第26章 クリスマス前のやってみたアラカルト(後編)

#05 後輩の相談にのってみた

「あのー、ごめんください」
 れみとゆみが何十年ぶりに一回だけ復活したとかいう番組の配信を見ながら雑談していると、見慣れないコが訪ねてきた。眼鏡をかけたおとなしそうなコだ。
「何かご用ですか?」
「私、モモっていいます。先輩を探してるんです」
「今日はゲストは誰も来てないですね」
「そうですか…」
「先輩ってどんな人です?」
「うーん、私の人生の師匠みたいな人なんです。ただ、見た目は判らないんです」
 押しかけ弟子になろうとしているんだろうか。
「えっと、ゆみさんはいらっしゃいますか?」
「え?あたしだけど…」
「お会いできて光栄です」
「そこまで言われてあたしも光栄だけど…なんで?」
「先輩が言っていたんです。悩みはゆみさんに相談するといいって」
「なんか、誤解か人違いの可能性もある気がするけど…」
「いえ、「マジ?ヤバい!間違いない!」ってくらい間違いないです。あなたは先輩が見せてくれたライブ配信のゆみさんです」
「そうなの?でも、えもさんの歌詞で言わなくても」
 ゆみが笑いながら突っ込むと、
「でも、あなたたちが見ているその番組のマーサさんって、萌黄えもちゃんのおばあさんですよね」
「あ、そうなの?知らずに見てたわ…で、悩みって何かな?」
「はい。私の髪の色、どうですか?変えたほうがいいですか?」
「うーん、今のままでも可愛いけど、せっかくモモって名前だし、れみみたいなピンクもいいかもね」
「えっ、やっぱりそうですか。私もれみさんの髪色、いいなって思ってたんです」
「スッキリして良かったね」
「はいっ!ありがとうございます。では、お願いします」
 モモさんはゆみに何かを手渡した。
「…会員証。まさか…?」
「他の方のご迷惑にならないよう、ソロライブにしておきますね」
「先輩って、もしかして…」
「はい。ロギね先輩です!」
「そういう事かーーーっ!」
「シェアキャラの後輩だったんですね。そりゃ、先輩の顔、わからないですね」
 れみは簡単に納得した。

「ゆみ、れみ!いる?」
 3人がライブから戻るとすぐ、あみたちが来た。
「そこでシャルルさんに会って、探し人を・・・って、あら?」
「シャルル先輩!」
「あら、モモ、ここにいたんですね。あ、髪色変えたんだ」
「はい。ゆみさんにプロデュースしてもらいました」
「良かったね」
「あの…ロギね先輩は?」
「もう次の街へ行ってます。私たちも向かいましょう」
「せっかくだから、記念ライブやりたかったけど、時間ないですね」
「このままの服でよければ、表の通りで6人ライブを今すぐ配信できるかも」
「じゃ、今すぐ記念ライブして、それから出発ということで」
 ゆみが音頭を取ると、
「はーい!」
 5つの返事が重なった。


#06 ライブに行く時間を変えてみた

 今日はあみは非番なのでらぁらのライブに付き合うことにした。
 とはいえ、今回は助っ人を頼んでいた。
「あれ?あみちゃん、みらいちゃん?」
「また会えたね。らぁらちゃん」
 みらいもかつて世界を越えてらぁら、ゆい両方と会っていたので、みらいとらぁらでライブしてみるという計画だった。
 けど、残念ながらゆいは現れなかった。
「ゆい、別の街にいるのかな?」
「今度、もっと広域のライブを考えたほうがいいかもね」
「そういえば、さっき出たパシャッとアイテムのぬいぐるみって、マネージャーのクマさんだよね」
「うん。プリパラでは飛んだり喋ったりしてたけど、ここではさすがに動かないね」
「そりゃ単なるぬいぐるみだし。こうして見ると可愛いのに、喋るとオッサンなんだよね」
「でも、うだつの上がらないオッサンにしては、いざという時には頼りになるから不思議なんだよね」
「そうなんだ」
 あみとらぁらの話にみらいは相槌を打つしかできないようだった。

 その後、らぁらと別れたあみはふらっと配信スポットに寄ってみた。普段行かない時間帯の様子も見てみたかった。
 ちょうど、ライブしているコがいた。配信中の名前を見ると「あみあみ♪」とある。以前、「いいね」をくれたコだ!
「あの、この前は「いいね」をありがとうございました」
「?」
「名前が近いせいか、すごく印象に残ったので」
「あっ、そういえば」
「せっかくだから、一緒にライブしませんか」
「いいですよ。すみっコぐらしコーデと私服コーデがありますけど、私服のほうがいいですかね」
「では、私服コーデでいきましょう」

 ライブ終了後。
「ありがとうございました」
「あ、また夕方に仲間とライブするんですけど、一緒にどうです?」
「あ、それならこちらも仲間連れてきます」

 そして夕方。
「はじめまして。れいか♪です」
「あれ?あなたからも「いいね」をもらったことがあるような…」
「確かに、プリスタで見かけたことあるような気がします」
「プリスタで見かけた人とライブ、なかなか機会がないから楽しみです」
「じゃ、みんなでライブ、やりますか」


#07 ツイッターを開いてみた

「ちょっと時間があいちゃったなぁ」
 あみはスマホを取り出した。とりあえず、ツイッターのアイコンをタップする。
「あれ?エルザさん来てるんだ」
 そう、エルザさんにはこの前のシステムエラーの事を聞きたかったので、あみは合流ポイントをツイートし、その場へ向かった。

「あ、あみさん。お久しぶりです」
「急に場所指定してすみませんね。今回は一人ですか?」
「初めまして。ラウラ☆です。せと☆君からあなたの話は聞いています」
 すぐ近くにいたサイドポニーのコが挨拶してくれる。よく見るとメロディー☆さん同様海外出身っぽい。
「初めまして。私があみです」
「3人用の新曲あるようなので、このメンバーでやりますか」
「いいですね」

 ライブを終えると、ちょうどれみが来た。
「あ、エルザさん。お久しぶりです」
「れみさんですね。銀幕デビューおめでとうございます。見ましたよ」
「わぁ、ありがとうございます!…えっと、あなたは」
「ラウラ☆です」
「あれ、ラウラ☆さんの持ってるコーデ、色違い持ってますよ」
「そうなんですね」
「じゃ、ペアライブしてきたらいいんじゃない?」
 なぜかあみが提案する。実際、あみがエルザさんと話そうとしている事で、ラウラ☆さんに変な心配かけても悪いということもあったし。
「いいかも」
「私もメルとの待ち合わせまで時間があるので、その間、あみさんと話でもしながら二人のライブを見るとしようかな」
 エルザさんも賛成する。あれ?待ってるとメロディー☆さんとも会えるのかな。

 ラウラ☆さんとれみのライブの間、あみとエルザさんはベンチで話をしていた。まぁ、あみの目的はこっちだ。
 実際、エルザさんもエラーに巻き込まれただけで、詳しいことはよく判らなかった。
「では、あの赤いシステムエラーは以前にもあったんですね」
 あみはこれまでの顛末を話した。
「前回のわちゃわちゃ会ライブにいたまいまいさんは向こうの世界にもいて、わたしの背中を押してくれたんです」
「こうして私達が知り合ったのはあの人のおかげなんですね。感謝しないと」
「でも、それで知り合ったうちのゆみ、この前ヒドイんですよ」
「何かあったんですか」
「わたしのキラッとチャンスを見てマツケンサンバみたいだって」
 それを聞いてエルザさんは爆笑し、
「その発想はなかったわ。面白い」
「もー!エルザさんまで!」

 れみたちが帰ってきても会話は続いていた。
「そういえば、あみさん達は、静岡へ行かれたそうで」
「ええ。仕事のついでだけど、楽しかったですよ」
「私はまだ静岡には行っていなくて」
「そうなんですね。結構各地へ行かれていると思いましたが」
「まぁ、色々行ってはいますけどね。沼津へ行かれたということは…やはり浦女の」
「まぁ、一流のスクールアイドルの足跡をたどるのも勉強になりますしね」
 あみはそう言いつつ、心の中では…
 …言えない。本当は海鮮丼目当てで漁港に行ったついでだったなんて…
「やはり、そのドキュメンタリー番組は有名なんですか?わたし達が来る前に放送していたらしいんですけど」
「そりゃ、『ラブライブ!サンシャイン』は感動する番組でしたよ。今度映画化されるそうです」
「そうなんだ。わたしも見に行こうかな」
「プリ☆チャンアイドルとして何か得られるものがあればいいですね」
「そういえば、二人はなんでお互いの行き先を知ってるの?」
 ラウラ☆さんが不思議そうに訊く。
「あ、ツイッターで…」
「ラウラ☆もツイッターやってます!じゃ、あみさんをフォロー…うん。できました!」
「じゃ、わたしもラウラ☆さんをフォローしますね」

 そうこうしていると、メロディー☆さんが到着した。
「あら?あみさん達!お久しぶり!」
「メロディー☆さん、髪型変えたんですね。可愛い!」
「本当?ありがとう!」
「じゃ、みんな揃ったところで、もう1曲ライブしますか」
「とりあえず、メルは参加だね」
「呼んだ?」
 なぜかメルティックスターのめるが返事した。
「メロディー☆さんのメルだったけど、じゃ、めるめるつながりでやってみる?」
 あみが提案する。
「じゃあ、あみあみがセンターで、めるめるたちがサイドだね」
「そうなの?」
「You can do it!あみあみならできるよね」
 そんなわけで、本日の最終ライブは確定した。

 翌日。あみはエルザさん達のツイートをチェックしながら配信場所に向かっていた。
「へぇ、わたしが行く前に他のフォロワーさんとライブしてたんだ」
 そういえば、前回もそれでみつきさん達と知り合えたけど、まだわたしの知らない常連さんも多いんだろうな…
 そんなことを考えていたら、同様に配信に来たコとニアミスしそうになった。
「あ、すみません」
 あれ?どこかで見たことあるような…
「あっ…」
 今エルザさんのツイートに出てたコだ!
「あの」
「何でしょう?」
 あみはエルザさんのフォロチケを見せた。
「この方、知ってます?」
「にじのエルザさんですね。何度かご一緒したことありますよ」
「実は昨日、エルザさんに会って、今ツイッター見たらあなたを見かけて」
「えっ・・・?あ、本当だ。あなたもいますね」
 そのコもツイッターを見て言った。
「すごい偶然ですね」
「これも何かの縁ですね。フォロチケ交換してライブしましょうか」
「もちろん喜んで!ツイッターもフォローさせていただきますね」
「ツイッターでご存知かもしれませんが、あみです」
「私、つぼみです。よろしくお願いします」

 そんなわけで、長らく3人だったあみのツイッターのフォロワーはいきなり5人に増えたのだった。


#08 そして…クリスマスライブやってみた

 ここ数日でいろいろなことがあったけど、今日はクリスマスイブだ。
「そういえば、よく今日ライブの場所取れたね」
「うん。みらいさん達が、みんなでクリスマスキャロルを歌うイベントやるってチラシ配ってたから、そっちに流れたのかな」
「へぇ、それも面白そう。ライブ終わっても間に合うなら行ってみたいな」
「うん」
「ところで、今年のクリスマスコーデ、赤と白があるけど、赤がこの前靴が出て揃ったんだっけ」
「白の帽子がまだでしたよね」
「あ、それだけど、昨日出たんだ!紅白とも使えるよ」
「じゃ、紅白でライブ出来るね」
「とりあえず、髪色から、白の帽子が映えそうなれみは白かな」
「そうですね。じゃ、異世界コンビということであみは赤ですね」
「じゃ、まみは色白だから赤で、あたしが白だとバランスがいいのかな」
 ゆみがまとめる。
「楽しそう!じゃ、めるめる達はさららに合わせて緑ね!」
 突然めるが現れて言った。
「めるさん…いつの間に」
「ごめんね。楽しそうな話が聞こえてきたんでね」
 さらがめるを追って入ってきた。
「あんなは先にイベントに行ったようなので、ボクたち2人で参加してもいいかな。丁度、緑のクリスマスコーデを持っているのでね」
「わぁ、3色だとクリスマス気分も盛り上がりそう!ぜひ参加してください!」
「でも、緑って見るの初めてだね。これまでかすりもしなかったよ」
「これはモーリーファンタジーの限定カラーなんだよ」
「なんか、ハロウィンの時もそんな話があったような…」

 いずれにせよ、メルティックスター(マイナス1)のおかげで、華やかなクリスマスライブは大成功!
「どう、君たち。これからボクとデートでも」
 さらがふざけてかっこよく言う。
「?」
「みらい君たちのイベントに一緒に行かないかい?」
「あんあんも待ってるよ!アンジュさんも参加って噂もあるよ!」
「えっ、本当?行く行く!」
「でも、始まるまであと10分くらいしかないよ」
「げーっ!走れ走れ!」
「めるめるも走るー!」
「めるさーん、待ってくださいー!」
「なんか、あたし達、いつもバタバタだね…」

 なにはともあれ…

 メリー クリスマス!


今回のライブシーン
                        

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