第13章 一期一会を実感してみた

「あみ、何してるのだ?」
 まみが配信スタジオに到着したら、あみが初めてみるコと盛り上がっていた。
「あ、まみ。おはよう。昨日、わちゃわちゃ会の参加リスト見てたんだけど、プリスタでいいねをくれた人って、結構知らない人が多いなって思ってたんだけど、たまたま…」
「あ、はじめまして。しののっていいます。たまたまあみさんのプリスタにいいねしたら、本人さんからいきなりライブに誘って貰って」
「ははは。あみはチームで一番強引であるからな」
 しののさんは笑いながら、
「でも、ここまで喜んでくれたなら、いいなをした甲斐あったかな」

 しののさんを見送って、まみは
「それはそうと、ワイズガールコーデの色違いペアライブでよいか」
 まみはワイズガールレッドコーデに着替えた。
「そのつもりだったんだけど、わたしはマドモアゼルワインレッドにして、シックな赤でキメてみた、みたいなのもいいかも」
「あ、それ、いい!」

 結局、「シックな赤でキメてみたライブ」を配信して控え室に戻った二人に声がかかった。
「ちょっといいですか?」
「あ、はい」
「私はエルザといいます。遠征記念ライブに参加して頂けますか」
「もちろんいいですが、もしかして…」
 あみは一年ほど前のニュースを思い出していた。
 確か、ヴィーナスアークとかいう船で世界を巡り授業するアイドル学校が日本に入港した時にテレビで歌っていた人がエルザって名前だったはず。
「遠征って、まさか船?」
「いえ、新幹線ですが」
 ここまで答えてエルザさんが気付く。
「あ、ヴィーナスアークのエルザ・フォルテさんじゃないですよ。私はにじのエルザです」
「あ、失礼しました。わたしはあみ。こちらがまみです」
「よろしく」
「では、好きなコーデを選ぶのだ!このコーデで良いか?」
 まみはフラワーパターンコーデだ。
「いいですね。あみさんは…あ、このウサ耳のコーデ、初めて見るけどかわいいですね」
「あ、これ、3DSの自作のです。これでいいですか?」

 とりあえず、ゲスト参加は何とかこなせた。
「じゃ、せっかくなので、エルザさんもわたし達のゲストにぜひ」
「そうですか?それなら」
 エルザさんが答えかけると、向こうから三人やってきた。
「お、皆食べ終わった?」
「皆さん、エルザさんの遠征仲間ですか?」
「そう。美味しいカツ丼屋さんの噂を聞いて、行ってみたけど、行列が凄い上にカウンターだったから、エルザは先に食べたってわけです」
 後から来たうちの一人の説明にあみは納得した。
「あそこのカツ丼、美味しいですよね。わたしは並ぶのが面倒なので、別店舗の方へ行く事が多いですけど」
「ほら、地元の人でも並ぶの面倒って言ってるよ」
 後から来た中の眼鏡のコが言う。すると、別のコが、
「あ、このコ、ヘタレて並ぶの嫌とか言ってただけなので、気にしないでくださいね」
「ところで、今から、エルザさんにゲスト参加をお願いしてたんですけど、どうしましょうか?」
「では、私たちも参加させていただきましょうか。例えば、私と、メロディー☆、そちらの方でライブ、次にエルザ達とかですか」
「それでいいと思う。ちなみに我が名はまみ」
 まみに対し、メンバーを提案したコが、
「申し遅れました。私はせと☆と申します」
 まず、まみがせと☆さん、メロディー☆さんとライブをした。

「では、次はわたしとエルザさんと…」
「ただのヘタレです」
 眼鏡のコ、さっきのネタをひきずって名乗る。

 わたし達のライブが終わると、エルザさん達は帰りの新幹線の時間が近づき、急いで去って行った。
「引き止めてすみませんでした」
「いえ、楽しかったですよ」
「いつかまた機会があれば」
「また一緒にライブしようね!」
「お気をつけて!」

 エルザさん達が帰った後。
「そういえば、あの眼鏡の人、名乗らずじまいだったね」
「我らの中では「ただのヘタレ」さん。それで良いではないか」
「そういうことにさせてもらおうか」
「少なくとも、今度再会するまでは、な」
 あみとまみは顔を見合わせ、笑った。

 今頃、ただのヘタレさん、くしゃみしてるかも。


今回のライブシーン
    
3枚目の画像提供:にじのエルザ様
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