第24章 当たりを望んでみた
「ありがとうございました」
「こちらこそ、久しぶりに楽しかったです」
あみが礼を言うと、ロコさんが微笑みながら答える。
4人ではなかなか6人ライブ曲で配信できないので、今回はロコさんとめばえさんに助っ人をお願いしてライブを配信したのだった。
その時、ほんの一瞬、あみはドキンと不思議な感覚におそわれた。ロコさんのような美人に微笑みかけられてときめいた…のが理由ではなさそうだった。
れみ、ロコさん、めばえさんも一瞬
「おやっ?」
という顔をしていた。あみと目が合っていたロコさんはともかく、れみが違和感を感じている。
「あ、今何か…?」
「何か不思議な感じしましたよね」
四人はうなづきあってる割に、ゆみとまみはそうでもなかった。
「微妙に違和感感じたような気がしたけど…」
「地震かな?我とゆみはたまたま座ってたからあまり感じなかったとか」
「あ、なるほどね」
なんとなく無理矢理納得してあみたちはロコさんたちと別れた。
「さて、これからどうしようか」
「静岡に備えて、もうちょっと経験値を積みたいですね」
そう。なんと来週に静岡で遠征ライブをする計画を立てていたのだ。とはいえ、ただ、あみが仕事で静岡県に行くついでにみんなでついて行ってライブしようというだけの話なのだが。
「フォロチケボードでゲストに呼べる人でも探して、もう一度6人ライブでもやる?」
四人はフォロチケボードに向かった。ボードの所に二人組のコがいる。
「あら?」
「面識はないけど、見た事あるかも…」
「うん。あのコたち、何度か見かけたことあるから、常連さんでしょうけど、話したことはないですねぇ…」
まみもゆみもれみも見たことがあるコ達だった。当然あみも…
「あ、すみません。ボードで仲間探してるんでしたら、わたし達とライブしませんか?」
いきなりライブに誘っていた。
「ええ、もちろん構いませんが…」
「前にお見かけした事何度かあったんですけど、なかなか誘う機会なかったんですよね。わたし、あみです」
「エリィです」
「いぶきです。よろしく」
「向こうにいるのが仲間のまみ、ゆみ、れみです。呼んできますね!」
あみはパタパタと走って三人のところへ戻ってきた。
「というわけで、エリィさんたちにゲストに参加していただきました!」
「すみませんね、このコ、見境なく無茶振りするもので…」
「いえ、私達もちょうどボードで一緒にライブする相手を探していたところですので」
六人がそんな話をしながら配信スポットに向かうと、ちょうど先客がライブを終えてプリチケを出力しているところだった。画面に作っているプリチケが表示されている。
「おおあたり!」
いきなり画面から音声が出る。画面にあるプリチケのフォロチケ部分に「あたり」と書いてある。
「何だろ?」
「当たりってことはもう一度ライブ出来るとか?」
「アイスキャンディーみたいですね」
そこであみがしたり顔で言う。
「こういうやつの「当たり」はカードアルバムだよ。駄菓子屋さんの10円で一枚引くブロマイドのアルバム家にあるし」
「それこそ何?」
「ブロマイドが一枚入った紙袋が紐で閉じられていて、紙袋ごと引きちぎるやつ。裏に「あたり」って赤いスタンプ押してたらアルバムがもらえるんだ」
「昭和レトロの何かでみた事あるかも…」
「あみって一体…」
「あ、わたしのじゃなくて伯父が持ってたのを見ただけだよ」
「あの…」
いぶきさんが遠慮がちに声をかける。完全にあみ達のノリについてきていない。
「当たりって、あのポップに書いてあるやつだと思いますよ」
いぶきさんが示したポップには、当たりが出るとミラクル☆キラッツのグループキラッとコーデの色違いが貰えると書いてある。
「あっ、このコーデ、靴だけ出なくて諦めかけてたやつだよね」
「当たったら色違いでもいいか」
「でも待って。ワンピとアクセをセットって書いてあるよ」
「どちらにしても靴が足りないんですね」
「いずれにしても、さっきの人が当たったから、当たる可能性は低いか…」
「うん。当たりは気にせず折角のジョイントライブを楽しもう」
「ですね」
翌日。
「しかし、結構ダブりのコーデも増えたね」
「ライブを楽しんだ副産物とはいえ、ちょっと勿体ないですね」
その会話を聞いて、あみが何か思いついたようだ。
「よし、じゃ、このNとRの山から適当に選んだミックスコーデでソロライブをして、いいねが一番多いのは誰かっていうのをやろう!」
「面白そう!」
四人はアイテムを組み合わせて思い思いのコーデを作った。
「こうして見ると個性出るね」
「れみはさらさんとお揃いのスカートだけど、生脚にするだけで雰囲気変わるよね」
「ゆみはアクティブな感じにまとまったね」
「まみはちょっと気合入れた勝負服っぽいかな」
「あみはポップ系を目指そうとして途中からラブリー系になった感じ?」
やたらと盛り上がって、順位とかは二の次という雰囲気ではある。
四人がライブをしていると、あみにキラッとチャンスが発動した。
「キラチケ、ゲット!」
なんと、グループキラッとコーデの靴だった。
「やったー!」
四人は手を取り合って喜んだ。すると、たまたま隣でプリチケを出していた人のところから
「おおあたり!」
「う…何、この嬉しさを打ち消すような敗北感」
「まぁ、靴なし2コーデを抱えるより、通常カラーで一式揃ったほうがライブで使えるし」
「なんか、そのすっぱい葡萄理論、正しいんだろうけど、複雑だね」
「でも、割と当たりって出るのかな?」
「よし、チーム一運がいいゆみにリベンジしてもらおう。コーデバトルでも1位だったし」
「え?優勝あみだよね」
「キラッとチャンスは抜きで集計したら、確かにゆみが1位ですね」
「いいけど、どんなライブがいいかな。そういえばあみ、この前ロマンスビートのブランドチャンネルで色違いコーデコンプしたって言ってたっけ」
「あ、そうそう。早く色違いライブやりたいって思ってたんだ」
「よし、明日はそれ、やってみよう!」
そして翌日。
「あとはれみで全員集合かな」
今日はなんとなく3人とも前日のコーデを着て集合していた。
「お、私服のコーデ、なかなか面白いセンスだね」
声をかけてきたのは髪型をエアリーショートにした中性的な雰囲気のコだ。
「見るからにはじめましてだけど、お久しぶり!」
ゆみが挨拶する。
「さすが、気付いたね」
「その服と八重歯でね。元気してた?ロギねさん」
掲示板でプロデューサーを募って変化を続けるシェアキャラのロギねさんだった。
「シャルルとはぐれてね。多分ここなら落ち合えるだろうと思って」
「なるほど」
「ゆみ、今度はコーデではなく、私をプロデュースしてみない?」
「じゃ、服はそのままでライブ始めたらいいのかな」
「わたしとまみは会員証のコーデで一緒にやろうか」
ゆみがロギねさんの会員証でログインし、ライブが始まる。
「これ、あたしはまた蚊帳の外なんだよね…」
そして、ライブ終了後に髪型等を変更するのだが…
「じゃ、髪型は正反対でロングにして色もパープルにしようかな。ホクロの場所も変えて…」
どんどんロギねさんのイメージが変わっていく。ボーイッシュな感じから、ガーリィに感じの外見になる。
「しゃべり方はそのままだと、ギャップが面白いかも」
新たなロギねさんが出来上がったところにれみが到着した。
「あら、ロギねさん?また雰囲気変わりましたね。お姫様っぽいかな」
「さっきまではかっこいい系だったけどね」
「そうなんですか?見たかったかも…」
「さて、今日予定してたゆみとあみのライブもやっておく?」
「もちろん!」
そして、
「おおあたり!」
本当に当たった・・・!
四人が当たりの色違いコーデを見て盛り上がっていると、シャルルさんが来た。
「ロギね、ゆみさんたちといたんだ。また変化したの?」
「まぁね」
シャルルさんが四人の持つ当たりコーデを見て、
「あ、おめでとう。私も着たよ。それ」
「あ、でも、色違いの靴がなくて」
「じゃ、私の靴を貸してあげるから見せてみて。あなたたちのグループキラッとライブ」
「いいの?」
「うん。減るもんじゃないし」
「でも、せっかくだから一緒にライブしたら…」
「それは、ゆみたちの私服コーデが面白いから、私服で街中ライブをその後でやりたいかな」
「シャルル、ボーカルドールのあんたと違って、そこまでの連続ライブはきついと思うよ」
ロギねさんが横から忠告する。
「ロギねさん、わたし達なら4連続ライブくらい平気だよ。だから、ありがたく靴、お借りしますね」
その日の夜。
「あみ、ずっと気になってたんですけど」
「何が?」
「地震って、座ってる人のほうが気付くこと多くないですか?」
「そうかもね」
「この前、ロコさん達とライブした時、立っていた4人が何かを感じたんですよね」
「れみもおかしいと思ったんだね」
「どういうことですか?」
あみはスマホでツイッターを表示した。
「ちょうど、その頃のエルザさんのツイートなんだけど…」
「これは…!」
エルザさんがキラッとボタンを押した瞬間にこんなものが出たと上げている画像を見て二人は顔を見合わせた。
「赤い四角の中にシステムエラー…」
それは、ふたりが世界を越えた時に見たエラーメッセージだった。
今回のライブシーン
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