第29章 お正月ライブを計画してみた

「新年、あけましておめでとうございます」
「本年もよろしくお願いいたします」

 年が明けた。あみたちは初詣で神社の最寄り駅で待ち合わせだ。
 あみとれみが駅に着くと、すぐにまみが駅に来た。
「同じ電車だったのかな」
「階段から遠い車両だったから、ちょっと時間がかかったのである」
 あみの携帯が鳴った。
「ゆみからメールだ。えっと、ちょっと寝過ごしちゃったから、直接神社に向かいます、だって」
「ゆみは駅に来ると遠回りなんだっけ」

 三人が鳥居をくぐったところでゆみが追いついた。
「あけおめ〜。新年そうそうごめんね」
「ていうか、ゆみは最初からここで合流でも良かったかもね」
「とりあえず、お参りしましょう」

 四人はお参りを終え、屋台で焼きとうもろこしを買って、それを齧りながら参道へ出た。
「向こうの世界ではこの近くにベビーカステラ屋さんがあってね」
 あみが言い出すと、
「当たりのやつですよね」
 と返す。客の回転が速いせいか、時々中が生焼けでクリームみたいになっているカステラが混じっているのだ。
「えっ、こっちにもあるよ。そのベビーカステラ屋さん」
 ゆみが指差した先には見覚えのあるベビーカステラ屋が…
「でも、行列が半端なく長いね」
「諦めて他行く?」
「だね。まだとうもろこしも食べてるし」

 あみたちは新年会をすべく、移動を始めた。
「去年は串カツ屋さんでしたね」
 れみが言う。ただ、こっちの世界にあの店があるかは不明だ。
「あ、ここでいいんじゃない?」
 駅前の居酒屋が開いていた。

「じゃ、ノンアルコールビール4つと軟骨唐揚、フライドポテト、出汁巻き、シーザーサラダ、あと枝豆お願いします!」
 未成年だし、雰囲気だけ。幸い、昼間なので家族連れもいるので違和感はない。
「かんぱーい!」

「ところで、新春ライブどうしよう?」
「新作のお正月コーデが3色、プリパラのお正月コーデ2種って予告がでてますよ」
「いつ入荷?」
「明後日からみたいですね」
「間に合わないじゃん!」
「今日やるには、一応、プリパラのは両方あるけど…」
「あみ、去年はお正月コーデ自作しませんでしたっけ」
「あ、そうそう。とにかく新春ライブやりたくて作ったね」
「えっ、どんなの?」
 ゆみに聞かれて、あみは3DSを取り出した。赤い着物風のコーデだ。
「わぁ、これかわいい!今年もこれでいいんじゃない?」
「ゆみにはこれの色違いで白とか似合うかも」
「紅白でめでたいね。作ってみようか」
 あみは作ったコーデの色パターンを変更した。
「をを!白のほうが確かに似合ってる」
「では、我はあみと同じ赤、れみは白でライブするのだ!」
「じゃ、この後のライブは決まったね」
「しかし、初ライブに新作使えないのもなぁ」
「これこそ暮れの福袋にしたら良かったのに」
「あ、そういえば、福袋のコーデでライブしたいのである」
 まみはファルルラベンダーコーデが当たったのだった。それとフレッシュマーチングコーデとドレパのチームサイリウムコーデ。
「わたしはクリスタルビジューコーデとエメラルドアラブコーデだったよ。アラブコーデ、この色持ってなかったから嬉しい!」
「あたしはホワイトスワンとウィッシュリボンの黄色だったよ」
「私はエンジェリックファンシーコーデでしたね」
「そういえば、福袋って何種類くらいあるのかな?」
「ウェブサイトにリストがあるみたいですよ」
 れみがスマホにリストを出す。
「その他のものは…あ、全部プリパラの時のがあるコーデばかりだね」
「ツインギンガムコーデって、ボトムス2種類あったよね。どっちか判らないから、両方用意しよう」
「よし、じゃ、新春ライブの後は、福袋ライブで新作コーデを集めて、第2回新春ライブということで」
「福袋ライブの構成はどうするのだ?」
「まみのファルルラベンダーをセンターだと、あみがクリスタルローズビジュー、あたし、マリオネットミューサイリウム持ってるからそれでどう?」
「ゆみのホワイトスワン、そらみスマイルにちなんで、わたしがフラワーメレンゲ、マジカルピエロ持ってるから…」
「れみがエンジェリックファンシー貸してくれるなら、我はファルル枠で…」
「まみはあれが着たいわけね」
「うぐぅ…図星である」
「いいですよ。貸してあげます」
「ありがとう!」
「個人的には、れみのマジカルピエロ、わたし見てみたいな」
 あみが提案する。
「そういえば、ペアだとポップ系はあみが着て私がクール系というのが多かった気がしますね」
「れみはハートのカラコンとか入れてるし、かわいいと思うんだけどな」
「じゃ、あみがフラワーメレンゲですね」
「ドレッシングパフェ系もやりたいのである」
「じゃ、まみがドレパのチームサイリウム、あとはフレッシュマーチングとダブルセンターでサイドはツインギンガム2種ってところかな」
「あみにツインギンガムのドロシー版をリクエストするのである」
 まみが指名する。
「え?なんで?」
「ハロウィンのねこねこライブの時のねこ占い師の時に思ったのであるが、あみはかぼちゃパンツ、似合うと思うのだ」
「そうかな?あ、そういえばお正月の新作コーデもかぼちゃパンツだね」
「ウィッシュリボンは青もあるよね」
 ゆみが色違いライブを提案する。
「他の色もあるよ。みんなで色違いライブしようか」
「それいいね」 
「あとはエメラルドアラブか」
「あみがプリパラで手に入れなかったコーデなんだから、ソロライブでお披露目しちゃいなよ」
「フォーチュンカラットにしようかな」
「あの曲、アンジュさんの持ち歌だし、あたしもホワイトスワンでやろうかな。白鳥つながりで」
「だったら、わたしは曲変えて、まみもれみもどれかでソロライブやってみたら?」
「じゃ、交換したフレッシュマーチングとエンジェリックファンシーを戻そうか」
「そうだね。そこまでやりこめば、お正月新作コーデ、少なくとも2色、きっと集まるよね!」

 最終的にこれらのライブをこなした結果、新作コーデはだいだいいろ、ふじいろはリーチ、ももいろは半分で、揃わずじまいだった。
「う…一月中にできるかな」
「まぁ、ぼつぼつやればいいんじゃない?」

 次の日、あみもれみも出払っていて、ゆみは一人だった。
「まみも来ないのかなぁ…」
 そう思った途端誰かが入ってきた。
「まみ?」
「違います!ゆみさん、ちょっと奥の部屋、お借りしますね」
 見覚えのないコがそう言って奥の部屋に入った。
 見覚えがないのにゆみを知っているということは…
「ロギねさん、シャルルさん、モモさんのうちの誰かかな・・・?」
 ゆみも部屋に入る。
「えっと…」
「あ、こんにちは。シャルルです」
「今回はシャルルさんね…」
「ははは、こんなに毎回姿が変われば誰か判りませんよね」
「で、今日はどうしたんです?」
「私はこの世界に飛ばされてきたボーカルドールってことは話しましたよね」
「うん。そういう意味では同郷ですね」
「実は先月、私とは違うタイプのキャラが飛ばされてきたんです」
「闇のボーカルドール、みたいな感じですか」
「そんな感じです。それがなぜか私を追ってくるので、必死で逃げてきたんです」
 シャルルがそこまで言った時、
「ごめんくださーい!誰かいませんか?」
 外で声がした。
「ひっ!ここまで追ってきたみたいです…」
「わかった。一旦あたしが出てみるね。一応、問答無用ってタイプでもなさそうだし」
「すみません…」

 ゆみは恐る恐る部屋を出た。
「あの、何か御用ですか?」
 来たのはゆみの想像とは少々違っていた。確かに妖艶な雰囲気は漂っているものの、まみとれみを足して2で割らずに2をかけたような感じの女の子だった。
「人を探してまして。シャルルというボーカルドールなんですけど」
「その人にはどんな用で?」
 答えによってはとぼけよう。
「実は、私はサッカバスといいます。シャルルと同郷のシェアキャラなんですけど、この名前なので、イメージが固定しちゃって…」
「はぁ…」
 なんとなく、話の方向性が判らなくなってきた。
「それで、なかなか一緒にライブ配信する友達ができなくて、同じ境遇の彼女に声をかけようとしたんですが…」
「元の世界からの刺客と思われて逃げられた…みたいな話ですか」
「そうなんです。だから、驚かせたことを謝って、友達になれたらなって思って探してるんです」
 目を見る限り、嘘ではないだろう。ゆみは後ろのドアに向かって言った。
「話は聞こえたですね。シャルルさん」

 シャルルさんが奥の部屋から出てくる。サッカバスさんがシャルルさんに歩み寄る。そして、壁ドン顎クイをしながら、
「クックックッ。やっと出てきたわね…」
 サッカバスさんは悪魔そのもののオーラを出しながら言う。
 えっ?さっきの話は嘘?
 ゆみがそう思った時、場の空気がいきなり反転した。
「…なんてキャラに見えたんだよね。驚かせてごめんなさい」
 サッカバスさんは一歩引いて頭を下げた。
「いえいえ、こちらこそ確認もせずに逃げてごめんなさい」
 シャルルさんも頭を下げた。そして、二人はにっこり笑って握手をした。

「よかったですね。二人とも」
 そう言うゆみに二人は会員証を差し出した。
「じゃ、プロデュース、お願いします」
「ここの展開は予想通りだわ…」
 ゆみは3DSを取り出した。あみが作ったコーデに天使と悪魔のペアコーデがあったはず。
 ゆみは預かった会員証をスキャンし、シャルルさんを天使、サッカバスさんを悪魔のペアコーデにして、蚊帳の外でペアライブを見ていた。

 そして、ライブが終わると…
「ゆみさん、折角なので、一緒にライブしませんか」
 そういえば、あみは他にも翼のついたコーデ作ってたな。これにしようか。
 そして、今度は自分の会員証でログインして、天使と悪魔にはさまれてライブを配信した。

 仲直りの善行が良かったのか、このライブでお正月コーデのだいだい色をコンプできたのだった。
 あと1コーデ。お正月ライブの可能性がぐっと高まったのだった。


今回のライブシーン
                       

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