第33章 キラ宿へ行ってみた
「うーん、前にも来たけど、迷子になりそうな広さだよね」
「あ、あそこから在来線に乗り換えるみたいよ」
東京駅。あみたちは新幹線から降り、ホームから降りたところでまごまごしていた。
あみの仕事は明日なので、祝日に前泊で東京入りしたのだ。そして、在来線乗り継ぎ切符でここまで来ている。
「まぁ、今日はついにキラ宿ライブだもんね」
「で、在来線…いっぱいあるよ」
「えっと、山手線は黄緑色の柱のところみたいですね」
「あ、あれだね」
「ちょっとお待ち!あれ、上野方面だよ」
「こっちの新宿方面だった…はずですよ」
前にあみたちが来た時には、メンバーのみぃが鉄道に詳しくて任せきりだったので、今回は初めてじゃないのにグダグダだ。
一同、漸く目的のホームに上がる。すぐに電車が来る。
「あれ?」
「どうした?」
「このラッピング広告のバンドって…」
「Poppin Partyだね」
あみの疑問にゆみが答える。
「去年もありましたよね。このバンドのラッピング広告」
れみがあみの疑問の真意に答える。
「JRに平沢唯のファンでもいるのかな」
「あみ、それ「放課後ティータイム」のギタリストの名前だよ」
「あれ?別のバンドだったっけ」
「うん。全然別。確かに平沢唯のギターテクはすごいけど、一昔前の人だよ」
バンド談義をするうちに、電車は原宿駅に到着した。開札を出たところにスタンプ台が置いてある。
「何かな、あれ」
「キン肉マンスタンプラリーだって」
「お、これはやらないとね!」
あみの目の色が変わる。
「あみ、キン肉マン好きだもんね」
「おお、原宿駅はスニゲーターだ」
「スニーカーとワニのデザインなんですね」
「原宿はファッションの街だから、おしゃれなスニーカー屋さんもあるしね」
そして、おしゃれな店が並ぶストリートを通る。クレープとかを食べながら歩いている人も多い。
「おいしそうなものもあるけど、高いし行列もすごいね」
「祝日だし特にね」
「あ、食べ歩きならできるよ」
あみはそう言うと、近くのコンビニに入ってサンドイッチを買って出てきた。
「ほら。おこづかいの範囲で並ばずゲット!」
「で、なんでこの具がゴロゴロで食べ歩きに向かない照り焼きチキンと玉子のサンドイッチなわけ?」
「前に食べた時、おいしかったから」
「ええい!そんな理由なら、罰としてアレのイケニエに…」
ゆみは近くのビルの上にあったタコのオブジェを指差した。色々な装飾のついた黄色いタコだ。
「あ、でもこれ、すごくおいしいですよ」
れみがサンドイッチを食べながらフォローする。
「確かに、歩きながらでも食べれないことはないのである」
まみも食べている。
「ね。ほら、1パック2つ入りだから、わたしと食べよ?」
あみがゆみに2パック目のサンドイッチを差し出す。
「まぁ、そういうことなら…あ、確かにおいしい」
一同がサンドイッチを食べ終わってしばらく行くと、本日の目的地、キラ宿のプリズムストーンに到着した。
「おお、ここが総本山…」
「しかし、この混み方はすごいね」
「でも、不思議なほどフォロチケとか持ってない人ばかりだね」
そう。ライブを配信するという感じの人は見当たらず、なぜか男の人が多かった。
店の中にはゆいの像が立っていた。
「ゆいさんの像だ」
「似てるね。やっぱりかわいいなぁ」
「写真撮ってもいいのかな?」
しかし、あみ達くらいしか像に注目していない気がする。もう見慣れてる常連さんなのかな?
「とりあえず、あこがれの舞台だけど…」
「一応、あみがログインして、限定会員証を発行して、そのままライブしようか」
「じゃ、みんな私服だし、雑誌についてたこのコーデくらいかな」
ライブを終えて戻ってくると、大勢の人々は整列を始めていた。
「何だろ、一体?」
「あ、ポスターがありますよ」
「本日、限定のTシャツを買うと、茜屋日海夏さんが手渡ししてくれるそうですよ」
「それって…」
「らぁらを演じた声優さんなのである」
あ、そうか。この世界ではプリパラはアニメの中の話だから、らぁら役の人がいるんだな。
「あ、あのテーブルの所にいる人かな」
「すごいね。らぁらさんと同じ声だ!」
「美人さんなんですね」
「最近は声優さんもアイドルみたいに歌って踊ることも多いからね」
そうか。客層が違うのは声優さんのファンだったからだったんだ…
「らぁらさんの像だったら、近寄れなかったかもね」
「東京駅にあるそうですよ。らぁらさんの像」
「そうなの?絶対見に行こうね!」
「また迷子にならなきゃいいけど」
一同、プリズムストーンを出てまた駅へ向かう。
「さて、ホテルはどこだっけ?」
「上野だよ。東京より向こうだね」
「あ、そうそう。寄りたいところあるから、夕食は秋葉原でいいかな」
「別にどこでもいいよ。とにかく向かおうか」
そして、秋葉原駅。
幸い、出た開札の近くにスタンプラリーがあった。
「ステカセキング。音楽プレーヤーの超人だね」
「電気街だしそういう人選かな」
スタンプを押して駅を出る。
「あれ?あのビルの大きなスクリーン、どこかで見たような…」
「うん。手前の歩道橋であの前に行こうと思うんだ」
「あみ、もしかして…」
「そう。ここで他のスクールアイドルの映像を見て結成されたグループが多いってドキュメンタリー番組で見たんだ」
「あたしらは学校の名前は背負ってないけどね」
「まぁ、気分だけでも」
「でも、スポーツニュースじゃない?」
「まぁ、そう都合良くアイドルが出るわけじゃないか」
「あみが行きたかった所って、ここの事?」
「ここは通過点だよ。行きたいのはこっち」
あみは歩道橋を降りて交差点に向かった。交差点を右に曲がると、サブカル系の看板が並び、メイドさんとかの格好をした女の子がビラを配ったりしている大通りに出る。そして、暫く進んで道を渡った。
「この近くのはず…」
あみはスマホに地図を出し、現在地を見た。
「うん。こっちだわ」
大通りから横道に入り、そのまま進んで道を渡り、更に進むとやや長い階段があった。
「ここ」
「ここ?階段?」
「うん。ダッシュで上がるよ!」
あみに促され、三人は訳がわからず一緒に階段を駆け上った。
そして、その上には…
「神社?」
れみが階段の上の柱のプレートを見る。
「神田明神・男坂と書いてありますね」
ゆみがはっとする。
「ここは…!」
「そう。スクールアイドルの代名詞ともいえる、μ’sがトレーニングに使った神社の階段だよ」
「そういえば、ドキュメンタリー番組で見た階段だね。なんとなく見覚えあるわ」
「なるほど。我々のライブの成功祈願も兼ねて、同じ階段を駆け上がったのだな。最初に説明してくれればいいのに」
「いや、思ったより早く着いたから…」
せっかくだから、みんなでライブ成功祈願で参拝した。
「見て、狛犬の親子の彫刻みたいなのがあるよ」
「向こうには大黒さんもあるね」
「ていうか、あっちが正面かな。門があるよ。仁王さんじゃなくて馬?」
「馬だね。じゃ、あっちから帰ろうか」
一同、門から出たものの、迷子になっても困るので、結局、来た道に戻った。
「あれ?」
れみがふとビルの看板を見た。
「あそこ、エルザさんが教えてくれたカードショップだよ」
「あ、本当だ。寄ってみようか」
けっこう色々とカードが売られているようだった。
「おこづかいで買えそうなのあるかな…」
プリスタパックのカードが売られていた。
「これ、なかなか揃わず、既存コーデも多いって聞いて、買うのためらってたら売り切れたんだよね」
「お金出し合って、買えそうなやつだけ買おうか」
「うん。それでもいくつかコーデは揃いそうだね」
「あ、わたしはこれ買おうかな」
あみが見つけたのは初期のコーデセットのものだった。
ゆみがふと目をとめた。
「ねぇ、認定証もあるみたいよ」
「認定会行けなかった身としては気になるなぁ」
「裏口認定、してもらっちゃう?」
そんなこんなで、懐は少々寒くなったが、コーデは増えた。
「これって、ご利益なんだろうか」
「コーデはゲットできたけどね…」
「夕食、どうしよう」
「途中にコロッケそばっての見ましたよ」
「多分、それほど高くなさそうだし、それにしようか」
「にしんの甘露煮やえび天なんかは知ってるけど、コロッケは初めてかも」
「なんとなく、おいしそうではあるな」
「じゃ、そば食べたらホテルに向かおうね」
「そういえば、なんで上野のホテル?」
「ネットで見たら、新潟の温泉の石を通した温泉効果のお風呂があるってところがあったから」
「おお、いいね!温泉!」
そして、上野駅。
「おお、ここが津軽海峡冬景色行きの夜行列車の出る駅!」
「それを言うなら青森行きですよ」
「だから、なぜに昭和時代の歌を…」
「あ、見て!なんか昭和っぽいアイテムじゃないですか?」
ゆみの再つっこみをれみがかわす。駅の出口にガチャ機があり、れみが見たガチャはキン消しのものだった。
「確かに造形が昭和っぽいね。わたしの叔父さんも子供の頃集めてたって言ってたな」
「そうなんだ」
「当時は100円で3個入りだったらしいけど、今は200円なんだね」
あみは妙に詳しい。
ゆみが表紙の見本写真を見て、
「ねぇ、あみが時々れみと背中伸ばすストレッチしてる時に叫んでる「ロングホーントレイン!」ってコレの事?」
モンゴルマンがバッファローマンを背中合わせに背負っているキン消しの写真だった。
「そうそう。これこれ。わぁ、コレだけは欲しいな。買ってみようかな」
あみが200円入れてハンドルを回す。
コロン。小さなカプセルが出た。忍者の超人の立ちポーズのものが入っていた。
「あ、ザ・ニンジャだ」
「すごく判りやすい名前のキャラであるな」
「200円で1個ってことは値段6倍だね」
「ねぇ、次の穴のカプセル、ちょっと大きくない?」
「どれどれ、本当だ」
「じゃ、我が買ってあみにプレゼントするのである」
「いいの?」
「たまにはね」
少し大きなカプセルが出た。
「どうかな?」
「わぁ、ロングホーントレインだ!ありがとう!」
「あ、ちゃんと2コ入ってるね。ちょっとお得だ」
「へぇ、ぴったりはまるんですね」
れみがモンゴルマンとバッファローマンを組み合わせてみる。
「これってどういう場面なのであるか?」
「タッグマッチで、バッファローマン、上の角のあるほうね」
「なんとなく形で想像つくな」
「このキャラ、角で突進する技を使うんだけど、試合中に脚を負傷するんだ」
「ふむふむ」
「で、こっちのモンゴルマンがバッファローマンをこう背負って、代わりに走って突進して逆転勝ち!という場面」
実際の対戦相手とは違うけど、ザ・ニンジャに負けてもらって説明する。
「でも、こんなムキムキの人背負って走っても、へろへろになりそう…」
確かに、漫画で読むとかっこいい場面なんだけど、冷静に見るとそうかも…
「そこは拳法の達人の脚力って事なんでしょうね」
一応、れみがフォローする。
「うちでは一生、この忍者が標的の役割になりそうだね」
許せ、ザ・ニンジャ…
さて、翌日。四人は駅前の大きなオブジェのある歩道橋の上に来た。
「昨日は夜で気付かなかったけど、銀色の玉の載ったオブジェもあったんだね」
「こっちのポップな知恵の輪みたいなのは見たけどね」
「夜というよりキン消し談義に夢中で見落とした気が…」
「キン肉マンといえば、上野駅のスタンプラリー押してないよね」
「あ、そうそう。押しに行かなきゃ」
駅の改札に行くとスタンプ台があった。
「あっ、ロビンマスクですよ」
れみが言う。確かに鎧の英国紳士、ロビンマスクだ。
「あ、このキャラは我も見たことあるのである」
「やっとメインキャラが出たね。これまではワニとかカセットとかの敵キャラだったけど」
「ロビン・・・あ、そうか!」
あみが変に納得する。
「どうしたの?」
「上野に来た本当の理由があるんだけど」
「パンダとか博物館とかは時間ないんじゃない?」
「うん。そこは諦めてる」
言いながら、あみは駅のホテルからみて反対側に出る。道を渡ると公園のようなスペースがある。カエルが口から水を飛ばす噴水がある。
「えっと、これ?」
「これも面白いけど、正直、これはわたしも知らなかった。ここの目玉は、あっちの階段の上のはず」
一同は階段を登る。西郷隆盛の銅像の向こうにスカイツリーが見える。
「あ、犬連れた西郷さん!本物見るのは初めて!」
「でも、ここも通過点なんだよね」
あみは再び階段を降りて、カエル噴水から反対側に出る。しばらく行くと、大きな池があり、池の真ん中にお堂がある」
「目的地はここだよ」
「この池?」
「不忍池って池なんだけど、ここ、ロビンマスクが試合で負けたところなんだ」
「そうなんだ。だから、スタンプがロビンマスクだったのね」
「そして、あのお堂。弁天様のお堂なんだよね」
「弁天様って、確か音楽の神様でしたよね」
「あ、そういえば、お堂の前に琵琶の銅像があるね」
「ここでもライブ成功祈願しようと思ってね」
「一応、キン肉マン聖地巡礼じゃなくて、アイドル活動の一環なわけね」
参拝の後、池の周囲を歩いていると、あみが突然池の風景を撮影し始めた。
「あっ、鴨ちゃんが泳いでるんですね。かわいい!」
れみが鴨に気付いたのだが、あみは、
「ちょうど、あの鴨がいるあたりでロビンマスクが水中戦で負けて、対戦相手が水中から浮上してきたんだよね」
あかん、やっぱりキン肉マン聖地巡礼モードだわ、このコ…
「ところで、お昼はどうするの?まだちょっと早いよね」
「じゃ、店まで2駅ほど歩く?」
あみが言う。
「そのくらいの時間はありそうだけど、店は決まってるの?」
「うん。ちゃんと調べてる」
暫く歩くと、昨日通った神田明神近くの道に出る。そしてそのまま進む。
更に進むと川がある。
「ひじりはし…聖なる橋なのかな」
「そういえば、正面に教会が見えますね」
「で、こっち岸には儒教のお寺なのかな」
「屋根に潮吹いてるみたいなシャチホコみたいなのが載ってるね。かわいい!」
そんな話をしながら橋を渡り、更に進むと大きな通りに出る。そして、通りに沿って進む。
「けっこう歩いた気がするね」
「多分、もうすぐだよ」
あみがスマホで地図を出す。
「うん。もう少しだ」
古書店が点在するエリアに来た。
「このあたりの古本屋さんの2階のカレー屋さんに行こうと思うんだ」
「え、カレーだったんだ」
「この神保町、カレーがおいしい店が多いって話らしいからね。で、古本屋の2階の店がおいしいって、昨日検索した誰かのブログに書いてあったんだ」
「あ、あそこ、2階に欧風カレーって書いてあるよ」
「よし、さっそく行ってみよう」
「…なになに?カレーショップは裏の階段を使ってくださいだって」
「じゃ、建物の裏に回ろう」
裏の階段の中ほどに張り紙がある。
「ここで約40分待ち、だって」
「人気店みたいね。まだ空いてる時間でラッキーだったね」
幸い、行列は無く、店にはすぐ入れた。
喫茶店のような落ち着いた雰囲気の店だった。
「あたしらが普段行くカレー屋さんとは雰囲気が違うね」
「うん。でも…げっ、値段が倍ほど違うよ」
「本当だ。でも、きっとおいしいだろうから」
実際、カレーが出てくると…
「すごい!お肉がゴロゴロ…」
「ちょっとお待ち!」
言いかけるゆみをあみが止める。
「どうした?」
「まだ食レポ配信、再スタートしてない。じゃ、行くよ」
改めて…
「すごい!お肉がゴロゴロ入ってるね」
「値段はいつものビーフカレーの倍でも、お肉は倍以上ですね」
「塊のお肉なのに柔らかくて食べやすいのがいいね」
「付け合せのじゃがバターも絶品なのである」
「おいしい!しあわせ〜」
あとはひたすら食べるだけの四人だった。
カレーを食べて元気をつけた一同、再び歩き始める。
「おいしかったね」
「じゃ、最寄のJR駅は…」
「神田駅だね。スタンプラリーは…カレクック!カレーの超人だ」
「ナイスな人選だね。じゃ、線路を探して歩こう」
そして、駅が見えてきた。
「あれ?すごく見覚えがあるんだけど…」
「東京駅だよね」
「神田をスルーしちゃった?」
「みたいですね。ちなみに御徒町駅もスルーしてますね」
「ま、いいか。東京駅に一旦入ろうか」
入ったところにスタンプがある。
「やっぱり東京駅がキン肉マン…あれ?ちょっと違うような」
「これはキン肉マングレートだね。タッグパートナーの方だよ」
「ちょっとフェイントだなぁ」
「ところで、らぁら像は?」
「八重洲側の1番街らしいけど、ここは丸の内側みたいね。探してたら、あみが仕事に遅れるかも…」
「じゃ、もうすぐあみは離脱だから、集合場所は各自でらぁら像を探して」
「うーむ、少々不安だけど、面白いね。そうしよう」
「じゃ、あみの仕事の方へギリギリまで散歩しようか」
「どっちへ行くの?」
「赤坂方面だから、あっちだね」
暫く歩くと、しずく型のオブジェがある。
「東京のおいしい水道水だって」
「水のみ場なんですね。カレー食べて結構歩いたから、ちょうど喉がかわいてました」
れみはおいしそうに水を飲む。他の三人もじゃぁ自分も、って感じで続く。
水を飲んで、横の信号を渡ると大きな建物がある。
「お店かな?」
「イベント会場に使いそうなやつじゃない?」
「ですね。国際フォーラムって看板がありますよ」
そして、その先に有楽町駅がある。
「あっ、スタンプのポスターあるよ」
「ジ・オメガマンだ。なになに、「フォフォフォ。スタンプはここにはないぞ、銀座口だ」って書いてある」
「案内がこのキャラになりきっているんだね。よし、銀座口へまわろう」
そして、銀座口へ行ってスタンプを押す。銀座口なのに、一同は銀座とは反対の方へ歩き出す。
「確か、この先に…あった!」
あみが地下駐車場スロープの入口のようなものの上を指差す。そこには大きなゴジラのオブジェがある。
「わぁ、ゴジラがいる!」
一同、ここで写真を撮ったりして盛り上がった後、
「じゃ、わたしはそろそろ離脱して仕事に行くね」
「うん、気をつけてね!」
一旦解散だ。
ここまでリーダーだったあみが離脱したので、3人は…
「どうしようか」
「どこへ行っても迷子になりそうなのである」
「いっそ、線路沿いに歩いて、私たちでスタンプ集めましょうか」
「だね。疲れたら電車で東京へ戻ればいいもんね」
などと言いつつ、暫く歩くと、れみが気付く。
「あ、私、ここ知ってます。去年、あみと来ました」
「そういえば、あの網目みたいなビルやあそこの機関車はニュースでサラリーマンのインタビューの背景で見たことあるかも」
「新橋駅ですよ。前はゆりかもめに乗るはずが、間違えてこっちへ出て来たんです」
れみが記憶を頼りに駅に入る。
「えっと、スタンプはジェロニモ…元は普通の人間だったって」
「出世、サラリーマン、街頭インタビューという人選かな?」
そんな感じで進んで行った一同だけど、さすがに疲れてきた。
「あ、田町駅が見えてきた」
「さっきの浜松町はキン肉マンの兄だったけど、ここは誰かな」
「あ、昨日のロングホーントレインの牛超人!」
「バッファローマンだったっけ」
「あみ、喜びますね」
「いや、むしろ「いいなー、わたしが自分で押したかったな」とか言いそう」
「かもしれませんね」
「さて、時間はまだあるけどどうしよう?」
「次は品川ですね。ちょうど新幹線のひと駅ですし、次で折り返しましょうか」
「だね。さすがにちょっと疲れたし」
そして、品川駅の近く。
「ちょっと喉がかわいてきたね」
「あっ、あそこにコーラの自販機が見えますよ」
「あら、このドクターペッパーっての何?」
「前にあみが地元じゃ須磨パティオの輸入食料の店とかにしかないやつだって言って飲んでましたね」
「どんな味なのだ?」
「あみにひと口もらったんですけど、コーラみたいだなんだけど、いろんなフレーバーが入っていて、ちょっと複雑な味でしたよ」
「複雑って…」
「そうですね。風邪引くと医者で処方される咳止めシロップに炭酸入った感じかなぁ…」
「それ、全然おいしそうじゃないんだけど…」
「でも、飲んでみると結構おいしいんです」
「まぁ、百聞は一見にしかずっていうし、あたしはこれ、飲んでみるわ」
結局、全員、これを飲んで一服したのであった。
「気に入った!今度名谷で地下鉄降りることがあったら、パティオに寄ろう」
特に、まみにウケたようだった。
さて、品川駅。
「ここのスタンプはザ・マンリキ」
「ポスター見る限り、マイナーなキャラなのかな」
「私が読んだあたりで出てきてましたけどね」
「そういえば、れみは少し読んでるんだよね。なんか、戦車のかっこいいキャラが、とか言ってたっけ」
「その戦車キャラのスタンプはあるのかな」
「あ、あることはあるみたいです。レオパルドンは…巣鴨駅ですね」
「巣鴨駅って…」
「山手線のほぼ対角線…一番遠い駅ですね」
「諦めるか…ぐごおおお…、だっけ?」
「ぐおごごご、ですよ」
「とにかく、電車に乗って東京駅に戻るのだ!」
「らぁら像探す時間考えると、ちょうどいいかもね」
そして、東京駅のらぁら像前。
三人が到着すると、既にあみがいた。
「あみ、お疲れ様。仕事は?」
「うん。無事終わったよ。ここでも限定会員証作ったから、ライブできるよ」
「じゃ、みんなで昨日買ったコーデでやろうか」
「うん。やろうやろう!」
さて、ライブを終えて。
「そういえば、エルザさんに会えるかな」
「秋葉原のHeyってところでライブやるって言ってたよ」
「よし。Heyへ向かうのだ」
あみがツイッターでエルザさんにダイレクトメッセージを送る。
「今からHeyに行きます」
返信がくる。
「ごめんなさい。急用で名古屋にいます」
「エルザさん、いないみたいね」
「仕方ないね」
さて、Heyに到着。
ちょうど、フォロチケボードで相手を探しているコがいた。
「こんにちは。わたし、あみ。遠征で来てるんですけど、良かったら」
あみが声をかけると、
「へぇ、そうなんですね。私はあかねといいます。じゃ、ペアライブお願いします」
「じゃ、あたしたちは応援するね」
ゆみたちはギャラリーになった。
あかねさんとのペアライブを終えると、ちょうど四人組が入ってきた。
「4人と4人だし、あの人たちともジョイントライブ申し込もうか」
「こんにちは。わたしたち、神戸から遠征で…」
「あ、そうなんですか。実は私達も岡山から遠征に来てるんですよ」
「ははは、遠征同士だたんですね。では、東京でジョイントライブしませんか」
「いいですよ」
お互い自己紹介する。岡山組は、きすいさん、シスイさん、まみずさん、ユウスイさんと名乗った。
きすいさん達とのライブを終えて、四人はHeyを後にした。
「まぁ、エルザさんには会えなかったけど、それなりに楽しい旅になったね」
「うん。とりあえず、東京駅に戻ろうか」
そして、東京駅。おみやげ屋さんも結構ある。
「東京ばな奈、ごまたまご、シュガーバターの木…みた事のあるお菓子が多いね」
「あ、マカロンラスクなんてのもありますよ」
「カラフルで綺麗だね。あたしはこれにしようかな」
「あ、そうそう。あみ」
「何?」
「あたしたちでスタンプラリー、景品クリアまで集めたんだよ」
「そうなの?ありがとう。見せて見せて」
「はい。どうぞ」
「すごいな。バッファローマンもあるんだ。行きたかったなぁ…」
ゆみがれみに目配せし、3人はくすっと笑った。
「そこのコンビニのレジで景品のシール貰えるみたいね」
一同、コンビニに入って、レジでシールを貰う。
「交通系ICカード決済で400円以上お買い物すると、カードも付きますよ」
店員に言われて、ちょうど新幹線で飲むお茶が欲しかったので、それを買う。
「じゃ、わたしの神戸ピタパで」
…エラー。
「お客様、神戸市営地下鉄のものではダメみたいですね…」
「残念。じゃ、現金で」
「あ、スイカってイコカと同じでチャージだから、チャージ0がダメだったのかな…」
「まぁ、シールは貰えたし」
「額用の「肉」シールが付いてるのが面白いね」
「なりきりアイテムなんだね」
そんなこんなで、新幹線で帰路についたのだが、ふと、ゆみが車両ドアの上の電光掲示板のニュースを見ると…
「◆ニュース◆プリチャンアイドルの白鳥アンジュ、引退を表明」
「えっ…ええーーーーっ!」
旅の終わりにサプライズニュースを見た四人なのであった。
今回のライブシーン
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