第26章 クリスマス前のやってみたアラカルト(前編)

#01 れみの銀幕デビューを祝ってみた

「そういえば、れみがエキストラで出た映画のブルーレイってそろそろ発売だよね」
「発売日は昨日だから、もう出てるはずですよ」
「あたしとまみは映画館で見たんだけど…」
「わたし、ブルーレイ買ってこようかな。チームへのクリスマスプレゼント」
「じゃ、みんなで見ようね」
「あみ、いいの?」
「うん。家電量販店のポイントがけっこう溜まってるから、お小遣いで何とか買えそう」

 1軒目。
「あれ?この辺にDVDコーナーって看板あったはずなのに…」
「住宅リフォームコーナーに変わってるようですね」
「隣町のほうへ行ってみる?」

 2軒目。
「新作コーナーには洋画が3本置いてあるだけみたいですね…」
「そもそも映像ソフトが棚一列しかないし…」
「だから、向こうを先に見に行ったんだけどね」

 結局、専門店で買うことに。
「あぅ…ポイント使えなかった…。アイスとか我慢しなきゃ」
「まぁ、冬ですし、アイスはいいでしょう」
「でも、特典ステッカーとかマイクロファイバーのハンカチとか貰えたじゃない」
「とりあえず、鑑賞会のあとはライブしよう」
「じゃ、鑑賞会のお菓子と飲み物は私が買いますね」
「れみ、祝われる側なのに…」
「あみの懐具合を見るとねぇ…」
「れみー!ありがとう!愛してる」

「あー、面白かった!」
「れみ、ちゃんと出てたね」
「じゃ、記念ライブやろうか」
 あみの提案を聞き、ゆみが、
「そう言うと思ったから、コーデ用意してるよ。まみが前売り特典、あたしが入場特典のコーデ」
「あれ?入場特典って、3回行く必要あるんじゃ…」
「あたしが最初に観ようとした回が映写機故障で流れて、映画館からおわびに招待チケット貰ったんだ」
「運がいいのか悪いのかわかりませんね」
「わたしはこのブルーレイのオマケのコーデで」
「私は映画で着たコーデですね」
「じゃ、さっそく、オンエアー!」


#02 ピュアライズされてみた

「おつかれ!」
「じゃ、交代ね」
 ゆみとあみはプロレスのタッグチームのようにタッチをした。アンジュさんの「フォーチンカラット」でのソロライブが出来るという事で、二人で試しに来ていたのだった。
「ゆみはプリズムショーのコーデにしたんだ」
「うん。なんだか、「プリティーリズム」のあいらの動きに似てる気がしたし」
「こっちの世界でもプリズムショーはあったんだ」
「アニメでね。主役の春音あいらって、デザイナーの七星あいらさんがモデルって言われてるんだよね」
「そうなんだ」
「あみはアンジュさんと同じブランドのコーデにしたんだ」
「うん。このレアリティにしては豪華なドレスだし。お気に入りなんだ」
 あみがライブを終えると、キラッとチャンスが発生した。プレシャスミューズのキラッとコーデはドレスがほぼ全部キラキラと光る。
「…すごく綺麗!」

 帰り道。
「今日のキラッとチャンス、見てる側からはどうだった?」
 あみはゆみに感想を聞いてみた。
「全身キラキラで凄かったね。マツケンサンバみたいだったよ」
「何よそれ?」
「時代劇とかで有名な俳優の松平健さんが全身スパンコールの着物でサンバ歌うのがあってね」
「いや、それは知ってるけど、何てものに例えるのよって話!」
 ゆみは何食わぬ顔で話題を変えた。
「そういえば、クリスマス近いよね。今年のクリスマスコーデも集めてライブしたいね」
「わたし、プリパラではそう言いながら、毎年ライブ三昧で、いろんなコと出会ってトモチケをパキったよ」
「そうなんだ。今年も楽しい出会いがあるといいね」
「だね。あ、それで思い出したけど、さっき、ギャラリーにらぁらさんが居たような気がするんだけど」
「あ、いたいた。そっくりだったね。プロのコスプレイヤーさんかもね」
「…あっ、そうか。この世界にはらぁらさん居ないんだったね」
 あみが思い出していると、
「あれ?」
 ゆみが何かを見た。
「どうしたの?」
「なんだか、ピンクの猫みたいなのがそこの空を横切ったような」
「プリパラではピンクのクマのぬいぐるみのマネージャーが飛んでたけど、きっと、自転車がこけて、籠に入ってたぬいぐるみが飛んだとかだろうね」
「うん。あ、今自転車通ったし、それが正解だったみたいね」
 自転車と入れ違いに、一人の黒人女性が路地から出てきてこちらに向かってきた。
「アナタ、プリ☆チャンアイドルですか?」
「あ、はい。そうですけど」
 いきなり話しかけられて、あみは咄嗟に答える。
「では、これはプレゼントです」
「え?ありがとうございます…」
 あみは問答無用に差し出されたアクセサリーを勢いで受け取った。
 黄土色の歪んだドクロで片目には×印が入っている。
「随分個性的な…似合うかなぁ?」
 あみは髪にそれを付けようとした。
「あれ?」
「それ、ペンダントです」
「あ、そうか、アクセは頭に付けるって先入観が…失礼しました」
 あみはペンダントを首にかけた。
「ん?」
 急にあみはけだるい倦怠感に襲われる。
「もういいや…プリ☆チャンアイドルなんて無理…」
「あみ?」
「元の世界に帰るなんて無理無理…」
「どうしちゃったの?」
 ゆみには訳がわからない。

「その人、アキラメストになってます」
「誰?」
 いつの間にかそこにいたツインテールの髪型のコが言った。
「私はモモカ。あのペンダントのせいで、夢が邪悪な力になって、アキラメストになるんです」
「よくわかんないけど、判りました。で、どうすればいいんですか?」
「私が助けます」
 モモカさんはコンパクトのような道具を取り出した。
「マジマジョマジカル!マジョカステージ、スタート!」
 突然モモカさんの服が黒いノースリーブのワンピースに変わり、ダンスに合わせてピンクのコスチュームが装着されていく。
「扉の外でコーデチェンジしてる?」
 ゆみが驚いている間に変身が完了した。
「ハートルビー、モモカ!魔法×戦士マジマジョピュアーズ、きらめく魔法でピュアライズ!」
 モモカさんは魔法のタクトみたいな道具を取り出し、ダンスしながら道具からピンク色の光の玉を作る。そして、その光の玉に息を吹きかける。
 モモカさんに吹かれた光があみを包み込む。
「あなたの夢、ピュアライズ!」
 モモカさんのかけ声と共に、あみから怪しいペンダントが外れ、床に落ちて砕け散った。
「あれ?」
 あみが我に帰る。と、どこからともなく黄色い箒のような謎の生物がわらわらと集まってきて、フラダンスみたいな動きで破片を掃き清め、またわらわらと去っていった。
「何、今の?」
「大丈夫ですか?」
 モモカさんがあみに話しかける。
「はい。おかげさまで。ありがとうございました」
「良かった」
「ところで、ダンスうまいですね。マジョマジョ何とかってプリ☆チャンアイドルユニットだったりします?」
「いや、そういうのじゃないんですけど…あと、マジマジョピュアーズです」
「ごめんなさい!でも、せっかくだから、ライブにゲストで出てくれませんか?コーデも可愛くてカッコいいし」
「いいよ。なんか楽しそう。それじゃ、そんな時は…」
 モモカさんは小さな鞄を開ける。中には宝石がいくつか嵌っていて、その中の一つにタクトの先を載せる。すると、宝石の色の光がタクトに灯った。
「マジョマジョマジカル!」

 あみとゆみが気が付くと、スイーツを模したステージに、モモカさんとお揃いのコスチュームで立っていた。
「すごい…」
「なんか、物まね番組で本人登場サプライズみたいな状況だけど…」
「じゃ、ライブを始めましょうか」
 モモカさんはにっこり笑った。ただ、魔法×戦士のことは秘密らしいので、コスプレライブとして配信されたのだった。

 ちなみに、ゆみが見たピンクの猫はモモカさんの仲間のモコニャンという猫型の妖精で、見間違いではなかったらしい。


#03 伝説の神アイドルに会ってみた

 あみとれみはバイトを終え、休憩室で雑談していた。
「ゆみと一緒に面白いライブ配信してましたけど、どうしたんですか?」
「たまたま知り合ったモモカさんってコが魔法戦士コーデとかを貸してくれたんだ」
「今回は特に「いいね」がたくさん集まってますよ。そのモモカさんには感謝ですね」
「いや、まったく。足向けて眠れないほど感謝デス」
 れみとあみが感謝と言ったものの、意味合いは違うけど、魔法×戦士のことは秘密なので、ただの相槌になっている。
「おっ、プリスタも「いいね」が来てる。へぇ、あみあみ♪さんってコから「いいね」が来てるね」
「名前が近いから興味を持ってくれたのかもしれませんね」
「どんなコかな?会ってみたいなぁ…」

 その数時間前。
「あの、昨日ライブしてたよね」
 ゆみは後ろから声をかけられた。
「はい」
 振り向くと、そこには思いがけない人物がいた。
「あたし、らぁら。友達のゆいとライブしてたら、光に包まれてここにいたの」
「あ、そうなんですか」
 昨日ギャラリーにいたらぁらのコスプレイヤー…ん?
「…で、ゆいはライブが好きだからと思って、あなたのライブみてたら、「やってみた」とか、みた事のないライブだったの」
 ちょっと待って…まさか、本物のらぁら?
「あたしもライブしたら、ゆい、見つけてくれるかな?」
「だといいですね」
「じゃ、一緒にライブしてくれる?」
 えええーっ?伝説の神アイドルと共演?それってすごすぎる!
「もちろん。喜んで一緒にライブさせてもらいます」
 らぁらは劇中と同じトゥインクルリボンサイリウムコーデだ。
「確か、あみの自作サイリウムコーデの色違いがあったはず…」

 さすがは伝説の神アイドル。プリ☆チャンライブは初めてでも確実にこなしている。

「ライブは成功したけど、ゆいさんは来ませんでしたね」
「もっといっぱいライブしないといけないかな」
「じゃ、仲間呼んできます。実は、別の世界から来たってコもいるんで」

 そして、再び現在。
 あみたちのいる休憩室にゆみが入ってきた。
「ゆみも来た。我も今きたところ…」
 まみが言いかけるのを遮って、
「3人とも!大変だよ!」
「どうしたの?」
「プリパラ世界から、らぁら本人が来てるの!」
「えっ?」
「もしかしたら、あみたちが帰るヒントになるかもと思って、全員で一緒にライブする約束してきた!」
「ゆみ、超ファインプレーだよ!」

 しかし、らぁらはあみやれみに会っても、面識はないようだった。
「でも、あたしやゆいだけじゃないんだね」
「わたしやれみは、元の世界のらぁらさんにはお世話になったんだけどね」
「うーん、二人になんだか懐かしい思い出があるような、どこかで会ったような気はするんだけど…」
「とにかく、ライブ、やりますか」
「かしこま☆」

 ライブが終わっても、結局、ゆいも現れず、あみたちが元の世界に帰ることもなかった。
「でも、楽しかったからいいか」
「じゃ、今度はゆいと一緒に歌っていた、あたしのとっておきの曲を用意するから、今度またライブできる?」
「うん。それなら、異世界のゆいさんにも会ったことがあるし、わたしがご一緒しましょう」
 あみが立候補する。
「ありがとう。よろしくのかしこま☆」

 どの世界のらぁらも「かしこま☆」は共通のようだ…


#04 ずっトモチケに込められた想いを成就させてみた

「らぁらさん、プリパラのペア曲を用意したんだね」
 それは、ゆみの何気ない一言だった。
「そだねー。でも、ちょっと思い出しちゃうな」
 あみは一枚のフォロチケサイズのチケットを取り出して眺めた。
「まいまいさんのフォロチケ…あれ?ちょっと違うね」
「それはずっトモチケですよ」
 れみが解説する。
 プリパラでは、ペアライブすると、対になったずっトモチケが出て、パートナーとパキるようになっていた。
「わたし、向こうの世界のまいまいさんとずっトモチケをパキったんだけど、プリパラが終わる日の夜だったから、結局使うことはなかったんだ…」

「こんにちは」
「お、あみ、噂をすれば…だよ」
 偶然、まいまいさんがやって来たのだった。
「あれ?このチケ…これが向こうの世界の私?」
「ええ。でも、これで再びペアライブは出来なかったですけど」
「もし良かったら、この世界の私ともペアライブしましょうか。なんでも、今日からプリパラのペア曲でライブできるらしいですよ」
「ぜひやりましょう!」

 これで、このずっトモチケも浮かばれる…かな?


今回のライブシーン
              

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