第37章 時の精霊を案内してみた
あみにえもから電話が入った。
「あ、もしもし。えもさん?」
「おばあちゃんに時子さんから電話があってね。世界の扉?の開発にかかるとか何とかだって」
「いよいよ元の世界に戻れるのかな?」
「あたしは難しい話はよくわかんないけど、そうなんじゃない?あと、らぁらさんとゆいさんがどうとか言ってたっけ」
実際は、めるの協力で、世界の扉の開発に着手する目途はついたものの、まだ問題があり、らぁらやゆいが来たときのことを参考に聞きたいという電話だったのだが、真意はほとんど伝わっていなかった。
「じゃ、ファイナルライブに向けて何か考えないとね」
あみが考えながら練習がてらライブをしようとスタジオに向かった。
「そういえば、当たりコーデが出たのに、大会のごたごたでまだ着てなかったし、練習がてら、これでソロライブでもしようかな」
そして、先客は、髪型が変わっていたので一瞬見落としかけたけど、よく知っているコだった。
「あ、つぼみさん」
「あ、おひさしぶりですー!今からですか?」
あみは事情を説明した。
「練習でしたら付き合いますよ。この前のUSBのお礼も兼ねて」
「ありがとうございます!」
「いえいえ、いい思い出作りになりますしね」
このライブを世界の境界で感知した者がいた。大げさなくらい長いツインテールの黒髪。時計の針のような模様の瞳。夜を司る時の精霊、ガァララだ。
「ライブの音が聞こえる。あっちのほうかな?」
翌日。あみたちはいつものようにライブを配信していた。
「メガドレインで作ったこのパーツとこのパーツで、色を揃えたらかわいいコーデになりそうじゃない?」
ゆみが提案する。
「いいね。全員でこれでライブしようか」
「ごめん。言いだしておいてアレなんだけど、あたし、シャルルさんのわちゃわちゃ会に呼ばれてるんだ」
発起人のゆみが去り、残り3人でライブをしていると、観客にひときわ目立つコがいた。
「キラキラして、楽しいところだね」
そのコが話しかけてきた。
「あたし、ガァララ」
そういえば、とあみは思い出した。以前、プリパラで世界が破滅しそうになった時に見かけた時の精霊の一人だ。
おそらく、この前のゆい達の世界の精霊なのだろう。
「よければ、街を案内しましょうか?」
「うれしい!ガァラるんるん」
一同はえもがよく使う体育館に来た。
「ガァララもここでライブしたい」
「それは、ぜひ、見てみたいね」
「じゃ、さっきのコーデを貸してほしいな。初めて見るコーデだから」
そりゃまぁ、さっき作った自作コーデだもんな。当然だ。
いろいろ街を見て回り、あみ達は展望台に来た。
「ねぇ、一緒にライブしようよ」
あみは誘いを受けて、ガァララとペアライブをした。
ライブを終えると、ガァララは嬉しそうに去って行った。
2日後。あみとゆみは買い物に出ていると声をかけられた。
ガァララとよく似た髪型だけど、髪は淡いグリーンだ。昼を司る時の精霊、ファララだった。
「友達のガァララが迷子なの」
「え?わたし、一昨日、一緒に街を散歩して、一緒にライブしましたけど…」
「そうなの?あたしの知らないうちに…」
ゆみのほうがびっくりしていた。
「あなたと一緒にライブしたら、ガァララ見つかるかな…」
「手伝いますよ。わたし達とライブしましょう!」
とりあえずライブはしたものの、ガァララは現れない。
「遊園地だと現れるかと思ったけど、いないね」
あみが思い出したように言う。
「そういえば、展望台で最後にライブしたんだ。あそこなら」
展望台でゆみとファララがライブをし、あみが周辺を捜した。
そして、ガァララはそこにいた。
「あ、あみ!ガァララ、迷子になってた」
「ファララはそこでライブしてるよ」
ようやく会えた二人の精霊たちと一緒に、あみたちはショッピングモールに来た。
「わぁ、この服かわいい!」
二人は服を買った。クロックモダンの新色だった。
「さっそくこれで四人でライブしよう」
ライブを終えて。
「あみ、明日、この前の友達も呼んで、6人でライブしてもいい?」
「多分大丈夫。6人だとビーチがいいかな」
そして翌日、ビーチで6人でスイカ割りライブをした後、ガァララがチラシを拾った。
「ベストグループライブ?いいねを集めるとキラ宿タワーでライブができる…?」
一同がチラシを見ていると、誰かが同じチラシを手に横を通った。髪型が違っていたから一瞬わからなかったけど、あみはそれが誰だか気づいた。
「おーい、まもるさん!」
「あっ、あみさん達!」
「髪型変えたんですね」
「ちょっとまだ慣れてないから、そそくさと帰ろうとしてたからあみさんに気付かなかったです」
「えー、その髪型もいいですよ」
「ありがとうございます。でも、ちょうど良かった」
「?」
「あみさん、元の世界に帰るかもってツイッターで見たから、お世話になったし、最後に一緒にライブして、ちゃんと挨拶したいなって思ってたんですよ」
「ご丁寧にありがとうございます。すごくうれしいです」
「ねぇ」
ファララが会話に入ってくる。
「みんなを幸せにするライブをすれば、いいねが集まると思うの。みんなでライブしましょう」
「じゃ、まもるさんも一緒に!」
「そうですね。そこにちゃむが居るから呼んできます」
まもるさんがあいちゃむ☆さんと一緒に戻ってきた。
「あいちゃむ☆さんも髪型変えたんですね。前に聞いてて、プリスタグラムでは見てましたけど」
「あ、知ってたんだ…じゃあ、さっそくライブをはじめましょうか」
「じゃ、ウチのチームはわたしとれみで行こうか」
ライブを終えると、あみのプリキャスに合格通知が来た。
「やった!」
「ガァラうれしい!」
「それじゃ、キラ宿タワーへ行こう!」
「せっかくだし、ロコたちも呼びますね」
「みんな来れるといいですね」
そして、キラ宿タワーに到着した。一応、合格チームリーダーのあみは固定なので、あとのメンバーを決めてライブだ。
「とりあえず、ゲストの二人は確定として…まみ、行ける?」
「うむ。力になろう!」
「お待たせ!」
メンバー会議をしていると、ロコさん、リアーネさん、わくと君が到着した。
「こんにちは!」
「あ、姉さんももうすぐ来ますよ」
「じゃ、私たちのチームからはロコとリアーネでいいかな」
3チーム合同ユニットでのベストグループライブは大盛況だった。
「ねぇ、アンコールの声が聞こえるよ」
「ちょうどいいね。ちょうど残りのメンバーでライブできるし」
「めばえさんも到着したし」
「せっかくだから、最後は各チーム、それぞれが色違いコーデでやるのはどうかな」
「ガァラ面白そう!」
「ぜひやろう」
ファララたちはクロックモダンコーデ。めばえさん姉弟はすみっこぐらしコーデだ。
「どれにしようか」
「あいらさんのコーデはどう?」
「いいよ」
アンコールも終わった。
「私たちはもう行かないといけないの」
ファララが唐突に言う。
「えっ、そのなの?」
まぁ、異世界の時の精霊だ。当然か。
「最後に、二人のライブをプレゼントするね」
時の精霊の歌は旋律の表と裏でそれぞれ昼の歌、夜の歌を歌っており、神々しいまでに美しかった。
みんなはうっとりと聞き惚れた。
そして、歌が終わると、二人は光の中に消えていった。
「楽しかったよ。ありがとう…」
「なんか、すごい経験しましたよね」
あみはまもるさんに言った。
「あみさんも、向こうに帰っても、元気に活躍してくださいね」
「ありがとう」
そのころ…
研究室で時子さんの研究チームが悩んでいた。
「めるちゃんが数式を解いてくれたから、世界の揺らぎは数値化できたんだけど…」
「もとの世界とほぼ1年時間がずれているから、どうしてもつながらないんですよね」
「全く…ここまできたのにね。時の精霊のご加護でもない限り難しいのかねぇ…」
その時、研究室に二人の少女が現れた。
「あなたたちは?」
「あみちゃん、れみちゃんの友達」
「時の精霊、ファララとガァララ。お手伝いさせてもらうね」
「あみちゃんは迷子のガァララを助けてくれた。今度はわたし達が助ける番」
「えっ?えええーーーっ!」
時子さんの驚きの声が響き渡った。
今回のライブシーン
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