第30章 メルティックスターセレクションライブに参加してみた

「1月も中旬になっちゃったね」
「お正月ライブ、間に合わせたいですね」
「新作の残り2色、どちらかが揃えばできるんだけどね」
 あみたちがそんな話をしていると、まみが通りの向こうを指差した。
「まみ、どうしたの?」
「ゆいちゃんがそこを通ったのである」
「プリパラのゆいちゃん?そういえば、ゆみはこの前、一緒にライブしたんだっけ」
 四人はゆいを追った。
「あ、まみちゃん!ユメ久しぶり!」
「らぁらさんには会えた?」
「全然会えないの…ユメどうしよう…」
「じゃ、今日は仲間がいるから、今度は5人でライブするのだ」
「それ、ユメいいかも!ユメお願い!一緒にライブしよ!きっと、らぁらもユメ見つかるよ」
 ゆいの目が虹色に輝き始めたところであみと目が合った。
「ユメ?」
 以前、ロコさん達と一緒の時に感じた、不思議な感覚があった。
「あれ?ユメどこかで会ったことがあるような…?」
「わたしはあみ。ゆいさんと同じように、プリパラの世界からこっちに来たんだ」
「ユメ…?」
「わたしと、このれみは、別のプリパラの世界でゆいさんに友達を助けてもらったことがあるの」
「そんな事が…」
「そして、この世界に来ているらぁらさんと会い、一緒にライブもした」
「!」
「だから、一緒にライブして、らぁらさんを引き寄せられるかもしれないね」

 ライブをしても、残念ながら、その場にらぁらは現れなかった。
「でも、いいねがランクインしたから、カリスマチャンネルを紹介のコーナーでも、ライブのようすが配信されるから、らぁらさんが目にする可能性はあるよ」
「ユメありがとう。また一緒にライブしてね」
「勿論!それに、逆にお礼を言う立場になったしね」
「ユメ?」
「さっき、パシャリングステーションで写真選びきれなくて、追加でお買い物したじゃない。あれで、わたしたちに必要なコーデが手に入ったの」
「それはユメラッキーだったね!」
 そう。お正月新作コーデのふじいろが揃ったのだった。

「あ、そういえば」
 ゆいと別れたあと、あみが思い出したように言った。
「さっき、またあの感覚あったよね」
「うん」
「その時、携帯にメールがきたんだけど…」
「うん」
「見て」
「新着2件。あんなさんと…えっ!」
「もしかして、私にも…あっ、来てます」

 二人にゆうきからのメールが届いていた。
『いま、蕎麦食べてます。楽しいことを始めたいので、近くにいたら返信してね』
「メールの時間は…わたしたちがこの世界へ来てから30分経ってないくらいかな」
「もしかしたら、世界と世界が干渉している間だけは向こうの時間も進んでいるのかもしれないですね」
「少なくとも、ゆうきさんが蕎麦を食べ終わるまでに戻らなきゃね」
「二人が来てから9か月で30分ということは、半年以内が目標かな」
「楽しいことって、まさか、ライブ配信かな?」
「可能性は高いね」
「わたしたちが飛ばされた配信スタジオから考えると…」
「配信スタジオは商業ビルの2階。近くで蕎麦といえば、多分ビルの地下の…」
「定食に大きなおにぎりがついている店ですね。多分」
「こっちの世界にもお蕎麦屋さんあったっけ?」
「どうだろうね?」
「ところで、あんなさんからもメール来てなかったっけ?」
「あ、そうだった。この前言っていたセレクションライブの日程調整だね」
「え?いつ?」
「あ、最短だと明日の土曜日だね。場所は…商業ビル2階のスタジオ!」
「ちょうどいいじゃん!明日にして、ライブしたらお蕎麦屋さんを探してみよう!」
 ゆみが提案する。
「だね。こっちの世界のゆうきがいたりして」
「じゃ、返信するね」
「明日は朝からメルティックスターセレクションライブ。テンション上がるのである!」
「そうか、まみはミラクルキラッツセレクションの時は休んでたもんね」
「じゃ、今から、正月ライブその2、やりに行く?」
「行く行く!」

 いつもの配信スポットで正月ライブの準備をしていると、声がかかった。
「あれ?あみさん?」
「エルザさん!こっちへ来てたんですか?」
「ええ、明日の認定会に参加するためにね」
「認定会?」
「チャンネルがシルバークラス以上だと認定証が貰えるんですよ」
「げっ…予定かぶってる。間に合うかなぁ?」
「それはそうと、皆さん、お正月ライブですか?」
「はい。一応、自作コーデで新春ライブはやったんですけどね」
「新作とか、今入荷のコーデが4つ揃ったのでリベンジするのである」
「エルザさん、新作のももいろ持ってたりします?」
「ありますけど」
「じゃ、折角なので参加してくださいよ!そろい踏みには丁度誰か助っ人が必要なので」
「では、ぜひ」

 ライブが終わった。
「ありがとうございました」
「エルザさんはいつまでこっちに?」
「今回は、地元は込むので、ここに滞在して当たりを狙おうかと」
「そういえば、メルティックスターチームキラッとコーデの色違いの当たりキャンペーンが始まるんでしたね」
「ラウラ☆さん達は来てないんですか?」
「来ますよ。せと☆とメルと一緒にこのあと合流する予定です。メルティックスターチームキラッとコーデでライブしようかって思ってるんですけど」
「わたしたちも持ってる…あれ?」
 あみがコーデを見る。よく見ると、靴だけ色のパターンが違う。
「あ、靴だけあたり用の靴だわ。当たりか普通の靴引いたら揃うんだけど…」
 あみたちはこのあと食事に行く予定だった。
「エルザさんはもう食べました?」
「ええ。プリスタでシチュー写真見て、シチューかこの前のラーメンかで迷ったんだけど、結局新規開拓で天ぷら屋さん見つけて」
「あ、あそこの天ぷら、おいしいでしょ」
「ええ。つい食べすぎちゃったです」
「わかるわかる。玉子の天ぷら、ごはんに載せて食べると超おいしいから、ついつい食べちゃいますよね」
「え?それ食べてる人は見たけど…」
「人気メニューみたいですよ」
「そうなんだ…私もそれにすれば良かったかな…」
「わたしも食べに行こうかな」
「ちょっと、あみ!」
 ゆみが割って入る。
「いつもの店の日替わりがゆかりごはんと豚のしょうが焼きだからって店決めたの誰だか覚えてるよね」
「はい。わたしです…それもおいしいんですよね。なんでこう色々バッティングするかなぁ」
「天ぷらは別の機会でも食べれるのではないのか?」
 まみがつっこむ。

 そして、いよいよメルティックスターセレクションライブ当日。

 あみとれみは商業ビルに向けて駅からの地下街を歩いていた。
「蕎麦屋はこの筋だよね」
「はい。確かにここだと思います」
 残念ながら、こっちの世界には件の蕎麦屋は無かった。1階にあるごはんおかわり無料の定食屋はあったのだが。
「じゃ、お昼はここかな」
「ですね」

 二人は2階にある時計台の前に来た。ゆみが待っていた。
「お待たせ。早いね」
「初詣は遅刻だったからね。あたしも反省くらいはするんだから」
 そんな話をしていると、メルティックスターの面々と一緒にまみが現れた。
「あ、こんにちは」
「ちょうど、そこでまみ君と一緒になってね」
 さらが言う。
「では、今日はよろしくお願いします」

「これが、めるめる達が選んだコーデだよ!」
 控え室のテーブルには9種類のコーデが並んでいる。ミラクル☆キラッツの時には、ゆみが1着ずつすべてでライブしたのだけれど。
「めるめるはこれ着たい!」
 めるがひょうがらデニムコーデを手にした。
「あみあみにこれ似合いそう!」
 めるが問答無用であみにチャイナロックコーデを渡す。確かに、プリパラ時代のあみのお気に入りコーデだったし、めるの見る目は確かなのだろう。
「それなら、私がこのコーデで合わせればいいかなぁ」
 れみがロックスタイルレディSコーデに手を伸ばす。
「いいね!」
 めるも賛同する。どうやら、メンバーと一緒に、それぞれのコーデを各自で着る方式のようだ。
「それでは、ワタクシはゴージャスパールコーデにしますわ」
「確かに、あんなさんに似合いそうだね。あたしはこれが着たいかな」
 ゆみはブリティッシュロックレッドグリーンコーデを選ぶ。
「二人がそのコーデなら、我はこのコーデにするのだ」
 まみはメリーゴーランドフラワーコーデを選んだ。まぁ、妥当だろう。
「ボクははなのプリパリルージュコーデにしようかな」
 そこでふと気付く。
「メンバー足りない?」
「ここは主将の出番でしょ」
 ゆみがあみを指名する。
「わたし、主将だったのか…まぁ、とにかくわたしが2回目で」
 あみはぶとうかいシネマコーデを取った。

 メンバーの持ち歌でライブをするのだが、さらの「Play Sound」は二人曲だ。
「キューティーキャッツピンクコーデが余ってますよ」
「ラストはワタクシ達3人プラス1人で「インフルエンサー」をやりますわ」
「じゃ、前のセレクション欠席のまみに任せよう」
「いいのか?」
「いいんじゃないですか」
「みんなでピンク猫ですか?」
「ワタクシ達はプリ☆チャンユニフォームのままですわ」
「あんあん?」
 あんなの決定にめるが聞き返す。
「ワタクシが本気でコーデを着れば、セレクションのコーデを着たまみさんが目立ちませんわ!」
 普通なら嫌味に聞こえる台詞だが、あんながゲストの顔を立てようとしていることは皆わかっていた。
「さすがはあんなだね」
 さらが相槌を打つ。
「ワタクシが名を残すのはプリ☆チャンの世界のみ!それこそがプリ☆チャンアイドルですわ!」

 こうして決めたライブを4本一気に配信するこの企画はかなりゴージャスなものになった。
「今日はありがとうございました」
「さて、お昼はどうしようかな。下に定食屋さんはあるけど」
「めるめる、ドーナツ食べる!」
「定食屋にドーナツしないと思うけど…」
「えー、ないの?じゃ、いかリング、プリーズ!」
「じゃ、シーフードミックスフライ定食があるといいね」
「わたしはチキン南蛮定食にしようかな」

 結局、話題はランチ談義になるのだった。


今回のライブシーン
               

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