第19章 夢を信じてみた

 割れんばかりの大歓声の中であみはライブしている。隣にはトッププリ☆チャンアイドルのアンジュさん。
 いつものライブとは桁違いだ。アンジュさんとのペアライブが出来るなんて夢みたい。

 …夢だった。
 あみが目を覚ましたのは自分の寝室だった。

 あみはれみ達と集まって四人で歩きながら今朝の夢の話をした。
「やっぱり、あんな配信見たからだよね」
「すごかったもんね」
 あみは昨日、寝る前にキラ宿タワーのセレブのパーティーでのアンジュさんがライブしている模様をミラクル☆キラッツチャンネルで見ていた。
「みらいさん達やあんなさん達はパーティーに招かれて、前座でライブしたんだよね」
「大会で勝てたとはいえ、私たちとは実績が違いますからね」
「まあね。でも、パーティー、行きたかったなぁ」
「でも、あみって、プリパラで自分のランウェイライブに女神を降臨させたんでしょ?今回も正夢になるかもよ」
「ははは、だといいけど。確かに、プリキャスをアンジュさんカラーにした時に貰った枕で見た夢だけどね」
 あみが白いプリキャスを取り出しながら言った。
「不思議なことに、プリキャスって、コーデチェンジしたらなぜか元のピンクになるんだよね」
「あ、そうなの?」
「うん。配信見返して気付いたんだけどね」
「色変わる仕組みとかなさそうですけどね」
 れみがあみからプリキャスを受け取って裏とかを見たりしていると、

「あったー!」
 みらいがダッシュで向かってきた。後にえも、りんか、そしてキラキラとオーラを放つサングラスの女性が続く。
「あれ、みらいさん、どうしたんですか?」
「それ、アンジュさんのプリキャスを探してたの!」
「え?これはあみのだけど」
「へ?」
「へへー。期間限定のアンジュさん仕様カラーなんですよ!」
 それを聞いて、サングラスの女性が、
「ますます探しにくくなったわね」
 ゆみが聞く。
「結局、アンジュさんのプリキャスがどうしたんです?」
「私、アンジュから預かったプリキャスを落としてしまって」
 みらいたちは行き掛かり上、一緒に探していたらしい。
「じゃ、わたし達も見つけたらみらいさんに連絡しますね」
「ありがとう。ところで、あなた達…」
 サングラスの女性が礼を言いつつあみ達を見る。
「この前の大会で優勝したガール達ね」
「あ、はい」
「そんな期待のグループのコがお揃いのプリキャスなんて、アンジュ、きっと喜ぶわ」
「だと嬉しいですけど」

 みらい達と別れて暫く歩くと、みらいから連絡があった。
 なんでも、プリキャスの充電をアンジュさんの付き人に頼んで、そのまま受け取るのを忘れてて、付き人が持っていたらしい。
「で、もう一つビッグニュースがあるよ。サングラスのお姉さんに代わるね」
「あ、もしもし」
「さっきはありがとう。明後日、アンジュが一般向けライブをする時のバックダンサーをあなたたちにお願いしたらどうかって付き人さんに聞いたんだけど」
「えっ…!」
「アンジュが、ぜひ呼びたいと言ってるそうよ。日程は大丈夫かしら?」
「ええええーーーーーーっ!」
 あみは漫画なら地球から飛び出す描写をしそうな驚愕の声をつい上げてしまった。
「もちろん大丈夫です!」

 …本当に正夢になった。

「今日はよろしくね」
「こ…こちらこそ、よろしくお願いいたします」
 目の前にアンジュさんがいる。ゆみたちはガチガチに緊張している。
「リラックスしていいのよ。まず、ソロでやってくるから、それでも見て落ち着いてね」
 アンジュさんはそう言って、四人の目の前で圧倒的なライブを披露した。
「う…余計緊張してきたね」
 ステージに圧倒され、ゆみが言う。
「でも、せっかくのチャンス。思い切り楽しもうよ。いつものゲストさんとライブする時のノリでね」
「そうですね」
 本番が近づくと、逆にあみとれみはリラックスしている。ここは場数の違いだろう。
 そして、そんな二人に洗脳されたのか、ゆみもまみも本番はノリノリで楽しみながらバックを務め、楽しいライブとなった。
「ありがとうございました」
「ふふふ。楽しいライブになったわね」
 何とか、足手まといにならずにライブをすることが出来た。

「さすがは伝説の枕だね」
「正夢になる枕なら」
 まみが何か思いついたようだ。
「れみ、淡路島のプリパラ仕様のプリチケは持っているか」
「ええ、ありますけど」
「あみはそれを伝説の枕に敷いて寝るのだ」
「どういうこと?」
「れみが汝らの世界のライブの夢を見たプリチケの力であみが向こうのライブの夢を見れば…」
「正夢なら元の世界に帰れるってこと?」
「うむ」
「そんなうまくいくかなぁ…」
「やってみなくちゃわからない」
「わからなかったら、やってみよう!」
「…えもさん、自分の何気ない台詞をスローガンにされてるなんて思ってないだろうなぁ…」
「まぁ、あみはプラシーボ効果のサンプルみたいなキャラだから、正夢を見そうな気がしますね」
「それって、わたし、褒められてるのかなぁ?」

 近くのイオンモール内にある配信スタジオの前にあみはいた。ここのイオンモールはどちらの世界にもある。
「お待たせ」
 やってきたのはゆうきだ。
「じゃ、ペアライブしよう。コーデは何がいい?」
「うどん!」
「いや、ランチじゃなくて…」
「うどん!」
 ゆうきは重ねて言う。
 気がつくと、二人はうどんのコーデでライブしていた。

 …本当にゆうきとライブする夢を見た。
「わたしって、本当に単純なのかな?」
 そして、一つ気になることがあった。ライブ後に入荷するコーデがハロウィンのコーデだったのだが、色が違っていた。

「えっ、ハロウィンコーデの色違い?」
 あみから話を聞いて、ゆみがコーデをパラパラと繰る。
「あたし、持ってるよ。この赤いやつだよね。パンプキンと赤ずきんをかけたのかな」
「それが、その赤でも、雑誌にあった紫でもなく、緑だったんだ」
「そういえば、ハロウィン近いけど、基本のパンプキンコーデは持ってましたっけ?」
 れみが訊く。
「スカートだけどうしても出ないんだよね」
「夢で見た緑はどこのパーツだったんですか」
「トップスだった」
「ダメ元だけど、今からイオンへ行ってライブしてみる?」
「まみとの待ち合わせまで時間もあるしね」
 まみはライブでモーニング娘。のLOVEマシーンを出来ると聞いて、準備をすると言って飛び出していった。
 あそこまで気合を入れるほどなのかな?そもそも、あの歌が流行った頃、まみって何歳だったんだろう?

 あみ、れみ、ゆみはイオンモールに来た。
「うどんのコーデだったんだよね」
「でも、あれはゆうきが持ってるから、向こうの世界だわ」
「とりあえず、このままでライブしてみましょう」
 三人はちょうど今の新作の私服なので、これでライブもいいかもしれない。

「さて、コーデは何が入るかな?」
「あっ!パンプキンスカートだ!」
「色違いじゃなかったですね」
「うん。でも、いちばん基本の色のコーデが揃ったのは嬉しいけどね」
「ははは、奇をてらわずに普通の色でやりなさい、というライブの神様のおぼしめしかもしれませんね」
「確かに。そうかもね」
「じゃ、私は雑誌の紫を使おうかな。ゆみは赤ですよね」
「で、わたしとまみがオレンジのツートップって事?」
「いいんじゃない?まみもハロウィン好きそうだし」

 三人はまみとの待ち合わせ場所に急いだ。
「あ、いたいた。おーい!」
「準備は出来てるぞ。このコーデでよいか?」
「えっと、これは…」
 プリズムストーンサイリウムワンピベースのミックスコーデだ。
「本家のジャケットの写真が銀色のワンピなのだ」
「あ、なるほどね」
「それじゃ、新しくないけど新曲、LOVEマシーンにいざ、チャレンジ!」

 ライブ終了後。
「あ、そうそう」
 まみが何か思い出す。
「どうしたの?」
「珍しいものがあるのだ」
「何?」
「今朝、買い物ついでにイオンでソロライブしたのだが…」
「まさか…」
「ん?知ってるのか?珍しい色のハロウィンコーデが出たのだが…」

 緑のトップス!

「うーむ、正夢枕、恐るべし…!」
 どっちかというと、ゆうきに会えるほうが正夢だったら良かったのだけど。


今回のライブシーン
      

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