第21章 コラボライブやってみた

「どうしたの?その格好?」
 あみはゆみとまみの服装を見てつい聞いた。
 ゆみは夏のリゾートにでも行くような服だし、まみに至っては水着だ。もっとも、以前あんなさんがライブで着ていたRONIのリゾートでそのまま買い物に行ける様なタイプの水着だったが。
「サンセットビーチでライブが出来るようになったってお知らせが掲示板に派ってったから、試そうと思ったのである…」
「まぁ、今年は夏の猛暑のせいか、11月なのに昼間は半袖でも過ごせるけど、さすがに夕暮れのビーチをこの時期ってのは思い切ったなとは思うよ」
 まみたちのコメントにあみがつっこむ。
「あの、秋は夕日が綺麗だからってことで、何も夏の格好する必要ないのでは…?」
「…あ」
「…確かに…」

「でも、あみにツッコミを入れられるとは…」
「別にわたしはボケ担当になった覚えはないんだけど」
「確かに、ツッコミ担当は普段はれみかゆみであるな」
「れみは時々大ボケがあるから、やっぱり、ゆみがツッコミ担当かな」
「そのせいかな…?」
 ゆみがポツリとつぶやく。
「ゆみ?」
「なんか、チャンネルの反応とか見てても、あたし、地味なイメージあるみたい」
「確かに、今回もまみみたいにいきなり水着で登場みたいなダイナミックなボケじゃないか」
「あみ、それは我をおちょくっておるのか?」
「うん」
「ひどーい!」
 そう言いつつも、まみも笑っている。
 ゆみはふと遠くに目をやる。
「…あれは?」
「ゆみ、どうした?」
「あそこにいるの、なみりーん☆さんじゃない?」
「確か、スターハーモニー学園の本物のアイドルだよね。あみとれみは一緒にライブしたことがあるんだよね」
「まみ、キャラ消えてるよ」
「いいなーつて思ってたけど、今回はちょっと遠いかな。向こうへ行っちゃおうとしてるみたい…って、えっ?」

 あみがダッシュで追いつき、なみりーん☆さんを連れてきた。
「久しぶりにライブに誘ったら、時間あまりないから、このままいきなりライブならOKだって!」
「学園にファンも友達!っていつも言ってるコがいて、感化されたのか、こういうお誘いは歓迎です…って、また随分季節を先取りした…」
「はは、ははは…ちょっと訳があって。はじめましてなのにすみません…」
「でもまぁ、面白いライブになりそうね。始めましょうか」

 ライブが終わって、なみりーん☆さんは次の行き先へ向かった。
「忙しいのにありがとうございました」
「いえいえ、こちらも楽しかったです」

「あ、そう言えば、あみってなぜここに来てたの?」
「え、店長にお使い頼まれてて、途中でまみが水着で歩いてるのを見つけて…」
「お使い、大丈夫?」
「うぐぅ、ちょっとマズイかも。じゃ、わたし行くね」
 あみは猛スピードで走り去った。実際状況はかなりマズイとみえる。
「我もさすがに恥ずかしくなってきたので着替えてくるのである」
 まみも猛スピードで帰ってしまった。

「あたし一人か…」
 ゆみはふと考えた。もとはといえば、自分が言い出して出来たチームのはずなのに、自分が地味で貢献できてない。
 まみも時々ソロライブをしているみたいだし、自分もやってみようかな…
 ゆみは手持ちのコーデを見た。この前、みらいさんが着ていて、かわいいなと思ったワンピースがある。これでやってみようかな。

「おつかれー!」
 ゆみが配信を終えると、まみが待っていた。そして、まみの他にも…
「なかなかにえもいライブだったね」
 ミラクル☆キラッツもそこにいた。
「こんにちは。この前、みらいさんが着てたのを見て、かわいいワンピだったから、あれでライブしたかったんです」
「そうなんだ。私のお気に入りだから、嬉しいな」
 みらいも嬉しそうだ。
「こんどはあたしが超えもえもなライブ、プロデュースしようか?」
「えもさん、ぜひお願いします!」
「ところで、私たちが来たのは、先日話のあった私たちとあなたたちのコラボライブのことです」
 りんかが本題を切り出す。
 そういえば、この前そんな話が出てたような…
「今度、夕暮れのビーチで6人ライブが出来るようになったのはご存知ですか?」
「あ、はい」
 6人ライブ用だったのか…二人で夏の格好で行ってたら恥かくところだった。
「コーデはどうしよう」
「あみのプリキャスで、色違いのキラッとコーデが出来るんで、それぞれペアで色違いキラッとコーデとかはどうですか?」
「いいアイデアですね」
「うん、楽しそう!めるめるも仲間に入りたい!」
 どこから湧いたのか、と訊きたくなるくらい唐突にめるが現れた。
「何をしていますの?」
 あんなとさらがめるを追って現れた。
「ふーん、コラボライブ。面白そうだね」
「ワタクシたちは自分たちで充分…」
 言いかけるあんなの目の前にまみが来た。
「あんなさん達も、一緒にやりましょう」
「どうしたというんですの?」
「あんなさんは制服コスプレライブに一緒に出てくれたり、本来補欠だったところを大会の決勝のステージに立てるよう提案してくれたりしたので、恩返ししたい!」
「ふーん、そうなんだ。あんなちゃん、優しいんだね」
 みらいが感心している。
「あんあん、やるよね?」
 めるも訊く。
「ま、まぁ仕方ありませんわね…あなた方に付き合って差し上げますわ!」
「あんな、随分嬉しそうだね。僕も楽しみにしているよ」

 そして当日。
「差し入れにドーナツ持ってきたよ」
 みらいがドーナツの箱を開けた。
「めるめる、ドーナツ食べる!」
「める、みんなで食べるんだからね」
 さらが釘をさす。確かに、めるはドーナツ等をすごい勢いで食べるはず。
「わかってるよ!」
「あみも食べ過ぎないようにね」
 こちらではゆみが釘をさす。

「まだ夕陽には早いか」
「だったら、ワタクシ達とのコラボは日中にして変化を付けて差し上げますわ」
「あんなは早くライブしたいんだね」
「めるめるもやりたい!」
「ペアはどうしようか。あんなさんとまみは話の発端だから確定だね」
 あみが仕切り始める。
「めるさんのユニバースクイーンのコーデ、かっこいいですね。私も着てみたいです」
「じゃ、めるめるはれみみとペアだね!」
「あみはあみあみで私はれみみなんですね…」
 めるの呼び方の法則はいまいち理解できないれみであった。
「そういえば、あみ君、前にロマンスビートの色違いでライブしてたよね」
 さらが訊く。
「あ、大会の予選ライブの時だっけ」
「とても似合っていたよ。どう?僕とデートでも」
 さらのイケメンボイスで誘われ、あみは一瞬ドキっとした。

「あ、じゃ、ゆみちゃんお休みだね。ちょうど良かった」
「えもさん?」
「この前に言ってたえもいライブのことで話があるんだよね」
「あ、本当にプロデュースしてくれるんですね!うれしい!」

 さて、コラボライブ第一幕が終わって、夕暮れ時が近づいてきた。

「チーム分けはどうしようか」
「あたしはえもさんと組むことにしたよ」
 それを聞いて、りんかが続ける。
「センターはみらいとあみさんかな?じゃ、私のパートナーは…」
「れみとまみでじゃんけんでもする?」
「いいけど」
 結果、まみが勝った。

 さあ、コラボライブ第2幕だ。
「あ、しまった!」
「どうしたの?」
 急に何かを思い出したゆみにみんなが訊く。
「やってみた用のスイカ、さっきので終わりだよ」
「あ、本当だ。じゃ、私のお店の宣伝用の風船で代用しようか」
「ありがとう、みらいさん!」
「あ、でも、こんなかわいい風船割っちゃってもいいの?」
 キラッCYUの風船だった。
「うん。うちにいっぱいあるから」
「割るの、心が痛むなぁ…キラッCHU、ごめんね」

 キラッCHU風船の尊い犠牲により、ライブは大成功。
「せっかくだし、みんなで打ち上げにでも行こうか」
「いいね」
「そういえば、えもちゃん、さっきゆみちゃんと何の話してたの?」
「うん、今度、超えもえもなライブをする話」
「えっ、明日のライブ、えもさんのプロデュース?」
「いや…ちょっと違ったんだけど、まぁ明日付き合ってもいいけど…」

 そして、翌日。
「えもさん。今日はよろしくお願いします」
「世の中のトレンドはあたしにおまかせ!」
「期待してます」
「さて、あとはまみが来たら始められるね」
 そこへまみから連絡が来た。
「あら?まみ、来れなくなったって」
「何だろう」
「理由書いてないね」
「急用なのかな。あたし、今晩にでも聞いてみるね」
「じゃ、ゆみに任せてライブしようか」

「…これって」
「そう。タウンでのライブだから、あたしの私服チョイスの中から気に入った組み合わせだよ」
「そういえば、えもさんがこの服着てるの何度か見かけたかも…」
「そういう意味では、確かに最もえもいライブだね」
「えもさんは今日は…」
「実は、このあと、キラッツの番組打ち合わせなんだよね」
「そうなんだ…」
「なんか、今のあみちゃんのリアクション、みらいみたい」
「忙しいのにありがとうございました。じゃ、えもいライブ、いってきます」
「配信、期待してるよ!それじゃ!」

 そして、この時の出来事が、これから起こる一連の事件の幕開けとなったのだった。


今回のライブシーン
              

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