第20章 ハロウィンを楽しんでみた

 その日、あみとれみはスーパーのお菓子売り場に来ていた。
「ハロウィンが近いから、かぼちゃのお菓子とか出てないかな」
「あみの場合、トリート・オア・トリートですね」
「お菓子くれなきゃお菓子貰うぞ!って、流石にわたしもそこまでじゃないよ…」
「あれ?」
「あ、プリチケ付きのグミだね。わんわんポリスコーデとか結構可愛いんだよね」
「付いてるコーデ、新しくなってるみたいですよ」
「ハート型のキラキラしたグミ、結構おいしかったし、今日のおやつはこれにしよう」

 二人は、おやつの時間前に開封してみた。
「えっと、ポップコーンの青はトップスが足りないですね。シューズはダブりですけど」
「セーラーチアのカラバリもトップスが足りないね」
「にゃんにゃんにゃーすは6枚ありますよ」
「これは初めて見るコーデだね。唯一揃ったのが珍しいコーデってのは運がいいほうかな」
「ダブりが2枚かと思ったら、よく見ると、スカートだけ青もありますね。ダブりはトップスだけです」
「確か、わんわんポリスもそうだったけど、シークレットで色違いがあったはず」
「シークレットもトップス無しかぁ」

 そんな話をしていると、まみがやって来た。
「差し入れに、グミ買ってきた…って、あれ?」
 再び開封タイム。
「おっ、いきなりポップコーンのトップスだ」
「やった♪」
「次はセーラーチアの…」
「シューズ」
「アクセ」
「ボトムス」
「もう一声!」
「にゃんにゃんにゃーすの青のボトムス」
「なんでシクレのほうがダブる…」
「さぁ、これが最後」
「あ、ポップコーンのトップスだ…」
「最初はコレで喜んだのに、同じアイテムでガッカリですね」
「最初にこっち開けてたら喜ばれたのにね」

 そんな話をしていたら、ゆみがやって来た。
「ねぇ、新しいグミ見つけたけど、2つしか残ってなくて…って、あんたらの仕業か!」
「あ、ゆみ!セーラーチアのトップスあった?」
「さぁ?今から開けるけど」
 ゆみが開封する。
「あっ、これ、あみが言ってたやつじゃない?」
 セーラーチアのトップスだった。
「ナイス、ゆみ!」
 三人がゆみに飛びつきハグする。
「うわ、苦しいって…」
「さて、残りの一つは…」
「消化試合みたいな気分…」
「あ、でもにゃんにゃんにゃーすの青のトップスがまだだよ」
「完全に忘れてた…」
「あ、青いけど、ポップコーンのアクセだわ」
「ま、シクレはシューズとかもともと無いし、もういいかな」
「今日はさっそくこれでライブする?」
「いいね。まずは色違い2種と元のコーデでやってみようか」

 四人がライブ会場に向かうと、えもに出会った。
「お、今からライブ?」
「はい。このコーデの色違いライブをやろうと思って」
「あみとれみがポップコーンの青と赤。まみとあたしがセーラーチアの赤と黄色って感じです」
「へぇ、超えもえもなライブじゃん!あたしもやりたいな」
「じゃあ、今日のゲストはえもさんで!」
「この組み合わせだと、あたしはポップコーンの緑かな」
「ですかね」
「世の中のトレンドはあたしにおまかせ!」

 ライブが終わると、えもにみらいから連絡が入った。
「あ、みらい。えっ、いやほら、ガールズエールのコーデ合わせだし…」
 どうやら、ぬけがけでゲスト出演したことが話題になってるようだ。
「あみちゃんたちも、次は正式にタイアップしてコラボライブやりたいって言ってるし」
 いや、言った覚えはないけど…話を合わそう。コラボライブは楽しそうだし。
「ねっ。あみちゃんもそう言ってくれてるし…え?告知?まだ。すぐ見るね」
 えもは告知メールを開く。
「今度はハ・ロ・ウィ・ン大会!」
「エントリー料はお菓子!限定コーデを手に入れよう」
「みんなの参加、お・待・ち・し・て・います」

「へぇ、次の大会か」
「今回はお菓子が要るのか…演出用かな?」
「さっきのグミの残りでもいいのかな」
「えっ、もう全部食べたよ」
「あ、そうなの?いつの間に…」
 わたしたちの会話を聞いたえもは、
「じゃ、次はライバルだね。今度は負けないよ!」
 と言い、去っていった。
「ハロウィン大会…あちゃ」
「どうした?まみ」
「ハロウィンライブ、混むとできないから予約入れたんだけど、大会とバッティングしているのである」
「あ、でも、大会の後ダッシュで戻れば間に合うかも」
「かなりギリギリだけどね」
「そういえば、ハロウィンライブは、この前のハロウィンコーデ以外に何かやる?」
「グミのにゃんにゃんにゃーすコーデを含めて、猫系コーデでねこねこライブはどうだ?」
「まみ、ナイスアイディア!」
「我が猫メイドを着たいだけであるがな」
「じゃ、わたしはこの前ゲットした猫占い師にしようかな」
「あたしはパンクキャットにしようかな」
「じゃ、にゃーすはれみだね」
「いいんですか?」
「ハロウィンはまみとあみがツートップだし、いいんじゃない?」
 そこで、あみがなぜか一瞬アンニュイな表情を見せた。
「ねぇ、れみ」
「うん。あみの顔見てわかったよ」
「ねこねこライブなら、一緒にしたいよね」
「だね。元気にしてるかな」
「え?誰の話?」
 まみが訊く。
「元の世界でわたしたちの友達に、語尾が「にゃ」の猫っぽいコがいたんだ」
「今は韓国でソミンさんの下でダンスを勉強中なんですよ」
「ソミンさんって、まさかピュリティの?」
「そう。KARAとか少女時代とか、韓流スター来日が相次いだ時に来日したピュリティだよ」
「我も『チェキ☆ラブ』を着うたにしてたことあるぞ」
「しゅわしゅわってやつ?」
「それ、ピュリティだけど別の歌だよ。でも、あれもいいよね」
「変な事思い出させてごめんね」
「いや、まみは悪くないし、ただ、元気にしてるかなって思っただけだし」
「いつか、この世界の配信をその人が見れたらいいのにね」

 さて、今日はハロウィン。
「トリック・オア・トリート!」
 四人はお菓子を持ち寄り、大会会場へ急いだ。
「げっ、もうすぐ開幕時間だよ」
「なんとか間に合うかな?会場見えてきたし」
「参加者がだんだん近くに…って、あれ?」
 参加者もこちらへ歩いてきている。あみは先頭にいた人に声をかけた。
「あの、大会会場は…?」
「あの賞品ごときコーデなど、私達が着るようなものではない」
「お姉さま…素敵」
 先日見かけた美人姉妹のナルシスターだった。

「そんなにしょぼいコーデなのかな」
「逆に見てみたい気もするね」
 とりあえず、あみたちは会場へ向かい、展示されているコーデを見た。
「うん。少なくとも、あたしは要らないかな」
「同感である」
 ゆみの感想にまみが賛同する。
「じゃ、ライブの予約の時間も近いし、わたしたちも帰ろうか」
「ですね」
「じゃ、このお菓子は今日の打ち上げに使おうか」
「さて、帰りますか」
「店長も何も言ってなかったし、非公式のイベントだったんだろうね」
「そもそも、公式大会なら配信の予約取れないんじゃない?」
「それもそうかな」

「では、戻ったところで、予定通りライブ開始!」
「まずは、打ち合わせ通りねこねこライブだね」

 ねこねこライブの曲が終わった。紙吹雪の演出が終わったはずなのに、まだ空から何か降ってきている。
「何だろう、あれ?」
「お菓子?」
「すごい!お菓子が降ってくる!」

 翌日のニュースによると、おしゃまトリックスがいたずらで、自分達主催のハロウィン大会の参加費としてお菓子を集め、気球でお菓子を持って逃げようとしたところを、あんなに追跡され空から回収したお菓子を落としたということだったらしい。
 結局、大会はメルティックスターが優勝し、あんなが誰も欲しがらないようなしょぼいコーデを着せられたところでドッキリだったとタネ明かしされたらしい。

「なんか、お菓子も手に入ったし、次は本番のハロウィンコーデでのライブだね」
「そういえば、あたしが赤、れみが紫、あみがパンプキンだったけど…」
「ゆみの緑って…」
「特殊なものだし、トップスしかない」
「じゃ、いっそ、他の3つはわたしたちから一つずつ使って4色まぜまぜお祭りコーデにしたらどうかな」
「誰から借りたか探しながら見てねって感じでやるのもいいかもですね」
 あみとれみが提案する。
「面白そうだし、それでいこうか」
「だね」

 結局、そんな感じでハロウィンライブを終えた4人は、お菓子を食べながら配信の様子を見ていた。
「あれ?」
 ゆみが何かに気付く。
「どうしたの?」
「ねこねこライブ、韓国から1件いいねが来てるよ」
「まさか…?」
「そういえば…」
 まみが口を開く。
「ハロウィンって、ケルトの日本でいうお盆みたいなのが発祥なんだって」
「あ、聞いた事ある」
「で、ご先祖が還ってくることから派生して、会えない人に会える日なんて伝承があるんだって」
「もしかしたら、あみたちのお友達のコが見てくれたのかもね」

 真相はともかく、ハッピーハロウィン!


今回のライブシーン
      

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