
 ゆうきは上機嫌でプリズムストーンを出て蕎麦屋に向かった。

 幸い、蕎麦屋は相席じゃないほうのテーブルが空いていた。
 ゆうきはそこに座っておにぎり定食を注文する。直後に客がパラパラと入ってきて満席になる。あぶないところだったな…

 ゆうきは蕎麦が出来るのを待つ間にあみとれみにメールを打つことにした。本当は5人でやりたいけれど、みぃとさなえは遠いし。
「いま、蕎麦食べてます。楽しいことを始めたいので、近くにいたら返信してね」

 よし、送信っと。

 ちょうど、蕎麦とおにぎりが出てきた。
「ふふ、いただきます!」


今回のライブシーン
 
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