第18章 シャイニーフレンズ大会に参加してみた(後編)

 無事、予選を通過した4人は、午後の本戦に向けて、MSJのフードコートでランチしながら英気を養うことにした。
「せっかくだし、ランチのトークも配信しようか」
「いいねいいね!」
「さて、カメラを用意して…」
 まみがカメラを構える。

「とりあえず、あみが進行、ゆみがツッコミでオープニングトークいきましょう」
 れみがキューを出す。
「じゃ、予選突破祝いと決勝へのスタミナ確保のために、ここの名物、ミッキーランチを食べよう!」
「あみ、ホットドッグ6個とコーラ一気飲みの後だけど大丈夫?」
「うん。ごはんは別腹だよ」
「…ごはんが別腹なんて言う人、初めて見たわ…」
「さて、お料理が来る前に、当選者を発表しまーす」
「当選者?」
「さっきのライブのクイズの正解者の中から抽選で、私のフォロチケ差し上げます、ってやつ」
「本気だったのか、あれ」
「もちろん!わたしは約束は守る主義!」
「主義というか、当たり前の事でしょ、それは」
「さて正解は、5人のうち、ゲストはえみさんだったけど、「あみ」って回答が一人…なんでわたしやねん!」
「それはネタ投稿だろうね」
「あとは全員正解だね」
「よかった。あたしたちのグループメンバー、覚えててくれてありがとうございます!」
「じゃ、厳正なる抽選をしながら、今から当選者を発表しますね。えーっと、ラキムさん、ラブリン♪★さん、リアさん、あきらさん、あも☆さん…」
「投稿リストを上から読んでるだけじゃん」
「…気にせずいきますよ。ふるぽさん、あかりさん、めばえさん…はわたしのフォロチケ持ってるからいいか。ごめんね。次、おかゆさん…」
「どのへんが厳正な抽選なんだろう…?」
「ゆか★りこ★さん、ももいちご★さん、らなさん、れいか♪さん、ほとりさん、きぃさん、とあさん、やじゅうさん。以上です」
「…人数の基準は?」
「わたしの手持ちの交換用のフォロチケの数だけど」
「なんかいい加減だなぁ…」
「あ、でもどうやって送るかな…えっと、じゃ、次のわちゃわちゃ会の時、会場に置いておくので持って帰ってくださいね」
「果てしなく行き当たりばったりな企画だな…」
「あ、お料理来ました!おいしそう!」
「ごまかしたな…」

 その後、予選のエピソード、本戦への抱負、食レポがいい加減に混ざっただけの雑談が配信され、いよいよ本戦だ。
「まずは、2位のミラクル☆キラッツ戦だね」
「本戦1回戦はライブ対決で3ポイント先取で決勝ということみたい」
「で、2位のアドバンテージで、相手はすでに1ポイントあります」
「つまり、わたしたちは3回勝てば決勝、それまでに2回負けたらアウトってことか」
「仮に3勝1敗なら、4連続ライブの後に決勝だから、ストレートを狙うしかないのである」

「1回戦の課題曲は『キラリ覚醒リインカネーション』でーす」
「ソロ曲か」
 ステージにはりんかが上がっている。私服コーデだ。
「先鋒は我が行くことでよいか?3人は体力を温存するのだ」
「じゃ、まみに任せるね」
「私服コーデなら、このコーデで良いか」
 まみはプリパラでノンシュガーがお揃いで着ていた私服をチョイスした。まみは童顔なので、小学生の私服を着てもかわいい。
 ライブが終わると、二人の前にキラッとボタンがそれぞれ降りてくる。
「さぁ、勝ったのはどっちのグループか?」
 まみとりんかが同時に自分の目の前のボタンを押す。

 まみのコーデが今回の賞品コーデに変わり、ミラーボールが降りてくる。まずは1ポイント。これで互角だ。

「まみ、よくやったね!お疲れ様」
「じゃ、次鋒は私がセンターいきます」
 今度はれみが立ち上がる。
「燃えてきました!ぐおごごご…!」
「れみ、その気合の入れ方…まさか」
「はい、あみが以前言ってた剣道着ネタが気になって、まんが喫茶で「キン肉マン」見たとき、団体戦の次鋒で戦車デザインのカッコいいキャラが…」
「やはり…でも確か、レオパルドン、あの戦車超人の事ね、そのシーンの直後に象の超人に一発でのされて負けたはず…」
「あらら…縁起悪かったですね」
「よし、じゃあ、その戦車さんの無念も晴らしつつがんばろうか」
 ゆみがナイスなフォローを入れる。
「ですね」

 2回戦は3人ライブだ。まみに倣って、れみはシオン、あみはレオナ、ゆみはドロシーのコーデでプリパラのドレッシングパフェを再現して挑んだ。
 判定後、賞品コーデでキラッとステージに立つれみを見ながら、
「戦車の人も喜んでるかな?」
「多分ね…」

 そして、3回戦。
「ここは、あみをセンターに一気に決着をつけるべきだと思います」
「じゃ、れみは休んで、あたしとまみがバックにつこうか」
「うむ」
「コーデ、どうする?向こうはアイスクリームコーデで統一するみたいだけど」
「ここはあみのプリパラ時代のチームコーデでしょ」
「確かに、プリパラのコーデでずっときてるか…よし、それでいこうか」

「くやしいけど、えもいライブだったよ」
「いい勝負だったね」
 試合が終わればノーサイド。それはスポーツもライブも同じ。えもとあみは握手した。3位からのまさかの3連勝であみたちは決勝にコマを進めた。
「私たちの分もがんばってね」
「うん。約束する」
 みらいと握手するあみにゆみが横から言う。
「さっき、約束は守る主義!とか配信で言ってたよね。これで背水の陣だね」
「うん。そうだね。順番からいくと、センター、ゆみだもんね。気合入るよね」
「げっ…自爆で自分にプレッシャーかけちゃった…」
「大丈夫。今まで知らなかったあなた自身を見つけることになるかもよ」
 りんかがゆみの肩に手を置く。この人が言うと説得力ある言葉だ。

 そして、いよいよ決勝。メルティックスターとの一発勝負だ。
「前回以上に、フルメンバーのメルティックスターは強敵だね」
「あたしがセンターであみが休憩になるのかな」
「いや、バックはあみとれみがいい」
「まみ?」
「実力でいえば、決勝で主力のあみを外すのは無謀なのである…」
「あみ、3連続だけど大丈夫?」
「3連続目でセンターやる人に心配されるほど、わたしは弱くないよ」
「ま、判ってて訊いてるけどね」
「前回、謎のキラッとチャンスを引いたゆみがセンターだし、また、すごいことが起きるかも知れないね」
「あの、コーデなんですけど」
 れみが口をはさむ。
「ミラクル☆キラッツのみなさんの分も頑張るんですから…」
「れみ、多分わたしも同じ事考えてる。それしかないよね」
「ここで、あたしの出番でしょ」
 ゆみが持っているのはスイートハニーのキラッとコーデだ。
「そういう事」
「うん」
 れみもあみもミラクル☆キラッツのメンバーが愛用しているキラッとコーデを手にしている。

 メルティックスターは既に賞品のコーデを入手しているようで、さっそくそれを着て登場した。
「まさか、また決勝でお会いするとは、この前がまぐれというわけではなさそうですわね」
「全力で行くよ!」

 双方、本気のライブを行った。決勝にふさわしいライブができた。
 そして、運命のキラッとボタンが降りてくる。
 ゆみとめるが同時にボタンを押す。
 めるは元から賞品コーデを着ている。ゆみのコーデが変われば勝ち、そのままなら負けだ。

 ゆみの足元から順に光が当たり、コーデが変わっていく。勝った。
「やったー!」
 あみたちは歓声をあげて喜びを分かち合う。

 そして、表彰式。今回はゆみが代表で表彰台に立った。トロフィーを掲げるゆみに両横のめるとみらいも拍手を送る。
「みんな、ありがとう!」

 表彰式が終わったあと、あみたちの前にメルティックスターの面々が立ちはだかった。
「まずは優勝おめでとう」
 さらが言う。
「でも、まだワタクシ達に完勝したわけではありませんわ」

 あんなの話だと、実は、決勝には「げきむずモード」というものが存在するらしい。
 より難易度の高いパフォーマンスを競う、真の決勝ステージというわけだ。
「どうかしら、げきむずモードでワタクシ達と真剣勝負してみませんか!」
「最初はね、あみあみやみらみらには難しいから封印してたんだけど、あみあみたちとならいい勝負できそうだと感じたの」
「どうかな?僕らの挑戦、受けてみるかい?」

 三人の言葉を聞いたあみは心なしか震えているように見えた。気持ちが高ぶっている様子だ。
「…あんなさん…!」

 メルティックスターの三人は、優勝を逃した自分達の往生際の悪さにあみが怒ったと思い、真剣な表情になる。
 そして、あみが口を開いた。

「ありがとうございます!」

「・・・・・へ?」
 思わず他の全員から間の抜けた声がこぼれる。
「あの…あみさん?」

「わたしたちは4人だから、うちのまみも決勝のステージに立てるよう、隠しステージを用意してくれたんですね!」
「え、えっと…」
 どこまでポジティブな思考回路をしてるんだ?
「もちろん、挑戦しますよ。もう一度決勝ステージなんて、みんな盛り上がるだろうし」
「挑戦…挑戦者はめるめる達だと思うけど、ま、いいか」

 そして、なし崩し的に、決勝の第2ラウンドがセットされた。
 課題曲は同じでも、ステージの難易度は桁違いだ。
「久しぶりだとちょっときついかもね…」
「久しぶり?」
「プリパラでも、ゴールドディスクって高難易度のライブに挑んだことあるから」
「たとえ、経験してても5連続ライブって大丈夫?」
「多分ね。さぁ、行こうか」

 あみがさっそく賞品のコーデを着てステージに立つ。さっきセンターだったゆみはお休みで、まみとれみがサイドに入る。
「リーダーのコーデも対等の真剣勝負だよ」
「よし、いざ、勝負!」

 難易度が高い分、ライブは盛り上がる。ただ、襲ってくる疲労もすごい。
 その時だった。

「あーっと、アクシデントです」
 めるが足を取られて転倒した。幸い怪我は無さそうで、すぐにライブに復帰した。

 いつも以上に激しいステージの後、キラッとボタンが降りてくる。
 あみとめるが同時に目の前のボタンを押す。

 あみの上にミラーボールが降りてきた。勝った。

「すばらしい戦いだった」
「めるめる、失敗しちゃったね」
「あそこのキツさは、わたしもコケても不思議はなかったかも」

 こうして、大会は幕を閉じた。
 そろそろ、元の世界の手がかりを知る人の目に留まってもいいのに…と、あみは思った。

 当然、この様子は多くの人が見ている。客席の後ろのほうに座っていたキラキラとしたオーラを放つサングラスの女性も、その様子を見て、少し微笑んでからその場を去っていった。


今回のライブシーン
          

前へ表紙へ次へ